隠し味
ぼんやりとする意識の中で、放送が聞こえた。
知っている名は呼ばれなかった。
そして禁止エリア、あたしが今いる場所ははっきりと分からないけど・・・
とにかく、状況を掴んでおきたかった。
何故あたしはベッドで寝かされているのか、服も着替えさせられているのか。
自分はあのまま気を失って、建物内に連れ込まれたようだった。
乱暴された形跡は無いけど、自分を運んだ者の意図が読め無かった。
確かにあたしはあの人を殺そうとして、相手も本気で攻撃してきたはずだった。
知っている名は呼ばれなかった。
そして禁止エリア、あたしが今いる場所ははっきりと分からないけど・・・
とにかく、状況を掴んでおきたかった。
何故あたしはベッドで寝かされているのか、服も着替えさせられているのか。
自分はあのまま気を失って、建物内に連れ込まれたようだった。
乱暴された形跡は無いけど、自分を運んだ者の意図が読め無かった。
確かにあたしはあの人を殺そうとして、相手も本気で攻撃してきたはずだった。
そうだ、荷物。自分の武器。
目を開ける。カーテンのかかった窓から、爽やかな朝日が差し込んでいた。
ほんの一瞬、これまで起こったことが全て夢で、嘘だったんじゃないかという気さえした。
上半身を起こして、周囲に視線を走らす。
しかし、目当てのものはどこにも無い。
ぐっと身を起こそうとして、打たれた腹部が微かに疼いた。
早く。早く荷物を取り返して、ここから離れなければ。
と、その時、不意に部屋の扉が開いた。
目を開ける。カーテンのかかった窓から、爽やかな朝日が差し込んでいた。
ほんの一瞬、これまで起こったことが全て夢で、嘘だったんじゃないかという気さえした。
上半身を起こして、周囲に視線を走らす。
しかし、目当てのものはどこにも無い。
ぐっと身を起こそうとして、打たれた腹部が微かに疼いた。
早く。早く荷物を取り返して、ここから離れなければ。
と、その時、不意に部屋の扉が開いた。
「起きた?」
外に跳ねた緑髪のショートカットの少女、ファラが顔を出した。
「・・・」
どう言っていいかわからず、ピンク髪の少女、アーチェは閉口して顔を俯けた。
そんな彼女の様子を見て、ファラは落ち込んだ表情を見せかけるも、すぐに取り直して、近くの椅子に腰掛ける。
少女と目線が揃い、和やかに笑むと、続けて話しかけた。
「あのね、あなたのこと、放って置けなくて、ここで寝かせることにしたの」
アーチェは黙って、緑髪の少女を見つめていた。
「あの、私、ファラ。ファラ・エルステッド。あなたは?」
アーチェはしばらく黙っていたが、やがて魂が抜けたような声を出した。
「・・・アーチェ・・・。アーチェ、クライン」
「そう、アーチェっていうんだ」
ファラはゆっくりとうなずき、そしてもう一度少女の顔をしっかりと見つめる。
「あなたが、どう思って私に襲ってきたのかは知らないけど、
私と、少なくてもここにいるもう一人は殺し合いをする気なんか無いんだ」
優しく、包み込むような口調で、ファラは慎重に少女に語りかける。
武器は没収してしまったとはいえ、思いつめた少女が何をするか、警戒していないわけでもなかった。
対するアーチェは、感情を失ったかのように、ぽかんとファラの顔を見つめている。
「ここに居る間は、誰も、あなたを襲ったりなんかしないから。
みんながみんな殺し合いをしようなんて思ってないんだよ」
「・・・」
「とにかくさ、ここでゆっくり休んで、それから、これからどうするか考えよう」
そう言い、ファラは立ち上がり扉を抜けていった。
アーチェは一人ぼんやりとベッドに腰掛け、窓の外を見やった。
外に跳ねた緑髪のショートカットの少女、ファラが顔を出した。
「・・・」
どう言っていいかわからず、ピンク髪の少女、アーチェは閉口して顔を俯けた。
そんな彼女の様子を見て、ファラは落ち込んだ表情を見せかけるも、すぐに取り直して、近くの椅子に腰掛ける。
少女と目線が揃い、和やかに笑むと、続けて話しかけた。
「あのね、あなたのこと、放って置けなくて、ここで寝かせることにしたの」
アーチェは黙って、緑髪の少女を見つめていた。
「あの、私、ファラ。ファラ・エルステッド。あなたは?」
アーチェはしばらく黙っていたが、やがて魂が抜けたような声を出した。
「・・・アーチェ・・・。アーチェ、クライン」
「そう、アーチェっていうんだ」
ファラはゆっくりとうなずき、そしてもう一度少女の顔をしっかりと見つめる。
「あなたが、どう思って私に襲ってきたのかは知らないけど、
私と、少なくてもここにいるもう一人は殺し合いをする気なんか無いんだ」
優しく、包み込むような口調で、ファラは慎重に少女に語りかける。
武器は没収してしまったとはいえ、思いつめた少女が何をするか、警戒していないわけでもなかった。
対するアーチェは、感情を失ったかのように、ぽかんとファラの顔を見つめている。
「ここに居る間は、誰も、あなたを襲ったりなんかしないから。
みんながみんな殺し合いをしようなんて思ってないんだよ」
「・・・」
「とにかくさ、ここでゆっくり休んで、それから、これからどうするか考えよう」
そう言い、ファラは立ち上がり扉を抜けていった。
アーチェは一人ぼんやりとベッドに腰掛け、窓の外を見やった。
自分がどうありたいか?
何がしたかったのか?
その疑問が彼女の心に反響し、複雑に絡み合った。
「あたしは・・・」
部屋に差し込む光の輝きを身に受けながら、誰に言うでもなく、彼女はそう呟いた。
何がしたかったのか?
その疑問が彼女の心に反響し、複雑に絡み合った。
「あたしは・・・」
部屋に差し込む光の輝きを身に受けながら、誰に言うでもなく、彼女はそう呟いた。
部屋を出てしばらく歩くと、すっかり慣れた血の匂いとは全く場違いな、いい匂いがしてきた。
そういえば自分の服は血で塗れていた。
服を着替えさせられたのは、もしかしたらそういうことだったのかもしれない。
「あ、もう大丈夫?って、殴った私が言うのも変だけど・・・」
見ると、先程の少女が調理場に立ち、なにやら料理を作っている。
テーブルを見れば、既に出来上がり、並べられているスープが三つ。
透明で、暖かな湯気が立ち上っている。具は見慣れない山菜が少し。
「卵がここの家にたくさんあってね、私もがんばっちゃった」
そう言いつつ、こなれた手つきで皿を三つ同時に持ちながら、テーブルに向けて歩き出す。
大きなオムレツが、それぞれの更に一つずつ乗っていた。
見事な焼き具合で、鮮やかな黄色が食欲をそそった。
とりあえず、自分の作る料理とは雲泥の差があると、アーチェは思った。
ファラが作る料理はそれはそれは絶品で、さる料理大会では優勝を収めたこともある。
対する彼女が作る料理はそれはそれは××なもので、魅惑の称号をもらったこともある。
そういえば自分の服は血で塗れていた。
服を着替えさせられたのは、もしかしたらそういうことだったのかもしれない。
「あ、もう大丈夫?って、殴った私が言うのも変だけど・・・」
見ると、先程の少女が調理場に立ち、なにやら料理を作っている。
テーブルを見れば、既に出来上がり、並べられているスープが三つ。
透明で、暖かな湯気が立ち上っている。具は見慣れない山菜が少し。
「卵がここの家にたくさんあってね、私もがんばっちゃった」
そう言いつつ、こなれた手つきで皿を三つ同時に持ちながら、テーブルに向けて歩き出す。
大きなオムレツが、それぞれの更に一つずつ乗っていた。
見事な焼き具合で、鮮やかな黄色が食欲をそそった。
とりあえず、自分の作る料理とは雲泥の差があると、アーチェは思った。
ファラが作る料理はそれはそれは絶品で、さる料理大会では優勝を収めたこともある。
対する彼女が作る料理はそれはそれは××なもので、魅惑の称号をもらったこともある。
「よーし、完成」
ファラが言った。そうしてエプロンを(これもこの家から拝借したのだろう)脱ぎ、周囲を見回す。
ファラが言った。そうしてエプロンを(これもこの家から拝借したのだろう)脱ぎ、周囲を見回す。
「あれ、ジョニーが居ない。まだ見張りしてるのかな?」
玄関を見ながら、そう呟く。
そうして、アーチェの方をちらと見て、
「あ、先に食べてて。ごはん食べて、落ち着いたら、もう一回ゆっくり話そう」
最後に笑顔を見せ、ファラは扉を開けて外に出た。
ファラの姿が消え、室内に一人取り残されたと思った瞬間、彼女の頭の中に悪魔が囁いた。
その一瞬後、アーチェの目の奥底に、冷たい光が宿った。
玄関を見ながら、そう呟く。
そうして、アーチェの方をちらと見て、
「あ、先に食べてて。ごはん食べて、落ち着いたら、もう一回ゆっくり話そう」
最後に笑顔を見せ、ファラは扉を開けて外に出た。
ファラの姿が消え、室内に一人取り残されたと思った瞬間、彼女の頭の中に悪魔が囁いた。
その一瞬後、アーチェの目の奥底に、冷たい光が宿った。
ファラが消えたのを確認してから、アーチェは弾かれたように動き出した。
足早に歩き出し、急ぎ周囲を探り出す。
割とすぐに見つかった。ファラの支給品袋と、自分のそれ。
彼女等が帰ってくる前に、大急ぎで中を漁った。
しかし、予想外のことがおこっていた。
杖と、ナイフが消えている。
他のもの、弓やスペクタクルズといったものはあるのに、一番重要なそれらが無かった。
まさか。嫌な予感が彼女の頭を掠める。
足早に歩き出し、急ぎ周囲を探り出す。
割とすぐに見つかった。ファラの支給品袋と、自分のそれ。
彼女等が帰ってくる前に、大急ぎで中を漁った。
しかし、予想外のことがおこっていた。
杖と、ナイフが消えている。
他のもの、弓やスペクタクルズといったものはあるのに、一番重要なそれらが無かった。
まさか。嫌な予感が彼女の頭を掠める。
あの時杖とナイフは、あの場に放置してしまった。
まだあの場に、或いは緑髪の少女の仲間に回収されてしまったのか?
アーチェは顔を苦渋に満たせた。
この状況なら、たとえ自分が抵抗しようとしても、
まともな武器さえなければ昨夜と同じ結果になってしまうだろう。
杖も無く、ナイフも無い状態でまともに戦ってなんとかなる相手では無かった。
けど、まだなんとかなる。
少女の仲間が帰ってくれば、当然荷物も一緒のはずだ。
そこに自分の目当てのものがある可能性は高い。
ならばどうやって自分の荷物を取り戻すか?
ぐずぐずしてはいられない。もうじき、二人が帰ってくる。
まだあの場に、或いは緑髪の少女の仲間に回収されてしまったのか?
アーチェは顔を苦渋に満たせた。
この状況なら、たとえ自分が抵抗しようとしても、
まともな武器さえなければ昨夜と同じ結果になってしまうだろう。
杖も無く、ナイフも無い状態でまともに戦ってなんとかなる相手では無かった。
けど、まだなんとかなる。
少女の仲間が帰ってくれば、当然荷物も一緒のはずだ。
そこに自分の目当てのものがある可能性は高い。
ならばどうやって自分の荷物を取り戻すか?
ぐずぐずしてはいられない。もうじき、二人が帰ってくる。
アーチェはもう一度袋に手を突っ込み、探った。
そして取り出した。空になったペットボトル。
その中身は一見空の様に見えた。
しかしよくよく目を凝らせば、その底に透明な液体が溜まっている。
一見すればただの水に見えるだろう。
だがそこに入っているのは、既に二人の命を奪った毒だった。
彼女はチェスターが遺した毒を、使用済みのボトルの中身を乾かして、その中に移し変えていた。
彼女がそうした理由は、こういった事態に備えてか、それとも、
何も知らずにそれを奪った者をやがて死に至らせる罠であったかは定かではないが、とにかく毒は元通りにあった。
あの少女は、まさかこれに毒が入っているとは考えもしなかっただろうと思った。
そして取り出した。空になったペットボトル。
その中身は一見空の様に見えた。
しかしよくよく目を凝らせば、その底に透明な液体が溜まっている。
一見すればただの水に見えるだろう。
だがそこに入っているのは、既に二人の命を奪った毒だった。
彼女はチェスターが遺した毒を、使用済みのボトルの中身を乾かして、その中に移し変えていた。
彼女がそうした理由は、こういった事態に備えてか、それとも、
何も知らずにそれを奪った者をやがて死に至らせる罠であったかは定かではないが、とにかく毒は元通りにあった。
あの少女は、まさかこれに毒が入っているとは考えもしなかっただろうと思った。
急ぎそれを手に、テーブルへ向かうアーチェ。
そしてフタを開け、食卓に並んだ三つの皿の内、二つの皿の中にボトルの液体を数滴垂らした。
液体はスープに落ち、小さな波紋を生んだ。
そして残った「ただの」スープを自分の元に寄せ、急ぎボトルを袋に戻す。
心臓が激しく鼓動していた。
あまりの動悸に、外に聞こえるのではないかと思われたほどだった。
そしてフタを開け、食卓に並んだ三つの皿の内、二つの皿の中にボトルの液体を数滴垂らした。
液体はスープに落ち、小さな波紋を生んだ。
そして残った「ただの」スープを自分の元に寄せ、急ぎボトルを袋に戻す。
心臓が激しく鼓動していた。
あまりの動悸に、外に聞こえるのではないかと思われたほどだった。
・・・ねぇ、チェスター、これで、いいんだよね?
・・・あたし、間違ってないよね?
・・・あたし、間違ってないよね?
目の前に広がる波紋を見ながら、アーチェは強く瞼を閉じ、息を吐いた。
【アーチェ 生存確認】
所持品:身に着けていたレジストリング
状態:激しい動悸 足に靴擦れ
第一行動方針:荷物(特に杖とナイフ)を取り返し、この場から去る
第一行動方針:ゲームに乗る
現在地:C3の村
所持品:身に着けていたレジストリング
状態:激しい動悸 足に靴擦れ
第一行動方針:荷物(特に杖とナイフ)を取り返し、この場から去る
第一行動方針:ゲームに乗る
現在地:C3の村
【ファラ 生存確認】
所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ アーチェの支給品袋(ダークボトル×2 スペクタクルズ×1 木の弓 毒(液体))
状態:普通
第一行動方針:みんなで朝食
第二行動方針:アーチェの世話
第二行動方針:殺し合いをやめさせる
第三行動方針:仲間との合流
第四行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ アーチェの支給品袋(ダークボトル×2 スペクタクルズ×1 木の弓 毒(液体))
状態:普通
第一行動方針:みんなで朝食
第二行動方針:アーチェの世話
第二行動方針:殺し合いをやめさせる
第三行動方針:仲間との合流
第四行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
【ジョニー 生存確認】
所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ
状態:普通
第一行動方針:見張り
第二行動方針:仲間との合流
第三行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ
状態:普通
第一行動方針:見張り
第二行動方針:仲間との合流
第三行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村