カーディナル
カイル・デュナミスが放送を聞いたのは、丁度G4の川に差し掛かった頃のことであった。
父親であるスタン・エルロンが18年前に倒したはずの、天上王ミクトランの声。
時おり声を洩らし始めたミントを、樹の側で寝かせてカイルは放送を聴いた。
その放送は、カイルにとって衝撃の連続であった。
父親であるスタン・エルロンが18年前に倒したはずの、天上王ミクトランの声。
時おり声を洩らし始めたミントを、樹の側で寝かせてカイルは放送を聴いた。
その放送は、カイルにとって衝撃の連続であった。
まず、禁止エリアに一応の目的地であるG5が指定されたこと。
これだけでも、カイルには大事である。
別の場所に向かうことを考えていたが、そんな考えを巡らせるうちに死亡者の発表が行われた。
先に言われた禁止エリアは、カイルにとってほんの挨拶代わりでさえなかったのだ。
これだけでも、カイルには大事である。
別の場所に向かうことを考えていたが、そんな考えを巡らせるうちに死亡者の発表が行われた。
先に言われた禁止エリアは、カイルにとってほんの挨拶代わりでさえなかったのだ。
マリー・エージェント
母親であるルーティの相棒としてレンズハンターをしていた腕利きの戦士。
カイルはほんの小さいときに会ったぐらいだが、今でも母と連絡を取っていたことは知っていた。
若いころの、命知らずだった母さんのピンチを何度も救ってきた頼れる仲間だった。その彼女が、死んだ。
母親であるルーティの相棒としてレンズハンターをしていた腕利きの戦士。
カイルはほんの小さいときに会ったぐらいだが、今でも母と連絡を取っていたことは知っていた。
若いころの、命知らずだった母さんのピンチを何度も救ってきた頼れる仲間だった。その彼女が、死んだ。
マイティ・コングマン
フィッツガルドの闘技場でチャンピオンをしていた、ある意味では英雄と呼ばれた男。
拳一つで凶暴なモンスターを倒し、若いころの父さんとも戦ったことのある無頼の拳闘家。
もう何度も聞いたことのある若いころの父さんの武勇伝に名を連ねる好敵手。その彼も、死んだ。
フィッツガルドの闘技場でチャンピオンをしていた、ある意味では英雄と呼ばれた男。
拳一つで凶暴なモンスターを倒し、若いころの父さんとも戦ったことのある無頼の拳闘家。
もう何度も聞いたことのある若いころの父さんの武勇伝に名を連ねる好敵手。その彼も、死んだ。
そして………
カイルにとって家族よりも強い絆で結ばれた、血の繋がらない兄、ロニ・デュナミス。
最も身近なカイルの目標であり、ライバルでもあり、教師でもあった彼でさえ………死んだ。
カイルにとって家族よりも強い絆で結ばれた、血の繋がらない兄、ロニ・デュナミス。
最も身近なカイルの目標であり、ライバルでもあり、教師でもあった彼でさえ………死んだ。
自分でも驚くほどの大きな声であった。
ひどい、泣き声とも叫び声ともつかない絶叫が辺りに響いた。
そしてカイルは、打ちひしがれるように力なく崩れ落ちた。
地面を叩く。素手で、何度も。血が滲もうとも叩くのは止まらない。
何度も何度も周囲に叫び声が響き渡った。惜しむような、責めるような、カイルの叫び。
ひどい、泣き声とも叫び声ともつかない絶叫が辺りに響いた。
そしてカイルは、打ちひしがれるように力なく崩れ落ちた。
地面を叩く。素手で、何度も。血が滲もうとも叩くのは止まらない。
何度も何度も周囲に叫び声が響き渡った。惜しむような、責めるような、カイルの叫び。
カイルは泣いていた。
父さんのような英雄になる。それがカイルの口癖だった。
でも、今の自分は一体なんだ?
ひとり、またひとりと死んでいくこの状況を、なにひとつ変えることが出来ない。
叫びは悲しみから、いつしか自責の色を帯び始めていた。
自分が、こんな馬鹿げたゲームを止めるだけの力を持っていたら。
それは少年期にはよくある、あまりに儚い理想の偶像。
だが、カイルは真剣にそんな力を持つ『英雄』という存在に憧れていた。
オレはこんなにも、英雄とは程遠い存在だったのか。
カイルの、自分の無力への嘆きは止まらなかった。
誰よりも純粋であったがために、嘆きを留める術もなかった。
でも、今の自分は一体なんだ?
ひとり、またひとりと死んでいくこの状況を、なにひとつ変えることが出来ない。
叫びは悲しみから、いつしか自責の色を帯び始めていた。
自分が、こんな馬鹿げたゲームを止めるだけの力を持っていたら。
それは少年期にはよくある、あまりに儚い理想の偶像。
だが、カイルは真剣にそんな力を持つ『英雄』という存在に憧れていた。
オレはこんなにも、英雄とは程遠い存在だったのか。
カイルの、自分の無力への嘆きは止まらなかった。
誰よりも純粋であったがために、嘆きを留める術もなかった。
だがそんな悲痛な叫び声を、受け取ってくれる人がそこに確かに居た。
「いけません、そんなにしては腕が――!!」
「いけません、そんなにしては腕が――!!」
カイルを抱きかかえるように包み込んで、ミントは打ち続けられるカイルの手を止めた。
驚きの表情を見せるカイル。
ミントは、そんなカイルの手を優しく癒した。
暖かな光が、カイルの手を優しく包み込み、光が消えるころにはカイルの手は元に戻っていた。
「落ち着きましたか?」
問いかけるミント。カイルは黙って頷く。
「……いったい何があったのですか? 良かったら、話して頂けますか?」
ミントの言葉に絆されるように、カイルは少しずつ喋り始めた。
G3洞窟でのこと。ミントを背負って逃げ出したこと。そして、放送のこと。
驚きの表情を見せるカイル。
ミントは、そんなカイルの手を優しく癒した。
暖かな光が、カイルの手を優しく包み込み、光が消えるころにはカイルの手は元に戻っていた。
「落ち着きましたか?」
問いかけるミント。カイルは黙って頷く。
「……いったい何があったのですか? 良かったら、話して頂けますか?」
ミントの言葉に絆されるように、カイルは少しずつ喋り始めた。
G3洞窟でのこと。ミントを背負って逃げ出したこと。そして、放送のこと。
「………そうですか。ありがとうございます、カイルさん」
話し終えたカイルに、ミントは頭を下げて感謝した。
「どうしてオレに……オレはあなたを無理やりに連れてきたってのに」
俯き、暗い口調で話すカイルだったが、ミントは微笑んでみせた。
「そんなことは…カイルさんは、私の恩人です。あの後、洞窟が崩れていたかもしれませんから」
「でも! オレは――」
「カイルさん、あまり自分を責めないでください」
「でも………でも…………」
再び俯くカイル。彼が今まで持っていた自信はいま、かつてなく揺らいでいた。
話し終えたカイルに、ミントは頭を下げて感謝した。
「どうしてオレに……オレはあなたを無理やりに連れてきたってのに」
俯き、暗い口調で話すカイルだったが、ミントは微笑んでみせた。
「そんなことは…カイルさんは、私の恩人です。あの後、洞窟が崩れていたかもしれませんから」
「でも! オレは――」
「カイルさん、あまり自分を責めないでください」
「でも………でも…………」
再び俯くカイル。彼が今まで持っていた自信はいま、かつてなく揺らいでいた。
消えるように儚いカイルに、ミントは優しく声をかける。
「誰しも、どうすることの出来ないこともあります。ヒトである限り、万事上手くいくことはありません。
カイルさんも、人間である以上はどうにもならないこともあるのです。そう、それは………私にも。
それでも、私は今まで自分に出来ることをし続けてきたと思います。カイルさんは、どうですか?」
ミントの問いかけに、カイルはしばらくの間考え込んだ。
沈黙が包んだが、ミントはそのまま何もすることなく、カイルが答えるのを待っていた。
やがて、カイルは吐露した。まるで全ての膿みを吐き出すように。
「オレは………オレは、わからない。わからないんだ!」
「誰しも、どうすることの出来ないこともあります。ヒトである限り、万事上手くいくことはありません。
カイルさんも、人間である以上はどうにもならないこともあるのです。そう、それは………私にも。
それでも、私は今まで自分に出来ることをし続けてきたと思います。カイルさんは、どうですか?」
ミントの問いかけに、カイルはしばらくの間考え込んだ。
沈黙が包んだが、ミントはそのまま何もすることなく、カイルが答えるのを待っていた。
やがて、カイルは吐露した。まるで全ての膿みを吐き出すように。
「オレは………オレは、わからない。わからないんだ!」
「もっと良い道があったのかもしれない。今よりもっと素晴らしい方法があったのかもしれない。
オレ、馬鹿だから……その道に気づくことが出来なかっただけじゃないかって、それが怖いんだ!!」
カイルの怒気を孕んだ言葉は、全てミントにぶつけられた。
それを、ミントは受け止めた。そして、ゆっくりと、諭すようにカイルに語り掛けた。
「カイルさん。それなら、あなたが選んだ道は……間違っていましたか?」
「――――ッ!?」
「間違った現在なんて、ないんです。いまこの瞬間というものは………ひとつきりしかないんです。
自信を持ってください。少なくとも、あなたの先ほどの行動で助けられた人がここに居るのですから。
大丈夫です、カイルさん。だから………もう少し落ち着いたら、次はどうするか考えましょう」
言い終わる前に、カイルは再び泣いていた。
そんな彼を、ミントは静かに見守るだけであった。
オレ、馬鹿だから……その道に気づくことが出来なかっただけじゃないかって、それが怖いんだ!!」
カイルの怒気を孕んだ言葉は、全てミントにぶつけられた。
それを、ミントは受け止めた。そして、ゆっくりと、諭すようにカイルに語り掛けた。
「カイルさん。それなら、あなたが選んだ道は……間違っていましたか?」
「――――ッ!?」
「間違った現在なんて、ないんです。いまこの瞬間というものは………ひとつきりしかないんです。
自信を持ってください。少なくとも、あなたの先ほどの行動で助けられた人がここに居るのですから。
大丈夫です、カイルさん。だから………もう少し落ち着いたら、次はどうするか考えましょう」
言い終わる前に、カイルは再び泣いていた。
そんな彼を、ミントは静かに見守るだけであった。
パシャパシャと、流れる川の水でカイルは顔を洗った。
「もう、いいのですか?」
ミントの問いに、泣きはらした顔のカイルは、まだぎこちない笑顔で答えた。
「ああ、大分落ち着いてきたから。ありがとう、ミントさん」
カイルの感謝の言葉に、ミントは「これも勤めですから」と軽く答えた。
「それで、どうしますか? 話ではG5も禁止エリアになってしまうと………」
「しょうがないから、別の道を行く。父さんも禁止エリアに近寄るとは思えないし」
カイルの父さんという言葉に、ミントは瑣末ながらも興味を抱いた。
「ロニさん以外にも、家族の方が参加していらしたんですか? でも名簿には――」
「オレは姓が違うんだ。父さんはエルロンで母さんは……カトレット、そしてオレはデュナミス」
エルロン。その名前に、ミントは聞き覚えがあった。
「もしかして……父親というのはスタンさんのことですか?」
その質問に、まるで知っているかのような言い方に、カイルは驚きを隠せなかった。
「もう、いいのですか?」
ミントの問いに、泣きはらした顔のカイルは、まだぎこちない笑顔で答えた。
「ああ、大分落ち着いてきたから。ありがとう、ミントさん」
カイルの感謝の言葉に、ミントは「これも勤めですから」と軽く答えた。
「それで、どうしますか? 話ではG5も禁止エリアになってしまうと………」
「しょうがないから、別の道を行く。父さんも禁止エリアに近寄るとは思えないし」
カイルの父さんという言葉に、ミントは瑣末ながらも興味を抱いた。
「ロニさん以外にも、家族の方が参加していらしたんですか? でも名簿には――」
「オレは姓が違うんだ。父さんはエルロンで母さんは……カトレット、そしてオレはデュナミス」
エルロン。その名前に、ミントは聞き覚えがあった。
「もしかして……父親というのはスタンさんのことですか?」
その質問に、まるで知っているかのような言い方に、カイルは驚きを隠せなかった。
「そんなぁ、あの洞窟の奥に父さんがいたなんて」
「すみません、もっと早くに私が目覚めていれば……」
謝るミントだったが、カイルは気にせずに答えた。
「いいさ、また戻ればいいことなんだから」
いつものカイルの、馬鹿みたいに能天気な口調だった。
「すみません、もっと早くに私が目覚めていれば……」
謝るミントだったが、カイルは気にせずに答えた。
「いいさ、また戻ればいいことなんだから」
いつものカイルの、馬鹿みたいに能天気な口調だった。
カイルは、無力である。この状況をなにひとつ変えるだけの力は持たない。
でも、それでも、カイルにはまだ未来が残っている。
彼の歴史は、まだ終わってはいない。
諦めることをどこかに置き忘れてきた少年の旅は、いま再び動き始めた。
でも、それでも、カイルにはまだ未来が残っている。
彼の歴史は、まだ終わってはいない。
諦めることをどこかに置き忘れてきた少年の旅は、いま再び動き始めた。
【カイル・デュナミス 生存確認】
状態:全身に軽い打撲
所持品:鍋の蓋、フォースリング、ラビッドシンボル (黒)
第一行動方針:ひとまずG3方面へ戻る
第ニ行動方針:父との再会
第三行動方針:リアラとの再会
第四行動方針:仲間との合流
現在位置:G4西川岸
状態:全身に軽い打撲
所持品:鍋の蓋、フォースリング、ラビッドシンボル (黒)
第一行動方針:ひとまずG3方面へ戻る
第ニ行動方針:父との再会
第三行動方針:リアラとの再会
第四行動方針:仲間との合流
現在位置:G4西川岸
【ミント 生存確認】
状態:健康 TP半分程度
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
第一行動方針:カイルを助ける
第二行動方針:仲間と合流
現在位置:G4西川岸
状態:健康 TP半分程度
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
第一行動方針:カイルを助ける
第二行動方針:仲間と合流
現在位置:G4西川岸