カルマ
四千年を生きる。それは人間にとって常識の域を超えた話である。
それを体験したただ一人の男、クラトス。クルシス四大天使唯一の人間。
人間には到底留めきれない四千年分の記憶。絶え間なく襲う記憶の忘却。
彼はそれに抗って見せた。ハーフエルフならばまだ理解が出来る。
しかし人間の彼はそれに耐えて見せた。天使化によって得た超感覚を
精神力で制御した。その先にあったのは高速処理能力、頭の回転が速くなったのだ。
その頭脳がこの状況を分析する。いや、もう終わっていた。
それを体験したただ一人の男、クラトス。クルシス四大天使唯一の人間。
人間には到底留めきれない四千年分の記憶。絶え間なく襲う記憶の忘却。
彼はそれに抗って見せた。ハーフエルフならばまだ理解が出来る。
しかし人間の彼はそれに耐えて見せた。天使化によって得た超感覚を
精神力で制御した。その先にあったのは高速処理能力、頭の回転が速くなったのだ。
その頭脳がこの状況を分析する。いや、もう終わっていた。
「少年、名はなんと言う。」
辛うじて原形をとどめる地下拷問部屋にに声が響く。
「何ですかこんな時に。人は不可視のジェイといいます。そういう貴方は?」
平常心を保ったフリをして少年は声を返す。
彼は少し俊巡して、自重しながら名乗る。
「私はクラトス、傭兵だ。」
はじめてロイドに会ったときも彼はこう名乗った。
少しだけデジャヴ。地下に届く山鳴りの音は、まだ微か。しかし確実に大きくなる。
「この状況、どう思う?」
彼は少年に聞き返す。彼の意見を求めているわけではない。
「もう無理でしょうね。時間が足りない。」
少年は忍者の資質があった。師匠に鍛えられたその非常の聴覚は、城の状態を正確に
捕らえていた。しかしそれより早くより正確に彼はその超感覚で城の寿命を掌握していた。
あの時点からさらにバルバトスが損害を加速させることを計算に入れなければならなかったのだ。
床に並ぶは聖女、天使、そして剣士。後ろ2人はともかく、聖女は眠っただけなのだが
その眠りは深く、自力で起きた頃には眼前に天井が落ちるだろう。
小柄な少年と手負いの剣士が3人を運ぶ。物理的に無理だ。
加えて彼はあの男、サレの悲鳴を聞いている。崩落の音、断末魔、命を賭した声明、
様々な音を拾い、理解し、処理する。そして一つの回答を用意した。
辛うじて原形をとどめる地下拷問部屋にに声が響く。
「何ですかこんな時に。人は不可視のジェイといいます。そういう貴方は?」
平常心を保ったフリをして少年は声を返す。
彼は少し俊巡して、自重しながら名乗る。
「私はクラトス、傭兵だ。」
はじめてロイドに会ったときも彼はこう名乗った。
少しだけデジャヴ。地下に届く山鳴りの音は、まだ微か。しかし確実に大きくなる。
「この状況、どう思う?」
彼は少年に聞き返す。彼の意見を求めているわけではない。
「もう無理でしょうね。時間が足りない。」
少年は忍者の資質があった。師匠に鍛えられたその非常の聴覚は、城の状態を正確に
捕らえていた。しかしそれより早くより正確に彼はその超感覚で城の寿命を掌握していた。
あの時点からさらにバルバトスが損害を加速させることを計算に入れなければならなかったのだ。
床に並ぶは聖女、天使、そして剣士。後ろ2人はともかく、聖女は眠っただけなのだが
その眠りは深く、自力で起きた頃には眼前に天井が落ちるだろう。
小柄な少年と手負いの剣士が3人を運ぶ。物理的に無理だ。
加えて彼はあの男、サレの悲鳴を聞いている。崩落の音、断末魔、命を賭した声明、
様々な音を拾い、理解し、処理する。そして一つの回答を用意した。
「頼みがある。」
彼は少年に二刀の一つ・ヴォーパルソードを投げつける。
「何ですかこれは。」
受け取る少年。
「お前だけならばその俊足でここから離脱できる。生き延びてそれを二刀の剣士に渡して欲しい。」
「僕に一人情けなく生きろ、ですか?馬鹿馬鹿しい。第一」「おまえは、」
感情で反発する少年を彼は抑止する。
「罪を受け止め、真っ向から罰と相対する覚悟を持っている。信じる理由はそれだけだ。
ここは私が何とかする。お前は行け。」
彼は少年の事情など何も知らない。知ったのは罪人としてのほんの少しのシンパシー。
「僕が途中で力尽きたら?分が悪すぎますよ。」
少年は脅す。彼はもう一刀、フランヴェルジュを見せる。
「案ずるな、例えお前が力尽きても必ずこの二刀は再び集う。」
彼はエゴイストだった。最愛の人を失った世界ならば歪んでてもかまわない、そんな人間だった。
ロイドに確実にそれを渡すなら二刀とも渡すべきなのだ。彼が縋ったのは不確かなモノ。
もしかしたらこの剣と共にロイドと会えるのではという妄想に近い約束。
妻を失った彼にはロイドとこの剣しか残っていないのだ。
「…信じましたよ。最後に一つ、その人は貴方のなんですか?」
少年は彼の目を見据える。深い、とても深い瞳。およそ10年そこらでは到底至れないその瞳に
少年は彼の罪を感じ、そして信じた。もう許されない罪。何より彼が許さない罪。
彼は少年に二刀の一つ・ヴォーパルソードを投げつける。
「何ですかこれは。」
受け取る少年。
「お前だけならばその俊足でここから離脱できる。生き延びてそれを二刀の剣士に渡して欲しい。」
「僕に一人情けなく生きろ、ですか?馬鹿馬鹿しい。第一」「おまえは、」
感情で反発する少年を彼は抑止する。
「罪を受け止め、真っ向から罰と相対する覚悟を持っている。信じる理由はそれだけだ。
ここは私が何とかする。お前は行け。」
彼は少年の事情など何も知らない。知ったのは罪人としてのほんの少しのシンパシー。
「僕が途中で力尽きたら?分が悪すぎますよ。」
少年は脅す。彼はもう一刀、フランヴェルジュを見せる。
「案ずるな、例えお前が力尽きても必ずこの二刀は再び集う。」
彼はエゴイストだった。最愛の人を失った世界ならば歪んでてもかまわない、そんな人間だった。
ロイドに確実にそれを渡すなら二刀とも渡すべきなのだ。彼が縋ったのは不確かなモノ。
もしかしたらこの剣と共にロイドと会えるのではという妄想に近い約束。
妻を失った彼にはロイドとこの剣しか残っていないのだ。
「…信じましたよ。最後に一つ、その人は貴方のなんですか?」
少年は彼の目を見据える。深い、とても深い瞳。およそ10年そこらでは到底至れないその瞳に
少年は彼の罪を感じ、そして信じた。もう許されない罪。何より彼が許さない罪。
ほんの一瞬、考えて彼は言う。
「情に弱く、理屈に疎く、どうしようもない奴だが。私の―――
「情に弱く、理屈に疎く、どうしようもない奴だが。私の―――
少年は行った。あの速さなら十分間に合うだろう。
彼は未だ深い闇にいる3人を見据える。
自身の覚悟は当に出来ている。唯一の気がかりはこの3人。
特にこの聖女、リアラに彼は申し訳なさを感じていた。私と出会わなければ、
私がサレの誘いをもっと強く断っていれば、少なくとも此処で彼女は死ななかった。
ふと、彼女のデイバックからこぼれている物を見やる。「料理大全」
…うまティーからミソおでんまであらゆる世界のあらゆる料理のレシピを収めた一冊。
なるほど、こんな物では私に見せる気も無いか。
もう一つのモノを見やる。どうやら支給品ではない、ただのボトル。しかし中に入っていたのは水ではない
「まさか…フルーツポンチか?」
この世界に基本的に用意された食料はない。手持ちの食料の奪い合いによってゲームを円滑化させるためだ。
しかし、主催者ミクトランは一つ誤った。徹底してそれを行うなら調味料から木々の果実まで
一つ残らず消し去るべきだったのだ。彼はあずかり知らぬことではあるが
彼の仲間、四大天使のユアンと先ほどの少年、ジェイの知り合い(本人が聞いたら
否定するだろうが)ミミーがこのゲームの穴を突いている。
そして彼の同行者であったリアラもまた、その一人であった。
自身の覚悟は当に出来ている。唯一の気がかりはこの3人。
特にこの聖女、リアラに彼は申し訳なさを感じていた。私と出会わなければ、
私がサレの誘いをもっと強く断っていれば、少なくとも此処で彼女は死ななかった。
ふと、彼女のデイバックからこぼれている物を見やる。「料理大全」
…うまティーからミソおでんまであらゆる世界のあらゆる料理のレシピを収めた一冊。
なるほど、こんな物では私に見せる気も無いか。
もう一つのモノを見やる。どうやら支給品ではない、ただのボトル。しかし中に入っていたのは水ではない
「まさか…フルーツポンチか?」
この世界に基本的に用意された食料はない。手持ちの食料の奪い合いによってゲームを円滑化させるためだ。
しかし、主催者ミクトランは一つ誤った。徹底してそれを行うなら調味料から木々の果実まで
一つ残らず消し去るべきだったのだ。彼はあずかり知らぬことではあるが
彼の仲間、四大天使のユアンと先ほどの少年、ジェイの知り合い(本人が聞いたら
否定するだろうが)ミミーがこのゲームの穴を突いている。
そして彼の同行者であったリアラもまた、その一人であった。
彼女が落ちている果物を見つけたのは唯の偶然。しかしフルーツポンチを、料理を作ろうと
思ったのは彼女の意思。再び彼と、彼女の英雄と出逢う為の勝手な約束。
出逢ったら、出逢えたら、2人で食べようという、少女らしいささやかな願い。
思ったのは彼女の意思。再び彼と、彼女の英雄と出逢う為の勝手な約束。
出逢ったら、出逢えたら、2人で食べようという、少女らしいささやかな願い。
彼はそのあずかり知らぬ事実をほぼ正確に推測した。頭が冴えるからではない。
愛した人がいたからだ。既に失った、罪の核。そして決意する。
愛するもの無くして世界に意味はないのだ。コレット無くしてロイドの世界は在り得ない。
「神子がいなくては、ロイドには貰い手が居なくなってしまうな。
……リアラ、お前の想い、半分だけ貰うぞ。」
愛した人がいたからだ。既に失った、罪の核。そして決意する。
愛するもの無くして世界に意味はないのだ。コレット無くしてロイドの世界は在り得ない。
「神子がいなくては、ロイドには貰い手が居なくなってしまうな。
……リアラ、お前の想い、半分だけ貰うぞ。」
フルーツポンチを半分口内に流し込む。それはただの果物の寄せ集めに近い。
追加食材なぞあろうはずもない、しかも半分。しかしフルーツポンチ。
底をつきかけていた魔力に灯がともる。弱弱しいが確かな火。
残りをリアラのデイバックに入れて、彼は剣士の剣、ダマスクスソードを取る。
追加食材なぞあろうはずもない、しかも半分。しかしフルーツポンチ。
底をつきかけていた魔力に灯がともる。弱弱しいが確かな火。
残りをリアラのデイバックに入れて、彼は剣士の剣、ダマスクスソードを取る。
彼本来の型ではない二刀流。彼は左手でダマスクスソードを構える。
地下の天井は既に砂礫を落としていた。彼は世界を見る。人間には至れないマナの
流れを見る。この城に亀裂をもたらした力の流れを、
この剣から滲む剣士が放った力の余韻の全てを支配する。
彼は初代デリス・カーラーンの守護者、ユグドラシル姉弟に次いで最高のマナの支配者。
ダマスクスソードを地面に突き立てる。準備は整った。
彼はフランヴェルジュを構え、天使の羽を散らす。迷いはない、足りない出力はその余韻で、
まだ足りないなら命すら使おう。 輝くは紅蓮の光。
地下の天井は既に砂礫を落としていた。彼は世界を見る。人間には至れないマナの
流れを見る。この城に亀裂をもたらした力の流れを、
この剣から滲む剣士が放った力の余韻の全てを支配する。
彼は初代デリス・カーラーンの守護者、ユグドラシル姉弟に次いで最高のマナの支配者。
ダマスクスソードを地面に突き立てる。準備は整った。
彼はフランヴェルジュを構え、天使の羽を散らす。迷いはない、足りない出力はその余韻で、
まだ足りないなら命すら使おう。 輝くは紅蓮の光。
「お前は生きろ、ロイド。私の自慢の息子よ。」
天井が、落ちた。
「聖なる鎖に抗って見せろッ!!シャイニング・バインド!!!!」
発生した障壁に落ちた瓦礫が塵と化す。一波だけなら他に手はあった。
しかし崩落するのは天井ではなく、城そのもの。続く第二波、三波、四波……
しかし崩落するのは天井ではなく、城そのもの。続く第二波、三波、四波……
全ての砂礫が地に伏せた時。地図からこの城は姿を消した。一人の天使と共に。
借り物の剣と彼の魔剣の十字架を残して。
借り物の剣と彼の魔剣の十字架を残して。
遂に二刀の魔剣は道を違えた。
しかし、魔剣はは必ず出会うだろう。オリジンの鼓動を目印に。十字架は立てられた。
しかし、魔剣はは必ず出会うだろう。オリジンの鼓動を目印に。十字架は立てられた。
約束は果たされる。
魔剣は 一つになる。
【クレス 生存確認】
状態:状態不明 瀕死 意識不明 顔の腫れ TP消費(中)
所持品:バクショウダケ 忍刀血桜
第一行動方針:不明
第二行動方針:ミント、アーチェ、モリスンと合流
第三行動方針:サレと合流
第四行動方針:仲間と最後まで生き残る
現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 跡
状態:状態不明 瀕死 意識不明 顔の腫れ TP消費(中)
所持品:バクショウダケ 忍刀血桜
第一行動方針:不明
第二行動方針:ミント、アーチェ、モリスンと合流
第三行動方針:サレと合流
第四行動方針:仲間と最後まで生き残る
現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 跡
【コレット 生存確認】
状態:状態不明 TP半分 発熱 大疲労
所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収)
第一行動方針:取り敢えず生き残る
第二行動方針:クレスを守る
第三行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流
現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 跡
状態:状態不明 TP半分 発熱 大疲労
所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収)
第一行動方針:取り敢えず生き残る
第二行動方針:クレスを守る
第三行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流
現在位置:E2のイーツ城地下拷問部屋 跡
【リアラ 生存確認】
状態:状態不明 休眠状態
所持品:ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ????
第一行動方針:不明
第二行動方針:カイルを探す
第三行動方針:避けられない戦いは戦う
現在位置:E2の城地下拷問部屋 跡
状態:状態不明 休眠状態
所持品:ロリポップ 料理大全 フルールポンチ1/2人分 ????
第一行動方針:不明
第二行動方針:カイルを探す
第三行動方針:避けられない戦いは戦う
現在位置:E2の城地下拷問部屋 跡
【ジェイ 生存確認】
状態:頸部に切傷 全身にあざ
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:城からの脱出
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:E2
状態:頸部に切傷 全身にあざ
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:城からの脱出
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:E2
【クラトス 死亡確認】
残り29名】
残り29名】
.*フランヴェルジュ・ダマスクスソードはE2の城地下拷問部屋跡に置いてあります