魔術師は笑う
「…ふう、間一髪と言ったところか」
城はバルバトスの攻撃により、大部分が崩落し、デミテルはなんとか脱出する事ができた。
そして背後を確認するとティトレイもそこにいた。
相変わらず、あんな大規模な崩落が起きたのも関わらず、腑抜けの顔は変わることはなかった。下手をしたらそのショックで自我を取り戻してしまうかもしれないとさえ思ったが―――
「…貴重な駒も失わずに済んだか」
しかし他に何人かの人間がいたのを確認していたが、その者達の姿は見えない。
「…この様子だと巻き込まれて死んだか……」
すると――背後の城一帯を凄まじいエネルギーが覆い尽くした。
膨れ上がるエネルギーは、城を粉塵へと変え、やがては城の存在すらもかき消した。
まるで、夢の中の様な光景。
信じられない。
しかし、その光は攻撃的というより、神々しさまで感じる―――
例えるならば、それは彼の主人、ダオスの放つエネルギーに似ていた。しかし彼はいない。
「(…となるとデリスの末裔か…?あるいは…)」
そうデミテルが考えているうちにその光の中を一人の少年が俊足の脚で掛け出してゆく。
彼では大きすぎる一本の剣を胸に抱えて。
この少年に因るものだろうか…いや、彼にはどうしてもあれだけの魔術のような技を使うようには見えない。
「何が…起きたんだ…?」
城はバルバトスの攻撃により、大部分が崩落し、デミテルはなんとか脱出する事ができた。
そして背後を確認するとティトレイもそこにいた。
相変わらず、あんな大規模な崩落が起きたのも関わらず、腑抜けの顔は変わることはなかった。下手をしたらそのショックで自我を取り戻してしまうかもしれないとさえ思ったが―――
「…貴重な駒も失わずに済んだか」
しかし他に何人かの人間がいたのを確認していたが、その者達の姿は見えない。
「…この様子だと巻き込まれて死んだか……」
すると――背後の城一帯を凄まじいエネルギーが覆い尽くした。
膨れ上がるエネルギーは、城を粉塵へと変え、やがては城の存在すらもかき消した。
まるで、夢の中の様な光景。
信じられない。
しかし、その光は攻撃的というより、神々しさまで感じる―――
例えるならば、それは彼の主人、ダオスの放つエネルギーに似ていた。しかし彼はいない。
「(…となるとデリスの末裔か…?あるいは…)」
そうデミテルが考えているうちにその光の中を一人の少年が俊足の脚で掛け出してゆく。
彼では大きすぎる一本の剣を胸に抱えて。
この少年に因るものだろうか…いや、彼にはどうしてもあれだけの魔術のような技を使うようには見えない。
「何が…起きたんだ…?」
彼は本来ならば魔術の研究者である。未知のものに対しての探究心が彼を揺さぶり、デミテルはそのエネルギーに興味を示した。
「…ついてこい、ティトレイ=クロウ」
指をくいっとティトレイに対してこちらに招くように曲げ、デミテルは先程脱出した城に向かった。
「…ついてこい、ティトレイ=クロウ」
指をくいっとティトレイに対してこちらに招くように曲げ、デミテルは先程脱出した城に向かった。
「…どういうことだ…」
そこには、先程見かけた沢山の人々が倒れる姿。
舞い散る粉塵。
異様に埃臭い。
青鬼の様な大柄の男、黒髪の細身の青年、そして少し離れた所――かつては城の地下だったのだろう、地下の天井が吹っ飛んだがために地面が四角く掘られたように存在する数メートル下の部屋の中にいた、赤髪の長身の男はどうやら既に息が絶えていた。
「(この三人が戦い、その末に城が崩れたのか?いや…不自然過ぎる)」
もう少し視点を奥に絞るとどうやら息のありそうな者も居る。
地下の部屋に少女二人、そして――――
「クレス=アルベイン…!」
デミテルはクレスを知っていた。自分がハーメルの町を滅ぼしたことに対して怒りを覚え、刃を向けてきたのだ。
そして―――
そこには、先程見かけた沢山の人々が倒れる姿。
舞い散る粉塵。
異様に埃臭い。
青鬼の様な大柄の男、黒髪の細身の青年、そして少し離れた所――かつては城の地下だったのだろう、地下の天井が吹っ飛んだがために地面が四角く掘られたように存在する数メートル下の部屋の中にいた、赤髪の長身の男はどうやら既に息が絶えていた。
「(この三人が戦い、その末に城が崩れたのか?いや…不自然過ぎる)」
もう少し視点を奥に絞るとどうやら息のありそうな者も居る。
地下の部屋に少女二人、そして――――
「クレス=アルベイン…!」
デミテルはクレスを知っていた。自分がハーメルの町を滅ぼしたことに対して怒りを覚え、刃を向けてきたのだ。
そして―――
「………ふふふ」
デミテルは笑った。
本来ならば憎い事この上ない筈なのに関わらず。
いや、笑わずにいれるだろうか。
かつては自分を殺した者が今、目の前にこんなにも無防備に存在するのだ。
デミテルは笑った。
本来ならば憎い事この上ない筈なのに関わらず。
いや、笑わずにいれるだろうか。
かつては自分を殺した者が今、目の前にこんなにも無防備に存在するのだ。
デミテルはそこから三人がいる地下室だった場所に飛び降りる。
そしてクレスに近づいた。
確かに死んだ様にも見えるが、確かに息がある。
しかしクレスの顔は腫れ上がっており、おまけにどうやら全身にも決して軽いとはいえないダメージを負っており、しかも気絶までしているのだ。
そしてクレスに近づいた。
確かに死んだ様にも見えるが、確かに息がある。
しかしクレスの顔は腫れ上がっており、おまけにどうやら全身にも決して軽いとはいえないダメージを負っており、しかも気絶までしているのだ。
デミテルは己の幸運に感謝した。
すぐさま殺そうかとも思ったが―――
「いや…」
デミテルは魔法を放とうとして翳した手を下ろした。
こいつは、ダオスにも因縁がある。
使い方によってはいい駒になるのだ。
激情に流されて無闇に殺してしまうのは勿体無い。
しかしゲームの参加人数が減ってきた今、こいつは私への仇を取るために再び刃を向ける日は近いだろう。回復をしたら厄介だ。
そうしてデミテルの脳裏にある考えがよぎった。
すぐさま殺そうかとも思ったが―――
「いや…」
デミテルは魔法を放とうとして翳した手を下ろした。
こいつは、ダオスにも因縁がある。
使い方によってはいい駒になるのだ。
激情に流されて無闇に殺してしまうのは勿体無い。
しかしゲームの参加人数が減ってきた今、こいつは私への仇を取るために再び刃を向ける日は近いだろう。回復をしたら厄介だ。
そうしてデミテルの脳裏にある考えがよぎった。
―――こいつも操る事はできないか。
しかし元から人形同然となっているティトレイの様にはいかない。どうすれば―――
まず始めにデミテルの頭に浮かんだのはクレスの頭の一部を破壊するということだった。
脳の下部の中心部には海馬という記憶を司る器官が存在する。
それに向けて頭の外側から放射状に弱い魔力を当てる。
そうすれば、弱い魔力自体は他の脳に損壊を与えない。
だが放射状に海馬に当てる事で、あらゆる角度で放たれた魔力が海馬の上で折り重なって収束し、殺傷力を持ち海馬のみを破壊することができるのだ。
記憶を消せばあとは白痴同様となったクレスに上手く都合のよいことを吹き込めば操るのは容易い。
脳の下部の中心部には海馬という記憶を司る器官が存在する。
それに向けて頭の外側から放射状に弱い魔力を当てる。
そうすれば、弱い魔力自体は他の脳に損壊を与えない。
だが放射状に海馬に当てる事で、あらゆる角度で放たれた魔力が海馬の上で折り重なって収束し、殺傷力を持ち海馬のみを破壊することができるのだ。
記憶を消せばあとは白痴同様となったクレスに上手く都合のよいことを吹き込めば操るのは容易い。
しかし、これにはデメリットもある。
現在重症を負っているクレスがこの荒療治に耐えるだけの体力があるか怪しいのだ。
「他になにか方法はないのか…」
ふとデミテルはクレスの支給品袋に眼が行った。何となくその袋を漁ってみる。
「これは…」
デミテルが手にしたのは―――
バクショウダケ。
本来ならば摂取したものを爆笑の渦に飲み込む非常に馬鹿馬鹿しいキノコだが…
デミテルの口に笑みが宿った。
「ふふ、天は何処までも私に味方するようだ」
現在重症を負っているクレスがこの荒療治に耐えるだけの体力があるか怪しいのだ。
「他になにか方法はないのか…」
ふとデミテルはクレスの支給品袋に眼が行った。何となくその袋を漁ってみる。
「これは…」
デミテルが手にしたのは―――
バクショウダケ。
本来ならば摂取したものを爆笑の渦に飲み込む非常に馬鹿馬鹿しいキノコだが…
デミテルの口に笑みが宿った。
「ふふ、天は何処までも私に味方するようだ」
バクショウダケ。それはすなわち神経系に作用する毒。
デミテルの研究者としての本領発揮だった。
デミテルはバクショウダケに魔力を注いだ。
みるみるうちにそれは溶けて色を変えてゆく。なんとデミテルはバクショウダケの毒の成分に振動と衝撃を与えることで、成分の配列を繋ぎ変えてバクショウダケの毒の性質を変えているのだ。
こんなことをできるのは、このゲームではおそらく天才のハロルド位だろう。
デミテルの研究者としての本領発揮だった。
デミテルはバクショウダケに魔力を注いだ。
みるみるうちにそれは溶けて色を変えてゆく。なんとデミテルはバクショウダケの毒の成分に振動と衝撃を与えることで、成分の配列を繋ぎ変えてバクショウダケの毒の性質を変えているのだ。
こんなことをできるのは、このゲームではおそらく天才のハロルド位だろう。
「…これなら……」
デミテルの手にはどろりとした緑のバクショウダケだったものがあった。
そう、デミテルはこれが神経系の毒なのを利用し、彼の脳の神経回路を変えてしまうものへと変化させたのだ。
彼の、脳の一部を麻痺させる。
彼の下らない正義感やら美学などを完全に排除させるのだ。
ティトレイと同じように。
これを口にすれば…
「彼が私の言うことを聞くようになるのは簡単だ」
デミテルの手にはどろりとした緑のバクショウダケだったものがあった。
そう、デミテルはこれが神経系の毒なのを利用し、彼の脳の神経回路を変えてしまうものへと変化させたのだ。
彼の、脳の一部を麻痺させる。
彼の下らない正義感やら美学などを完全に排除させるのだ。
ティトレイと同じように。
これを口にすれば…
「彼が私の言うことを聞くようになるのは簡単だ」
デミテルは気絶するクレスの口を無理矢理にこじ開け、毒を流し込む。
そして顎を持ち上げて嚥下させた。
ごくり。
クレスの喉が反射的にそれを飲み込む。
その反射が身の破滅に招くとも知らず…
そして顎を持ち上げて嚥下させた。
ごくり。
クレスの喉が反射的にそれを飲み込む。
その反射が身の破滅に招くとも知らず…
「ティトレイ=クロウ」
デミテルは背後にいたティトレイに呼びかけた。
「この男を運んでいけ。
…お前の新しい仲間だ」
ティトレイは表情を変えずにクレスを肩に背負う。
デミテルは邪悪な笑みを浮かべる。
かつての敵を自分の手で転がす日が来ようとは。少しだけ気分が高揚した。
「…とりあえず今はここを一刻も早く去るか」
少女達に止めを刺そうかとも思ったが、逆にここは生かせておいて、目を覚ましたかつての仲間だったクレスに刃を向けるのも一興と思い、それはしなかった。
デミテルとティトレイは廃墟を後にする。
後に、またデミテルの忠実な部下にあるであろうかつての勇者を抱えて。
デミテルは背後にいたティトレイに呼びかけた。
「この男を運んでいけ。
…お前の新しい仲間だ」
ティトレイは表情を変えずにクレスを肩に背負う。
デミテルは邪悪な笑みを浮かべる。
かつての敵を自分の手で転がす日が来ようとは。少しだけ気分が高揚した。
「…とりあえず今はここを一刻も早く去るか」
少女達に止めを刺そうかとも思ったが、逆にここは生かせておいて、目を覚ましたかつての仲間だったクレスに刃を向けるのも一興と思い、それはしなかった。
デミテルとティトレイは廃墟を後にする。
後に、またデミテルの忠実な部下にあるであろうかつての勇者を抱えて。
【デミテル 生存確認】
状態:TP1/4消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイ、クレスを操る
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
状態:TP1/4消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイ、クレスを操る
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失 全身の痛み、軽いやけど(回復中) TP中消費
所持品:メンタルバングル バトルブック
第一行動方針:かえりたい
第二行動方針:デミテルに従う
所持品:メンタルバングル バトルブック
第一行動方針:かえりたい
第二行動方針:デミテルに従う
【クレス 生存確認】
状態:瀕死 意識不明 顔の腫れ TP消費(中)
所持品:ダマスクスソード 忍刀血桜
第一行動方針:不明
状態:瀕死 意識不明 顔の腫れ TP消費(中)
所持品:ダマスクスソード 忍刀血桜
第一行動方針:不明
現在地:E2の城から北上