north or south?
「う~む、どうしたことか…………」
モリスンは、例の法術書の目の前にして腕組みをしていた。
発端は、ひと時の休息を取っていた際にふと目に入ったそれを再び読み始めたことだった。
元々、研究者でもあるモリスンは、自分の知らない術式の書かれたそれに次第に興味を持ち始め、いつしか没頭してしまっていた。
だが、読めはするものの理論が完全には理解できなかったのだ。
元々モリスンのいた時代にあった魔術で消費していたエネルギーはマナ。
それに対し、法術はマナに代わって、神の加護、大地の力など称される漠然としたエネルギーかも分からないものを使うらしい。
流石のモリスンでも自分の死後に生まれ、研究された分野を数十分で理解できるわけがない。
だが、そんなモリスンでも分かったことが一つあった。
モリスンは、例の法術書の目の前にして腕組みをしていた。
発端は、ひと時の休息を取っていた際にふと目に入ったそれを再び読み始めたことだった。
元々、研究者でもあるモリスンは、自分の知らない術式の書かれたそれに次第に興味を持ち始め、いつしか没頭してしまっていた。
だが、読めはするものの理論が完全には理解できなかったのだ。
元々モリスンのいた時代にあった魔術で消費していたエネルギーはマナ。
それに対し、法術はマナに代わって、神の加護、大地の力など称される漠然としたエネルギーかも分からないものを使うらしい。
流石のモリスンでも自分の死後に生まれ、研究された分野を数十分で理解できるわけがない。
だが、そんなモリスンでも分かったことが一つあった。
それは、魔術が地水火風といった自然現象に局部的に変異を与えるのに対し、この法術という術は人体組織に直接何らかの影響を及ぼすことが主である術だということ。
具体的には、体の再生機構の活性化や毒浄化の促進、敵に対しては逆に体を脆くしたり、詠唱する口を塞いだり……。
つまりは、法術が味方の支援に向いているということだった。
具体的には、体の再生機構の活性化や毒浄化の促進、敵に対しては逆に体を脆くしたり、詠唱する口を塞いだり……。
つまりは、法術が味方の支援に向いているということだった。
「……この“法術”とやらが使えるようになれば、自分で自分を治療できるようにもなるのか……」
それは、ダオス討伐を掲げるモリスンにとっては、是非とも修得したいものだった。
いくらモリスンとはいえ、ダオスを無傷で倒せる自信などない。
だからこそ、互いに体力を消費する長期戦を有利に進める為にも支援系の術は充実させておきたかった。
「とりあえずは、この“ふぁーすとえいど”なる基本術の修得を目指すとするか…………」
いつしかモリスンは、休息地点にどっかりと腰を据えており、書物の冒頭にあった法術の基本となる回復術の修得が第一優先事項となっていた…………。
それは、ダオス討伐を掲げるモリスンにとっては、是非とも修得したいものだった。
いくらモリスンとはいえ、ダオスを無傷で倒せる自信などない。
だからこそ、互いに体力を消費する長期戦を有利に進める為にも支援系の術は充実させておきたかった。
「とりあえずは、この“ふぁーすとえいど”なる基本術の修得を目指すとするか…………」
いつしかモリスンは、休息地点にどっかりと腰を据えており、書物の冒頭にあった法術の基本となる回復術の修得が第一優先事項となっていた…………。
そして、そんな修得に励むモリスンの耳にも、演説をする少女の声は聞えてきた。
モリスンは、書物から目を離し、その演説を傾聴する事とする。
『皆に聞いて欲しい事があって、C3の村から喋っているの!――』
自分の居場所を言ってしまうとは……殺されるかもしれないというのに、とモリスンは呆れる。
が、その後も演説を聞いている内に、演説をしている少女が真にこのゲームを憎んでいるということが汲み取れた。
自分も、ゲーム自体には嫌悪感を抱いていたが、少しでも「ダオスを倒すまでは続いてほしい」と思っている自分とは大違いだ。
しかも、所々咳き込むような声が聞える。それと同時に何かが吐き出される音も…………。
「血を吐いている……のか?」
苦しそうな咳き込みと、その間から聞える必死の主張。
そこからは、なにか追い詰められているのでは、と感じられた。
では、何に追い詰められているのか? それは言うまでもない……自らの死であろう。
そして、苦しそうなまま声のまま、少女の演説は終わった。
モリスンは、書物から目を離し、その演説を傾聴する事とする。
『皆に聞いて欲しい事があって、C3の村から喋っているの!――』
自分の居場所を言ってしまうとは……殺されるかもしれないというのに、とモリスンは呆れる。
が、その後も演説を聞いている内に、演説をしている少女が真にこのゲームを憎んでいるということが汲み取れた。
自分も、ゲーム自体には嫌悪感を抱いていたが、少しでも「ダオスを倒すまでは続いてほしい」と思っている自分とは大違いだ。
しかも、所々咳き込むような声が聞える。それと同時に何かが吐き出される音も…………。
「血を吐いている……のか?」
苦しそうな咳き込みと、その間から聞える必死の主張。
そこからは、なにか追い詰められているのでは、と感じられた。
では、何に追い詰められているのか? それは言うまでもない……自らの死であろう。
そして、苦しそうなまま声のまま、少女の演説は終わった。
「……………………」
モリスンは考えた。
自分にはダオスを倒すという使命がある。
それを放って、ここから脱出に協力していていいのだろうか?
しかし、脱出云々の以前にあの少女は苦しんでいた。死にも至りかねない苦しみ方で。
現在地は地点D3の平原。少女がいると言っていたC3地点の村はすぐそこだ。
それを分かっていて見殺しに出来るのか?
見殺し? ……いや、行ったところで自分に何ができるだろうか?
何も出来ないなら、わざわざゲームに乗った参加者も集まりかねない地点になど向かわない方が得策だ。
自分はダオスを倒すまで、無駄に戦って体力は消費したくはない。
致し方がないのだ。ダオスを討つのが我が使命なのだから……。
モリスンは考えた。
自分にはダオスを倒すという使命がある。
それを放って、ここから脱出に協力していていいのだろうか?
しかし、脱出云々の以前にあの少女は苦しんでいた。死にも至りかねない苦しみ方で。
現在地は地点D3の平原。少女がいると言っていたC3地点の村はすぐそこだ。
それを分かっていて見殺しに出来るのか?
見殺し? ……いや、行ったところで自分に何ができるだろうか?
何も出来ないなら、わざわざゲームに乗った参加者も集まりかねない地点になど向かわない方が得策だ。
自分はダオスを倒すまで、無駄に戦って体力は消費したくはない。
致し方がないのだ。ダオスを討つのが我が使命なのだから……。
モリスンは、苦渋の決断で村へ向かわずに逆に正反対の南方に折り返そうと、出発の準備を始めた。
しかし、そんな彼の手が、“それ”に触れた。
法術書。それは、回復術から解毒術まで様々な治癒術が載っている書物。
まだ、修得はしていないが、もしかしたらもしかするかもしれない……。
そうすれば、あの苦しんでいた少女も…………。
彼の脳裏では、学者らしからぬ確実性のない可能性が浮かんでいた。
そしてモリスンは立ち上がり……
「よし……出発するか……」
彼は歩みだした。
しかし、そんな彼の手が、“それ”に触れた。
法術書。それは、回復術から解毒術まで様々な治癒術が載っている書物。
まだ、修得はしていないが、もしかしたらもしかするかもしれない……。
そうすれば、あの苦しんでいた少女も…………。
彼の脳裏では、学者らしからぬ確実性のない可能性が浮かんでいた。
そしてモリスンは立ち上がり……
「よし……出発するか……」
彼は歩みだした。
――北方へ。
――C3村のある北方へ。
――C3村のある北方へ。
この時の彼は知らない。
この選択こそが、彼の宿命との邂逅となることを…………。
この選択こそが、彼の宿命との邂逅となることを…………。
【エドワード・D・モリスン 生存確認】
状態:TP中消費 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷(五割は回復)
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女を救う
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:D3平原→C3村へ
状態:TP中消費 全身に裂傷とアザ 背中と左上腕に刺し傷(五割は回復)
所持品:魔杖ケイオスハート 割れたリバースドール 煙玉(残り二つ) クナイ(一枚) 法術に関する辞書
基本行動方針:ダオス討伐
第一行動方針:演説少女を救う
第二行動方針:法術取得(まずはファーストエイドから?)
第三行動方針:ミクトラン討伐
現在位置:D3平原→C3村へ