yes my lady
古びた教会の扉を、もたつきながらもリオンは開いた。
ずいぶんと長い間使われていない、埃のたった廊下を、彼は一人で歩いた。
ずいぶんと長い間使われていない、埃のたった廊下を、彼は一人で歩いた。
ごぽん、とザックの中から音がした。
マリアン、と彼は聞こえないような声で呟く。
この声に答えてくれる人は、もういない。
マリアン、と彼は聞こえないような声で呟く。
この声に答えてくれる人は、もういない。
廊下にある白っぽいドアの近くに、二、三人がけのソファーがあるのを彼は見つけた。
埃はきっと、払えば問題ないだろう。
彼はソファーの下にザックを置くと、真っ赤に染まっているボトルを中から取り出した。
「……マリアン」
そう呟くと、彼は傍らにソレを置いてまたザックを開き、中から参加者名簿を取り出す。
埃はきっと、払えば問題ないだろう。
彼はソファーの下にザックを置くと、真っ赤に染まっているボトルを中から取り出した。
「……マリアン」
そう呟くと、彼は傍らにソレを置いてまたザックを開き、中から参加者名簿を取り出す。
『ゲーム参加者を殺す』――これが、ミクトランからの命令だった。
けれども、自分は生き延びなければ行けない。
要するに、生き延びてゲーム参加者を殺し、マリアンを生き返らせるのが彼のすることだ。
そう、彼女は蘇り、元の世界に戻り、幸せに生きなければいけないのだ。
要するに、生き延びてゲーム参加者を殺し、マリアンを生き返らせるのが彼のすることだ。
そう、彼女は蘇り、元の世界に戻り、幸せに生きなければいけないのだ。
実際、どこに誰がいるのかはわからないが、結局全員殺さなければいけないのは事実だ。
ここに来る際にも遠くから様々な戦いの音が聞こえたが、教会につくということで
自分は頭がいっぱいだった。
ここに来る際にも遠くから様々な戦いの音が聞こえたが、教会につくということで
自分は頭がいっぱいだった。
参加者名簿をぺらぺらとめくると、リオンは其処に――仮面をかぶった少年――が
いるのに気がついた。
黒い髪。紫色の瞳。伏せられた目。
どう見ても自分だ、と彼は思った。いや、もしくはヒューゴの隠し子かもしれない。
けれど、仮面をかぶっているのにはなぜか事情があるのだと彼は察した。
会ってみる価値はあるのかもしれない。
いるのに気がついた。
黒い髪。紫色の瞳。伏せられた目。
どう見ても自分だ、と彼は思った。いや、もしくはヒューゴの隠し子かもしれない。
けれど、仮面をかぶっているのにはなぜか事情があるのだと彼は察した。
会ってみる価値はあるのかもしれない。
――いや。
彼は瞳を伏せ、こめかみを押さえた。
もしかしたら彼はマーダーになっているかもしれない。
さらにこれは可能性だが、全く関係のない他人なのかもしれない――
彼は瞳を伏せ、こめかみを押さえた。
もしかしたら彼はマーダーになっているかもしれない。
さらにこれは可能性だが、全く関係のない他人なのかもしれない――
『リオン=マグナス……言い忘れていたことがある』
「……っ」
「……っ」
突然の声に、リオンは一瞬体をびくりとふるわせた。
けれどもすぐに冷静な表情になる。
彼女を殺したのが、この男だとしても。
けれどもすぐに冷静な表情になる。
彼女を殺したのが、この男だとしても。
『参加者のなかで……仮面をかぶった、ジューダスと言う男がいるだろう?
丁度今、お前もそのページをめくっていて、なにか考え事をしていたはずだ』
「……」
丁度今、お前もそのページをめくっていて、なにか考え事をしていたはずだ』
「……」
彼は無意識に名簿を閉じる。
俯いて、眉間に皺を寄せる。
何かに、苦悶する。
俯いて、眉間に皺を寄せる。
何かに、苦悶する。
『その男は……十と六の年だ。そして、容姿もお前にそっくりだ。
……この言葉が何を指しているのか、わかるな?』
「!」
……この言葉が何を指しているのか、わかるな?』
「!」
頭のいいお前のことだ、とまた、心の中で声がした。
『その男に会ってみろ。戦うも自由、組むも自由、殺すも自由。
――そして、殺されるも自由だ。お前が楽しませてくれるのを待っている』
――そして、殺されるも自由だ。お前が楽しませてくれるのを待っている』
声は其処で途切れた。
傍らのボトルの中から、また
傍らのボトルの中から、また
ぼこん
と音がした。
彼は名簿をもう一度開く。
ミクトランは仮面の男がどこに居るのかは説明していなかった。
けれど、先ほど自分の思った通り、会う分には価値がある。
彼は名簿をもう一度開く。
ミクトランは仮面の男がどこに居るのかは説明していなかった。
けれど、先ほど自分の思った通り、会う分には価値がある。
ぼこり。
また、音がした。
「マリアン……嘆いているのか? 僕がこうなったことを?」
音のようなそれは、声にも聞こえて。
また、音がした。
「マリアン……嘆いているのか? 僕がこうなったことを?」
音のようなそれは、声にも聞こえて。
「嘆かなくてもいいさ。……きっとまた、平和に暮らせるのだから」
信じている。
また平和な日々が始まり、彼女が笑顔で暮らせることを。
信じている。
彼女が過去の人になってしまわないことを。
また平和な日々が始まり、彼女が笑顔で暮らせることを。
信じている。
彼女が過去の人になってしまわないことを。
――だから、ミクトランの言っていた『ジューダス』に会おう。
ふとリオンは、以前ダリルシェイドの町で聞いたミュージシャンの歌を
思い出した。
「うざい」
あのときはそう思ったが、聞いていれば印象的なフレーズが残っている。
思い出した。
「うざい」
あのときはそう思ったが、聞いていれば印象的なフレーズが残っている。
彼は心に刻まれたリズムを、思い起こした。
今の自分と、彼女にふさわしい歌なのだと思いながら。
今の自分と、彼女にふさわしい歌なのだと思いながら。
――あのね、君がすごく嬉しい顔をしたら微笑んであげたい――
――君にいつも大きなぬくもりと優しさを全部あげたい――
――今の僕の手には誇れるものないけど ずっとそばにいたい――
――そして僕に出来る何よりも大切な言葉は『あいしてる』――
独り言なのか幻聴の所為なのか、彼は言葉を呟く。
彼女の言葉に、答えるかのように。
彼女の言葉に、答えるかのように。
「……yes my lady」
【リオン 生存確認】
所持品:シャルティエ ディムロス 手榴弾×1 簡易レーダー マリアンの肉片(ペットボトル入り)
状態:全身に軽い火傷 全身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 疲労 極めて冷静 眠りかけ
第一行動方針:マリアンを生き返らせる
第二行動方針:ジューダスと言う男に会う
第三行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:G7の教会・廊下のソファー
所持品:シャルティエ ディムロス 手榴弾×1 簡易レーダー マリアンの肉片(ペットボトル入り)
状態:全身に軽い火傷 全身に軽い凍傷 腹部に痛み 右腕に刀傷 疲労 極めて冷静 眠りかけ
第一行動方針:マリアンを生き返らせる
第二行動方針:ジューダスと言う男に会う
第三行動方針:ゲーム参加者の殺害
現在位置:G7の教会・廊下のソファー