悪夢の中心で慟哭(な)いた少女
お願い、これが夢なら覚めて。
シャーリィは確かに、そう発音したつもりだった。
「WRRRRRRR…!」
だが、意に反してその声は、醜く潰れた唸り声に過ぎなかった。もはやシャーリィの声帯は、人間のものとしては欠陥品も同然だった。
森の中の小さな泉のほとり。ほんの少しだけ眠ったシャーリィは、一縷の望みをかけて、仮眠後の顔をばしゃばしゃと洗ってみた。
時刻は、それほど経ってはいない。太陽の位置から察するに、おそらく正午の数時間前というところだろう。
シャーリィの手によって生み出された泉の波紋は、やがて静まった。鏡のごとくまったき水面が戻るのに、さほどの時間はかからなかった。
恐る恐る泉を覗き込むシャーリィ。そこにあったのは、のっぺりとした棘のないサボテンに、いくつかの橙色の突起のへばりつく、醜い顔だった。
シャーリィは改めて絶望する反面、ああやっぱり、というような、どこか諦念の混じった複雑な気持ちに駆られた。
今まであったことは、悪夢ではなかった。自らが、こんな醜い怪物の姿を得てしまったのは、厳然たる真実なのだ、と。
水をすくった手も、あちこちが節くれだち怪物のそれになっている。足も同じく。シャーリィはそれを見て、遺跡船の魔物の一種、ギガントを思い出していた。
腹部を見れば、緑色の液体が傷口を覆い、ぶくぶくと泡立っている。この傷口の痛みも、もうだいぶ鈍くなってきた。
凄まじい勢いで再生する自身の傷口を見ながら、素直には喜べない複雑な気持ちで、シャーリィは空を見上げた。
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
頭の形も変形し、おまけに水の民の証である金髪も、もはやぼさぼさの体毛の一部に過ぎない。
ゆえに意味を成さなくなってしまった、右手の花のカチューシャ。シャーリィはそれを焦点の定まらぬ目で見ながら、物思いに沈んだ。
この花のカチューシャは、自らが兄と慕う銀髪の少年、セネル・クーリッジが、買い与えてくれたもの。
大陸にあった、ある水の民の里を攻めたクルザンド軍から逃れ、クルザンドの港町でマリントルーパーとして働き始めたセネルが、その初任給で買ったものだ。
セネルもそのとき奮発して上質のものを買ってくれたのか、あれから3年以上経っても、このカチューシャは傷む素振りを見せない。
望まなかったとは言え、今まで経験した遺跡船での戦いや、そして旅の中で、多くの思い出を作ってきた。その思い出は、鮮明に焼きついている。
怖い思いも何度もしている。あともう少しで取り返しのつかない罪を犯してしまうところまで思い詰め、挫けそうになったこともある。
それでも、仲間達と、仲間達との絆で紡いだ、あの遺跡船の旅は消えない。消すことなど、出来ない。
だがその遺跡船の旅の日々も、今現在の圧倒的な現実の前には、あえなく砕けるガラス細工も同然。思い出は、力には変えられないのだ。
シャーリィの視界が、曇った。水の中で目を見開いたときのように、滲んだ。世界が、ぼやけた。
シャーリィは確かに、そう発音したつもりだった。
「WRRRRRRR…!」
だが、意に反してその声は、醜く潰れた唸り声に過ぎなかった。もはやシャーリィの声帯は、人間のものとしては欠陥品も同然だった。
森の中の小さな泉のほとり。ほんの少しだけ眠ったシャーリィは、一縷の望みをかけて、仮眠後の顔をばしゃばしゃと洗ってみた。
時刻は、それほど経ってはいない。太陽の位置から察するに、おそらく正午の数時間前というところだろう。
シャーリィの手によって生み出された泉の波紋は、やがて静まった。鏡のごとくまったき水面が戻るのに、さほどの時間はかからなかった。
恐る恐る泉を覗き込むシャーリィ。そこにあったのは、のっぺりとした棘のないサボテンに、いくつかの橙色の突起のへばりつく、醜い顔だった。
シャーリィは改めて絶望する反面、ああやっぱり、というような、どこか諦念の混じった複雑な気持ちに駆られた。
今まであったことは、悪夢ではなかった。自らが、こんな醜い怪物の姿を得てしまったのは、厳然たる真実なのだ、と。
水をすくった手も、あちこちが節くれだち怪物のそれになっている。足も同じく。シャーリィはそれを見て、遺跡船の魔物の一種、ギガントを思い出していた。
腹部を見れば、緑色の液体が傷口を覆い、ぶくぶくと泡立っている。この傷口の痛みも、もうだいぶ鈍くなってきた。
凄まじい勢いで再生する自身の傷口を見ながら、素直には喜べない複雑な気持ちで、シャーリィは空を見上げた。
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
頭の形も変形し、おまけに水の民の証である金髪も、もはやぼさぼさの体毛の一部に過ぎない。
ゆえに意味を成さなくなってしまった、右手の花のカチューシャ。シャーリィはそれを焦点の定まらぬ目で見ながら、物思いに沈んだ。
この花のカチューシャは、自らが兄と慕う銀髪の少年、セネル・クーリッジが、買い与えてくれたもの。
大陸にあった、ある水の民の里を攻めたクルザンド軍から逃れ、クルザンドの港町でマリントルーパーとして働き始めたセネルが、その初任給で買ったものだ。
セネルもそのとき奮発して上質のものを買ってくれたのか、あれから3年以上経っても、このカチューシャは傷む素振りを見せない。
望まなかったとは言え、今まで経験した遺跡船での戦いや、そして旅の中で、多くの思い出を作ってきた。その思い出は、鮮明に焼きついている。
怖い思いも何度もしている。あともう少しで取り返しのつかない罪を犯してしまうところまで思い詰め、挫けそうになったこともある。
それでも、仲間達と、仲間達との絆で紡いだ、あの遺跡船の旅は消えない。消すことなど、出来ない。
だがその遺跡船の旅の日々も、今現在の圧倒的な現実の前には、あえなく砕けるガラス細工も同然。思い出は、力には変えられないのだ。
シャーリィの視界が、曇った。水の中で目を見開いたときのように、滲んだ。世界が、ぼやけた。
「OOORWROOO…」
涙。シャーリィは涙を流していた。泉のほとりにたたずむ一体のエクスフィギュアの頭部の突起から、涙が流れていた。
こんな理不尽な殺し合いを強要された悲しみ。例え悪人とは言え、1人の人間を残虐に殺めてしまった悲しみ。
そして、自身が人間とは似つかないような、魔物の姿に転じてしまった悲しみ。
圧倒的な狂気の荒海の中から、辛うじて頭部を覗かせたシャーリィの理性は、悲しみに打ち震えていた。
「WOOOORRRROOOHHHHH!!!!」
人間の声帯を失ってしまった、一体のエクスフィギュアには精一杯の慟哭。本当はもっと、人間にあるべき喉を打ち震わせ、身をよじって泣き叫びたかった。
だが、もはやシャーリィにとって、そんな望みは、ただ詮無いないものねだりに過ぎなかった。
「WWWWWWW…!」
くしけずる事も出来ないような体毛しか残っていない、ただのっぺりした頭。シャーリィはその頭を抱えながら、自問自答をそれでも止められなかった。
この姿を見たら、わたしを待ってくれているお兄ちゃんはどう思うだろう。
この島で命を落としたマウリッツさんは? モーゼスさんは?
自らの信念を曲げられず、光跡翼で非業の死を遂げた滄我の戦士、ワルターさんは?
クルザンド軍の囮になり、そして最期には滄我砲を阻み命を散らせたお姉ちゃんは?
ガドリアの騎士の凶刃を庇って逝った友達、フェニモールは?
多くの人が死を受け入れてでまで守ってくれたわたしは、今何をしている?
こんな醜い化け物に成り下がって、こんな涙と言うのもおこがましいギトギトの粘液を目から垂れ流して、こんなところで一人苦しんで…
無力だ。無力過ぎる。
「…GRRROUWWWW…!」
どくん。シャーリィの胸の奥で、異形の心臓が跳ねる。
どくん。腹の奥底から湧き上がる。熱くてどろどろしたものが、吹き上がってくる。
どくん。体中が熱くなってくる。全身が熱病にかかったように火照り、ぶるぶると震えだす。
シャーリィの胸にはまった青い球体が、鼓動するように光り輝く。シャーリィの体内から湧き出るそれを、吸い上げる。
涙。シャーリィは涙を流していた。泉のほとりにたたずむ一体のエクスフィギュアの頭部の突起から、涙が流れていた。
こんな理不尽な殺し合いを強要された悲しみ。例え悪人とは言え、1人の人間を残虐に殺めてしまった悲しみ。
そして、自身が人間とは似つかないような、魔物の姿に転じてしまった悲しみ。
圧倒的な狂気の荒海の中から、辛うじて頭部を覗かせたシャーリィの理性は、悲しみに打ち震えていた。
「WOOOORRRROOOHHHHH!!!!」
人間の声帯を失ってしまった、一体のエクスフィギュアには精一杯の慟哭。本当はもっと、人間にあるべき喉を打ち震わせ、身をよじって泣き叫びたかった。
だが、もはやシャーリィにとって、そんな望みは、ただ詮無いないものねだりに過ぎなかった。
「WWWWWWW…!」
くしけずる事も出来ないような体毛しか残っていない、ただのっぺりした頭。シャーリィはその頭を抱えながら、自問自答をそれでも止められなかった。
この姿を見たら、わたしを待ってくれているお兄ちゃんはどう思うだろう。
この島で命を落としたマウリッツさんは? モーゼスさんは?
自らの信念を曲げられず、光跡翼で非業の死を遂げた滄我の戦士、ワルターさんは?
クルザンド軍の囮になり、そして最期には滄我砲を阻み命を散らせたお姉ちゃんは?
ガドリアの騎士の凶刃を庇って逝った友達、フェニモールは?
多くの人が死を受け入れてでまで守ってくれたわたしは、今何をしている?
こんな醜い化け物に成り下がって、こんな涙と言うのもおこがましいギトギトの粘液を目から垂れ流して、こんなところで一人苦しんで…
無力だ。無力過ぎる。
「…GRRROUWWWW…!」
どくん。シャーリィの胸の奥で、異形の心臓が跳ねる。
どくん。腹の奥底から湧き上がる。熱くてどろどろしたものが、吹き上がってくる。
どくん。体中が熱くなってくる。全身が熱病にかかったように火照り、ぶるぶると震えだす。
シャーリィの胸にはまった青い球体が、鼓動するように光り輝く。シャーリィの体内から湧き出るそれを、吸い上げる。
怒り。
どこまでいってもただ無力なだけの、自分への怒り。本来ならば生きていて良かったはずの人間の命を、背負って歩けぬ自分への怒り。
自身に醜い怪物になる運命を強要した、主催者ミクトランへの怒り。命をまるで、おもちゃのようにもてあそぶミクトランへの怒り。
怒り、怒り、怒り、怒り。赤い怒りが胸を駆け上ったその次には、虚無のように暗い憎悪。
抜けるように爽やかな、午前の太陽に輝く蒼穹。凄惨な殺し合いの場にあるこの島で、唯一穏やかにそよ風に揺れる木々。
木々の葉は太陽の光を細切れにして、森に美しい木漏れ日を注ぐ。
そののどかな光景は、けれどもシャーリィの高ぶった神経を逆撫でする事はあれ、慰めることは決してなかった。
木々のざわめきは、嘲笑のようにさえ聞こえる。化け物に姿を変えてしまった自分の醜さを、罵っているかのようにさえ聞こえる。
もしもここにもかの虚無の神の力が及んでいれば、シャーリィは確実に黒い霧を呼び込んでいたであろう。
それほどまでに、彼女の激情は高まっていた。
「OOOHHHHMMM…!」
壊れろ。全部壊れろ。呪詛の言葉をエクスフィギュアの声帯で吐きながら、シャーリィは深く息を吸い込んだ。
シャーリィの両の手が、白い輝きに包まれる。滄我と繋がり、滄我の力を借り入れる秘術…爪術の力が、彼女の体内に満ちていく。
彼女の得意としているブレス系爪術は、使用時により精神を研ぎ澄ますことが重要となる。本来ならば狂気に駆られた状態では、使いこなせるような代物ではない。
だが、今の彼女の心は、これ以上ないほどに研ぎ澄まされていた。後から後から湧き上がる、狂気じみた怒りと憎悪。
それが、彼女の心を、極限にまで研ぎ澄ませていたのだ。
「OOOOOAAAAAAHHHHHH!!!!!」
ぶち砕けろ! 滅びろ!! 全部消えてなくなれ!!!
醜い自らを罵る世界に、シャーリィは鉄槌を下した。
どこまでいってもただ無力なだけの、自分への怒り。本来ならば生きていて良かったはずの人間の命を、背負って歩けぬ自分への怒り。
自身に醜い怪物になる運命を強要した、主催者ミクトランへの怒り。命をまるで、おもちゃのようにもてあそぶミクトランへの怒り。
怒り、怒り、怒り、怒り。赤い怒りが胸を駆け上ったその次には、虚無のように暗い憎悪。
抜けるように爽やかな、午前の太陽に輝く蒼穹。凄惨な殺し合いの場にあるこの島で、唯一穏やかにそよ風に揺れる木々。
木々の葉は太陽の光を細切れにして、森に美しい木漏れ日を注ぐ。
そののどかな光景は、けれどもシャーリィの高ぶった神経を逆撫でする事はあれ、慰めることは決してなかった。
木々のざわめきは、嘲笑のようにさえ聞こえる。化け物に姿を変えてしまった自分の醜さを、罵っているかのようにさえ聞こえる。
もしもここにもかの虚無の神の力が及んでいれば、シャーリィは確実に黒い霧を呼び込んでいたであろう。
それほどまでに、彼女の激情は高まっていた。
「OOOHHHHMMM…!」
壊れろ。全部壊れろ。呪詛の言葉をエクスフィギュアの声帯で吐きながら、シャーリィは深く息を吸い込んだ。
シャーリィの両の手が、白い輝きに包まれる。滄我と繋がり、滄我の力を借り入れる秘術…爪術の力が、彼女の体内に満ちていく。
彼女の得意としているブレス系爪術は、使用時により精神を研ぎ澄ますことが重要となる。本来ならば狂気に駆られた状態では、使いこなせるような代物ではない。
だが、今の彼女の心は、これ以上ないほどに研ぎ澄まされていた。後から後から湧き上がる、狂気じみた怒りと憎悪。
それが、彼女の心を、極限にまで研ぎ澄ませていたのだ。
「OOOOOAAAAAAHHHHHH!!!!!」
ぶち砕けろ! 滅びろ!! 全部消えてなくなれ!!!
醜い自らを罵る世界に、シャーリィは鉄槌を下した。
放射状に波打つ地面。何も知らない人間が見たなら、円状に畝を作った、風変わりな畑程度にしか思わなかっただろう。
だが、少しでも観察眼のある人間ならば、これが畑などではない事はすぐさまうかがい知ることが出来るはずだ。畝の中にすき込まれている物を見れば。
木っ端微塵に爆砕された木の幹。木の葉を無残に剥ぎ取られた枝。ひっくり返って露になった根っこ。
ブレス系爪術、「グランドダッシャー」。
シャーリィが叩き付けた両の手は、大地に凄まじい激震を与え、顎(あぎと)と化した岩盤は、地表の木々を粉々に噛み砕いていた。
「QWERRRRR…」
これで、うざい木は全部吹き飛ばした。静かになった。
けれども、シャーリィの怒りは、それでもまだ収まることを知らなかった。
この姿を見て恐れる者への怒り。あざ笑う者への憎しみ。
否。
生ある者への憎しみ。シャーリィの激情は、そこまで上り詰めていた。
どうせこんな姿を見て、もう優しい言葉をかけてくれる人はいない。みな化け物と罵り、剣を向けてくる。
自分達は違うと。お前のような化け物とは違うと、錦の御旗のように言いながら殺しにかかってくるだろう。
かつて友の命を奪い去ったガドリアの騎士の顔が、一瞬シャーリィの脳裏をよぎる。水の民だからという理由だけで、剣を向けたあの男の顔が。
どうせ人間なんて、一皮剥けばみんなあんなもんだ。昨日は仲良くしてくれたあの3人組だって、今日はもう敵ではないか。
でも、お兄ちゃんだけは違う。お兄ちゃんなら、こんな自分でも受け入れてくれる。どんな姿になったって、妹と思ってくれる。
みんなみんなみんな、ぶち殺してやる。せいぜい命乞いでもしながら、苦痛に満ちた死を受け取ればいいんだ。
そう、この島に残るみんな。ジェイだけは見逃してあげようと思ったけど、まあいいや。まとめて殺しちゃお。面倒くさいし。
そうしたらまた、お兄ちゃんと会える。また一緒に暮らせるもんね。
シャーリィはエクスフィギュアの瞳で、南の空を見上げた。
だが、少しでも観察眼のある人間ならば、これが畑などではない事はすぐさまうかがい知ることが出来るはずだ。畝の中にすき込まれている物を見れば。
木っ端微塵に爆砕された木の幹。木の葉を無残に剥ぎ取られた枝。ひっくり返って露になった根っこ。
ブレス系爪術、「グランドダッシャー」。
シャーリィが叩き付けた両の手は、大地に凄まじい激震を与え、顎(あぎと)と化した岩盤は、地表の木々を粉々に噛み砕いていた。
「QWERRRRR…」
これで、うざい木は全部吹き飛ばした。静かになった。
けれども、シャーリィの怒りは、それでもまだ収まることを知らなかった。
この姿を見て恐れる者への怒り。あざ笑う者への憎しみ。
否。
生ある者への憎しみ。シャーリィの激情は、そこまで上り詰めていた。
どうせこんな姿を見て、もう優しい言葉をかけてくれる人はいない。みな化け物と罵り、剣を向けてくる。
自分達は違うと。お前のような化け物とは違うと、錦の御旗のように言いながら殺しにかかってくるだろう。
かつて友の命を奪い去ったガドリアの騎士の顔が、一瞬シャーリィの脳裏をよぎる。水の民だからという理由だけで、剣を向けたあの男の顔が。
どうせ人間なんて、一皮剥けばみんなあんなもんだ。昨日は仲良くしてくれたあの3人組だって、今日はもう敵ではないか。
でも、お兄ちゃんだけは違う。お兄ちゃんなら、こんな自分でも受け入れてくれる。どんな姿になったって、妹と思ってくれる。
みんなみんなみんな、ぶち殺してやる。せいぜい命乞いでもしながら、苦痛に満ちた死を受け取ればいいんだ。
そう、この島に残るみんな。ジェイだけは見逃してあげようと思ったけど、まあいいや。まとめて殺しちゃお。面倒くさいし。
そうしたらまた、お兄ちゃんと会える。また一緒に暮らせるもんね。
シャーリィはエクスフィギュアの瞳で、南の空を見上げた。
「GRWOOOOOOOOWWWW!!!!」
その雄叫びは、この島に残る全ての人間に対して向けた、死刑宣告。純粋な憎悪を込めた不気味な吼え声が、周囲にこだました。
彼女の胸に埋まるエクスフィアは、けれどもそんなシャーリィの想いを知ってか知らずか、無邪気ささえ感じられる光を帯び、輝いている。
エクスフィアは、人間の体に寄生し、そして人間の負の感情を食らって成長する。
ディザイアンが人間牧場の人間を痛めつけるのも、クルシスがあえて神子を何度も命の危機に瀕させるのも、エクスフィアを育てるため。
くしくもシャーリィの肉体は、今やエクスフィアの最高の培地となっていたのだ。
シャーリィは自身の憎悪をエクスフィアに食わせる代わりに、エクスフィアは更なる力を彼女に与える。歪んだ共生関係が、ここには成立していた。
この共生関係が、果たしてどんな結果を生むのか。それは誰にも分からない。
ただ1つ明確なのは、シャーリィの胸のうちに満ちた憎悪は、まるで堤防が決壊したかのように、とめどなく溢れているということ。
ひとまず南に向け進むそのエクスフィギュアは、背後に死神を背負っていた。
そして、死神を生み出した元凶たる魔の宝珠は、その時一筋だけひび割れた。
それはまるで、成虫になるための脱皮を迎えようとしている幼虫を思わせたのは、気のせいではないかもしれない。
その雄叫びは、この島に残る全ての人間に対して向けた、死刑宣告。純粋な憎悪を込めた不気味な吼え声が、周囲にこだました。
彼女の胸に埋まるエクスフィアは、けれどもそんなシャーリィの想いを知ってか知らずか、無邪気ささえ感じられる光を帯び、輝いている。
エクスフィアは、人間の体に寄生し、そして人間の負の感情を食らって成長する。
ディザイアンが人間牧場の人間を痛めつけるのも、クルシスがあえて神子を何度も命の危機に瀕させるのも、エクスフィアを育てるため。
くしくもシャーリィの肉体は、今やエクスフィアの最高の培地となっていたのだ。
シャーリィは自身の憎悪をエクスフィアに食わせる代わりに、エクスフィアは更なる力を彼女に与える。歪んだ共生関係が、ここには成立していた。
この共生関係が、果たしてどんな結果を生むのか。それは誰にも分からない。
ただ1つ明確なのは、シャーリィの胸のうちに満ちた憎悪は、まるで堤防が決壊したかのように、とめどなく溢れているということ。
ひとまず南に向け進むそのエクスフィギュアは、背後に死神を背負っていた。
そして、死神を生み出した元凶たる魔の宝珠は、その時一筋だけひび割れた。
それはまるで、成虫になるための脱皮を迎えようとしている幼虫を思わせたのは、気のせいではないかもしれない。
【シャーリィ・フェンネス 生存確認】
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は大方再生
第一行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:B6の森
所持品:UZI SMG(30連マガジン残り2つ) ショートソード(体内に取り込んでいる) 要の紋なしエクスフィア(シャーリィの憎悪を吸収中、ひび割れあり)
状態:エクスフィギュア化 腹部の傷は大方再生
第一行動方針:憎悪のままに殺戮を行う
第二行動方針:セネルとの再会(手段は一切選ばない)
現在地:B6の森