繰り返す歴史
───姉さまが、死んだ。
───死んだ?
───ううん、そんな事ない。
───だって、こうして輝石に宿ってる。
───こうして、生きてる。
ミトスは歩いていた。
空を見上げながら、忌々しい眩しさに緩く眼を細めて。
でも涙が出なかった。
出てはいない。
そう思い込もうとしていた。
雨なんだ。
この頬を伝う鬱陶しい雫は。
無感動に映る空色が妙に滲む。
ぼやけて映るのは、雨のせい。
空を見上げながら、忌々しい眩しさに緩く眼を細めて。
でも涙が出なかった。
出てはいない。
そう思い込もうとしていた。
雨なんだ。
この頬を伝う鬱陶しい雫は。
無感動に映る空色が妙に滲む。
ぼやけて映るのは、雨のせい。
だって、姉さまは生きている。
ミトスは自分の事を知っているらしき者との遭遇を避けつつ、C3を後にした。
ふらふらと歩く先は南下する形を取る事になり、現在はD3辺りだろうか。
「………」
歩を進める内に冷えてゆく思考は、姉の蘇生への策略をより具体的なものに纏めてゆく。
同時に沸き上がるのは怒りと虚無。
姉を殺した張本人と、姉を守りきれずあまつさえ生き延びた男。
殺さなかったのは自分ではあるのだが。
ふらふらと歩く先は南下する形を取る事になり、現在はD3辺りだろうか。
「………」
歩を進める内に冷えてゆく思考は、姉の蘇生への策略をより具体的なものに纏めてゆく。
同時に沸き上がるのは怒りと虚無。
姉を殺した張本人と、姉を守りきれずあまつさえ生き延びた男。
殺さなかったのは自分ではあるのだが。
やはり、他人なんか信じてはいけなかったのだ。
自分には姉しか、姉には自分しかいなかったのだ。
自分には姉しか、姉には自分しかいなかったのだ。
内側では沸騰する程の激しい怒り。
なのに虚無はそれを外側から包み、表へは出す事を許してはくれない。
脳裏を過ぎ、胸中に滞るのは重い靄。
遥かな過去にも、自分はこうして姉を失ったのだ。
守りきれずに。
眼の前で明らかに血の気を失っていく様を見ながら、冷たくなっていく身体をただ抱き締めるしか出来なかった自分。
無力、だった。
ただそれが口惜しかった。
あれから呆れ返るだけの永い時間を生きてきて、こんな忌まわしいゲームの中で出会えたのは唯一の、奇跡にすら近い希望。
今度こそ、失わないと決めた筈だったのに。
守り通す、と。
それなのに。
なのに虚無はそれを外側から包み、表へは出す事を許してはくれない。
脳裏を過ぎ、胸中に滞るのは重い靄。
遥かな過去にも、自分はこうして姉を失ったのだ。
守りきれずに。
眼の前で明らかに血の気を失っていく様を見ながら、冷たくなっていく身体をただ抱き締めるしか出来なかった自分。
無力、だった。
ただそれが口惜しかった。
あれから呆れ返るだけの永い時間を生きてきて、こんな忌まわしいゲームの中で出会えたのは唯一の、奇跡にすら近い希望。
今度こそ、失わないと決めた筈だったのに。
守り通す、と。
それなのに。
「待っててね、姉さま。器なんてすぐに見付かるから。」
呟きは空気に溶け、吹き抜けた風が空へ散らす。
ほんの少し未来のミトスは、ある策略を用いて敵を欺く。
無知で愚かな敵を、親友だと違わせる程の二面性をもってして。
無知で愚かな敵を、親友だと違わせる程の二面性をもってして。
歴史は繰り返す。
時間軸は違えど、同一人物だ。
それが思い付かない訳もない。
橋での一件等から解るように、力勝負で一人きりというものは到底敵わない。
ならば。
それが思い付かない訳もない。
橋での一件等から解るように、力勝負で一人きりというものは到底敵わない。
ならば。
まずは自他共に見ず知らずの他人に会わなければならない。あの鳶色の頭の彼のように、自分を見て何らかの反応を示す奴はアウト。
見付けたらその者を信用させる為に、差し支えぬ程度に傷を作って、服を汚して、疲弊したフリをして。
今まで共に行動し、守って貰っていた者が殺められたと偽り、非力で無力なハーフエルフを装う。
手持ちの剣はこの際、形見だとでも言えば良い。事実ファフニールは、此処での姉さまからの形見。
巧く信じたならば甘言で欺き、器と魔剣の探索を協力させて。
器と魔剣が見付かれば後は用もない。仮にその者達が団体ならば、内側から皹をいれて壊してやればいい。
仮に何人か、極少数にバレてしまっても、全員に悟られない限りは誤魔化せる自信もある。
歪んだ策略はくしくも未来のそれと同一。
ミトスの口許に知らず笑みが浮かぶ。
「ボクは…」
吐き出した声音は、気弱な少年のそれ。
続く言葉は声にならずに、ただ唇の動きが内容を知らしめる。
ミトスの口許に知らず笑みが浮かぶ。
「ボクは…」
吐き出した声音は、気弱な少年のそれ。
続く言葉は声にならずに、ただ唇の動きが内容を知らしめる。
───どんな犠牲だって厭はないさ。
幸か不幸か、その策略に気付ける者は現在たった一人。
それをミトスが知る術はないのだが。
それをミトスが知る術はないのだが。
小さな大いなる実りが僅かに震え、
彼方では無機の天使が硝子玉の眼を細め。
彼方では無機の天使が硝子玉の眼を細め。
運命か否か。
マナは、引き合う。
マナは、引き合う。
【ミトス・ユグドラシル 生存確認】
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:弱者として他人を利用する
第四行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D3南下中
状態:TP4/5
所持品:ロングソード、邪剣ファフニール、アトワイト、大いなる実り(この世界規模の)
基本行動方針:マーテルの復活
第一行動方針:マーテルの器(コレット)の確保
第二行動方針:魔剣エターナルソードの入手
第三行動方針:弱者として他人を利用する
第四行動方針:蘇生失敗の時は皆殺し
現在位置:D3南下中