箍
C3より少し南下した、D3の北の端にて。デミテルはクレスを待ちながら、あたりを観察していた。
無論こちらの気配は消してある。なるべくどの位置から見ても死角になるような場所になるよう、計算もしている。
無論こちらの気配は消してある。なるべくどの位置から見ても死角になるような場所になるよう、計算もしている。
そして、視界の端に金髪の少年を捉えた。そっと周囲を見回して、それから再び少年の方へと視線を向ける。
もしこちらの視線が気付かれたとしても、向こうの位置からは死角になっていて、こちらは見えない。派手に物音を立てなければ見つからないだろう。
もしこちらの視線が気付かれたとしても、向こうの位置からは死角になっていて、こちらは見えない。派手に物音を立てなければ見つからないだろう。
傍らのティトレイをちらりと見やるが、デミテルの従順なる下僕は、おとなしく彼のあとについているだけであった。
さて、彼の視界内を少年は南の方角に向かって歩き去って行った。
確か彼は、先程クレスがマーテルを殺した際に、瀕死の彼女にとりすがっていた少年だったはずである。
確か彼は、先程クレスがマーテルを殺した際に、瀕死の彼女にとりすがっていた少年だったはずである。
あの泣き喚きようを見るにさぞかし精神的な打撃をこうむったと思われるが、多少ふらついてはいるものの彼の足取りはしっかりとしていた。
ただ単に府抜けている訳ではなさそうだ。
ただ単に府抜けている訳ではなさそうだ。
そこまで思考を巡らせたところで、背後にもう一つ人の気配を感じる。ある程度の確信を持って、デミテルは振り返った。彼のもう一人の下僕、剣士クレスである。
「申し訳ありません、ダオスにとどめをさせませんでした」
言葉は内容とは裏腹に淡々と発せられた。彼自身も薄笑いに近い表情を浮かべている。
少なくとも本気で済まないと思っていないことは明白であった。
少なくとも本気で済まないと思っていないことは明白であった。
「ダオスに関しては構わない。…放っていてもそのうち死ぬだろう。…しかし、クレス=アルベイン」
「何ですか?」
「何故マーテルを殺した?私は生かしておけと言っておいたはずだが」
「何故マーテルを殺した?私は生かしておけと言っておいたはずだが」
「ああ…」クレスは軽く首を傾げ、それから事も無げに続けた。「でもあの時は仕方ありませんでした。あの場ではああする以外に切り抜けようがなかったので」
これでいいですか、とでも言いたげな表情で、彼は口を閉じた。言い訳にしてはいささか陳腐すぎるが(実際あの場でマーテルを殺す以外にやりようがなかったとは思えない)、デミテルは一つ溜息を吐き、「…まあいい」と頷いた。
まったく厄介なものを抱えこんでしまったかもしれないとデミテルは思った。
彼の中の正義感を消してしまえば操るのは容易いと思っていたが、そう簡単にはいかないようである。
正義感や信念が無い以上、クレスの中に残るのは戦士としての本能だけなのだが、それは主に従う従順な駒であると同時に、血を好み人をあやめることを全く何も思わない狂いでもあるのかもしれなかった。
彼の中の正義感を消してしまえば操るのは容易いと思っていたが、そう簡単にはいかないようである。
正義感や信念が無い以上、クレスの中に残るのは戦士としての本能だけなのだが、それは主に従う従順な駒であると同時に、血を好み人をあやめることを全く何も思わない狂いでもあるのかもしれなかった。
(判断力を消しておいたことがある意味で幸いだったということか…。もっとも、そちらも怪しいものだが)
相変わらずクレスは無表情とも薄笑いともいえない表情を浮かべてデミテルを見ている。
(まあいい、こちらにとって不利益となるようなら、処分するまでだ)
「それでデミテル様、これからはどちらに向かわれるのですか?」
「………」
そこでやっと彼は中断せざるを得なかった先程の思考を再開することが出来た。
あの金髪の少年の動向が気になった。
「………」
そこでやっと彼は中断せざるを得なかった先程の思考を再開することが出来た。
あの金髪の少年の動向が気になった。
親しい人を他者の手によって亡くしたとき、大抵人は府抜けるか殺した者を憎むか、どちらかだ。特にこのような状況の中では。
そして少年は彼の目の前で親しい人を殺されている。
そして少年は彼の目の前で親しい人を殺されている。
あの少年のマーテルへの執着具合は尋常ではなかったから、ひょっとしたら彼は…。
「南下する」
デミテルは並び立つ二人の下僕へと声をかけた。 もしもあの少年が殺戮者となって惨劇を起こすとするのならば、自分にも機会が巡ってくる。
表だって派手に行動してくれる輩がいると、その影にかくれて動きやすい。
それに、あの少年が彼女の死によって狂いと化したとしたら。
表だって派手に行動してくれる輩がいると、その影にかくれて動きやすい。
それに、あの少年が彼女の死によって狂いと化したとしたら。
「箍の外れた人間はただ突き進むだけだ…。つけこむ隙はいくらでもあるということに気付きもせず、な」
うまく利用すれば自ら手を下さずとも、大幅に戦力を削く事が出来るかもしれない。
あの少年が期待に沿った働きをせずとも、行動の指針にはなるだろう。
万が一、厄介な事態に陥ったとしても…。
あの少年が期待に沿った働きをせずとも、行動の指針にはなるだろう。
万が一、厄介な事態に陥ったとしても…。
「ついてこい、クレス=アルベイン、ティトレイ=クロウ」
今この手には武器がある。魔杖ケイオスハートが。
彼が踏むのは先行く者が築いた死体。しかし彼はその死体から常に大きな拾い物をしてきた。
今度も、きっと、また。
斜陽が彼等を照らす。魔術師は長く伸びた自身の影を一瞥すると、南へ向かって歩き出した。
【デミテル 生存確認】
状態:TP30%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット 魔杖ケイオスハート
第一行動方針:金髪の少年(ミトス)の後を追い、利用できそうならば利用する
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
現在位置:D3→南部へ移動中
状態:TP30%消費
所持品:ミスティシンボル、ストロー、金属バット 魔杖ケイオスハート
第一行動方針:金髪の少年(ミトス)の後を追い、利用できそうならば利用する
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
現在位置:D3→南部へ移動中
【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失、TP2/3消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:D3→南部へ移動中
状態:感情喪失、TP2/3消費
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック
基本行動方針:かえりたい
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する
現在位置:D3→南部へ移動中
【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:D3→南部へ移動中
状態:TP中消費、善意及び判断能力の喪失
所持品:ダマスクスソード、忍刀血桜
基本行動方針:不明
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:D3→南部へ移動中