現実
薄暗い森の中。
体のいたる箇所に傷をつけ、なおかつ精神力が底を尽きかけている状況にもかかわらず、少女は息一つ切らさず歩いていた。
その体からはうっすらと黒い霧のような物がにじみ出ている。
(お願い、もうやめて・・・)
不意に聞えた声に少女は立ち止まる。
無論辺りに誰かが居るわけではない。
泣きじゃくる子供の様な声に少女は口元を歪める。
笑みと呼ぶにはあまりに禍々しいその表情。もし少女を知る者がこの場に居たなら、確実に別人だと言い切ることが出来たであろう。
少女――否、少女だったモノは空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。
「悲しいか?メルディ。だが、これはお前が望んだことだ」
(違う、メルディ、そんな事望んでないよ・・・)
メルディ、と呼ばれた人物の姿はどこにも見えない。第三者から見れば異様な光景な事に間違いないだろう。
独り言の様にしか見えないそれは確かに会話として成り立っている。
「ならば、何故我はここにいる?」
(っ!!)
引きつったような、声にならない声がソレの頭に響く。
それを最後に泣き声しか響かなくなったことに満足したのか、再度笑みと呼べぬ笑みをつくり、近くの適当な場所に腰を下ろした。
そして再度、空を見上げる。
体のいたる箇所に傷をつけ、なおかつ精神力が底を尽きかけている状況にもかかわらず、少女は息一つ切らさず歩いていた。
その体からはうっすらと黒い霧のような物がにじみ出ている。
(お願い、もうやめて・・・)
不意に聞えた声に少女は立ち止まる。
無論辺りに誰かが居るわけではない。
泣きじゃくる子供の様な声に少女は口元を歪める。
笑みと呼ぶにはあまりに禍々しいその表情。もし少女を知る者がこの場に居たなら、確実に別人だと言い切ることが出来たであろう。
少女――否、少女だったモノは空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。
「悲しいか?メルディ。だが、これはお前が望んだことだ」
(違う、メルディ、そんな事望んでないよ・・・)
メルディ、と呼ばれた人物の姿はどこにも見えない。第三者から見れば異様な光景な事に間違いないだろう。
独り言の様にしか見えないそれは確かに会話として成り立っている。
「ならば、何故我はここにいる?」
(っ!!)
引きつったような、声にならない声がソレの頭に響く。
それを最後に泣き声しか響かなくなったことに満足したのか、再度笑みと呼べぬ笑みをつくり、近くの適当な場所に腰を下ろした。
そして再度、空を見上げる。
バテン・カイトス。我が唯一望むもの。
偶然出来てしまったセイファートごときに奪われた我の居場所。
我が創り出した、何も存在せぬ世界。
人も晶霊も植物も、大地も存在しない場所。
取り戻すためならどんな苦痛も厭わない。
例えこんな力無き少女の体を借りなければ存在する事が出来なくとも。
例え2000年という年月封印されようとも。
我が故郷を、我が居場所を、我が存在を、取り戻すためなら。
どの様な苦痛があろうと、どの様な怒り憎しみがあろうと。
達成すれば、全てが消え去るのだから。
偶然出来てしまったセイファートごときに奪われた我の居場所。
我が創り出した、何も存在せぬ世界。
人も晶霊も植物も、大地も存在しない場所。
取り戻すためならどんな苦痛も厭わない。
例えこんな力無き少女の体を借りなければ存在する事が出来なくとも。
例え2000年という年月封印されようとも。
我が故郷を、我が居場所を、我が存在を、取り戻すためなら。
どの様な苦痛があろうと、どの様な怒り憎しみがあろうと。
達成すれば、全てが消え去るのだから。
―――必ず取り戻す。我の全てを。
「その為には、協力してもらうぞ。メルディ・・・」
少なくとも、次の器が見つかるまで。
あわよくばこの器をもっと強くする方法を見つける。
せめて、シゼル並みの強度が必要だ。アレも結局最後には使い物にならなかったが。
少なくとも今のままではあの真の極光術士どころか、下手をすればただの人間にもやられてしまうかもしれない。
それに、この体――・・・。
一向に回復する兆しを見せないメルディの体にソレは――ネレイドは苛立つ。
やはり実験により無理やり引き出した所為か、メルディの極光はシゼルの物に比べ明らかに薄い。
いや、薄いと言う表現は間違っているのかも知れないが、それ以外に表しようが無い。
彼女の力が純粋な極光であったなら、回復力・威力共にシゼル程度にはなるのであろう。
素質なら母親と同等だ。だが、メルディにはシゼルに比べ圧倒的に足りないものがあった。
少なくとも、次の器が見つかるまで。
あわよくばこの器をもっと強くする方法を見つける。
せめて、シゼル並みの強度が必要だ。アレも結局最後には使い物にならなかったが。
少なくとも今のままではあの真の極光術士どころか、下手をすればただの人間にもやられてしまうかもしれない。
それに、この体――・・・。
一向に回復する兆しを見せないメルディの体にソレは――ネレイドは苛立つ。
やはり実験により無理やり引き出した所為か、メルディの極光はシゼルの物に比べ明らかに薄い。
いや、薄いと言う表現は間違っているのかも知れないが、それ以外に表しようが無い。
彼女の力が純粋な極光であったなら、回復力・威力共にシゼル程度にはなるのであろう。
素質なら母親と同等だ。だが、メルディにはシゼルに比べ圧倒的に足りないものがあった。
世界を、全てを、恨む心。憎しみ。絶望。
ネレイドの力を最大に引き出すには、ネレイドと気持ちを同調させなくてはならない。
その為に必要なのが、『全てを無くしたい』と思う心だ。
だが、過去も今も、メルディにあるのは『恐怖』だけだ。
過去は母に捨てられる恐怖、今は純粋なる死への恐怖。
そんな物じゃ足りない。無くしたいと思う心、憎しみの心。世界を恨む心。
闇の極光を使うに最も必要なモノ。
(やだ、よぉ・・・・怖いよぉ・・・・もう、やだぁ・・・)
内側から聞える声。相変わらず泣き続けるメルディ。
シゼルが、世界に憎しみを抱いた理由。ネレイドと同調しえた理由。
ネレイドの脳裏に何かが浮かび上がった。
「メルディ・・・」
(っ、ひっく、もうやだっ!聞きたくない!)
必死に耳を閉じるも、『自分』との会話でそんな行為は無駄に終わる。
どれだけ耳をふさごうと聞こえる声に逆らうすべは無かった。
「お前は何人殺した?」
(え?)
突然の言葉にメルディの声が硬くなる。
ネレイドは笑みを浮かべたまま更に問い詰める。
「シゼルは誰が殺した?ヒアデスは?お前の町の人々は誰の所為で死んだ?極光術士も一人いたな・・・」
(や、やめてぇ!!)
メルディが叫んだ。ネレイドにだけ聞こえる声で。
「お前が仲間と呼ぶ者達は何度危険な目にあった?先程の金髪の男は?誰が殺した?」
(や、やだ、やだやだやだやだ!!!)
必死に叫び続けるメルディ。
その時、一瞬少女の体を闇の霧が取り巻いた。
それすぐに消え去ったが、それでもメルディ自身の極光が出たことにネレイドは満足した。
だが反対にその事に恐怖したメルディは無意識に彼を思い浮かべる。
極光術をフリンジする時、強いちからで抱きしめてくれたやさしい彼を。
(キー・・ル、やだよぉ!!キール!!助けて、キール!!!)
その為に必要なのが、『全てを無くしたい』と思う心だ。
だが、過去も今も、メルディにあるのは『恐怖』だけだ。
過去は母に捨てられる恐怖、今は純粋なる死への恐怖。
そんな物じゃ足りない。無くしたいと思う心、憎しみの心。世界を恨む心。
闇の極光を使うに最も必要なモノ。
(やだ、よぉ・・・・怖いよぉ・・・・もう、やだぁ・・・)
内側から聞える声。相変わらず泣き続けるメルディ。
シゼルが、世界に憎しみを抱いた理由。ネレイドと同調しえた理由。
ネレイドの脳裏に何かが浮かび上がった。
「メルディ・・・」
(っ、ひっく、もうやだっ!聞きたくない!)
必死に耳を閉じるも、『自分』との会話でそんな行為は無駄に終わる。
どれだけ耳をふさごうと聞こえる声に逆らうすべは無かった。
「お前は何人殺した?」
(え?)
突然の言葉にメルディの声が硬くなる。
ネレイドは笑みを浮かべたまま更に問い詰める。
「シゼルは誰が殺した?ヒアデスは?お前の町の人々は誰の所為で死んだ?極光術士も一人いたな・・・」
(や、やめてぇ!!)
メルディが叫んだ。ネレイドにだけ聞こえる声で。
「お前が仲間と呼ぶ者達は何度危険な目にあった?先程の金髪の男は?誰が殺した?」
(や、やだ、やだやだやだやだ!!!)
必死に叫び続けるメルディ。
その時、一瞬少女の体を闇の霧が取り巻いた。
それすぐに消え去ったが、それでもメルディ自身の極光が出たことにネレイドは満足した。
だが反対にその事に恐怖したメルディは無意識に彼を思い浮かべる。
極光術をフリンジする時、強いちからで抱きしめてくれたやさしい彼を。
(キー・・ル、やだよぉ!!キール!!助けて、キール!!!)
脳裏に響く声が一際大きく響き、また泣き声だけ響きだす。
彼女の叫んだ名前に心当たりはあった。
「キール=ツァイベル、か。あいつを消せば、使い物になるかもしらんな」
先程の一瞬のお陰で少しだけ楽になった体を動かす。あのだるさは、無い。
「しかし、周りが邪魔だな・・・」
この体では勝ち目が無いだろう。
あいつと共にいたもう一人の男も危険だ。
「他の誰かが消すのを待つか、それとも・・・」
少なくとも、その男さえ消せばこの体も使い物になるかもしれない。
ならば一瞬の隙さえつければこちらのものだ。
隙をつきさえしれば――。
「ふふ、そんな事をしなくともあの男ならこの少女を救う為命をかけるだろう。向こうから来るのならば我は何もせずともよい」
そして、最後は賭けだ。
その結果この少女の体が使い物になるかは神である自分にも分からない。
「キール=ツァイベル・・・・・・バテン・カイトスは貴様にかかっているぞ?」
そう呟き、ネレイドは笑う。
それに重なるように、少女の泣き声が森に響いた。
彼女の叫んだ名前に心当たりはあった。
「キール=ツァイベル、か。あいつを消せば、使い物になるかもしらんな」
先程の一瞬のお陰で少しだけ楽になった体を動かす。あのだるさは、無い。
「しかし、周りが邪魔だな・・・」
この体では勝ち目が無いだろう。
あいつと共にいたもう一人の男も危険だ。
「他の誰かが消すのを待つか、それとも・・・」
少なくとも、その男さえ消せばこの体も使い物になるかもしれない。
ならば一瞬の隙さえつければこちらのものだ。
隙をつきさえしれば――。
「ふふ、そんな事をしなくともあの男ならこの少女を救う為命をかけるだろう。向こうから来るのならば我は何もせずともよい」
そして、最後は賭けだ。
その結果この少女の体が使い物になるかは神である自分にも分からない。
「キール=ツァイベル・・・・・・バテン・カイトスは貴様にかかっているぞ?」
そう呟き、ネレイドは笑う。
それに重なるように、少女の泣き声が森に響いた。
【メルディ 生存確認】
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:新たなる世界の創造
第一行動方針:器(メルディ)の精神力回復の為しばらく一時行動停止(多少回復/回復速度普通)
第二行動方針:器(メルディ)が世界を恨むため、キールを殺す
第三行動方針: 器(メルディ)を壊さないようにする
現在位置:B3の森の中
状態:ネレイドの干渉
所持品:BCロッド スカウトオーブ、リバヴィウス鉱、C・ケイジ
基本行動方針:新たなる世界の創造
第一行動方針:器(メルディ)の精神力回復の為しばらく一時行動停止(多少回復/回復速度普通)
第二行動方針:器(メルディ)が世界を恨むため、キールを殺す
第三行動方針: 器(メルディ)を壊さないようにする
現在位置:B3の森の中