(シャー…リィ……モー…ゼス……ジェイ………ち…きしょ……ぉ…)
(父…上……母…上……すずは……今…そちらに…逝…き…ま…す……)
デミテルの巻き起こした魔界の瘴気が、二人の命を削り落とし、死神にその魂を引き渡すのと、それは同時くらいだった。
(父…上……母…上……すずは……今…そちらに…逝…き…ま…す……)
デミテルの巻き起こした魔界の瘴気が、二人の命を削り落とし、死神にその魂を引き渡すのと、それは同時くらいだった。
―――――
一陣の風が、本来身動きを嫌うはずの洞窟の空気を揺り動かした。
「…っ!」
ところどころに星をあしらった、青い胴着を身にまとった、白皙の少年は少しばかり身震いをする。
「嫌な風ですね…」
金色に縁取られた、白い法衣に身を包む、清楚な雰囲気の少女は言った。
「この辺りは洞窟でも地上に近い辺りですから、きっとこんな風が吹き込むんでしょう。少し寒いですか、ミントさん?」
ミントなる名の少女は、目の前の白皙の少年の顔を見ながら、軽くうなずいた。
「少しだけ…」
ジェイはミントの言葉を受けて、自身の脇に手を伸ばす。
「持たせてもらった明かりでは少し暗いし、暖も取れません。ミントさん、さっき交換してもらった忍刀・紫電を使わせてもらいますよ」
「はい、お願いします」
ジェイは腰に差してあった、丈の短い刀を抜き放つ。その名にたがわず、ちっぽけながらも立派な稲妻を表面でほとばしらせる小刀が、更に炎で包まれる。
「お見せしましょう。これがぼくの『焔』です」
紫色に輝くジェイの両の手。洞窟の地面に突き刺さった小刀の周りで、ちょっとした焚き火くらいの炎が巻き起こる。
不思議なことに、小刀にまとわれた炎はいつまでたっても小刀を焼き焦がすそぶりを見せない。ミントはその光景に、少なからず感嘆を覚えた。
「…これが…ジェイさんの爪術?」
「ええ。本来この技は瞬間的に炎を燃え上がらせる技なんですが、徐々に力を解放していけば、こんな風に焚き火の代用にもなるんです」
「ありがとうございます。ジェイさんに『支給品』を渡しておいて良かったです」
ミントは早くも、両手をかざしてジェイの即席の焚き火に当たり始めている。その傍らには焚き火に照らされる杖、ホーリィスタッフがある。
「こっちも自分の得意な武器を早く手に入れられて良かったですよ。ついでに強力なブレス系爪術使いも仲間に出来て…おっと、爪術ではなく法術でしたか」
ジェイは自ら、自分の発言を訂正した。もうある程度打ち解けた雰囲気を持って言葉を交し合う彼ら。彼らは先ほど、「支給品」の物々交換の持ちかけから知り合ったのだ。
話を切り出したのはジェイ。ミントが「支給品」の小刀を持て余していたところを目ざとく見つけ、物々交換の取り引きを試みた。
結論から言えば、ジェイの持っていたホーリィスタッフが、ミントの待望の武器であった。
この取り引きは大成功し、そのまま2人は暫定的ながら仲間として行動するに至ったのだ。
仲間関係を結んだ2人は、とりあえず近くにあった洞窟に潜み、今後の戦略を練ることに。結果として、彼らは今ここにいる。
「ぼくらが今いるのは、ここですね」
地図を広げながら、ジェイはその一角を指し示した。Gの3とあるマス目の、北部に指は置かれている。
「おそらくこの洞窟は、島の中央部から南部の入り江に流れている川の伏流水がくりぬいて出来た洞窟なんでしょうね」
「ふく…りゅう…すい?」
「はい。流れる川の水の一部が地下に浸透して、地下を流れるようになったものです。要するに、地底の川ですね」
「なるほど…だから私達のいるすぐ脇に川が流れているわけなんですね」
ミントは体を焚き火に向けたまま、顔だけを横に向けた。
ミントの右側、およそ5m先では、すでに地底の川の川面が、ぴちゃぴちゃと波を歌わせながら流れている。
川幅はおよそ3m。水のよどみ具合からして、深さは最深部で1m程度。流れはそこまで急というわけでもない。
「ひょっとすれば、この川はFの2~4くらいの森の蓄えた水も混じっているかも知れません。森の泉の底から、ここまで水が流れて来ているなんてことも…」
「あ…っ!」
そのとき、ミントの表情は凍り付いていた。
「な…敵襲ですか!?」
ジェイは焚き火の芯として使っていた忍刀・紫電を引き抜き、即座に構えを取る。
入り口に張っておいた即席の鳴子は鳴らなかった。まさか、ソロンが…!?
だが、ジェイはそもそも、警戒する方向を間違えていた。ミントが異常を発見したのは、洞窟の入り口の方向ではなく、傍らの地底の川だったのだ。
「ジェイさん! 見て! 人が流れて来ます!」
「人が…? まさかそんなことあるわけ…」
ジェイはミントの言葉に半信半疑。しかし念のため、もう一度忍刀・紫電に炎を宿らせ、光度を上げて確認する。
「なっ!!?」
そして、ミントの言葉は、真実であった。
上流から流れてきたのは、白と水色を基調とした、ゆったりとした衣を着る、金髪の男性。白いものも混じりだした金髪は、青白い輝きを放っている。
衣の特徴、輝く金髪。わざわざたった数時間のうちで詰め込んだ情報を駆使するまでもない。その容貌をした男性は、ジェイの知る限り2人。
そして男性とあれば、考えられる人物はたったの1人だけ。
「ま…マウリッツさん!?」
「あの方、ジェイさんの知り合いなんですか?」
「…ええ。ちょっと前、あの人の参謀として働かせてもらったことがあります」
マウリッツ・ウェルネス。大いなる海の意志、滄我に仕える民の長老。
ジェイはかつて、マウリッツを補佐して戦い抜いた、クルザンドとの戦役を一瞬だけ思い出していたが、またすぐに意識は目の前の老人へと向かう。
流れて来たマウリッツの体は、やがてジェイ達のいる側の、川の岸辺に引っかかる。
煌髪人…すなわち水の民の証たる金髪は、水にたゆたいながら、弱々しく輝いていた。
「ジェイさん、助けないと!」
「え…ええ」
茫然とするジェイは、ミントにせかされてようやく自分が何をすべきか、思い出したような風だった。
マウリッツの体は、衣服が水を吸っているとはいえ、幸いそこまで重くはない。ジェイとミント、2人の力で十分救助可能な程度であった。
「う…んん……」
マウリッツは、ここにあるかないかの意識の中、小さくうめいた。だがそれも当然のこと。
「!!」
「!?」
マウリッツの体には、いたるところに傷が刻み込まれている。
「これは…!?」
ジェイはすかさず、マウリッツの体の検分にかかる。傷を見てただ茫然としているわけにはいかないからだ。
ミントが気休めに毛が生えた程度とはいえ、回復法術を行うべく傷口に手をかざす。
さすがに完全回復は無理かもしれないが、少なくともこれでこれ以上傷が悪化することはないはず。
「全身各所に刀傷…これは深さからして、相当重い刃物で叩ききられたみたいだな…。
見たところ骨折はなさそうだけど、この傷で骨折がないっていうのは奇跡としか言いようがない…」
マウリッツを検分するジェイは、思わず呟く。さすがは「不死身」のマウリッツ、といったところか。
かつてジェイ達は、滄我の意志に呑み込まれ、正気を失ったマウリッツと戦ったことがある。
そのときマウリッツは老人とは思えないほどの体力を身につけ、たとえ叩き伏せられても二度も立ち上がってきた。
三度目など、無茶を承知で滄我の力を取り込んで、散々に暴れてくれたものである。
「…ジェイさん?」
「…あ、すいません
」 考え事をしていました、とジェイはミントに言った。
正直なところ、ジェイは迷った。腰に差し直した忍刀・紫電を抜くべきか否か、逡巡していたのだ。
今のマウリッツには、抵抗する余力などない。
忍刀・紫電をマウリッツの胸に突き込み、「雷電」でも放てば、今やずぶぬれのマウリッツは、確実に黒焦げになって絶命する。
昔のジェイならば、迷わずそうしていただろう。競争相手は1人でも減らしておいた方が今後のためになる。
何より滄我の加護はここまで届いているのだ。また下手に滄我の力を取り込まれて暴走されたら、態勢の整っていない今、撃退は至難の業だ。
しかし、ジェイは同時に、マウリッツを殺めることにためらいを覚えていた
モフモフ族やセネル達との出会いが、凍っていたジェイの心を溶かしつつあったからだ。自分を道具ではなく、人として見てくれる大切な家族のぬくもりが。
「…………」
だが、ジェイの逡巡は、結果として次なる惨劇への引き金を引いてしまうことと相成る。
「うう…う…」
マウリッツが、一つ身じろぎをした。
きん、ころころ。
何かが洞窟の地面に落ち、はねる音。
「?」
ミントはその音のした方向に、一応事前に照らしておいた照明器具をかざした。
青いビー玉のようなものが、そこに転がっていた。
「何なんでしょう? このビー玉みたいなもの…」
その時。
びくん、とマウリッツの体が跳ねた。
「!?」
思わずジェイは後方にステップを踏み、マウリッツから離れる。
「ジェイ…さん?」
「ミントさん、離れて下さい! 嫌な予感がします!!」
「え…? …!!」
ミントの吐息が、途中で凍り付いた。
マウリッツの体中が、節くれだってくる。肌はまるで、とげのないサボテンを思わせる、不気味な色に変色を始めている。
顔面がどろりと溶け、目を思わせる橙色の瘤を除けば、あとはのっぺりした青緑色の皮膚しか残らない。
両手はまるで、熱帯の密林の猿のように長く伸びる。胴体ももとの何倍も太くなり、今やマウリッツの着衣はボロボロの布くずと化していた。
手にも足にも魔物じみた爪が生え、びくんびくんと彼の体が波打つたびに震えている。
そして、臓物の蠕動にも似た体の震えが止まったとき、今や異形の存在と化したマウリッツは、爪の生えた二本の足で、のっそりと立ち上がる。
この洞窟の天井は高い。身長が4~5m程に伸びた彼が立ち上がっても、まだ若干の余裕があるほどに。
だが、洞窟の天井の高さなど、ここにいる三者にとってはもはや些細な問題にしか過ぎなかったことは、言うまでもない。
「WWWWWWWRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYY!!!!!」
まともな人としての言葉を失ってしまったマウリッツの雄叫びが、この洞窟を打ち震わせた。
「…っ!」
ところどころに星をあしらった、青い胴着を身にまとった、白皙の少年は少しばかり身震いをする。
「嫌な風ですね…」
金色に縁取られた、白い法衣に身を包む、清楚な雰囲気の少女は言った。
「この辺りは洞窟でも地上に近い辺りですから、きっとこんな風が吹き込むんでしょう。少し寒いですか、ミントさん?」
ミントなる名の少女は、目の前の白皙の少年の顔を見ながら、軽くうなずいた。
「少しだけ…」
ジェイはミントの言葉を受けて、自身の脇に手を伸ばす。
「持たせてもらった明かりでは少し暗いし、暖も取れません。ミントさん、さっき交換してもらった忍刀・紫電を使わせてもらいますよ」
「はい、お願いします」
ジェイは腰に差してあった、丈の短い刀を抜き放つ。その名にたがわず、ちっぽけながらも立派な稲妻を表面でほとばしらせる小刀が、更に炎で包まれる。
「お見せしましょう。これがぼくの『焔』です」
紫色に輝くジェイの両の手。洞窟の地面に突き刺さった小刀の周りで、ちょっとした焚き火くらいの炎が巻き起こる。
不思議なことに、小刀にまとわれた炎はいつまでたっても小刀を焼き焦がすそぶりを見せない。ミントはその光景に、少なからず感嘆を覚えた。
「…これが…ジェイさんの爪術?」
「ええ。本来この技は瞬間的に炎を燃え上がらせる技なんですが、徐々に力を解放していけば、こんな風に焚き火の代用にもなるんです」
「ありがとうございます。ジェイさんに『支給品』を渡しておいて良かったです」
ミントは早くも、両手をかざしてジェイの即席の焚き火に当たり始めている。その傍らには焚き火に照らされる杖、ホーリィスタッフがある。
「こっちも自分の得意な武器を早く手に入れられて良かったですよ。ついでに強力なブレス系爪術使いも仲間に出来て…おっと、爪術ではなく法術でしたか」
ジェイは自ら、自分の発言を訂正した。もうある程度打ち解けた雰囲気を持って言葉を交し合う彼ら。彼らは先ほど、「支給品」の物々交換の持ちかけから知り合ったのだ。
話を切り出したのはジェイ。ミントが「支給品」の小刀を持て余していたところを目ざとく見つけ、物々交換の取り引きを試みた。
結論から言えば、ジェイの持っていたホーリィスタッフが、ミントの待望の武器であった。
この取り引きは大成功し、そのまま2人は暫定的ながら仲間として行動するに至ったのだ。
仲間関係を結んだ2人は、とりあえず近くにあった洞窟に潜み、今後の戦略を練ることに。結果として、彼らは今ここにいる。
「ぼくらが今いるのは、ここですね」
地図を広げながら、ジェイはその一角を指し示した。Gの3とあるマス目の、北部に指は置かれている。
「おそらくこの洞窟は、島の中央部から南部の入り江に流れている川の伏流水がくりぬいて出来た洞窟なんでしょうね」
「ふく…りゅう…すい?」
「はい。流れる川の水の一部が地下に浸透して、地下を流れるようになったものです。要するに、地底の川ですね」
「なるほど…だから私達のいるすぐ脇に川が流れているわけなんですね」
ミントは体を焚き火に向けたまま、顔だけを横に向けた。
ミントの右側、およそ5m先では、すでに地底の川の川面が、ぴちゃぴちゃと波を歌わせながら流れている。
川幅はおよそ3m。水のよどみ具合からして、深さは最深部で1m程度。流れはそこまで急というわけでもない。
「ひょっとすれば、この川はFの2~4くらいの森の蓄えた水も混じっているかも知れません。森の泉の底から、ここまで水が流れて来ているなんてことも…」
「あ…っ!」
そのとき、ミントの表情は凍り付いていた。
「な…敵襲ですか!?」
ジェイは焚き火の芯として使っていた忍刀・紫電を引き抜き、即座に構えを取る。
入り口に張っておいた即席の鳴子は鳴らなかった。まさか、ソロンが…!?
だが、ジェイはそもそも、警戒する方向を間違えていた。ミントが異常を発見したのは、洞窟の入り口の方向ではなく、傍らの地底の川だったのだ。
「ジェイさん! 見て! 人が流れて来ます!」
「人が…? まさかそんなことあるわけ…」
ジェイはミントの言葉に半信半疑。しかし念のため、もう一度忍刀・紫電に炎を宿らせ、光度を上げて確認する。
「なっ!!?」
そして、ミントの言葉は、真実であった。
上流から流れてきたのは、白と水色を基調とした、ゆったりとした衣を着る、金髪の男性。白いものも混じりだした金髪は、青白い輝きを放っている。
衣の特徴、輝く金髪。わざわざたった数時間のうちで詰め込んだ情報を駆使するまでもない。その容貌をした男性は、ジェイの知る限り2人。
そして男性とあれば、考えられる人物はたったの1人だけ。
「ま…マウリッツさん!?」
「あの方、ジェイさんの知り合いなんですか?」
「…ええ。ちょっと前、あの人の参謀として働かせてもらったことがあります」
マウリッツ・ウェルネス。大いなる海の意志、滄我に仕える民の長老。
ジェイはかつて、マウリッツを補佐して戦い抜いた、クルザンドとの戦役を一瞬だけ思い出していたが、またすぐに意識は目の前の老人へと向かう。
流れて来たマウリッツの体は、やがてジェイ達のいる側の、川の岸辺に引っかかる。
煌髪人…すなわち水の民の証たる金髪は、水にたゆたいながら、弱々しく輝いていた。
「ジェイさん、助けないと!」
「え…ええ」
茫然とするジェイは、ミントにせかされてようやく自分が何をすべきか、思い出したような風だった。
マウリッツの体は、衣服が水を吸っているとはいえ、幸いそこまで重くはない。ジェイとミント、2人の力で十分救助可能な程度であった。
「う…んん……」
マウリッツは、ここにあるかないかの意識の中、小さくうめいた。だがそれも当然のこと。
「!!」
「!?」
マウリッツの体には、いたるところに傷が刻み込まれている。
「これは…!?」
ジェイはすかさず、マウリッツの体の検分にかかる。傷を見てただ茫然としているわけにはいかないからだ。
ミントが気休めに毛が生えた程度とはいえ、回復法術を行うべく傷口に手をかざす。
さすがに完全回復は無理かもしれないが、少なくともこれでこれ以上傷が悪化することはないはず。
「全身各所に刀傷…これは深さからして、相当重い刃物で叩ききられたみたいだな…。
見たところ骨折はなさそうだけど、この傷で骨折がないっていうのは奇跡としか言いようがない…」
マウリッツを検分するジェイは、思わず呟く。さすがは「不死身」のマウリッツ、といったところか。
かつてジェイ達は、滄我の意志に呑み込まれ、正気を失ったマウリッツと戦ったことがある。
そのときマウリッツは老人とは思えないほどの体力を身につけ、たとえ叩き伏せられても二度も立ち上がってきた。
三度目など、無茶を承知で滄我の力を取り込んで、散々に暴れてくれたものである。
「…ジェイさん?」
「…あ、すいません
」 考え事をしていました、とジェイはミントに言った。
正直なところ、ジェイは迷った。腰に差し直した忍刀・紫電を抜くべきか否か、逡巡していたのだ。
今のマウリッツには、抵抗する余力などない。
忍刀・紫電をマウリッツの胸に突き込み、「雷電」でも放てば、今やずぶぬれのマウリッツは、確実に黒焦げになって絶命する。
昔のジェイならば、迷わずそうしていただろう。競争相手は1人でも減らしておいた方が今後のためになる。
何より滄我の加護はここまで届いているのだ。また下手に滄我の力を取り込まれて暴走されたら、態勢の整っていない今、撃退は至難の業だ。
しかし、ジェイは同時に、マウリッツを殺めることにためらいを覚えていた
モフモフ族やセネル達との出会いが、凍っていたジェイの心を溶かしつつあったからだ。自分を道具ではなく、人として見てくれる大切な家族のぬくもりが。
「…………」
だが、ジェイの逡巡は、結果として次なる惨劇への引き金を引いてしまうことと相成る。
「うう…う…」
マウリッツが、一つ身じろぎをした。
きん、ころころ。
何かが洞窟の地面に落ち、はねる音。
「?」
ミントはその音のした方向に、一応事前に照らしておいた照明器具をかざした。
青いビー玉のようなものが、そこに転がっていた。
「何なんでしょう? このビー玉みたいなもの…」
その時。
びくん、とマウリッツの体が跳ねた。
「!?」
思わずジェイは後方にステップを踏み、マウリッツから離れる。
「ジェイ…さん?」
「ミントさん、離れて下さい! 嫌な予感がします!!」
「え…? …!!」
ミントの吐息が、途中で凍り付いた。
マウリッツの体中が、節くれだってくる。肌はまるで、とげのないサボテンを思わせる、不気味な色に変色を始めている。
顔面がどろりと溶け、目を思わせる橙色の瘤を除けば、あとはのっぺりした青緑色の皮膚しか残らない。
両手はまるで、熱帯の密林の猿のように長く伸びる。胴体ももとの何倍も太くなり、今やマウリッツの着衣はボロボロの布くずと化していた。
手にも足にも魔物じみた爪が生え、びくんびくんと彼の体が波打つたびに震えている。
そして、臓物の蠕動にも似た体の震えが止まったとき、今や異形の存在と化したマウリッツは、爪の生えた二本の足で、のっそりと立ち上がる。
この洞窟の天井は高い。身長が4~5m程に伸びた彼が立ち上がっても、まだ若干の余裕があるほどに。
だが、洞窟の天井の高さなど、ここにいる三者にとってはもはや些細な問題にしか過ぎなかったことは、言うまでもない。
「WWWWWWWRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYY!!!!!」
まともな人としての言葉を失ってしまったマウリッツの雄叫びが、この洞窟を打ち震わせた。
【「不可視」のジェイ 生存確認】
状態:TPをわずかに消費
所持品:忍刀・紫電 ???? ????(所持品数は不明)
現在位置:G3の洞窟
第一行動方針:マウリッツに対処する
第二行動方針:会場の現状を把握しつつ、仲間達と合流する
状態:TPをわずかに消費
所持品:忍刀・紫電 ???? ????(所持品数は不明)
現在位置:G3の洞窟
第一行動方針:マウリッツに対処する
第二行動方針:会場の現状を把握しつつ、仲間達と合流する
【ミント・アドネード 生存確認】
状態:TPをわずかに消費
所持品:ホーリィスタッフ ???? ????(所持品数は不明)
現在位置:G3の洞窟
第一行動方針:マウリッツに対処する
第二行動方針:ジェイに従いつつ、仲間達と合流する
状態:TPをわずかに消費
所持品:ホーリィスタッフ ???? ????(所持品数は不明)
現在位置:G3の洞窟
第一行動方針:マウリッツに対処する
第二行動方針:ジェイに従いつつ、仲間達と合流する
【マウリッツ・ウェルネス 生存確認】
状態:エクスフィギュア化。若干の負傷あり
所持品:要の紋なしエクスフィア(取れかかっていたが身じろぎの拍子に脱落)。残る所持品は何者かに全て強奪された
現在位置:G3の洞窟
行動方針:WWWWWWWRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYY!!!!!
状態:エクスフィギュア化。若干の負傷あり
所持品:要の紋なしエクスフィア(取れかかっていたが身じろぎの拍子に脱落)。残る所持品は何者かに全て強奪された
現在位置:G3の洞窟
行動方針:WWWWWWWRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYY!!!!!