魔剣斬翔
生きたかった、帰りたかった、逝きたかった。
差し伸べられた手、白かったっけ、黒かったっけ。笑顔ってなんだっけ?
ただ長くて綺麗な爪だけを覚えている。
あの手だけが、俺を導いてくれると、信じていた。
差し伸べられた手、白かったっけ、黒かったっけ。笑顔ってなんだっけ?
ただ長くて綺麗な爪だけを覚えている。
あの手だけが、俺を導いてくれると、信じていた。
彼は後ろに寒気を感じる。穢れ無き瞳で無くともここまで現象化していれば嫌でも分かる。
ヴェイグは暴走しているのは紛れも無い事実。
しかし彼は振り返らない。振り返ってはいけない。
次に合間見えることがあるとすれば、多分どちらかが死ぬ時だろう。
ヴェイグは暴走しているのは紛れも無い事実。
しかし彼は振り返らない。振り返ってはいけない。
次に合間見えることがあるとすれば、多分どちらかが死ぬ時だろう。
月明かりに照らされた表情は光量が足りなくて判別しきれない。
眼を細め夜の向こうにようやく城跡を見る。
観測手は全てデミテルに任せていた。元々ロングレンジは彼の領域ではない。
ましてや一k以上先、しかも夜を裸眼で狙うことなど出来ない。彼は標準を合わせただけ。
ヴェイグに会わなかったら、帰るために、何の感慨もなく標準を合わせて引き金を引いただろう。
ヴェイグと再び出会う時が来ないことを、ティトレイは願った。
何故願うのかは、自分にも分からない。
来て欲しいから、願うのかもしれない。
その顔は、雨に濡れていた。
眼を細め夜の向こうにようやく城跡を見る。
観測手は全てデミテルに任せていた。元々ロングレンジは彼の領域ではない。
ましてや一k以上先、しかも夜を裸眼で狙うことなど出来ない。彼は標準を合わせただけ。
ヴェイグに会わなかったら、帰るために、何の感慨もなく標準を合わせて引き金を引いただろう。
ヴェイグと再び出会う時が来ないことを、ティトレイは願った。
何故願うのかは、自分にも分からない。
来て欲しいから、願うのかもしれない。
その顔は、雨に濡れていた。
城跡にて相対する3人。一人が場を降りて新たなる一人が場に上がる。
「あんたがカイルのおっちゃんか?」
ロイドはスタンに背中に向けてクレスを見据え、双刀を構える。
スタンは失った血の分だけ気だるそうに肩を上下させる。
「…おっちゃんて、俺そんなに老けて見えるかな…」
『少なくとも実年齢に見合った感性はしていないがな』
おどけたようなディムロスの相打ち。戦いの最中に笑顔がもれる。
「黙っとけディムロス。…そう言う君は誰だ、敵か?味方か?」
スタンが笑顔から一気に真剣な面構えに変わり、乱入者を詰問する。
「カイルの友達だ!!」ロイドの表情も真剣そのもので、
「よし、一緒に戦おう!」スタンも真剣そのもので、
『ちょっと待てスタン!!』ディムロスが空気を読んでいなかった。
「どうしたよディムロス」何を起こっているのか分からないといった表情。
『こんなことを言うのは何だが少し初対面の相手を信用しすぎじゃないか!?』
ディムロスの発言は至極もっともで。
「いや、カイルの友達らしいし。あ、カイルって言うのは…」
『そうではない!…?…お前まさか今の今までそんな甘いことを抜かして来たんではなか…」
そこまで言ってディムロスはスタンの手が震えているのを感じた。
「…お前には、もう会えないって思っていた。怖かった…あの時、ジーニアスが死んだあの時から、ずっと。
何か、ほんの少し、怖かったんだ…」スタンの口から初めて弱音らしい弱音が漏れる。
スタンはここに来た四人組を信じられなかった。クレスが現れたから、だけではない。
襲いかかる敵という状況に、赤鬼と青鬼、守れなかった命を心の何処かで引きずっていた
今度こそ守る。敵は倒す。ディムロス無しでも、一人でも守り抜く。
その決意がスタンを微かに強張らせた。信じる強さを鈍らせた。
「お前と一緒なら何処までも行ける、行ってやるさ。何かあっても多分大丈夫だろ?一応ソーディアンだし」
『…この馬鹿者が』ディムロスはコアがこそばゆくなったような気がした。
少しだけ背伸びをしていた英雄が、友を得て元の田舎者に戻り、大人の時間は終わる。
「あんたがカイルのおっちゃんか?」
ロイドはスタンに背中に向けてクレスを見据え、双刀を構える。
スタンは失った血の分だけ気だるそうに肩を上下させる。
「…おっちゃんて、俺そんなに老けて見えるかな…」
『少なくとも実年齢に見合った感性はしていないがな』
おどけたようなディムロスの相打ち。戦いの最中に笑顔がもれる。
「黙っとけディムロス。…そう言う君は誰だ、敵か?味方か?」
スタンが笑顔から一気に真剣な面構えに変わり、乱入者を詰問する。
「カイルの友達だ!!」ロイドの表情も真剣そのもので、
「よし、一緒に戦おう!」スタンも真剣そのもので、
『ちょっと待てスタン!!』ディムロスが空気を読んでいなかった。
「どうしたよディムロス」何を起こっているのか分からないといった表情。
『こんなことを言うのは何だが少し初対面の相手を信用しすぎじゃないか!?』
ディムロスの発言は至極もっともで。
「いや、カイルの友達らしいし。あ、カイルって言うのは…」
『そうではない!…?…お前まさか今の今までそんな甘いことを抜かして来たんではなか…」
そこまで言ってディムロスはスタンの手が震えているのを感じた。
「…お前には、もう会えないって思っていた。怖かった…あの時、ジーニアスが死んだあの時から、ずっと。
何か、ほんの少し、怖かったんだ…」スタンの口から初めて弱音らしい弱音が漏れる。
スタンはここに来た四人組を信じられなかった。クレスが現れたから、だけではない。
襲いかかる敵という状況に、赤鬼と青鬼、守れなかった命を心の何処かで引きずっていた
今度こそ守る。敵は倒す。ディムロス無しでも、一人でも守り抜く。
その決意がスタンを微かに強張らせた。信じる強さを鈍らせた。
「お前と一緒なら何処までも行ける、行ってやるさ。何かあっても多分大丈夫だろ?一応ソーディアンだし」
『…この馬鹿者が』ディムロスはコアがこそばゆくなったような気がした。
少しだけ背伸びをしていた英雄が、友を得て元の田舎者に戻り、大人の時間は終わる。
「そういや、なんでお前喋れるんだ?アトワイトは喋れなかったのに」
『それは…』
ディムロスが声を発したその瞬間に、スタン目掛け地を這って衝撃が飛ぶ。
直ぐさまロイドが同じ魔神剣を放って相殺する。最初の魔神剣の先には、剣士クレスが構えを取っていた。
「そろそろ続きを始めてもいいかな?遺言にしては、些か長すぎる」その虚ろな瞳を見せて、クレスは笑う。
「おっちゃんは離れていろ。その代わり、後でジーニアスの話を聞かせて貰うからな」
ロイドは剣を強く握る。突然出てきたジーニアス、という単語に動揺が無いわけではない。
しかし先の父親の件同様、今は後回し、まずはこの戦いを終わらせる。
「君は…いや、それよりもあいつ、クレスはテレポートを使…ロイド君!!」
スタンがアドバイスを終えるより前に、クレスはその位置より姿を消した。
転移先は、ロイドの真上。既にクレスは剣を真下に構えてロイドを狙っていた。
剣と剣と剣、三刀が均等に交わり360度を6分割する。
「グッ!!」突然の攻撃を何とか凌いでロイドは蹌踉ける。クレスは追撃を緩めることなく、さらに翔転移。
右前方から横に薙ぐ。斬撃を何とか凌ぐロイド。
正面からの連撃と翔転移による奇襲。ロイドはただ踏みとどまることしか出来ない。
「ディムロス、俺たちも加勢しよう!このままじゃ彼が…」スタンがディムロスに訴える。
『だめだ。自分で分かっているんだろう?その怪我では十分に剣を振るえまい。
よしんば行ったとしても彼の足手まといだ。
クレスとやらもそれが分かっているからお前に手を出しに来ない』
あくまで冷静に判断するディムロス。その声はスタンだけによく響いた。
唇を噛み、沈黙するスタン。ディムロスの声は続く。
『………まったく。暫く見ないうちにここまで馬鹿になったか』
スタンは無言のまま剣を睨み付けた。
『私は唯の剣ではない。動かずとも手段は在るだろう?…今は、体力を温存しろ。隙は、必ず出来る』
スタンはハッとした表情を見せ、すこし嬉しそうにロイドの戦いを見据えた。
ディムロスに会えて、本当に良かった。
『それは…』
ディムロスが声を発したその瞬間に、スタン目掛け地を這って衝撃が飛ぶ。
直ぐさまロイドが同じ魔神剣を放って相殺する。最初の魔神剣の先には、剣士クレスが構えを取っていた。
「そろそろ続きを始めてもいいかな?遺言にしては、些か長すぎる」その虚ろな瞳を見せて、クレスは笑う。
「おっちゃんは離れていろ。その代わり、後でジーニアスの話を聞かせて貰うからな」
ロイドは剣を強く握る。突然出てきたジーニアス、という単語に動揺が無いわけではない。
しかし先の父親の件同様、今は後回し、まずはこの戦いを終わらせる。
「君は…いや、それよりもあいつ、クレスはテレポートを使…ロイド君!!」
スタンがアドバイスを終えるより前に、クレスはその位置より姿を消した。
転移先は、ロイドの真上。既にクレスは剣を真下に構えてロイドを狙っていた。
剣と剣と剣、三刀が均等に交わり360度を6分割する。
「グッ!!」突然の攻撃を何とか凌いでロイドは蹌踉ける。クレスは追撃を緩めることなく、さらに翔転移。
右前方から横に薙ぐ。斬撃を何とか凌ぐロイド。
正面からの連撃と翔転移による奇襲。ロイドはただ踏みとどまることしか出来ない。
「ディムロス、俺たちも加勢しよう!このままじゃ彼が…」スタンがディムロスに訴える。
『だめだ。自分で分かっているんだろう?その怪我では十分に剣を振るえまい。
よしんば行ったとしても彼の足手まといだ。
クレスとやらもそれが分かっているからお前に手を出しに来ない』
あくまで冷静に判断するディムロス。その声はスタンだけによく響いた。
唇を噛み、沈黙するスタン。ディムロスの声は続く。
『………まったく。暫く見ないうちにここまで馬鹿になったか』
スタンは無言のまま剣を睨み付けた。
『私は唯の剣ではない。動かずとも手段は在るだろう?…今は、体力を温存しろ。隙は、必ず出来る』
スタンはハッとした表情を見せ、すこし嬉しそうにロイドの戦いを見据えた。
ディムロスに会えて、本当に良かった。
この地で総計何合の剣戟が行われたのか、数えるのも馬鹿らしいほどに回数がカウントされていく。
そう、剣戟が続いている。
クレスが十何度目かの翔転移を行う。上でも横でも後ろでもなく、地面ギリギリに屈んだ状態で
現出し、下から上に一気に切り上げる。
「でぇりゃぁ!!」
ロイドはモグラ叩きの要領で双剣を振り下ろす。弾かれる三本。
しかしより体勢を崩しているのはクレス。ロイドの右剣がクレスの肩を狙う。
あわや刺さろうかと言うところで、クレスがさらに飛び、二人の距離が開く。
ロイドは息を荒げながら鼻を鳴らす。
行ける。何となく、クレスの出てくる先が読める。ロイドは確信していた。
クレスの使っている技は紛れもなくエターナルソードと同質の技…つまりクレスは…
ロイドが一瞬考え込んだ隙を逃さず、クレスはその場で剣を大きく縦に振り下ろす。
「次元斬!!」
発生する大規模な青い衝撃。ロイドはその何度目かの次元斬を見て一歩も退かない。
剣を構え直し、眼を瞑る。同じ力を得た存在ならクレスに出来て自分に出来ない訳はない。
「はあああああ!!」
双剣が青い輝きを纏う。クレスのそれより圧倒的に長さは無いが、紛れもなくそれ。
「‘次元斬’!!」
クレスの衝撃がロイドの一刀によって真っ二つにされる。同質の力のぶつかり合い。
城跡に再び埃が舞い上がる。
「…あんた誰だ。オリジンと契約したんだろ?何でこんな馬鹿な真似をするんだ!!」
ロイドは吼えた。ロイドはあの村でのあれを見ていない。故に何処かで信じる気持ちがあった。
スタンと同様、その剣質から一本気な性格が見て取れる。
そして何より、自分と同じ時空剣士としての無意味な親近感があった。
そう、剣戟が続いている。
クレスが十何度目かの翔転移を行う。上でも横でも後ろでもなく、地面ギリギリに屈んだ状態で
現出し、下から上に一気に切り上げる。
「でぇりゃぁ!!」
ロイドはモグラ叩きの要領で双剣を振り下ろす。弾かれる三本。
しかしより体勢を崩しているのはクレス。ロイドの右剣がクレスの肩を狙う。
あわや刺さろうかと言うところで、クレスがさらに飛び、二人の距離が開く。
ロイドは息を荒げながら鼻を鳴らす。
行ける。何となく、クレスの出てくる先が読める。ロイドは確信していた。
クレスの使っている技は紛れもなくエターナルソードと同質の技…つまりクレスは…
ロイドが一瞬考え込んだ隙を逃さず、クレスはその場で剣を大きく縦に振り下ろす。
「次元斬!!」
発生する大規模な青い衝撃。ロイドはその何度目かの次元斬を見て一歩も退かない。
剣を構え直し、眼を瞑る。同じ力を得た存在ならクレスに出来て自分に出来ない訳はない。
「はあああああ!!」
双剣が青い輝きを纏う。クレスのそれより圧倒的に長さは無いが、紛れもなくそれ。
「‘次元斬’!!」
クレスの衝撃がロイドの一刀によって真っ二つにされる。同質の力のぶつかり合い。
城跡に再び埃が舞い上がる。
「…あんた誰だ。オリジンと契約したんだろ?何でこんな馬鹿な真似をするんだ!!」
ロイドは吼えた。ロイドはあの村でのあれを見ていない。故に何処かで信じる気持ちがあった。
スタンと同様、その剣質から一本気な性格が見て取れる。
そして何より、自分と同じ時空剣士としての無意味な親近感があった。
「そこの彼にも言ったが」クレスは剣をだらしなく下げて斜め上を見上げる。何を見るというわけでもない。
「僕がどんな理由を持っていたとしても、それは無意味だ。
少なくとも君に何の影響を及ぼさないし、僕にも影響を及ぼさない。
君は人を斬るその瞬間に一々理由を確認しながら斬るのか?」
ロイドもスタンも何も言わない。漸く埃が収まり、限定的に静寂が戻る。
「そんなんじゃ剣が鈍るよ。剣士とは剣を持つ者じゃない、剣になる者だ。剣に善意も判断も要らない」
「ふざけろ!そんなんで納得できるか!!」ロイドは涸れんばかりに怒号を上げる。
「………その強気な発言はどこから来るんだ?
まさか次元斬もどきを撃てたからって僕に勝てるとでも?」
クレスは言い終わった瞬間に、飛んだ。ロイドは集中して転移先を読む。
「上か!!」ロイドは上空に向けて剣を構える。次は裁いて確実に剣をかえ―――
「襲爪!雷斬ッ!!」
次元の先から現れたのはクレスではなく、雷。ロイドの体内を電気が駆けめぐる。
声にならない叫びを発するロイドの胸に袈裟一文字に刀傷が刻まれ、ロイドは片膝と剣を付く。
クレスは処刑人の如く剣をロイドの首に添えた。
「時空剣士を名乗るには、少し経験不足だったね…さようなら」
「『フィアフルフレア!!』」
「僕がどんな理由を持っていたとしても、それは無意味だ。
少なくとも君に何の影響を及ぼさないし、僕にも影響を及ぼさない。
君は人を斬るその瞬間に一々理由を確認しながら斬るのか?」
ロイドもスタンも何も言わない。漸く埃が収まり、限定的に静寂が戻る。
「そんなんじゃ剣が鈍るよ。剣士とは剣を持つ者じゃない、剣になる者だ。剣に善意も判断も要らない」
「ふざけろ!そんなんで納得できるか!!」ロイドは涸れんばかりに怒号を上げる。
「………その強気な発言はどこから来るんだ?
まさか次元斬もどきを撃てたからって僕に勝てるとでも?」
クレスは言い終わった瞬間に、飛んだ。ロイドは集中して転移先を読む。
「上か!!」ロイドは上空に向けて剣を構える。次は裁いて確実に剣をかえ―――
「襲爪!雷斬ッ!!」
次元の先から現れたのはクレスではなく、雷。ロイドの体内を電気が駆けめぐる。
声にならない叫びを発するロイドの胸に袈裟一文字に刀傷が刻まれ、ロイドは片膝と剣を付く。
クレスは処刑人の如く剣をロイドの首に添えた。
「時空剣士を名乗るには、少し経験不足だったね…さようなら」
「『フィアフルフレア!!』」
一瞬、クレスがロイドを殺すその一瞬、即ちクレスの至上快楽の瞬間、隙が生じた。
それを見逃すほど英雄は甘くはない。本物の晶術がクレスを襲う。
数コンマ遅れる判断、転移の間に合わないクレスは迷うことなく、剣を地面に突き立てる。
火の雨がクレスに降り注ぎ、クレスの守護方陣にぶつかって飛沫となる
発散する熱量と煙の向こうからクレスが姿を現した。その眼はスタンを捕らえている。
「術が使えたとはね…だが、ここまでだ、先に死にたいのなら望み通り…」
スタンの表情に気づいたクレスが不満そうな面をする。
クレスの向こうを見ているその視線が気に入らなかった。
クレスが流し目でそれを見て、眼を大きく見開いた。
「確かにあんたみたいにバリエーションは無いけどな…」
ロイドの体が再びオーラに包まれる。
「俺にも一個だけあるぜ、時空剣技」
オーバーリミッツを再開放し、瀕死の体に鞭を打つ。
二つの魔剣、契約の指輪―――全ての条件が整った。
それを見逃すほど英雄は甘くはない。本物の晶術がクレスを襲う。
数コンマ遅れる判断、転移の間に合わないクレスは迷うことなく、剣を地面に突き立てる。
火の雨がクレスに降り注ぎ、クレスの守護方陣にぶつかって飛沫となる
発散する熱量と煙の向こうからクレスが姿を現した。その眼はスタンを捕らえている。
「術が使えたとはね…だが、ここまでだ、先に死にたいのなら望み通り…」
スタンの表情に気づいたクレスが不満そうな面をする。
クレスの向こうを見ているその視線が気に入らなかった。
クレスが流し目でそれを見て、眼を大きく見開いた。
「確かにあんたみたいにバリエーションは無いけどな…」
ロイドの体が再びオーラに包まれる。
「俺にも一個だけあるぜ、時空剣技」
オーバーリミッツを再開放し、瀕死の体に鞭を打つ。
二つの魔剣、契約の指輪―――全ての条件が整った。
「これで終わりだあああああああああ!!!!!」
ロイドの周囲に濃密な力場が展開する。
クレスは即その未見の技の恐ろしさを理解し、剣を盾とした。
「我が魂の輝きを、蒼き刃に変えて魔性を切る!虚空蒼破斬!!!」
しかし全てを打ち砕くようなその破壊力に蒼破斬の闘気は飲み込まれ、ダマスクスソードは砕け飛ぶ。
ロイドは飛ぶ、上空で双剣を二つに重ねる。夜を越えて光が、秘奥義が飛ぶ。
クレスは即その未見の技の恐ろしさを理解し、剣を盾とした。
「我が魂の輝きを、蒼き刃に変えて魔性を切る!虚空蒼破斬!!!」
しかし全てを打ち砕くようなその破壊力に蒼破斬の闘気は飲み込まれ、ダマスクスソードは砕け飛ぶ。
ロイドは飛ぶ、上空で双剣を二つに重ねる。夜を越えて光が、秘奥義が飛ぶ。
「天翔ッ!蒼破斬!!」
今、ここに、魔剣・エターナルソードが発動した。
今、ここに、魔剣・エターナルソードが発動した。
斬撃と呼ぶにはあまりに大きすぎるその一撃がクレス目掛けて堕ちる。
ロイドの位置からでは俯瞰過ぎて表情が分からない。
武器は折れた。後は大打撃を与えてふん捕まえれば少なくともここの情勢は終結に向かう。
そしてみんなでネレイドを倒してメルディを助けられれば…俺がこの剣で
『ロイド!やめろ!!』
(オリジン!?)
『今すぐ剣を戻せ!!』
(何言ってんだ!?今なら…)
『これは罠だ!時空をねじ曲げて契約者が三人、多重契約になる!!』
(どういうことだよ!もうクレスは目の前…!!)
クレスは目の前にいた。剣を持って其処にいた。
剣は青い時空剣技の波動に包まれてその形は分からない。
クレスの顔をロイドは見た。頬が裂けてしまうかのような笑いと。まるで底のない闇のような瞳。
その瞳はエターナルソードを真っ直ぐ見ていた。
揺り起こされる情景、深い森の向こう。
石碑、ダイヤモンド、ヴォーパルソード、フランヴェルジュ、
チェスター、アーチェ、クラース、すず、そして、そして、そして
ロイドの位置からでは俯瞰過ぎて表情が分からない。
武器は折れた。後は大打撃を与えてふん捕まえれば少なくともここの情勢は終結に向かう。
そしてみんなでネレイドを倒してメルディを助けられれば…俺がこの剣で
『ロイド!やめろ!!』
(オリジン!?)
『今すぐ剣を戻せ!!』
(何言ってんだ!?今なら…)
『これは罠だ!時空をねじ曲げて契約者が三人、多重契約になる!!』
(どういうことだよ!もうクレスは目の前…!!)
クレスは目の前にいた。剣を持って其処にいた。
剣は青い時空剣技の波動に包まれてその形は分からない。
クレスの顔をロイドは見た。頬が裂けてしまうかのような笑いと。まるで底のない闇のような瞳。
その瞳はエターナルソードを真っ直ぐ見ていた。
揺り起こされる情景、深い森の向こう。
石碑、ダイヤモンド、ヴォーパルソード、フランヴェルジュ、
チェスター、アーチェ、クラース、すず、そして、そして、そして
「くっそあおあおあおあおあおおおお!!」
「あははははははははははははははは!!」
『く…これ以上ここにいては…ロイド!!今のままでは誰の契約も機能しない!新たな契約が要る!
精霊の力、エタ―――ソードの真の―――使することは出来るのは、最後の――だ!!』
「あははははははははははははははは!!」
『く…これ以上ここにいては…ロイド!!今のままでは誰の契約も機能しない!新たな契約が要る!
精霊の力、エタ―――ソードの真の―――使することは出来るのは、最後の――だ!!』
力場が、閃光に包まれて爆散する。
柄の部分を残して金属バットは霧散した。
柄の部分を残して金属バットは霧散した。
薄暗い部屋の中で、天上王はチェス盤を見ながらアルコールを摂取する。
「それ」を聞いて、満面の笑みを浮かべた。
「それ」を聞いて、満面の笑みを浮かべた。
「精霊王オリジン…今貴様に介入されては敵わん。自らのルールに従って、ご退場願おうか…」
雨が、城跡に降り注ぐ。東より来たる寒波と、ディムロスの晶術によって生じた熱量が
雲を生み、あり得るはずのない雨が降り注ぐ。
ロイドは眼を開け、自分が地面に這い蹲っているのを初めて理解した。
何秒気絶していただろうか。その答えを掴む前に、ロイドは
濡れた石畳の向こうにエターナルソードを見つけた。
ロイドはエクスフィアの付いていない方の手を伸ばして、
立つことままならない体を引き摺る。もうすこし…
あと十センチ…親父…
あと五センチ…父さん…
雲を生み、あり得るはずのない雨が降り注ぐ。
ロイドは眼を開け、自分が地面に這い蹲っているのを初めて理解した。
何秒気絶していただろうか。その答えを掴む前に、ロイドは
濡れた石畳の向こうにエターナルソードを見つけた。
ロイドはエクスフィアの付いていない方の手を伸ばして、
立つことままならない体を引き摺る。もうすこし…
あと十センチ…親父…
あと五センチ…父さん…
コレット…あと一センチ…
ロイドの視界に、突如誰かの足が落ちる。
足はロイドの伸びた手を踏みつけて圧力を加える。手の甲が、折れた。
ロイドの絶叫を背景音楽として、誰か、そう、クレスはゆっくり、ゆっくりと魔剣を掴む。
雨が豪雨に変わり、莫大な音に無音となる。絶叫も、クレスの声も何も聞こえない。
クレスの剣がロイドを手に掛けようとした瞬間、
スタンがディムロスを構えて突進した。その叫び声も聞こえない。
ギリギリまで温存した体力を全て使い、全てを力に。究極の連撃「殺劇舞荒剣」が走る。
それを見てクレスの唇が動く。誰にも聞こえない。その技の名前はスタンしか知らない。
足はロイドの伸びた手を踏みつけて圧力を加える。手の甲が、折れた。
ロイドの絶叫を背景音楽として、誰か、そう、クレスはゆっくり、ゆっくりと魔剣を掴む。
雨が豪雨に変わり、莫大な音に無音となる。絶叫も、クレスの声も何も聞こえない。
クレスの剣がロイドを手に掛けようとした瞬間、
スタンがディムロスを構えて突進した。その叫び声も聞こえない。
ギリギリまで温存した体力を全て使い、全てを力に。究極の連撃「殺劇舞荒剣」が走る。
それを見てクレスの唇が動く。誰にも聞こえない。その技の名前はスタンしか知らない。
カイルは突然の雨に漸く眼を覚ました。あの雷雨を無傷で生き延びた幸運をラビットシンボルに祈ることも
しなければ、雨の心地良さに身を任せることを良しとせず、カイルは剣を構え、父の元へ駆ける。
ロイドに父のことを任せたとは言え、何が起きるか分からない。
ほんの少し眼を開くのも一苦労な、その雨の白の向こうに二つの影を見た。
しなければ、雨の心地良さに身を任せることを良しとせず、カイルは剣を構え、父の元へ駆ける。
ロイドに父のことを任せたとは言え、何が起きるか分からない。
ほんの少し眼を開くのも一苦労な、その雨の白の向こうに二つの影を見た。
切り上げと斬撃。「と、スタンさん…?」
刺突と蹴り。「スタン!」
蹴りと刺突。『スタン!』
突き上げと打ち払い。「スタンさん!」
切り下ろしと右袈裟。「父、さん…」
飛燕連脚と左袈裟。「父さん」
「父さん!」掌打と飛燕連脚。
虎牙破斬と虎牙破斬。「父さん!!」
切り上げと緊急停止、そして転移。「残念だけど、僕の殺劇舞荒剣はここまでなんだ」
魔王炎撃波が虚しく空を切る。
刺突と蹴り。「スタン!」
蹴りと刺突。『スタン!』
突き上げと打ち払い。「スタンさん!」
切り下ろしと右袈裟。「父、さん…」
飛燕連脚と左袈裟。「父さん」
「父さん!」掌打と飛燕連脚。
虎牙破斬と虎牙破斬。「父さん!!」
切り上げと緊急停止、そして転移。「残念だけど、僕の殺劇舞荒剣はここまでなんだ」
魔王炎撃波が虚しく空を切る。
父さん!!!アルベイン流の殺劇舞荒剣の妙は技を途中で停止できる所にあった。
スタンの剣は締めの魔王炎撃波の慣性に縛られ、若干の遅れとなる。
緊急停止の反動を威力に変えて、魔剣によって精度を上げたクレスの翔転移は若干の速さとなる。
その差分だけ、スタンの体に大きな傷が刻まれた。
白い雨の世界に、少しだけ赤が混じって、すぐ白に流されて、英雄の体が、重力に降伏した。
スタンの剣は締めの魔王炎撃波の慣性に縛られ、若干の遅れとなる。
緊急停止の反動を威力に変えて、魔剣によって精度を上げたクレスの翔転移は若干の速さとなる。
その差分だけ、スタンの体に大きな傷が刻まれた。
白い雨の世界に、少しだけ赤が混じって、すぐ白に流されて、英雄の体が、重力に降伏した。
「――――――――」雨の中、耳障りな無音と慟哭が伝播する。
雨は続く。英雄の血を押し流す。最初から無かったかのように。
父さん!眼を開けて父さん!しっかりして父さん!!
クレスはその濁った眼を向けて、カイルに矛先を向ける。
カイルはそれを見ない、血を流す父親に必死で声を掛ける。
雨の音が五月蠅い、とクレスは感じた、とにかく五月蠅い。誰か半鐘の音を止めてくれ…
父さん!眼を開けて父さん!しっかりして父さん!!
クレスはその濁った眼を向けて、カイルに矛先を向ける。
カイルはそれを見ない、血を流す父親に必死で声を掛ける。
雨の音が五月蠅い、とクレスは感じた、とにかく五月蠅い。誰か半鐘の音を止めてくれ…
半鐘?なんで半鐘が…半鐘がなったのは―――
クレスの動悸が速くなる。呼吸が荒くなる。雨に紛れて分かりにくいが唾液の流出が止まらない。
焼けた村、親友と走る、狩りの後、平穏の崩壊、
痒い、痛い、暗い、アミィ、父さん、母さん、僕は―――
デジャヴと共に、デミテルの契約が、禁断症状が、ぬぐえない過去が、発症した。
焼けた村、親友と走る、狩りの後、平穏の崩壊、
痒い、痛い、暗い、アミィ、父さん、母さん、僕は―――
デジャヴと共に、デミテルの契約が、禁断症状が、ぬぐえない過去が、発症した。
カイルは憎悪に炎を燃やしてディフェンダーを掴む。
仇をじっと見据える。喉を押さえ、舌を突きだし、足を震わせてこちらを見ている。
まるで許しを請うような瞳。ふざけるなと、言う気もしない。
クレスはサックを取り出す。最後の希望を飲むために。
カイルは剣を薙ぐ。最初の絶望を飲ませるために。
仇をじっと見据える。喉を押さえ、舌を突きだし、足を震わせてこちらを見ている。
まるで許しを請うような瞳。ふざけるなと、言う気もしない。
クレスはサックを取り出す。最後の希望を飲むために。
カイルは剣を薙ぐ。最初の絶望を飲ませるために。
サックが裂けて、どろりとした深緑の液体の入った小瓶が落ちる。
クレスはこの世の者とは思えない形相で、それを見た。肉体が思うように動かない。
クレスの眼下から消えたカイルは、神への礼拝のように剣を両の手で握り、それを振り下ろした。
クレスはこの世の者とは思えない形相で、それを見た。肉体が思うように動かない。
クレスの眼下から消えたカイルは、神への礼拝のように剣を両の手で握り、それを振り下ろした。
縦に振り下ろされた剣の真横から、応力が掛かる。
矢が一本、カイルのディフェンダーの軌道を弾いて吹き飛ばし、
蔓が一本、地面に接触しかけた小瓶を掴んで、彼の元へ回帰する。
カイルは矢が飛んできた方向を見た。すでに豪雨は小雨になっていて、冴えた光景の中には
誰にもいなかった。カイルが後ろに五番目の男の存在を認識したのと、
ロイドが樹砲閃の「跳弾」を理解したのと、
ティトレイの轟裂破がカイルの体を吹き飛ばしたのは同時刻である。
矢が一本、カイルのディフェンダーの軌道を弾いて吹き飛ばし、
蔓が一本、地面に接触しかけた小瓶を掴んで、彼の元へ回帰する。
カイルは矢が飛んできた方向を見た。すでに豪雨は小雨になっていて、冴えた光景の中には
誰にもいなかった。カイルが後ろに五番目の男の存在を認識したのと、
ロイドが樹砲閃の「跳弾」を理解したのと、
ティトレイの轟裂破がカイルの体を吹き飛ばしたのは同時刻である。
カイルは水平にきれいに吹き飛んで、予想される着弾地点には、地面が無い。
元拷問部屋…最も城が城でなくなった今は「大きな穴」というのが正しい。
ティトレイは分かっていて其処に突き飛ばし、殺した瞬間を目撃しないですむ方法を選んだ。
少しだけ、心が痛んだような錯覚を覚える。
そんなティトレイの横で口から体液を覗かせながら、クレスは忍刀血桜を
投げつけた。血を求め、血によって痛みと渇きを癒す為に。
カイルが地面に落ちるよりも速く、カイルに刺さるよりもはやく、
ディムロスとぶつかって、速度を失した。クレスは躊躇い無く、忍刀を叩き落したそいつに
エターナルソードを振り落とす。
元拷問部屋…最も城が城でなくなった今は「大きな穴」というのが正しい。
ティトレイは分かっていて其処に突き飛ばし、殺した瞬間を目撃しないですむ方法を選んだ。
少しだけ、心が痛んだような錯覚を覚える。
そんなティトレイの横で口から体液を覗かせながら、クレスは忍刀血桜を
投げつけた。血を求め、血によって痛みと渇きを癒す為に。
カイルが地面に落ちるよりも速く、カイルに刺さるよりもはやく、
ディムロスとぶつかって、速度を失した。クレスは躊躇い無く、忍刀を叩き落したそいつに
エターナルソードを振り落とす。
雨が完全に、晴れた。久方ぶりに覗いた月光は、魔剣が背中に刺さった英雄を無慈悲に照らす。
金髪が月光に輝いて、
ロイドはただ叫ぶことしかできなくて、
クレスが刀を引き抜いて、
カイルと剣と刀はゆっくり下方への速度を強めて、
月光に顔が映る。
ロイドはただ吼え、涙を流す。
五体を切り裂こうとしたクレスの鳩尾をティトレイが突いて気絶させる。
カイルは視界が地下の壁に埋まる刹那、父親の最後の顔を見る。
完全な笑顔の、完全な英雄が、完全な父親としてそこに存在していた。
残された二人が、対峙していた。見上げるロイドと、見下すティトレイ。
先ほどまでの戦闘とは打って変わって静謐に包まれる。
「お前、誰だ…」ロイドが呻くように立ち上がる。瀕死状態で秘奥義を放ったロイドは、
その場にあったディフェンダーを杖として立ち上がるしかなかった。
「ティトレイ、お前らをあそこで火に掛けた奴だよ」
ティトレイは弓を装填し、ロイドに背を向けて散乱したクレスの所持品等を回収する。
「…ヴェイグの…ダチが何でこんな事をするんだよ…!!」
ロイドは呻く。4人で名簿を見回したとき、ヴェイグはティトレイのことをここでの唯一の仲間だと言った。
ティトレイは辺りを見回し、バルバトスの遺体の「それ」をディスカバリーする。
「元、な。元親友だ。俺は、恩を返してから死ぬ。それだけだ」
少し痛んではいるがまだ使えそうだ。どうやら遺体と床に挟まって誰にも気付かれなかったのだろう。
その証拠にこの遺体のサックが無い。少女2人のガサ入れを逃れたクローナシンボルが
サウザンドブレイバーと天翔蒼破斬の衝撃によって、現出した。
「…じゃあ、先に死ぬか?」
回収を終えた、ティトレイは再びロイドの方を向く。
「絶対…諦めてたまるか…俺は、まだコレットに会わなきゃいけないんだ…」
ティトレイはほんの少しだけ眉を動かして虚ろな笑顔を見せた。
すぐに背を向けて、クレスを肩に担ぐ。
「俺を、殺すんじゃ無かったのか…」ロイドの声が少しだけ強くなる。
「気が変わった。一回だけ見逃してやるよ…次は無いぜ?」
ティトレイはサックからクレスのアイテムを取り出す。
「ふざけんな…てんめぇ…!!」
ティトレイは一切の反応を見せず、北の方の戦闘を見た。
「サービスで教えといてやる。ヴェイグが東の丘にいる…早くしないとエラいことになるかもな」
ロイドは驚きを隠さずに噎せた。ジューダスと一緒に別れたヴェイグが何でここに?
「信じなくても良い。ただ、俺は嘘だけは付かない。それが俺が俺だった最後の証拠だ。
それこそ信じる信じないはお前の自由だ…出来れば、あいつ、ヴェイグのことを…」
そこで口を噤んだティトレイは少しだけ驚きを表面に出して。
「いや、やっぱ止めとくわ。じゃ、がんばって生きろよ?」
先ほどまでの戦闘とは打って変わって静謐に包まれる。
「お前、誰だ…」ロイドが呻くように立ち上がる。瀕死状態で秘奥義を放ったロイドは、
その場にあったディフェンダーを杖として立ち上がるしかなかった。
「ティトレイ、お前らをあそこで火に掛けた奴だよ」
ティトレイは弓を装填し、ロイドに背を向けて散乱したクレスの所持品等を回収する。
「…ヴェイグの…ダチが何でこんな事をするんだよ…!!」
ロイドは呻く。4人で名簿を見回したとき、ヴェイグはティトレイのことをここでの唯一の仲間だと言った。
ティトレイは辺りを見回し、バルバトスの遺体の「それ」をディスカバリーする。
「元、な。元親友だ。俺は、恩を返してから死ぬ。それだけだ」
少し痛んではいるがまだ使えそうだ。どうやら遺体と床に挟まって誰にも気付かれなかったのだろう。
その証拠にこの遺体のサックが無い。少女2人のガサ入れを逃れたクローナシンボルが
サウザンドブレイバーと天翔蒼破斬の衝撃によって、現出した。
「…じゃあ、先に死ぬか?」
回収を終えた、ティトレイは再びロイドの方を向く。
「絶対…諦めてたまるか…俺は、まだコレットに会わなきゃいけないんだ…」
ティトレイはほんの少しだけ眉を動かして虚ろな笑顔を見せた。
すぐに背を向けて、クレスを肩に担ぐ。
「俺を、殺すんじゃ無かったのか…」ロイドの声が少しだけ強くなる。
「気が変わった。一回だけ見逃してやるよ…次は無いぜ?」
ティトレイはサックからクレスのアイテムを取り出す。
「ふざけんな…てんめぇ…!!」
ティトレイは一切の反応を見せず、北の方の戦闘を見た。
「サービスで教えといてやる。ヴェイグが東の丘にいる…早くしないとエラいことになるかもな」
ロイドは驚きを隠さずに噎せた。ジューダスと一緒に別れたヴェイグが何でここに?
「信じなくても良い。ただ、俺は嘘だけは付かない。それが俺が俺だった最後の証拠だ。
それこそ信じる信じないはお前の自由だ…出来れば、あいつ、ヴェイグのことを…」
そこで口を噤んだティトレイは少しだけ驚きを表面に出して。
「いや、やっぱ止めとくわ。じゃ、がんばって生きろよ?」
ティトレイは少し力を込めてホウセンカとブタクサをありったけ咲かせた。
花粉と、弾ける無数の音が視界と音をかき消して、
ロイドが漸く眼を開けたときには、英雄の遺体だけが残っていた。
ロイドは声を上げて泣く。何故泣くのかは分からない、花粉が目に入ったからなのは間違いない。
花粉と、弾ける無数の音が視界と音をかき消して、
ロイドが漸く眼を開けたときには、英雄の遺体だけが残っていた。
ロイドは声を上げて泣く。何故泣くのかは分からない、花粉が目に入ったからなのは間違いない。
ティトレイは西へ進み、海岸まで出てきた。クレスを下ろして、海を眺める。
「殺せたら殺してたんだがな…」
糸が切れたかのようにティトレイは腰を落ち着けた。
「樹砲閃、轟裂破、そんでフォルス…この疲れ…三つ星半だぜ。もー限界だ」
ティトレイは見逃す理由を探していた。殺さなかったのではない、殺せなかった。
サウザンドブレイバーによって精神力を、ダオスの最後の一撃によって体力を失い、
のろのろと歩くしか出来なかった為にジェイの侵攻を許すほど消耗していたティトレイには、
メンタルバンクルとエメラルドリングの補助を持ってしても、あれが限界だったのだ。
だから弱みを見せる前に逃げる必要があった。そういう建前がある。
「良い奴っぽかったな」
ティトレイはこれからの算段を立てる。やはりクレスは発症してしまった。
この薬を使えばとりあえず沈静するだろうが、今使えば次の発症は多分今日の正午。
それまでに万全の体勢が整うとは思えない。やはりクレスとの連携には鎮静剤の製造が不可欠。
原型はここにある。材料は元々自分が用意した物だから何とか作れるかも知れない。
調薬と調理はだいたい同じだろう、多分。昔取った杵柄と言う奴だ。
ティトレイは北を向いた。精神力ならすぐに回復するだろう。
歩けるくらいまで回復したら北の森…B2が塞がっているからC2に行く。
B3の方が隠れやすいとは思うが万が一C3が封鎖されて禁止エリアに包囲されるのは不味い。
出来る限りヴェイグ達から離れなければ…自分は、もう見ず知らずの少年を殺した。
もう復讐者ですら無い。ヴェイグ達から見れば…唯のモンスターと変わらないだろう。
その方が、幾分気が楽だ、と思った。最初から自分は人殺しなのだ。彼女を守れなかったあの時から。
「見殺しにした奴が惚れてた男じゃ、しょうがねえよな。なあ?しいな…」
本当は、もしあいつじゃなかったら、わざわざ花粉を使わずに無理してそのまま殺していた。
そう言う彼の顔は、少しも笑っていなかった。
「殺せたら殺してたんだがな…」
糸が切れたかのようにティトレイは腰を落ち着けた。
「樹砲閃、轟裂破、そんでフォルス…この疲れ…三つ星半だぜ。もー限界だ」
ティトレイは見逃す理由を探していた。殺さなかったのではない、殺せなかった。
サウザンドブレイバーによって精神力を、ダオスの最後の一撃によって体力を失い、
のろのろと歩くしか出来なかった為にジェイの侵攻を許すほど消耗していたティトレイには、
メンタルバンクルとエメラルドリングの補助を持ってしても、あれが限界だったのだ。
だから弱みを見せる前に逃げる必要があった。そういう建前がある。
「良い奴っぽかったな」
ティトレイはこれからの算段を立てる。やはりクレスは発症してしまった。
この薬を使えばとりあえず沈静するだろうが、今使えば次の発症は多分今日の正午。
それまでに万全の体勢が整うとは思えない。やはりクレスとの連携には鎮静剤の製造が不可欠。
原型はここにある。材料は元々自分が用意した物だから何とか作れるかも知れない。
調薬と調理はだいたい同じだろう、多分。昔取った杵柄と言う奴だ。
ティトレイは北を向いた。精神力ならすぐに回復するだろう。
歩けるくらいまで回復したら北の森…B2が塞がっているからC2に行く。
B3の方が隠れやすいとは思うが万が一C3が封鎖されて禁止エリアに包囲されるのは不味い。
出来る限りヴェイグ達から離れなければ…自分は、もう見ず知らずの少年を殺した。
もう復讐者ですら無い。ヴェイグ達から見れば…唯のモンスターと変わらないだろう。
その方が、幾分気が楽だ、と思った。最初から自分は人殺しなのだ。彼女を守れなかったあの時から。
「見殺しにした奴が惚れてた男じゃ、しょうがねえよな。なあ?しいな…」
本当は、もしあいつじゃなかったら、わざわざ花粉を使わずに無理してそのまま殺していた。
そう言う彼の顔は、少しも笑っていなかった。
ティトレイが殺したと思っている少年は、夢を見ていた。
もう見ることも無いと思っていたあの夢。父親が死んだあの日の夢。
しかし少しだけ違う。殺したのはバルバトスじゃない。
誰なんだろう…マントを靡かせて…すごくカッコよい大剣だけが鮮烈で。
でも、何かが欠落した夢。その光景には天使が欠落していた。
もう見ることも無いと思っていたあの夢。父親が死んだあの日の夢。
しかし少しだけ違う。殺したのはバルバトスじゃない。
誰なんだろう…マントを靡かせて…すごくカッコよい大剣だけが鮮烈で。
でも、何かが欠落した夢。その光景には天使が欠落していた。
「父さん…リアラ…」
カイルは涙を流して、眠っている。外傷は殆ど無い。
父親の最後を見て、カイルは穴に落ちた。
落ちた先は、石床ではなく、もう少しだけ柔らかい「者」。
首の欠けた遺体の上で彼は眠る。今だけは、眠らせてあげよう。
これが幸運だったのか、息子達を守ろうとする父親達の意思だったのかはもう判別が付かない。
ただ、現象だけは説明できる。
父親の最後を見て、カイルは穴に落ちた。
落ちた先は、石床ではなく、もう少しだけ柔らかい「者」。
首の欠けた遺体の上で彼は眠る。今だけは、眠らせてあげよう。
これが幸運だったのか、息子達を守ろうとする父親達の意思だったのかはもう判別が付かない。
ただ、現象だけは説明できる。
彼が、カイル=デュナミスが持っていたラビットシンボルは跡形も無く粉砕した。
今だけは眠らせてあげよう。
今だけは眠らせてあげよう。
どのような道を歩むことになろうと、彼が休まる時は二度と来ないのかも知れないのだから。
【カイル=デュナミス 生存確認】
状態:ロイドと和解 意識衰弱 HP45% TP60% 睡眠 悲しみ ずぶ濡れ
所持品: 鍋の蓋 フォースリング ウィス
第一行動方針:???
第二行動方針:スタンを守る
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡元拷問部屋
状態:ロイドと和解 意識衰弱 HP45% TP60% 睡眠 悲しみ ずぶ濡れ
所持品: 鍋の蓋 フォースリング ウィス
第一行動方針:???
第二行動方針:スタンを守る
第三行動方針:リアラを守る
第四行動方針:ハロルドが気になる
現在位置:E2城跡元拷問部屋
【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:TP35%、善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 禁断症状 気絶 ずぶ濡れ
所持品:エターナルソード
基本行動方針:ひとまず禁断症状で苦しみたくはない
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:E1海岸→C2森
状態:TP35%、善意及び判断能力の喪失 薬物中毒 禁断症状 気絶 ずぶ濡れ
所持品:エターナルソード
基本行動方針:ひとまず禁断症状で苦しみたくはない
第一行動方針:デミテルの指示通りに行動する(不安定)
現在位置:E1海岸→C2森
【ロイド=アーヴィング 生存確認】
状態:HP15% TP10% 意気消沈 右肩に打撲、および裂傷 右手甲骨折
胸に裂傷 疲労困憊 ずぶ濡れ
所持品:トレカ、カードキー ディフェンダー エターナルリング
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:状況の整理
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
第四行動方針:メルディの救出
現在位置:E2城跡
状態:HP15% TP10% 意気消沈 右肩に打撲、および裂傷 右手甲骨折
胸に裂傷 疲労困憊 ずぶ濡れ
所持品:トレカ、カードキー ディフェンダー エターナルリング
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:状況の整理
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
第四行動方針:メルディの救出
現在位置:E2城跡
【ティトレイ=クロウ 生存確認】
状態: HP70% TP1% 感情希薄 ずぶ濡れ
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック オーガアクス
エメラルドリング 短弓(腕に装着) ミスティシンボル クローナシンボル クレスの荷物
基本行動方針:命尽きるまでゲームに乗る(優勝する気は無い)
第一行動方針:休憩しながら北の森に行き、クレスの鎮静剤を精製する
第二行動方針:クレスにヴェイグ殺しを依頼する
現在位置:E1海岸→C2森
状態: HP70% TP1% 感情希薄 ずぶ濡れ
所持品:フィートシンボル、メンタルバングル、バトルブック オーガアクス
エメラルドリング 短弓(腕に装着) ミスティシンボル クローナシンボル クレスの荷物
基本行動方針:命尽きるまでゲームに乗る(優勝する気は無い)
第一行動方針:休憩しながら北の森に行き、クレスの鎮静剤を精製する
第二行動方針:クレスにヴェイグ殺しを依頼する
現在位置:E1海岸→C2森
拷問部屋にS・D、忍刀血桜が置いてあります。
エターナルソードに関する暫定ルール
- エターナルソード←→マテリアルブレードへの変換はロイドのみが可能
- 変換には所持してからの一定時間の精神統一が必要(敵から奪って即変換は不可)
- 多重契約による矛盾を回避する為どの時空剣士との契約も機能を一時凍結する
- 時空剣士(オリジンとの契約者)が一人になるまで再契約出来ない=真の力は使えない
- 多重契約状態でロイドに無理矢理干渉したオリジンの状態は不定
- 現状ではエターナルソードは時空剣技と相性の良いだけのただの高性能大剣
- ロイド以外の二人が最後の一人になった場合、オリジンとの契約が可能なのかは不定
- そもそも制限下で真の力がどこまで発揮できるか不定
【スタン=エルロン 死亡確認】
【残り17名】
【残り17名】