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  • 俺の受難と生命の意味と

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

俺の受難と生命の意味と

最終更新:2019年10月13日 17:28

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

俺の受難と生命の意味と


 こつり。
 足の下敷きになった石ころが、剥き出しの岩肌に擦れ小さな音をたてる。


 こつり。こつり。
 手にした道標が、夜明けを知らない暗がりを頼り無く照らす。
 背後には、未成熟な丈を幾倍にも引き延ばしたかのように細く長く、影が弱々しく揺れている。


 こつり。こつり。こつり。
 腰に差した長剣の切っ先が地肌に触れる。
 その剣にとって元来有り得なかった事象。所有者の変更という重大な事実を感覚を以てして知らされる感慨。
 主にとっては些細な事象。背を押す焦燥が歩を進め、それがいまの彼のすべて。


 こつ、こつこつこつこつ……
 約束の場所は目と鼻の先。一向に現れない待ち人の気配。
 冷や汗が頬を伝う。鼓動が激しさを増す。吐息が……白く色付く。
 思わず息を呑む。目の前、ほんの数歩先から、景色が凍り付いていた。
 緊張はピークを迎え、足取りはいよいよ駆け足。
 踏み締める融解間際の氷の表面が、不快な感触を伝えた。


 ザッザッザッザッザッ……
 頼む、頼むから無事でいてくれ。
 少年は盲目的に祈り続ける。神を否定した彼が何に祈りを捧げるのか。それは定かでない。
 その願いは、もっと純粋で根本的な、無意識下の感覚というそれだったのかもしれない。


 グシャ――――――
 氷を形作る分子構造が、強か加えられる圧迫にその体積を縮める。
 少年の歩みが、はたと停まった。


「ちょ……そ………あ…」
 人為的拘束を脱したランタンが束の間自由を味わう暇もなく重力の支配下に置かれ、湿っぽい洞窟の床へ転げる。
 ちらちらと照らされる、ひと揃いの真っ赤な靴。すらりと伸びた脚を覆うハイソックスとのコントラストが美しい。
 ピンクのワンピースの裾しおらしく腿を包み隠し、その両脇シンメトリに投げ出された細長の腕もただそれだけで愛らしい。

 人の気配は無い。

「……アラ……嘘……そ…な」
 色取り豊かなトッピングに少年の眼は、心は奪われていった。
 紅、白、橙、山吹、黄緑。艶やかな装飾が、清楚な印象をもつダークブラウンの髪によく映えた。
 乳白色の肌はワインレッドの模様に染められ、なんといっても胸元のワン・ポイントが彼の視線を独占した。

 ひとの気配はない。

 胸部でさんざ自己主張を続けている立派なアクセサリ。
 ここまで大胆な装いはかつて見たことが無い。身に余る程巨大なそれは最早オブジェと呼ぶに相応しい。
 しかしそれは装着者に吸い付くようにフィットし、さらには取り巻く背景にすら溶け込む一体感を醸しだしていた。

 ひとのけはいはない。




 りあらは しんでいた




 脚が、指先が、肩が震える。顔からは血の気が引き、末端から徐々に身体が痺れて動かなくなる。
 眼は血走り、歯がガタガタと音を立て、やがて全身が痙攣を引き起こした。
「な……りあら、りあ……うっ」
 ただ嗚咽混じりの片言を吐くことが、唯一動く喉にできるすべてだった。
 少女の変わり果てた姿に、傷塗れの少年の心は張り裂けんばかりの悲鳴を上げ



「ぅあっ………っっっあ゛ああぁああああぁぁああああぁぁぁあああああぁぁぁぁ!!!!!」



 間も無く絶叫をともない勢いよく張り裂けた。

           ――――――――――――――――――――――――――――――

『こんな形で君と再会することになろうとは。運命とは皮肉なものだな』
 仄暗い穴倉のどん底に、彼は居た。
 時刻はもう明けで、見上げれば朝日の片鱗が覗く。すべては、もう終わっていた。
『しかし、君が無事でなによりだ。この高さから墜ちた衝撃をまともに受けていたら、流石に徒事では済まなかっただろう。
 ……あの馬鹿も無茶をする。仲間を護る為とはいえ、私を投げつけて難を逃れるとは』
 短刀を拾い上げながら、カイルはにわかに顔を顰めた。
 沈んだ少年の気を紛らそうという気遣いの意図で弁舌を揮ったつもりだったが、失言だった。
 思い直せば、自分はもともと口達者なほうでは無かったではないかと今更自嘲する。
 そんなものは、シャルティエとかイクティノスなんていうインテリ優男どもに任せておけばよかったからだ。
 だが現状そうもいってはいられず、気分を変えて当たり障りの無い話題をと思考を巡らせるが、
『あの少年……ロイドといったか、彼は』
「……誤解して斬りかかってきたんです」
 自分から安易に話し掛けるのは止そうと考えを改める結果に終わった。
 結果的には和解したんですけど。カイルの補足は黴臭い石壁に消える。

 押し黙るディムロスの気苦労を後目に、カイルは薄暗い床を探っていた。
 間もなく立ち上がった彼の手には、仰々しい黄金の蝙蝠が握られている。
『……意外だな。君は他人の亡骸に手を触れるなど気が進まない性と思っていたのだが』
 またも失言だが、カイルは別段気に掛ける素振りも見せずさらに少し歩を進め、おもむろに屈み込んだ。
「母さんにいつも言い聞かせられてたんです。綺麗事は二の次。生き残るには、そのとき必要なものを見極める細やかさと、
 神をも畏れない図太さが不可欠なんだ、って。……正直、破綻してるとは思いますけどね」
 踵を返した彼は、裾の解れた布やらなにやら拾い上げ、どんな物も呑み込む化物サックにそれらを丁寧に仕舞い込んだ。
 黙々と作業をすすめる少年の瞳は、些か曇って見えた。
『……上策だな。君の母君は聡明な方らしい』
 確かに、この決断は今後少なからず彼に利益をもたらすであろう。
 特にこの首輪、解除法の模索に確実に役立つものの、死人が出なければ手に入らない貴重な代物。
 手札にあるとないとでは情報量に天地の差が出る。
 智のある者、できればハロルドとの合流が叶えば、これを利用して状況の挽回を図ることが出来るやもしれない。
「ホントは……恩人の遺体を漁るなんて罰当たりだし、止しておきたかったんですけど、ね……」
 しかし、代償として有り余る背徳感の重圧、そしてなによりこの年端もいかぬ少年の自らを嘲う乾いた表情に憤りを憶えた。
 マスターであるスタン亡き今、この抑え切れぬ憤怒を憎き天上王に返上する時がはたしてくるのだろうか。
 この少年に、いつか安息はおとずれるのであろうか。
 思考に暮れながら、また少しばかりのセンチ・メンタルに鬱々と焦らされながら、ディムロスは少年と共に廃墟を後にした。

 カイルに悲しみを噛み締める猶予は無かった。立ち止まる時間は生命を削ると彼は知っていた。
 横たわる父の亡骸を前に、何か奇異な違和感を憶えた。しかしその正体を探るにはいまは相応しくはない。
 彼はただ黙々と、南を指し地面を蹴った。


 そして、悲劇は加速の一途を辿ることとなる。

           ――――――――――――――――――――――――――――――

 あれから、どれだけの時間が過ぎたであろうか。
 少年は少女の亡骸の傍らに跪き、彼女の砂糖塗れに汚れた髪を梳き解すように撫で続けた。
 その寝顔のような自然な表情からは、凄惨な死に様を彷彿させる苦痛は感じられなかった。
 彼にとってそれが気休めだとか救いであったかは定かでないが。
「ごめん……護ってあげられなくて、ごめん……ごめん……」
 ディムロスはその脇で、彼の空虚な懺悔を聞き続けるほか無かった。

 悲惨としか、表しようもない。
 少年の目は虚ろに泳いで焦点が覚束ず、かつて見た若い活力に溢れる眼差しが嘘のようにさえ思える。
 可能ならば、目を逸らしてしまいたい。それが率直な感想だった。
 ディムロスの気を滅入らせる要因はそれだけではない。
 場を覆う冷気からひしひしと伝わる、無表情の嘆き。
 ふと、グリッドらと共に出会った金の髪の少年の姿が脳裏をよぎる。
『やはり……彼女は、奴の傀儡とされていたようだ』
 アトワイトが会話を拒んだ理由がはっきりした。少年になんらかの弱味を掌握され、沈黙を余儀無くされているのであろう。
 彼自身の能力は未知数、しかし素面の身でソーディアンの最大級の力を引き出すことができるならばそれだけでも充分な脅威である。
 一刻も早く彼の暴走を止めねばならない。次なる被害者を出さないために。彼女の手を、これ以上穢さないために。


 喪失感にすべてを奪われるという経験を、貴方はしたことがあるだろうか。
 少年はいま、壱拾五の幼心にそれを噛み締めている。不憫、などといってはむしろ不謹慎か。
 正確に云えば、彼はまだ現状‘すべて’を失ったわけではない。あくまで現状の話ではあるが。
 しかし少女の存在は、彼にとってその比重を占め過ぎていた。
 盲目的な愛情はときに至高の悦びを彼ないし彼女に与えるであろう。
 同時に、理性の伴わない愛情の弊害なりリスクは、計り知れない危険性を潜めている。
 貴方が健全なる第二の人生を送りたいと願うならば、その喪失なり精神の歪みに備えが必要不可欠となる。
 しかしながら、彼は幼かった。その重みを受け止めるには、機が熟し切らなかった。ただ、それだけのこと。

『―――くん、おい、カ……』
 剣は持ち主に訴え掛ける。否、延々訴え続けている。手応えはない。
 カイルには既に五感が無かったのだろうか。‘そこ’へ至る以前から。
「ごめんね……痛かったよね。苦しかったよね。淋しかったよね……」
 重い腰を唐突に上げると、彼はふらつく足取りで来た道を引き返してゆく。
『……カイル君、何処へ行くつもりだ?』
 訝しむディムロス。しかしやはり彼は応えなかった。ただひたすらに、のらりくらり凍った床を蹴る。
 行き着いた先には、リアラを発見し慌てて駆け出した際取り落とした彼の鞄が横たえられていた。
「……でも、もう寂しい想いはさせないよ……」
 鞄に手を差し込み、掻き回すように乱雑に中を探る。さらに痺れを切らしたか、ついには中身を湿気た床へぶちまけてしまった。
 コンパスやら、食べさしのパンやら、穴の開いた篭手やらが辺りに散乱し、思い思いの音響を奏でた。
『おい……まさか……!』
 目当てのものを拾い上げ、微かに覗く灯りを映し込んだそれを愛おしむように撫でる。
「待ってて……いま、そっちへ逝くから……!!」
 カイルは短刀を逆手に握り締め、ゆっくりと頭上高く掲げた。

『血迷ったか……ふざけた真似は止せ!!』
 ディムロスが低位置から突き上げるように吼える。
『いま此処で命を絶って、何になるというのだ。それこそ、ミクトランの思う壺ではないのか』
「俺は、あなたのように立派なヒトとは違う……俺は、一人じゃなんにもできないんです。
 こんなことになってしまって……もう、俺、終りなんです、なにもかも」
 支離滅裂吐き捨てるカイルの声は、弱々しく震えていた。虚ろな瞳に、生への渇望が映し出されてはいなかった。
『弱音を吐くな。まだ終わってなどいない。君にはまだ、できることがあるだろう』
「俺にできること……? そんなもの、なにもありませんよ。
 俺は、誰ひとり守ることができなかった。みんな……みんな死なせてしまった!!」
『それでも、君は生きている。生ある限り、人には為すべきことがある。
 無念の死を遂げた人々の為にも、君には生き延びる義務があるはずではないか』
「そんなの関係ない! 父さんも、母さんも、ロニも、リアラも。誰もいない世界で、生きてたってしかたない。
 俺にはもう……生きてる意味が無いんだ!!」
『この馬鹿者ッ!! そのような台詞、軽々しく口にするな!!』
 ディムロスは怒鳴りつけつつも少年に同情の目を向けた。
 両親をもたない彼がさらに二人の友をも喪った事実は、その身にあまる衝撃であろう、と。
 彼はまだ知らなかった。カイルの両親が、この地で最期を迎えたことを。
『それに、いつか君は言っただろう。自分は、英雄になるのだと。その英雄が、かように容易く命を投げ出してしまおうというのか』
「違う……俺、リアラと出逢って、一緒に過ごして、やっと気付いたんです。
 俺は、世界を救う英雄になんてなれない。俺は、世界に選ばれた人間なんかじゃないんだって」
 カイルは歯噛みした。そして大きな溜息を吐き、瞳を閉じる。
「俺は、ちっぽけな人間なんだ。だから、俺には、リアラが必要なんだ……リアラがいなくちゃ、俺は、ダメなんだ!」
『……甘ったれるなッ!!』
 ディムロスの声は、微かに上擦っていた。取り繕いもせず怒鳴り散らす自分に内心どこか懐かしさを感じていたがそれはまた別の話。
『君はここまで、そうやって、多くの人々に支えられて生きてきたんだろうが。
 いまこうして生き長らえているのも、誰かと支えあった絆が齎した因果だろうが。
 それを理解していながら、なぜ、自ら命を絶つなどという愚かなことを口走るのだ!!』
 カイルは閉口した。悪戯を戒められた、萎縮するばかりの幼子のように。

 そんなことは、解ってる。自分がこうして生き残ることができたのは、命を懸けて守ってくれた多くの人々の御陰なんだ。
 あのとき、リアラが危険を報せてくれなければ、瞬時に消炭になっていただろう。
 あのとき、ミントさんの慰めがなければ、自棄に走っていただろう。
 あのとき、クラトスさんがリアラたちを救ってくれていなければ、早々に生きる希望を失っていただろう。
 そしてあのとき、父さんが……―――

 ―――違う。そんなの、なんの意味もない。
 みんな、みんな死んでしまった。いまある事実は、それだけだ。
 だれの力にもなれず、だれの命も護れず、みんなを楯にして、俺は、生きている。
 ここには、誰もいない。
 俺は……ひとりぼっちだ。

「……うわあああぁぁぁぁっっ!!」
 振り上げたカイルの諸手に力が込められる。
『まだ理解出来ないか。皆の死を無駄にするのか。数多の閉ざされた生への願いを、踏み躙ろうというのか!!』
「うるさい、うるさいうるさい!! 俺は、リアラたちのところへ逝くんだッ!!」
 小刀を握る手の震えが激しさを増す。汗がカイルの身体を流れ落ち、ディムロスの身を伝った。
 彼の生を繋いでいるのは、痛覚への潜在的躊躇ただそれだけだった。
 それも、もう終わる。
『よせ、やめろ、やめるんだっ!!』
 大きく息吐くカイル。彼の耳に、もうディムロスの声は届かない。
 緊張の糸が徐々に解けていく。すべてを悟ったような表情の少年に、最早躊躇いは無くなった。
「やっと、やっと逢える……いま逝くからね……リアラッッ!!!」
 迷いの無い一閃が、少年自身に振り下ろされる。

 ―――イル、カイル……


「なっ!?」
 刃が勢いを緩め、その切先がカイルの腹の皮一枚を突いてぴたりと止まった。
 咄嗟に出口方向を振り返る。
 索敵行動。それは生存への本能的反射。自ら死を望んだ者とて、それは発動されるらしい。生のある限りは。
 視線の先には何人の姿も認められなかった。


 ―――カイル。私の声が、聞こえるか。カイル……


『……背後だ、カイル君!』
 すかさず振り返り、辺りを探る。そこには、自ら撒き散らした道具類が転がるのみ。
 薄汚れたマント。正体不明のカード。水の少し残ったボトル。忌々しい金の首輪。
 その真ん中で、小さな石ころが光を放っていた。
「あなたが……なぜ……」
 声の主は、剣士の形見である透き通る蒼をした宝玉だった。

『無機生命体エクスフィア、か……我々ソーディアンと似た原理なのかも知れんが……』
 しかし自分には時間が無い。エクスフィアなる存在は淡々と述べた。
 もともと彼は人間としての肉体をもっていた。それはカイルのよく知るところである。
 ところが彼、クラトス=アウリオンは、この地に措いて肉体の滅びを迎えた。早い話が、彼は死んだのである。
 数千年の時を生きた物質としての歴史に終止符が打たれ、彼の意識はたかだか百年足らずの寿命しか持ち合わせない「人間」を
 「天使」としてここまで生き長らえさせた高度無機生命体「クルシスの輝石」に取り込まれたのだという。
 そして今、その意識までもが石に呑まれつつあり、彼は完全な最期を遂げようとしている。

 気不味そうに視線を逸らせるカイル。自殺未遂の現場で命を救われた恩人に遭ってしまったのだから無理からぬ話か。
 顔を顰めつつも、彼は唇を噛み締めた。それでも、溢れ出る感情を抑えられそうもない。
 死を望んだ自分が、なぜ内心彼との再会を喜ばしく感じているのか。この出逢いが泡沫のものと知り、なぜ心を傷めるのか。
 自分の感情が、理解できなかった。

『……カイル。真なる最期を迎える前に、お前に云っておきたいことがある』
 彼の低い声色と相俟ってか、石の紡ぐ振動は水の底から響くように曇っていたが、それを逃すまいとカイルは耳を欹てていた。
『ユグドラシル……ミトスは、過ちを繰り返そうとしている。姉のマーテルを喪い、周囲がなにも見えなくなっているのだ。
 恐らく、ミトスはすべての参加者を殺戮し、マーテルを蘇らせようとしているのだろう』
 正確には魂胆は少し違っているが、クラトスの言葉に大きな間違いは無かった。
 ミトスの言い分は、本当だった。姉の為に、我を失っていただけなのだ。
 だからといって同情の余地は微塵も有りはしないことに変わりは無いが。
『解ってやってくれとは云わない。ミトスの犯した罪、そしてこれから起こす過ちは、到底赦されるべき所業では無い。
 また、ミトスを止めてくれと頼む心算も無い。お前にとって、彼は憎むべき加害者に過ぎないのだから。
 だが、せめて知っておいて欲しい。ミトスは姉想いの、どこまでも純粋で、哀れな少年なのだ。
 しかしながら彼は幼かった。盲目過ぎた。力を持て余し過ぎた……ただ、それだけのこと。
 ミトスもまた……このゲームの被害者でもあるのだ』
 カイルの心は揺れた。ミトスは、大切な人の死に耐えることが出来なかった。滾る感情を、処理することが出来なかった。
 行為の方向性はまったく違っている。しかし、リアラの死に直面した自分の取った行動は、彼と同じではないのか。
 なら、彼を否とする自分はどうすべきなのか。彼が答えを出す前に、クラトスは続けた。
『彼を止めることが、私の為すべき責務だった。彼を残して死ぬことは、赦されない筈の身であった。
 リアラの命を奪ったミトスや、志半ばにして果てた無力な私を、幾らでも謗り、恨むがいい』
 恩人であるあなたを恨むなんて。カイルの呟きは、クラトスの言葉に掻き消され彼に届くことはなかった。
『だから……死ぬな、カイル。命を粗末にしようなどと、愚かしいことを考えるな。
 私だけではない。偶々、私は死して尚お前に伝えることが出来たが、死んでいったお前の仲間は誰しもが同じ想いでいた筈だ。
 多くの人々に紡がれたお前の命が失われることを、誰が望む。否、何人たりとも望みはしないだろう』
 クラトスの脳裏に、ロイドの、神子コレットの、そしてリアラの姿が浮かぶ。人の云う、走馬灯という代物か。

『……来るべき時が来たようだ。間も無くして、私の意識は無に帰すだろう……』
 カイルは目を見開く。エクスフィア、もとい、クラトスの姿を初めてまじまじと見詰めた。
 胸に、締め付けられるような、鬱蒼とした感覚を憶えた。
『だが、迷うな、カイル。お前は、お前の道を歩め。後ろを振り返るな。躊躇いは、災いしか齎さん。
 この身滅びようとも、私はお前達を見続けよう。輝石の力が、お前を導いてくれるだろう』
 カイルは無意識のうちに、小さく頷いていた。クラトスの遺言を、胸に深く刻み込んだ。
 そして朧に気付く。その後ろ姿を初めて見たとき、なぜ彼を父と間違えたのか。
 最後にひとつだけ頼みがある。消え入りつつあるクラトスの囁きに、カイルは神妙な面持ちで彼を見返す。
『我が息子……ロイドに逢うことがあれば、伝えて欲しい。不甲斐無い父ですまなかった、と……』
「不甲斐無いだなんて……そんなことはありません! あなたは……」
 ようやく口にすることができた、クラトスへの敬いの気持ち。しかし、またしても声は届かなかった。
 すべてが、遅すぎた。
「クラトスさん、待って、クラトスさん……!」


 ―――生きろ、カイル……さらばだ…………―――


「あなたは……俺の、英雄だ……」
 石の放つ光は徐々に力を弱め、やがて消えた。

『クラトス=アウリオン……大した男だ。死の淵にありながら、最期まで残された者を憂い続けようとは』
 ディムロスは知っていた。正確には、彼は世間一般に云われる死を迎えた訳ではない。
 彼は無機生命体の中で意識体として生き続ける。母体である石が失われるその時まで。
 だがそれは、死を遥かに超越する苦痛を意味する。
 何も見えず、聞こえず、感じない。すべての感覚を奪われ、完全な闇の中で半永久的にただ「生き」続ける。
 しかし、彼が少年にそれを告げることはない。
 永遠の「無」を知りながら少年の行く末を想う彼の尋常ならざる決意を無為にすることは、誰にも赦されはしないのだから。

「俺は……馬鹿だ。大馬鹿野郎だ……」
 カイルは膝を衝き、地面を強か殴りつけた。岩を覆う氷が、徐々に体温に溶かされていった。
 あの人は、命懸けでリアラを護ってくれて、死んでしまったっていうのに、まだ、俺を気遣ってくれていた……
 それなのに、俺のしたことは、なんだ。
 宛てもなく島をうろついて、行き当たりばったりで人助けの真似事なんかして、仲間が死んでいくたびただ泣いていて、
 父さんとリアラを天秤に掛けることばっか考えて、でもなんにもできなくて、挙げ句の果てに……
「畜生……畜生、ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!」
 カイルは、泣いた。泣いて、泣いて、泣きとおした。
「父さん、母さん、リアラ、ロニ、みんな……ごめん。俺、取り返しのつかない間違いをしようとしてた……」
 辛い。悲しい。苦しい。怖い。情けない。すべての憂いを吐き出すように、喚き散らした。
「クラトスさん、俺、生きるから……あなたのくれたこの命で、生きる。
 俺自身の為にも。みんなの為にも。きっと、生き続けてみせるから……!!」
 涙に溺れた彼の瞼は、赤く腫れ上がっていた。鼻垂れたその顔は、到底見られたものではない。
 しかしその瞳の奥には、なにかを乗り越えた意志の灯が確かに宿っていた。 

 洞窟の最奥部、求める人も無く虚しい輝きを放つランタンの灯りは、少女の亡骸を微かに照らし出し続けた。
 少年の感情入り混じった叫びが、光届かぬ洞窟に木霊する。
 陽が高くなり、凍り付いた壁が溶け出していることを指摘してはナンセンスだろうか。
 少女の顔は、いつしか健やかな笑みを湛えていた。

 光を失った小さな宝玉は、少年の手の中で静かに眠る。
 時刻はそろそろ、耳障りさが取り柄のモーニング・コールが聞こえる頃。



【カイル=デュナミス 生存確認】
 状態:HP45%、TP70%、深い悲しみ、湿り気味
 所持品:鍋の蓋、フォースリング、ウィス、S・ディムロス、忍刀血桜、クラトスのエクスフィア
     蝙蝠の首輪、レアガントレット(左手甲に穴)、セレスティマント
 基本行動方針:生きる
 現在位置:G3洞窟
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