もとめるもの
彼はこのゲームの渦中、最も精神的に混迷していた人物と言っていいだろう。
ある者は死に場所を求め
ある者は血を求め
ある者は己の力量を試し
またある者は仲間を守るために
何処に出るとも分からない枝葉に分かれた路が交差する中、立ち尽くした者も多かろう。しかし、時は動く。次第に自分の歩むべき道筋、その先を見据えてきた。
彼はいわば、唯一未だにその迷路に取り残されている者なのかもしれない。
例え手を差し伸べてくれる者がいようともそれは皮肉にも彼を絶対の孤独に突き落とす、無慈悲なるものだった。
これでまた一つ、彼の疑問が増える。
ある者は血を求め
ある者は己の力量を試し
またある者は仲間を守るために
何処に出るとも分からない枝葉に分かれた路が交差する中、立ち尽くした者も多かろう。しかし、時は動く。次第に自分の歩むべき道筋、その先を見据えてきた。
彼はいわば、唯一未だにその迷路に取り残されている者なのかもしれない。
例え手を差し伸べてくれる者がいようともそれは皮肉にも彼を絶対の孤独に突き落とす、無慈悲なるものだった。
これでまた一つ、彼の疑問が増える。
彼にはまだ答えがよく分からないのだ。
元々非社交的で、人にどう接したらよいのかも不器用な彼には分からない。口にはしなかったが悩む彼に気付いたある女性は言った。
『それでいいのよ。本当の事なんて私にも分からないわ。
それだけ考えているならきっと大丈夫よ。だってそれは―――』
その言葉の続きはない。その後、あの陽が溶けだした。絶叫にかき消されたのだ。
忌まわしき日。ずっと自分の傍らにいた女性を氷漬けにしてしまった、ラドラスの落日。
本来ならば、人々を救う為に放たれた、聖なる光。
しかしそれにより得る能力は悪を倒すものとはいえ、間違いなく破壊の力である。守る為でもそれは血に塗れる。
フォルスとは闇色に染められた聖なる光なのだ。
元々非社交的で、人にどう接したらよいのかも不器用な彼には分からない。口にはしなかったが悩む彼に気付いたある女性は言った。
『それでいいのよ。本当の事なんて私にも分からないわ。
それだけ考えているならきっと大丈夫よ。だってそれは―――』
その言葉の続きはない。その後、あの陽が溶けだした。絶叫にかき消されたのだ。
忌まわしき日。ずっと自分の傍らにいた女性を氷漬けにしてしまった、ラドラスの落日。
本来ならば、人々を救う為に放たれた、聖なる光。
しかしそれにより得る能力は悪を倒すものとはいえ、間違いなく破壊の力である。守る為でもそれは血に塗れる。
フォルスとは闇色に染められた聖なる光なのだ。
そしてその力を忌まわしき事に使う者もいる。私利私欲。
それに正義などないと信じていた。皆の笑顔を奪う疎ましい事だと。そう、思ってきた。
それに正義などないと信じていた。皆の笑顔を奪う疎ましい事だと。そう、思ってきた。
そもそも、何故悪というものは存在するのだろう。
誰もが、それに抗い、時には呑まれ、傷つけ合う。
何故傷つけ合うのだろう。幸せになる為に?誰かを傷つけることが幸せなのだろうか?
中にはその行為を喜ぶ者もいる。そこに矛盾の壁が大きく立ちはだかるのと共に、彼の中で周りの言う大きな定義が揺れる。
誰もが、それに抗い、時には呑まれ、傷つけ合う。
何故傷つけ合うのだろう。幸せになる為に?誰かを傷つけることが幸せなのだろうか?
中にはその行為を喜ぶ者もいる。そこに矛盾の壁が大きく立ちはだかるのと共に、彼の中で周りの言う大きな定義が揺れる。
彼の村は穏やかだ。
誰もが笑い、時には甘いお菓子の香りが漂う。それは厳しい村の寒さすらも溶けてしまった。
憎しみも、邪心も、それら全てとは無縁だった。
ただ、子供は走り回り、爽やかな風に野の小花が揺れるささやかな村だった。
普段は無表情な彼でも、あの村にいれば心が溶解する。
少しだけ笑みを浮かべてみる。照れくさかったけれどそれが嬉しかった。
まだあの光景は、心の中であたたかいかたまりとなって残っている。
それが壊れる瞬間。
黒い思念による人々の心の支配。いや、あれは呼び覚まされたのであろう。
あっけなかった。
村人は忌み嫌い合い、あの安らぎを黒よりも残酷な無で埋めてゆく。
しかしあの日を求めて、形は無くなってしまおうともあの日を取り戻す為に戦った。
その原動力となった、心に灯るひとつのピース、これが幸せなのだろう。
誰もが笑い、時には甘いお菓子の香りが漂う。それは厳しい村の寒さすらも溶けてしまった。
憎しみも、邪心も、それら全てとは無縁だった。
ただ、子供は走り回り、爽やかな風に野の小花が揺れるささやかな村だった。
普段は無表情な彼でも、あの村にいれば心が溶解する。
少しだけ笑みを浮かべてみる。照れくさかったけれどそれが嬉しかった。
まだあの光景は、心の中であたたかいかたまりとなって残っている。
それが壊れる瞬間。
黒い思念による人々の心の支配。いや、あれは呼び覚まされたのであろう。
あっけなかった。
村人は忌み嫌い合い、あの安らぎを黒よりも残酷な無で埋めてゆく。
しかしあの日を求めて、形は無くなってしまおうともあの日を取り戻す為に戦った。
その原動力となった、心に灯るひとつのピース、これが幸せなのだろう。
目の前に荒みつつも冷めかけたヴェイグの心を貫くような意志を宿した二つ瞳がある。
グリッド。眼に宿るは仲間といたいという強い意志。皆で生きて帰りたいと願う気持ち。
その瞳を胸に収めて、気を失った。
そして精神世界を漂いながらヴェイグは今、考えている。
グリッド。眼に宿るは仲間といたいという強い意志。皆で生きて帰りたいと願う気持ち。
その瞳を胸に収めて、気を失った。
そして精神世界を漂いながらヴェイグは今、考えている。
ひとつの人影が脳裏に強く焼き付いている。
いつも笑って笑って、暑苦しいくらいの熱血で鬱陶しいこともあったが、少しそれが羨ましいと思っていた。あの快活な青年。
しかし記憶の最後での彼は、その思い出とは似ても似つかない、心を閉ざした修羅の様だった。
ティトレイはどうしている?ティトレイは―――
あの青年はもう行ってしまった。
ティトレイとは戦闘で背中を預け合った仲。
だけどあの快活な青年はもういない。存在しているのは中身こそ違いすれど、力はないがそれでも固い意志のあるあの瞳。本気だ。彼は彼の意志であの行動に及んだのだ。誰に操られるでもなく。
何故そうなるに至ったのか。
ティトレイの事だ、そう簡単な事ではあんな様子になったりしない。
むしろ残虐な事があれば、あのただでさえボサボサの髪が怒髪となって天を貫いて怒るだろう。
しかし、あの眼。
彼の瞳にヴェイグのピースが揺れる。
自身にも心辺りのあることだ。意志の元にルーティを惨殺したのだ。一度はそれが間違いだと思った。
しかし、彼の瞳を見ると何故か今は否定しきれない自分がいた。
いつも笑って笑って、暑苦しいくらいの熱血で鬱陶しいこともあったが、少しそれが羨ましいと思っていた。あの快活な青年。
しかし記憶の最後での彼は、その思い出とは似ても似つかない、心を閉ざした修羅の様だった。
ティトレイはどうしている?ティトレイは―――
あの青年はもう行ってしまった。
ティトレイとは戦闘で背中を預け合った仲。
だけどあの快活な青年はもういない。存在しているのは中身こそ違いすれど、力はないがそれでも固い意志のあるあの瞳。本気だ。彼は彼の意志であの行動に及んだのだ。誰に操られるでもなく。
何故そうなるに至ったのか。
ティトレイの事だ、そう簡単な事ではあんな様子になったりしない。
むしろ残虐な事があれば、あのただでさえボサボサの髪が怒髪となって天を貫いて怒るだろう。
しかし、あの眼。
彼の瞳にヴェイグのピースが揺れる。
自身にも心辺りのあることだ。意志の元にルーティを惨殺したのだ。一度はそれが間違いだと思った。
しかし、彼の瞳を見ると何故か今は否定しきれない自分がいた。
結局、どちらが正しいのだろう。
クレアの元に帰る為だけの理由で走った凶行。
あの時はあの時でそれが正しいと思った。
そしてひとつヴェイグは謎に思う。
間違った事に聖獣の力を使えば身を滅ぼす事になる。しかしあの時は自分がフォルスに呑まれて滅びるという事は無かった。
どういう事だろう?
クレアの元に帰る為だけの理由で走った凶行。
あの時はあの時でそれが正しいと思った。
そしてひとつヴェイグは謎に思う。
間違った事に聖獣の力を使えば身を滅ぼす事になる。しかしあの時は自分がフォルスに呑まれて滅びるという事は無かった。
どういう事だろう?
聖獣にも「真に正しいヒト」とは分からないという事なのだろうか。
ティトレイもまだ、力に呑まれる予兆は無かった筈だ。
自分と互角に戦ってきたフォルス使いの四星もそんな事はなかった。
彼らが彼らの聖獣に会ってはいないということは言い切れないのだ。彼らはフォルスを暴走させる事もなかった。特に純粋にヒトをいたぶる事を楽しみとしていたサレとトーマ。
一見すると血迷ったサディスティックな畏怖すべき行動。しかしフォルスを操ることができる。
フォルスとは強い心の力。
つまり彼らには彼らなりの正義とか答えがあったのだろう。何かを願う強い心の力。
彼らのそれとは何なのだろう。
人々のあたたかい側面は沢山知っている。しかしそれの対をなすピースの形については知らなさ過ぎている。破壊を望む、負のピース。
ユリスにしたってそうだ。自分達は世界の人々の力と共にあれを倒したが、ユリスは孤独だ。
人々の闇の心が生み出したとはいえそれはひとつのもの。ひとつの悪と定義してきたものにもあれほどの力を擁するのだ。
破壊は悪だ。だとすれば、何故破壊するものにも強大な力を持つことができるのだろう。
人とは万物とは幸せになる為に生まれるものではないのだろうか。しかしそれを否定するかの様な力の存在。
そしてそれ自体を破壊すべく更なる力が必要となる。その先にあるのは紛れもなく戦い。血や苦しみや或いは死を意味すると言う事だ。
ティトレイもまだ、力に呑まれる予兆は無かった筈だ。
自分と互角に戦ってきたフォルス使いの四星もそんな事はなかった。
彼らが彼らの聖獣に会ってはいないということは言い切れないのだ。彼らはフォルスを暴走させる事もなかった。特に純粋にヒトをいたぶる事を楽しみとしていたサレとトーマ。
一見すると血迷ったサディスティックな畏怖すべき行動。しかしフォルスを操ることができる。
フォルスとは強い心の力。
つまり彼らには彼らなりの正義とか答えがあったのだろう。何かを願う強い心の力。
彼らのそれとは何なのだろう。
人々のあたたかい側面は沢山知っている。しかしそれの対をなすピースの形については知らなさ過ぎている。破壊を望む、負のピース。
ユリスにしたってそうだ。自分達は世界の人々の力と共にあれを倒したが、ユリスは孤独だ。
人々の闇の心が生み出したとはいえそれはひとつのもの。ひとつの悪と定義してきたものにもあれほどの力を擁するのだ。
破壊は悪だ。だとすれば、何故破壊するものにも強大な力を持つことができるのだろう。
人とは万物とは幸せになる為に生まれるものではないのだろうか。しかしそれを否定するかの様な力の存在。
そしてそれ自体を破壊すべく更なる力が必要となる。その先にあるのは紛れもなく戦い。血や苦しみや或いは死を意味すると言う事だ。
その事は彼に人とは何かを訴えかける。悪が滅ばねばならないとすれば、ティトレイは死ななければならないのか。
あの眼はきっと覆せない。彼はきっと、自分達とは対局の何かの本当を知ってしまっているのだから。
あの眼はきっと覆せない。彼はきっと、自分達とは対局の何かの本当を知ってしまっているのだから。
数々の本当に人の正と生が埋もれてゆく。
一度埋めてしまうと掘り返す事はできないのだ。それは自分を信じて、バイラスや数々の敵や―――ルーティを殺してきた事でよく知っている。
もう迷う訳にはいかない。
何が自分の本当なのかを見極めなければ。
彼は、ヴェイグはもう「それ」を見てしまったのだから。そしてその存在は彼のあたたかいピースの横をひどく叩く。
一度埋めてしまうと掘り返す事はできないのだ。それは自分を信じて、バイラスや数々の敵や―――ルーティを殺してきた事でよく知っている。
もう迷う訳にはいかない。
何が自分の本当なのかを見極めなければ。
彼は、ヴェイグはもう「それ」を見てしまったのだから。そしてその存在は彼のあたたかいピースの横をひどく叩く。
何が真となるのか。ヴェイグは再び考え出す。しかしそれは迷いではなく、ふと湧いてきたあまりにも普遍的な疑問。
彼にはそれを知る必要がある。
この大地でももう軽く半数以上の命が消えている。どの様なそれぞれの「答え」を見つけだし、衝突しては埋もれてきたのだろう。
周りの人々があたたか過ぎて、今まで考える事もなかった。目先のぬくもりが全てだと信じてきた。
しかし、このゲームに居るにつれ、人の気持ちはそれが全てではないのだと、否応なく見せつけられるのだ。
ヴェイグは知らなくてはならない。心を変えてしまった友の見てきたものを。
あの眼が映してきたものを。
彼にはそれを知る必要がある。
この大地でももう軽く半数以上の命が消えている。どの様なそれぞれの「答え」を見つけだし、衝突しては埋もれてきたのだろう。
周りの人々があたたか過ぎて、今まで考える事もなかった。目先のぬくもりが全てだと信じてきた。
しかし、このゲームに居るにつれ、人の気持ちはそれが全てではないのだと、否応なく見せつけられるのだ。
ヴェイグは知らなくてはならない。心を変えてしまった友の見てきたものを。
あの眼が映してきたものを。
グリッド達が正しいのか、はたまたティトレイの意志か。
この会場の聖と闇。どちらが統べるのか。その統べるまでに至った意味を。
彼の疑問を消化する為の心の長い旅が幕を開ける。
この会場の聖と闇。どちらが統べるのか。その統べるまでに至った意味を。
彼の疑問を消化する為の心の長い旅が幕を開ける。
【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP20% TP40% 気絶 ※現在マーダーに付くか、脱出組に付くかはなどは不明
所持品:チンクエディア
基本行動方針:???
第一行動方針:グリッド達と行動を共にする
第二行動方針:ティトレイに会う
第三行動方針:???
現在位置:E2、E3の境
状態:HP20% TP40% 気絶 ※現在マーダーに付くか、脱出組に付くかはなどは不明
所持品:チンクエディア
基本行動方針:???
第一行動方針:グリッド達と行動を共にする
第二行動方針:ティトレイに会う
第三行動方針:???
現在位置:E2、E3の境