The last battle-戦光
始まりは、ナイフが一本。お終いは、魔剣が一本。
突き刺さったのは同じ脚。倒錯する愛情と他への憎悪と。
突き刺さったのは同じ脚。倒錯する愛情と他への憎悪と。
平たく言って、親近憎悪と何が違う。
深々と降り積もる雪の中、結晶が吸いきれなかった戦場音楽が漏れ響く。
左手を大きく振り上げたユグドラシルが雪を押し固めるようにして雪原に掌を叩き付けた。
「ディースネル!!」
高らかと言ってもいい成句に従い、光の柱が五条落ちる。
光柱は地面に判を押し無数の羽と霧散する様は本来ならば荘厳であろう光景だが、積もり積もる雪の中では同じ白としてしか判別できない。
そして、荘厳とは対極にあろう怪物が滑空する以上、その手合いの幻想は懐きようがなかった。
雪の合間に覗く巨躯は地面から数メートル上を滑らかに飛んでいた。90度身体を傾け、器用にも旋回する。
“翼”を持つ水の民としての先天だった。悉く光を避けて、天使へと接近する。
徐々に高度を落としていく怪物の口が深呼吸するように開いた。
その黒々とした異海の門の向こうから、紅いモノが吐き出される。鼻先の雪すらを蒸発させながら怪物は焔を手のように伸ばした。
ユグドラシルの羽根を焼き払うように、彼の立つ点から半径数メートルの地面を露出させる。
怪物から充分な距離を取った位置に出現したユグドラシルはさも何事もなかったかのように、しかし確実な苛立ちを示しながら言った。
「当てずっぽうでは掠りもしないか」
エクスフィギュアとしては異常な速度。それに加え、あの奇形の翼は少なからず翼としての最低限の職務を忘れていない。
あの火炎を含め、雪に脚を取られるという僥倖は一切期待できなかった。
ユグドラシルが敵の異変に気付く。
既に着地した怪物の片翼が蛇のように収納され、同時に左腕が膨張していた。膨張量はロープの総体積の半分にほぼ一致していた。
その左手を怪物が身体全身を使って振り抜く。同時に延ばされた触手は地面の雪を薙ぎ払いながら、出現した直後の天使を狙い撃った。
咄嗟に右手を振り払いユグドラシルは左からの猛撃を弾く。しかし、充分な加速の付いた触手は縄というより棍棒に近く、
防御したユグドラシルをそのまま吹き飛ばした。
羽根を羽ばたかせて飛ばされる速度を抑えるが完全にとはいく訳もなく、膝を突いて地面に対し斜めに入った天使は積もった雪を再び宙に浮かす。
ユグドラシルはそのまま転がり、遮蔽にしては幾分心許ない木を支点に怪物と点対称の位置を取った。
翼を広げ天を自在に舞う怪物と膝を突いて地を這う天使の図は、想像以上に滑稽だった。
左手を大きく振り上げたユグドラシルが雪を押し固めるようにして雪原に掌を叩き付けた。
「ディースネル!!」
高らかと言ってもいい成句に従い、光の柱が五条落ちる。
光柱は地面に判を押し無数の羽と霧散する様は本来ならば荘厳であろう光景だが、積もり積もる雪の中では同じ白としてしか判別できない。
そして、荘厳とは対極にあろう怪物が滑空する以上、その手合いの幻想は懐きようがなかった。
雪の合間に覗く巨躯は地面から数メートル上を滑らかに飛んでいた。90度身体を傾け、器用にも旋回する。
“翼”を持つ水の民としての先天だった。悉く光を避けて、天使へと接近する。
徐々に高度を落としていく怪物の口が深呼吸するように開いた。
その黒々とした異海の門の向こうから、紅いモノが吐き出される。鼻先の雪すらを蒸発させながら怪物は焔を手のように伸ばした。
ユグドラシルの羽根を焼き払うように、彼の立つ点から半径数メートルの地面を露出させる。
怪物から充分な距離を取った位置に出現したユグドラシルはさも何事もなかったかのように、しかし確実な苛立ちを示しながら言った。
「当てずっぽうでは掠りもしないか」
エクスフィギュアとしては異常な速度。それに加え、あの奇形の翼は少なからず翼としての最低限の職務を忘れていない。
あの火炎を含め、雪に脚を取られるという僥倖は一切期待できなかった。
ユグドラシルが敵の異変に気付く。
既に着地した怪物の片翼が蛇のように収納され、同時に左腕が膨張していた。膨張量はロープの総体積の半分にほぼ一致していた。
その左手を怪物が身体全身を使って振り抜く。同時に延ばされた触手は地面の雪を薙ぎ払いながら、出現した直後の天使を狙い撃った。
咄嗟に右手を振り払いユグドラシルは左からの猛撃を弾く。しかし、充分な加速の付いた触手は縄というより棍棒に近く、
防御したユグドラシルをそのまま吹き飛ばした。
羽根を羽ばたかせて飛ばされる速度を抑えるが完全にとはいく訳もなく、膝を突いて地面に対し斜めに入った天使は積もった雪を再び宙に浮かす。
ユグドラシルはそのまま転がり、遮蔽にしては幾分心許ない木を支点に怪物と点対称の位置を取った。
翼を広げ天を自在に舞う怪物と膝を突いて地を這う天使の図は、想像以上に滑稽だった。
舌打ちをしながらユグドラシルは膝に手を突いて立ち上がろうとする。
鼻を通る息が止まった。右手の甲の肉が溶けて、骨が少し露出していた。
弾いただけでコレか。ユグドラシルは心底嫌そうな顔をする。状況は最悪、かどうかは分からないがこの雪のように不透明だ。
逃げてしまおうかという気分が横合いからはみ出たのだ。理屈ではなく、純粋な嫌気として。
とりあえず退いて、ネレイドかこの天候を操る鳶―――状況から考えてヴェイグか―――にアレの相手をさせる間にアトワイトと合流する。
少なくとももう一度三竦みの状態に持って行くことは出来るはずだ。戦術としては悪くない。定石故、悪くないというだけでしかないが。
だが、この目論見は実現しないであろう事を判断する程度にはユグドラシルの恐怖は高ぶっていなかった。
まずネレイドはもう生きていない公算が高い。メルディがネレイドであろうが無かろうが。
キール=ツァイベルがネレイドの話を持ち出した時点で、その可能性は考えてはいたのだ。向こうもそれは承知の上だっただろう。
こちらとしては寝た子を起こすリスクを負ってまで喧嘩をする程血が余っているわけでもない。闘わずに済むならそれで放置していた話だ。
だがこの状況に照らし合わせれば、どちらにしても生きていないことは疑う余地がない。
前者ならキールが死んだ時点で行動は自由、シャーリィを排除にかかるはずだ。いや、それ以前にキールがこうもあっさり死ぬのが不自然になるか。
後者なら話は早い。両方とも普通に死んだだけで片が付く。
どちらにしてもアトワイト利、無しとして戦線を離脱する。もう少し厳格に命令を定めて於かなかったのは僕の過誤だな。
どうやらネレイドの話はブラフだったと考えるのが妥当だ。
ユグドラシルはこの予断に関してはさほどの嫌悪を覚えなかった。いや、嫌悪自体は既に幾らでも体内を蠢いているが。
少なくとも既に手札を切り尽くした虫螻に感慨など沸こうはずもなく、寧ろあまりの細工の小ささに面白さすら感じる。
多少の気分転換を行ったミトスは立ち上がりながら現実に視線を向けた。
ヴェイグもここまで自分を嵌めきったのだから、そう易々と今の座を捨てる気はないだろう。下手に状況を崩せば即1対2の構図になってしまうかもしれない。
逃げても、逃げるだけの意味を果たせないのだから、これはこれで結局意味がない。
無論、生理的な嫌悪だけで行動を変えられる立場・状況ではないというミトス本人の事情もある。
空を見上げても夕日はどこにも見当たらない。時計を引っ張り出す余裕もない今、時間を瞬時に判別できる要素が無い。
アトワイトが言うところの刻限、日没が過ぎれば彼女は故障する。魂が失われる。肉体を維持できない。
詰まるところ、引いて立て直す時間はミトスには与えられていなかった。
さてどうしようか。
木に寄りかかるようにして、ユグドラシルは怪物の方を向いた。
何故シャーリィがここにいるのか、何故生きているのか、何があったのか、何処までエクスフィギュアの枠からはみ出ているのか。飛び道具はあの火炎と触手だけか。
それを解決する手法は無く、徒に疑問だけが積もっていく。この循環の果てにあるのは堆積した汚泥による配管の窒息だ。
アトワイトは居らず、手持ちと呼べるほどの情報もない。エターナルソードが向こうにある内は焦土作戦と言うわけにもいかない。
問題を解決するのではなく、問題そのものを排除してしまうと言う明快且つ単純な方法も至難だ。
ああいう手合いはじっくりと分析にかけた上で呵るべき手法を用いて粉砕すべきなのだ。
実際、ユグドラシルは不確定要素たるシャーリィとネレイドに関してそれを行うに足る準備を備えた積もりではあった。
コレットを用いて索敵は可能な限り行った。その後知る限り誰も村には入っていないという事実。
キールの言が誤りで、シャーリィが死んでいなかったと仮定しても時間と人数が合わない。一体どういう絡繰りか。
首を戻して、ユグドラシルは溜息を一つ付いた。
いや、とユグドラシルは思い直す。今更自らの行動を批評する時間はない。
ましてやその結論が采配の過誤を悔やむ心情に引き摺られることは分かり切っている。ならば無駄だ。
まずは、エターナルソードを…
鼻を通る息が止まった。右手の甲の肉が溶けて、骨が少し露出していた。
弾いただけでコレか。ユグドラシルは心底嫌そうな顔をする。状況は最悪、かどうかは分からないがこの雪のように不透明だ。
逃げてしまおうかという気分が横合いからはみ出たのだ。理屈ではなく、純粋な嫌気として。
とりあえず退いて、ネレイドかこの天候を操る鳶―――状況から考えてヴェイグか―――にアレの相手をさせる間にアトワイトと合流する。
少なくとももう一度三竦みの状態に持って行くことは出来るはずだ。戦術としては悪くない。定石故、悪くないというだけでしかないが。
だが、この目論見は実現しないであろう事を判断する程度にはユグドラシルの恐怖は高ぶっていなかった。
まずネレイドはもう生きていない公算が高い。メルディがネレイドであろうが無かろうが。
キール=ツァイベルがネレイドの話を持ち出した時点で、その可能性は考えてはいたのだ。向こうもそれは承知の上だっただろう。
こちらとしては寝た子を起こすリスクを負ってまで喧嘩をする程血が余っているわけでもない。闘わずに済むならそれで放置していた話だ。
だがこの状況に照らし合わせれば、どちらにしても生きていないことは疑う余地がない。
前者ならキールが死んだ時点で行動は自由、シャーリィを排除にかかるはずだ。いや、それ以前にキールがこうもあっさり死ぬのが不自然になるか。
後者なら話は早い。両方とも普通に死んだだけで片が付く。
どちらにしてもアトワイト利、無しとして戦線を離脱する。もう少し厳格に命令を定めて於かなかったのは僕の過誤だな。
どうやらネレイドの話はブラフだったと考えるのが妥当だ。
ユグドラシルはこの予断に関してはさほどの嫌悪を覚えなかった。いや、嫌悪自体は既に幾らでも体内を蠢いているが。
少なくとも既に手札を切り尽くした虫螻に感慨など沸こうはずもなく、寧ろあまりの細工の小ささに面白さすら感じる。
多少の気分転換を行ったミトスは立ち上がりながら現実に視線を向けた。
ヴェイグもここまで自分を嵌めきったのだから、そう易々と今の座を捨てる気はないだろう。下手に状況を崩せば即1対2の構図になってしまうかもしれない。
逃げても、逃げるだけの意味を果たせないのだから、これはこれで結局意味がない。
無論、生理的な嫌悪だけで行動を変えられる立場・状況ではないというミトス本人の事情もある。
空を見上げても夕日はどこにも見当たらない。時計を引っ張り出す余裕もない今、時間を瞬時に判別できる要素が無い。
アトワイトが言うところの刻限、日没が過ぎれば彼女は故障する。魂が失われる。肉体を維持できない。
詰まるところ、引いて立て直す時間はミトスには与えられていなかった。
さてどうしようか。
木に寄りかかるようにして、ユグドラシルは怪物の方を向いた。
何故シャーリィがここにいるのか、何故生きているのか、何があったのか、何処までエクスフィギュアの枠からはみ出ているのか。飛び道具はあの火炎と触手だけか。
それを解決する手法は無く、徒に疑問だけが積もっていく。この循環の果てにあるのは堆積した汚泥による配管の窒息だ。
アトワイトは居らず、手持ちと呼べるほどの情報もない。エターナルソードが向こうにある内は焦土作戦と言うわけにもいかない。
問題を解決するのではなく、問題そのものを排除してしまうと言う明快且つ単純な方法も至難だ。
ああいう手合いはじっくりと分析にかけた上で呵るべき手法を用いて粉砕すべきなのだ。
実際、ユグドラシルは不確定要素たるシャーリィとネレイドに関してそれを行うに足る準備を備えた積もりではあった。
コレットを用いて索敵は可能な限り行った。その後知る限り誰も村には入っていないという事実。
キールの言が誤りで、シャーリィが死んでいなかったと仮定しても時間と人数が合わない。一体どういう絡繰りか。
首を戻して、ユグドラシルは溜息を一つ付いた。
いや、とユグドラシルは思い直す。今更自らの行動を批評する時間はない。
ましてやその結論が采配の過誤を悔やむ心情に引き摺られることは分かり切っている。ならば無駄だ。
まずは、エターナルソードを…
『ねえ、いつまでダラダラしてるつもり?』
ユグドラシルは半ば反射的に声ならぬ声の方に向いて固唾を呑む。その先には、怪物が両手を広げて待っていた。
シャーリィは、否、怪物の左手の中で蠢く蒼い石の中の意志は大声で叫んだ。
『アハッ!こっちを向いた。聞こえた! やっぱり聞こえた!! ねえ、私の声が聞こえてるんでしょ!?』
嬉しそうに、それは本当に純粋に嬉しそうに響く波だった。
『良かった……少し、怖かったんだ。このまま誰にも“私”のことを知らずに死んでしまうんじゃないかって。
ただの挽肉になっちゃうんじゃないかって!! 皆皆私を知らないまま私に殺されるんじゃないかって!!
嫌よね、 誰にも覚えて貰えないって!! 私はここにいるのに。私はここにいたのに!!』
喜悦を弄ぶように触手がユグドラシルの方へ伸びた。
まるで自らの指のようにしてユグドラシルがいるであろう木を掴み、決して軽くは無い根を引き抜いた。
そのまま掴んだ木を上に持ち上げ、叩きつける。木はあっという間に木屑になった。
その破片の向こうに、天使の姿は確認できない。
『またその技? 馬鹿の一つ覚えみたいにピョンピョンピョンピョンピョン飛んで、つまんない』
姿を消したミトスにシャーリィは心底あきれた様な意をみせようとして、一つ思い出した。
『そうだ! あの時もそうだったよね!! 自信たっぷりに私の後ろから切りつけたのに、全然浅くて、私に蹴られたの!!
痛かったでしょう? 痛かったよね!? 大切なところだもんね? ざまあみろ!!』
怪物が上を見上げて揺れる。その肉体ゆえ、げらげら笑うという印象は殆ど無かった。
『……そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ。出来れば一生黙ってて欲しいけど』
不意に聞こえた少年の声に、怪物は単眼を見開いてそちらを向いた。雪原だけで何も目ぼしいものは無い。
『ごめんなさい。でも私嬉しくってしょうがないの!
こんな様に成って、もう誰も私のことを分かってくれないと諦めてたから、貴方が生きててくれて本当に嬉しい!! でも殺すけど!!』
それは“怪物”の正直な感想だった。既にそれに与えられた役目は唯の怪物シャーリィであり、“誰もシャーリィ=フェンネスという少女を認識しないから”であった。
『話をしましょう! 何の話がいい!! そうだ、貴方のお姉さんは、マーテルさんはどうなったの!?』
大気がざわつく様な感じを、怪物は一身で受けた。シャーリィはユアンの言葉をしっかりと覚えていた。
『やっぱり、やっぱり死んじゃったの? 私を置いて? お姉ちゃんみたいに? 何で?何で?』
『死んでないよ。これから僕が取り戻す』
ミトスが割って入った。
満足そうに怪物が身体を振りかぶった。
『それは無理よ。私がお兄ちゃんを取り戻すから! お姉ちゃんを取り戻せないのは少しだけ悲しいけど、仕方ないよ!!』
『アハッ!こっちを向いた。聞こえた! やっぱり聞こえた!! ねえ、私の声が聞こえてるんでしょ!?』
嬉しそうに、それは本当に純粋に嬉しそうに響く波だった。
『良かった……少し、怖かったんだ。このまま誰にも“私”のことを知らずに死んでしまうんじゃないかって。
ただの挽肉になっちゃうんじゃないかって!! 皆皆私を知らないまま私に殺されるんじゃないかって!!
嫌よね、 誰にも覚えて貰えないって!! 私はここにいるのに。私はここにいたのに!!』
喜悦を弄ぶように触手がユグドラシルの方へ伸びた。
まるで自らの指のようにしてユグドラシルがいるであろう木を掴み、決して軽くは無い根を引き抜いた。
そのまま掴んだ木を上に持ち上げ、叩きつける。木はあっという間に木屑になった。
その破片の向こうに、天使の姿は確認できない。
『またその技? 馬鹿の一つ覚えみたいにピョンピョンピョンピョンピョン飛んで、つまんない』
姿を消したミトスにシャーリィは心底あきれた様な意をみせようとして、一つ思い出した。
『そうだ! あの時もそうだったよね!! 自信たっぷりに私の後ろから切りつけたのに、全然浅くて、私に蹴られたの!!
痛かったでしょう? 痛かったよね!? 大切なところだもんね? ざまあみろ!!』
怪物が上を見上げて揺れる。その肉体ゆえ、げらげら笑うという印象は殆ど無かった。
『……そんなに大声を出さなくても聞こえてるよ。出来れば一生黙ってて欲しいけど』
不意に聞こえた少年の声に、怪物は単眼を見開いてそちらを向いた。雪原だけで何も目ぼしいものは無い。
『ごめんなさい。でも私嬉しくってしょうがないの!
こんな様に成って、もう誰も私のことを分かってくれないと諦めてたから、貴方が生きててくれて本当に嬉しい!! でも殺すけど!!』
それは“怪物”の正直な感想だった。既にそれに与えられた役目は唯の怪物シャーリィであり、“誰もシャーリィ=フェンネスという少女を認識しないから”であった。
『話をしましょう! 何の話がいい!! そうだ、貴方のお姉さんは、マーテルさんはどうなったの!?』
大気がざわつく様な感じを、怪物は一身で受けた。シャーリィはユアンの言葉をしっかりと覚えていた。
『やっぱり、やっぱり死んじゃったの? 私を置いて? お姉ちゃんみたいに? 何で?何で?』
『死んでないよ。これから僕が取り戻す』
ミトスが割って入った。
満足そうに怪物が身体を振りかぶった。
『それは無理よ。私がお兄ちゃんを取り戻すから! お姉ちゃんを取り戻せないのは少しだけ悲しいけど、仕方ないよ!!』
「僕の姉様だ!!」
突如怪物の主攻正面、その雪原の一部がボンと噴水のように吹き上がった。
舞った雪の銀幕をから、雪の上で伏せていたユグドラシルが怒り心頭、その形相で怪物に突進する。
その汚れ一つ無い純白の衣は、実に雪原の迷彩として機能していた。
「お前の、だと、おこがましい。姉様は僕の姉様だ。お前の、じゃあない!!」
滑るようにして、天使は怪物の懐に直進する。
『駄目!! アレは私がここで最初に見つけたの!! だからダメッ!!』
怪物が右手を突きだして触手を伸ばす。緩やかな弧を描いて、しかしその延びはとても鋭く侵食する。
触手はユグドラシルの肩を掠め、彼の白絹と仮初の肉を黒く泡立たせた。しかし彼に痛みなど無く、更に低く疾駆する。
「それが姉様を傷つけた餓鬼の言う台詞かッ!!」
ユグドラシルの右手に乳白色の光が纏う。
『お姉ちゃんが悪いの! あんなのに、私を見捨てて、あんなのを抱きしめるなんて!!』
怪物は大きく振りかぶった左手をユグドラシルの横合いに向けて殴りつけた。脇の下を潜るようにしてユグドラシルは浸透する。
『それだけじゃない……私の気持ちを知ってたのに!! お兄ちゃんを奪って!! 私を、私を、私ヲヲヲヲォォォォッッ!!!!!!!』
怪物が大気で肺を満たすようにして仰け反る。完全にそりきった瞬間、弓を打つようにして跳ね返った身体と同時に、怪物の口から業炎が吹き上がった。
怪物は誰のことを叫んでいたのだろうか。ユグドラシルには判別が付かなかった。付けようもなかった。
それで良い。ユグドラシルにはそれで構わなかった。
記憶が混交している? それともエゴが崩れ始めたか、あるいはイドが表層に湧き出た?
何とも豪毅な。少なくともエクスフィギュアにはそんな症状は無いというのに。
何とも奇っ怪。まだまだ僕の計画には僕の知らない要素が満ちあふれている。
ユグドラシルの右手は既に消えたと思うほどに輝いていた。犬歯が見える程に凶相を露わにする。
“そんなことはどうでも良い”
ただ誰とも知らない誰かと、“姉様”を混ぜた。それだけで不快。それ故に万死だ。
伏せていた理由も忘れ、輝石の中のミトスは完全に血が昇っていた。
しかし、その勘所の良さは寧ろ鋭さを増していた。
ミントの一挙一動に心を揺らしていたミトスとはあまりにもかけ離れた即応性で左腕を前に出す。
炎の直撃を腕で避ける。しかし、炙られていたのは僅か一秒間にも満たない時間だった。
既に天使は、股下を潜らんばかりに、怪物に最接近していた。業火過ぎる故の、発射口が頭部故の、ある種必然的な死角が確かにある。
その巨躯と重量故に拳と触手は円軌道を描かざるを得ない。高すぎる砲口は直下の敵を直火に晒せない。
大戦を駆け抜けた身体が確信した、大きすぎる怪物の唯一の安全地帯だった。
彼の右手は、アウトバーストのトリガーへ手を掛けていた。接触した瞬間に怪物の肉体全てを塵芥に帰す心根だった。
この瞬間、確かにミトス=ユグドラシルは、敵が持つエターナルソードを失念していた。
「このまま滅んでしまえ!! 姉様は、僕の、僕の……ッ!?」
ミトスはもう一つ失念していた。それは失念と言うには些細すぎることだったが。
敵の放火を受けないこの安全圏では、静かに狂い嗤う怪物の表情を知ることが出来ないことに、思い至らなかった。
ユグドラシルの瞳が一瞬泳ぐ。瞳孔の黒が忙しそうに白色の中を駆け回った。
突如怪物の主攻正面、その雪原の一部がボンと噴水のように吹き上がった。
舞った雪の銀幕をから、雪の上で伏せていたユグドラシルが怒り心頭、その形相で怪物に突進する。
その汚れ一つ無い純白の衣は、実に雪原の迷彩として機能していた。
「お前の、だと、おこがましい。姉様は僕の姉様だ。お前の、じゃあない!!」
滑るようにして、天使は怪物の懐に直進する。
『駄目!! アレは私がここで最初に見つけたの!! だからダメッ!!』
怪物が右手を突きだして触手を伸ばす。緩やかな弧を描いて、しかしその延びはとても鋭く侵食する。
触手はユグドラシルの肩を掠め、彼の白絹と仮初の肉を黒く泡立たせた。しかし彼に痛みなど無く、更に低く疾駆する。
「それが姉様を傷つけた餓鬼の言う台詞かッ!!」
ユグドラシルの右手に乳白色の光が纏う。
『お姉ちゃんが悪いの! あんなのに、私を見捨てて、あんなのを抱きしめるなんて!!』
怪物は大きく振りかぶった左手をユグドラシルの横合いに向けて殴りつけた。脇の下を潜るようにしてユグドラシルは浸透する。
『それだけじゃない……私の気持ちを知ってたのに!! お兄ちゃんを奪って!! 私を、私を、私ヲヲヲヲォォォォッッ!!!!!!!』
怪物が大気で肺を満たすようにして仰け反る。完全にそりきった瞬間、弓を打つようにして跳ね返った身体と同時に、怪物の口から業炎が吹き上がった。
怪物は誰のことを叫んでいたのだろうか。ユグドラシルには判別が付かなかった。付けようもなかった。
それで良い。ユグドラシルにはそれで構わなかった。
記憶が混交している? それともエゴが崩れ始めたか、あるいはイドが表層に湧き出た?
何とも豪毅な。少なくともエクスフィギュアにはそんな症状は無いというのに。
何とも奇っ怪。まだまだ僕の計画には僕の知らない要素が満ちあふれている。
ユグドラシルの右手は既に消えたと思うほどに輝いていた。犬歯が見える程に凶相を露わにする。
“そんなことはどうでも良い”
ただ誰とも知らない誰かと、“姉様”を混ぜた。それだけで不快。それ故に万死だ。
伏せていた理由も忘れ、輝石の中のミトスは完全に血が昇っていた。
しかし、その勘所の良さは寧ろ鋭さを増していた。
ミントの一挙一動に心を揺らしていたミトスとはあまりにもかけ離れた即応性で左腕を前に出す。
炎の直撃を腕で避ける。しかし、炙られていたのは僅か一秒間にも満たない時間だった。
既に天使は、股下を潜らんばかりに、怪物に最接近していた。業火過ぎる故の、発射口が頭部故の、ある種必然的な死角が確かにある。
その巨躯と重量故に拳と触手は円軌道を描かざるを得ない。高すぎる砲口は直下の敵を直火に晒せない。
大戦を駆け抜けた身体が確信した、大きすぎる怪物の唯一の安全地帯だった。
彼の右手は、アウトバーストのトリガーへ手を掛けていた。接触した瞬間に怪物の肉体全てを塵芥に帰す心根だった。
この瞬間、確かにミトス=ユグドラシルは、敵が持つエターナルソードを失念していた。
「このまま滅んでしまえ!! 姉様は、僕の、僕の……ッ!?」
ミトスはもう一つ失念していた。それは失念と言うには些細すぎることだったが。
敵の放火を受けないこの安全圏では、静かに狂い嗤う怪物の表情を知ることが出来ないことに、思い至らなかった。
ユグドラシルの瞳が一瞬泳ぐ。瞳孔の黒が忙しそうに白色の中を駆け回った。
怪物の下腹部から剣が肉を掻き分けて、その姿をもう一度露わにした。
その魔剣、エターナルソードはまるでその形で埋め込まれたかのように安置しており、その偉容と異様を見せつけていた。
『そんなの使ってイイの? そんな危ないの、本当に使って、いいの? またあのレーザーで吹き飛ばすの? 壊れちゃうよ?』
反動音が鳴ったかと思うほどに、ユグドラシルの身体が急激に制止したのを確認して、シャーリィはにんまりとした。
解放の場を失った光が、苦しそうに、やがて諦めたように霧散する。
二度目となれば、必然を、せめて蓋然を疑う他ない。
「……それを……貴様ァ……」
漸く、ユグドラシルの口から魂を切り売りするかのような声が絞り出された。
嗜虐心を満たしながら、それを増幅させるようにシャーリィは笑う。
『やっぱり、欲しかったんだ。そんなにコレが欲しかったって、この身体が言ってるもの。
お前がこんなモノを欲しがったせいでこうなったって、言ってるもの!!』
嗤いを噛み殺したような音が、腕と触手で囲んだ空間に響き渡る。
ミトスがこれを求めている。まるで消印も差出人も書かれていない風の便りがふと届いたかのように、
自分が知らぬ自分の記憶以下の何かが、それを確かに教えていた。
『でもコレもだめ……だって、私も欲しがってるもの』
怪物の左肩が粘性の高い水泡を立てて隆起した。次いで、右腿の内側にから何かが顔を出した。
『ダメ……ダメ……お姉ちゃんは私のモノ……渡さないよ』
肩から出たそれは、取っ手を付けた金属の板―――フライパンだった。黒色の粘液が落ちた部分からかろうじて金色が覗く。
腿からは外に出るのも辛そうという感想を抱いてしまいそうな遅さでベレッタが半分姿を現していた。
『この剣だって私のモノ……これがこれのこれで為に走ってきたんだから』
左脇腹から、瓶の破片が鱗のように生えた。それぞれがサンプルの化学薬品に晒され色とりどりに変色している。
右肘から邪剣が突き出る。刀身を捩らせて獲物を待ち望んでいるかのようだった。
右指の間だから首輪が三つ水掻きのようにして沸いた。
掌には手の甲から突き刺すようにしてスティレットが伸びる。
『全部……全部私……私なの……私が欲しがってるものなんだから……私“を”欲しがってるから……』
左の二の腕から出た金属は分解されたセンサーではなく、唯の石ころと同義だった。
植え付けたかのように、左手にメガグランチャーが、右腕には短機関銃があった。
『お兄ちゃんは、私のモノなんだから』
右胸からポーチが、鎖骨からマジックミストが、
右脛から妖精の指輪が、
喉からケイジが、肋骨から本が、
紙類は固めて丸めて全て頭部へ、
『でも、私だけが独り占めするのも佳くないよね』
もう、体外に出た体積は容積を超えていた。臀部のウイングパックが無かったら納得すら出来ないだろう。
ありとあらゆる、“ゴミ”が怪物を内側から覆っていた。
その全ての表面が毒に染まり、黒く穢れていた。
丁度身体、右腕、左腕が一辺として、正六角形の半分を構成していた。
中心に天使が一匹。面に垂直に伸びる射線は六角形の中心で重なる。
『だから、あげる。これ、全部』
最後に、既に黒く染まった誰かの腕が、人はそこから生まれたのだと無条件に信じられる場所から生まれた。
怪物が、とても穏やかそうに、或いは未来の穏やかさを前借りしたかのように、言った。
『本当に詰まらないものですけど、どうぞ!!』
ユグドラシルの姿が光に包まれる。二歩遅かった。
その魔剣、エターナルソードはまるでその形で埋め込まれたかのように安置しており、その偉容と異様を見せつけていた。
『そんなの使ってイイの? そんな危ないの、本当に使って、いいの? またあのレーザーで吹き飛ばすの? 壊れちゃうよ?』
反動音が鳴ったかと思うほどに、ユグドラシルの身体が急激に制止したのを確認して、シャーリィはにんまりとした。
解放の場を失った光が、苦しそうに、やがて諦めたように霧散する。
二度目となれば、必然を、せめて蓋然を疑う他ない。
「……それを……貴様ァ……」
漸く、ユグドラシルの口から魂を切り売りするかのような声が絞り出された。
嗜虐心を満たしながら、それを増幅させるようにシャーリィは笑う。
『やっぱり、欲しかったんだ。そんなにコレが欲しかったって、この身体が言ってるもの。
お前がこんなモノを欲しがったせいでこうなったって、言ってるもの!!』
嗤いを噛み殺したような音が、腕と触手で囲んだ空間に響き渡る。
ミトスがこれを求めている。まるで消印も差出人も書かれていない風の便りがふと届いたかのように、
自分が知らぬ自分の記憶以下の何かが、それを確かに教えていた。
『でもコレもだめ……だって、私も欲しがってるもの』
怪物の左肩が粘性の高い水泡を立てて隆起した。次いで、右腿の内側にから何かが顔を出した。
『ダメ……ダメ……お姉ちゃんは私のモノ……渡さないよ』
肩から出たそれは、取っ手を付けた金属の板―――フライパンだった。黒色の粘液が落ちた部分からかろうじて金色が覗く。
腿からは外に出るのも辛そうという感想を抱いてしまいそうな遅さでベレッタが半分姿を現していた。
『この剣だって私のモノ……これがこれのこれで為に走ってきたんだから』
左脇腹から、瓶の破片が鱗のように生えた。それぞれがサンプルの化学薬品に晒され色とりどりに変色している。
右肘から邪剣が突き出る。刀身を捩らせて獲物を待ち望んでいるかのようだった。
右指の間だから首輪が三つ水掻きのようにして沸いた。
掌には手の甲から突き刺すようにしてスティレットが伸びる。
『全部……全部私……私なの……私が欲しがってるものなんだから……私“を”欲しがってるから……』
左の二の腕から出た金属は分解されたセンサーではなく、唯の石ころと同義だった。
植え付けたかのように、左手にメガグランチャーが、右腕には短機関銃があった。
『お兄ちゃんは、私のモノなんだから』
右胸からポーチが、鎖骨からマジックミストが、
右脛から妖精の指輪が、
喉からケイジが、肋骨から本が、
紙類は固めて丸めて全て頭部へ、
『でも、私だけが独り占めするのも佳くないよね』
もう、体外に出た体積は容積を超えていた。臀部のウイングパックが無かったら納得すら出来ないだろう。
ありとあらゆる、“ゴミ”が怪物を内側から覆っていた。
その全ての表面が毒に染まり、黒く穢れていた。
丁度身体、右腕、左腕が一辺として、正六角形の半分を構成していた。
中心に天使が一匹。面に垂直に伸びる射線は六角形の中心で重なる。
『だから、あげる。これ、全部』
最後に、既に黒く染まった誰かの腕が、人はそこから生まれたのだと無条件に信じられる場所から生まれた。
怪物が、とても穏やかそうに、或いは未来の穏やかさを前借りしたかのように、言った。
『本当に詰まらないものですけど、どうぞ!!』
ユグドラシルの姿が光に包まれる。二歩遅かった。
無数の役立たずが、まるで最後の見せ場と言わんばかりに、一斉に射出された。
アトワイトがその光を見たとき既に中央広場に入ろうとしていた矢先のことだった。
踏み固める度に雪は地面に与えるべき加重を分散し、無駄な力みを必要とする。
雪は靴の中に入り、歩きづらさを容赦なく累乗していた。不快感というべき概念を持っていないだけで幸いだった。
『……戻るだけで、一仕事ね。ディムロスの指示か、それとモ』
既にこの雪への苛立ちをぶつけるべき相手を彼女は誤らず了解していた。
雪の中で思考を止めれば糸が切れてしまう。恐怖を閉じこめる時間だけは充分にあった。
ヴェイグという男が氷使いであることは怪物を追い払った時点で理解の埒外ではあったが事実として知るところではあった。
あとは呵るべき情報解析に晒せば、数秒かからず推論は出る。
しかし、理由を知ったとしても、彼女には選択権がなかった。と、いうよりも、選択する時間が刻一刻と摩耗していた。
雪の中で片膝を付く。本当は身体全部で盛大に倒れてしまいそうだったが、彼女を彼女たらしめる何かがそれを辛うじて拒んだ。
『……もウ、時間が残ってなイのに。最後まで邪魔ヲするのね、でぃムロス』
このか細い身体では幾ら力があろうとも、ロスが目立つ。移動時間の増加、体位制御、何れもアトワイトを削り取っていた。
微かに笑おうとしたが、表情は変わらない。人形の唇が少し凍っていた。
立ち上がって、正面をむき直す。光景は色以外の全てを一変していた。
光と、白い雪煙が夏の雲のように高く伸びる様は、着弾音と相まって微かに弱まった吹雪の中でも見て取れる。
アトワイトは、五秒ほどの時間で最低限必要を理解する。
少なくとも、闘っている相手と自らのマスターの苦境を察する程度には。
『ミトす』
不味い。そう思ったアトワイトは人形の脚を無意識に駆け出そうとした。しかし、再び雪に脚を取られ、今度は盛大に突っ伏すことになる。
『ッ……こんな所で足止めをクらっテる場合じゃなイのに……!!』
キールを見捨てたときとの温度差は、ミトスに捧げたモノの分量と合致していた。
雪を握りしめるが、冷たさは伝わらない。熱もないから溶けもしなかったが。
『――――――――――――――――アトワイト…………こえるか?』
『ミトス!!』
突如の通信に生娘のような声を出した自分に驚く自分をアトワイトは感じた。
『……近くに、いる……重畳……だな』
断線しながら聞こえる、石の声はか細く、主の肉体の異常を察するには過分すぎた。
『無ジなの!? 相手は!? いや、いイわ!! すグにそっちに向かうからそれまで……』
『アトワイト、私の願いは、なんだ?』
唐突すぎる問いに、アトワイトは息を止めた。止めたように言葉を区切った。
『何ヲ、いきなり』
『私の願いは、なんだった? 答えろ』
『そんなコとを言ッてる場合じゃな』『答えろ。命令だ』
もう一度、ミトスはアトワイトの言葉を封じた。将校としての絶対原則がアトワイトの根幹から引き摺り出される。
結局、アトワイトは命令を履行する他なかった。
『…………マーテルの復活、そしてその確保』
戸惑いを差し引いても素早い解答だった。数秒、会話が途切れる。
クク、と笑い声が聞こえた。
『そうだな。そうだった。何でそんなことに気付かなかったんだろう……矢ッ張り、どうかしてた』
子供のような声が響く。切れ切れの波に似合わない陽気さだった。
そうアトワイトが思った途端、ユグドラシルとしての波が、アトワイトに強く届けられた。
『晶術準備。完了状態にまでして、射程圏外の際で待機』
『レイズデッド?』
素早く応答し、必要な問いを返す。馴れ馴れしい口調以外は完全に上官と部下だった。いや、違うのかも。
『いや、術種アイスニードル。特装・四連だ。少々規定とは異なるがユニゾンで放つ。タイミングはこちらに、いや、“鳴き声”に合わせろ』
アトワイトが朽ち行くコアの中で微かに頬笑んだ。この戦争ごっこはどうにも何かが危なっかしくて見ていられない。
もう少しばかりは、私に縋って、私に甘えて、私を使い潰してもらわないと。
『操るなら兎も角、恨みを買うのは面倒だ。劣悪種は劣悪種同士で殺し合って貰うに勝る効率はない。そうして生きた4000年を忘れるなんて、どうかしてる』
アトワイトは何かを言いかけて、口を噤んだ。それはきっと貴方が、子供に戻っていたからよ。
何かを察したのか、一言だけ言葉を述べて、通信は切られた。
『何をしている? 仕事の時間だ』
『了解しました。マスター』
踏み固める度に雪は地面に与えるべき加重を分散し、無駄な力みを必要とする。
雪は靴の中に入り、歩きづらさを容赦なく累乗していた。不快感というべき概念を持っていないだけで幸いだった。
『……戻るだけで、一仕事ね。ディムロスの指示か、それとモ』
既にこの雪への苛立ちをぶつけるべき相手を彼女は誤らず了解していた。
雪の中で思考を止めれば糸が切れてしまう。恐怖を閉じこめる時間だけは充分にあった。
ヴェイグという男が氷使いであることは怪物を追い払った時点で理解の埒外ではあったが事実として知るところではあった。
あとは呵るべき情報解析に晒せば、数秒かからず推論は出る。
しかし、理由を知ったとしても、彼女には選択権がなかった。と、いうよりも、選択する時間が刻一刻と摩耗していた。
雪の中で片膝を付く。本当は身体全部で盛大に倒れてしまいそうだったが、彼女を彼女たらしめる何かがそれを辛うじて拒んだ。
『……もウ、時間が残ってなイのに。最後まで邪魔ヲするのね、でぃムロス』
このか細い身体では幾ら力があろうとも、ロスが目立つ。移動時間の増加、体位制御、何れもアトワイトを削り取っていた。
微かに笑おうとしたが、表情は変わらない。人形の唇が少し凍っていた。
立ち上がって、正面をむき直す。光景は色以外の全てを一変していた。
光と、白い雪煙が夏の雲のように高く伸びる様は、着弾音と相まって微かに弱まった吹雪の中でも見て取れる。
アトワイトは、五秒ほどの時間で最低限必要を理解する。
少なくとも、闘っている相手と自らのマスターの苦境を察する程度には。
『ミトす』
不味い。そう思ったアトワイトは人形の脚を無意識に駆け出そうとした。しかし、再び雪に脚を取られ、今度は盛大に突っ伏すことになる。
『ッ……こんな所で足止めをクらっテる場合じゃなイのに……!!』
キールを見捨てたときとの温度差は、ミトスに捧げたモノの分量と合致していた。
雪を握りしめるが、冷たさは伝わらない。熱もないから溶けもしなかったが。
『――――――――――――――――アトワイト…………こえるか?』
『ミトス!!』
突如の通信に生娘のような声を出した自分に驚く自分をアトワイトは感じた。
『……近くに、いる……重畳……だな』
断線しながら聞こえる、石の声はか細く、主の肉体の異常を察するには過分すぎた。
『無ジなの!? 相手は!? いや、いイわ!! すグにそっちに向かうからそれまで……』
『アトワイト、私の願いは、なんだ?』
唐突すぎる問いに、アトワイトは息を止めた。止めたように言葉を区切った。
『何ヲ、いきなり』
『私の願いは、なんだった? 答えろ』
『そんなコとを言ッてる場合じゃな』『答えろ。命令だ』
もう一度、ミトスはアトワイトの言葉を封じた。将校としての絶対原則がアトワイトの根幹から引き摺り出される。
結局、アトワイトは命令を履行する他なかった。
『…………マーテルの復活、そしてその確保』
戸惑いを差し引いても素早い解答だった。数秒、会話が途切れる。
クク、と笑い声が聞こえた。
『そうだな。そうだった。何でそんなことに気付かなかったんだろう……矢ッ張り、どうかしてた』
子供のような声が響く。切れ切れの波に似合わない陽気さだった。
そうアトワイトが思った途端、ユグドラシルとしての波が、アトワイトに強く届けられた。
『晶術準備。完了状態にまでして、射程圏外の際で待機』
『レイズデッド?』
素早く応答し、必要な問いを返す。馴れ馴れしい口調以外は完全に上官と部下だった。いや、違うのかも。
『いや、術種アイスニードル。特装・四連だ。少々規定とは異なるがユニゾンで放つ。タイミングはこちらに、いや、“鳴き声”に合わせろ』
アトワイトが朽ち行くコアの中で微かに頬笑んだ。この戦争ごっこはどうにも何かが危なっかしくて見ていられない。
もう少しばかりは、私に縋って、私に甘えて、私を使い潰してもらわないと。
『操るなら兎も角、恨みを買うのは面倒だ。劣悪種は劣悪種同士で殺し合って貰うに勝る効率はない。そうして生きた4000年を忘れるなんて、どうかしてる』
アトワイトは何かを言いかけて、口を噤んだ。それはきっと貴方が、子供に戻っていたからよ。
何かを察したのか、一言だけ言葉を述べて、通信は切られた。
『何をしている? 仕事の時間だ』
『了解しました。マスター』
怪物の目の前には、破壊の痕と呼ぶべきモノが広がっていた。
剔れた土が雪を汚し、数少ない建造物の壁に穴を開ける。それが三方に伸びて、まるで弾痕の爪痕だった。
『ギャハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!』
その集中点で、怪物は高らかに笑う。
『バッカじゃないの!? 本当にバカじゃないの? 見え見えの挑発に引っかかって、中に入っておいて勝手に安全だと思いこんで!
そんな訳ないじゃない!! 虫は虫籠に入れてからの方が潰しやすいに決まっているじゃない!!』
懐に誘い込んでの集中斉射だった。策が見事に嵌る快感に万人を隔てるものはない。
快楽に身を包みながらシャーリィは其方を見た。雪の煙が、風で緩やかに晴れていく。
爪と爪の間、そこに傷を羽根に負った天使がいた。
右肩に穴が開いていた。左足の指を全部無くしていた。左脇腹に手を当て、漏れ出そうな何かを押さえていた。
右の腿をパックリと割っていた。無数の傷跡、その全てが、黒く染まっていた。
かつての華やかさを一気に失ったユグドラシルは、息を荒げて、俯こうとする面を下げないようにするので精一杯だった。
『そんなんでお姉ちゃんを取り戻すなんて、よく言えたよね。全然ダメじゃない』
シャーリィは呆れたようにユグドラシルに言った。視線が俯いたままの天使は彼女の期待する反応すら出来なかった。
『甘ちゃんばっかのあいつらよりは少しだけまともだったけど、やっぱりダメ。私と貴方じゃ覚悟が違うよ』
怪物は握り拳を作り、足を一歩前に出した。余裕を見せても武器を奪う機会は与えない。
左はいつでも触手を出せる状態を維持し、テレポートを牽制していた。
『……何が、どう違うって?』
ユグドラシルがぼそりと呟いた。歩きながら答える。
『決まってるわ…………想いよ! お兄ちゃんともう一度会いたいって想い!!
貴方のお姉ちゃんともう一度会いたいって想いじゃあ、私の想いには!願いには敵わない!!
私の願いは神を下した。だから身体が朽ちてもここにいる!! お前なんかの想いは、私に踏み潰されて終わるだけ!!』
確信を煮詰めたような声だった。迷いは一辺もなく、後悔は何処にもない。
『そうか。そうやってお前はあらゆる敵を踏み潰してきたのか。成程な』
ユグドラシルが頭を上げた。怪物が手を振り上げたまま走る。打ち下ろす前から殺せる速度が付いていた。
『分かってるじゃない!! 私は神に勝った私に、踏みつぶせないモノなんて無い!!』
射程に収めた怪物が拳を振り下ろそうとした時、完全に怪物を見据えた天使は、
剔れた土が雪を汚し、数少ない建造物の壁に穴を開ける。それが三方に伸びて、まるで弾痕の爪痕だった。
『ギャハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!』
その集中点で、怪物は高らかに笑う。
『バッカじゃないの!? 本当にバカじゃないの? 見え見えの挑発に引っかかって、中に入っておいて勝手に安全だと思いこんで!
そんな訳ないじゃない!! 虫は虫籠に入れてからの方が潰しやすいに決まっているじゃない!!』
懐に誘い込んでの集中斉射だった。策が見事に嵌る快感に万人を隔てるものはない。
快楽に身を包みながらシャーリィは其方を見た。雪の煙が、風で緩やかに晴れていく。
爪と爪の間、そこに傷を羽根に負った天使がいた。
右肩に穴が開いていた。左足の指を全部無くしていた。左脇腹に手を当て、漏れ出そうな何かを押さえていた。
右の腿をパックリと割っていた。無数の傷跡、その全てが、黒く染まっていた。
かつての華やかさを一気に失ったユグドラシルは、息を荒げて、俯こうとする面を下げないようにするので精一杯だった。
『そんなんでお姉ちゃんを取り戻すなんて、よく言えたよね。全然ダメじゃない』
シャーリィは呆れたようにユグドラシルに言った。視線が俯いたままの天使は彼女の期待する反応すら出来なかった。
『甘ちゃんばっかのあいつらよりは少しだけまともだったけど、やっぱりダメ。私と貴方じゃ覚悟が違うよ』
怪物は握り拳を作り、足を一歩前に出した。余裕を見せても武器を奪う機会は与えない。
左はいつでも触手を出せる状態を維持し、テレポートを牽制していた。
『……何が、どう違うって?』
ユグドラシルがぼそりと呟いた。歩きながら答える。
『決まってるわ…………想いよ! お兄ちゃんともう一度会いたいって想い!!
貴方のお姉ちゃんともう一度会いたいって想いじゃあ、私の想いには!願いには敵わない!!
私の願いは神を下した。だから身体が朽ちてもここにいる!! お前なんかの想いは、私に踏み潰されて終わるだけ!!』
確信を煮詰めたような声だった。迷いは一辺もなく、後悔は何処にもない。
『そうか。そうやってお前はあらゆる敵を踏み潰してきたのか。成程な』
ユグドラシルが頭を上げた。怪物が手を振り上げたまま走る。打ち下ろす前から殺せる速度が付いていた。
『分かってるじゃない!! 私は神に勝った私に、踏みつぶせないモノなんて無い!!』
射程に収めた怪物が拳を振り下ろそうとした時、完全に怪物を見据えた天使は、
「クゥゥゥゥゥィッッキィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
『じゃあ、潰し損ねたモノに関してはその限りではないのか』
怪物の肩越し、その先の青い影を見て、陰険そうに笑った。
怪物の肩越し、その先の青い影を見て、陰険そうに笑った。
怪物を殺す。それのみに特化することを決意したとはいえ、クィッキーは自分の能力を完全に把握していた。
正面から挑んでも勝ち目が無い。いや、四方八方上下左右、どの面から攻めたところで勝ち目など微塵もない。
だが、勝たねばならない。いや、殺さなければならない。
喩え、それが理想とは程遠かろうとせめて肉体的な意味でメルディを救うとクィッキーは決めた。
其処までに至る苦渋は、決してキールに勝りこそすれ劣らないとクィッキーは思っていた。思い込もうと信じていた。
その過程は、あっという間に無意味なモノに転じた。それをバックの中で見続けるだけで三回は死ねそうだった。
袋の中でクィッキーは思った。これからどうするか。何をどうしようも何もならない。
自分が小動物だからという根源的な意味合いも勿論あったが、仮にヒトだったとしても何が出来るというわけでもない。
キールとロイド、立場は違えど二方向から希望を求めた対極の二人は潰えた。ならば、もう可能性は何処にもない。
ならば、どうするか。クィッキーは動物らしくすぐに答えを弾き出した。
決まっている。生に望みを繋げないなら、死に望みを繋ぐしかない。自分が気に入る形で、殺し合いの縮図に組み込まれてやろうじゃないか。
正面から挑んでも勝ち目が無い。いや、四方八方上下左右、どの面から攻めたところで勝ち目など微塵もない。
だが、勝たねばならない。いや、殺さなければならない。
喩え、それが理想とは程遠かろうとせめて肉体的な意味でメルディを救うとクィッキーは決めた。
其処までに至る苦渋は、決してキールに勝りこそすれ劣らないとクィッキーは思っていた。思い込もうと信じていた。
その過程は、あっという間に無意味なモノに転じた。それをバックの中で見続けるだけで三回は死ねそうだった。
袋の中でクィッキーは思った。これからどうするか。何をどうしようも何もならない。
自分が小動物だからという根源的な意味合いも勿論あったが、仮にヒトだったとしても何が出来るというわけでもない。
キールとロイド、立場は違えど二方向から希望を求めた対極の二人は潰えた。ならば、もう可能性は何処にもない。
ならば、どうするか。クィッキーは動物らしくすぐに答えを弾き出した。
決まっている。生に望みを繋げないなら、死に望みを繋ぐしかない。自分が気に入る形で、殺し合いの縮図に組み込まれてやろうじゃないか。
雪の中を慎重に這いながらクィッキーは思考を済ませていた。思考と言うよりは、手段の検討だ。
あの化け物を殺す。それが生半可な行為でないことは一番よく知っていた。他の連中ならば、まだ喉を噛み切れば死にそうだが、それで死ぬかも疑わしい。
あのユグドラシルとかいういけ好かない奴に、殺させる、という手も考えた。それが一番合理的に思えた。
しかし、クィッキーはそれを拒否した。奴の死体が見たいのではない。殺すことに意味があるのだ。
そこまで考えて、自分の理不尽さ、その無い物ねだりの原因に思い立った。
自分があの怪物に奪われたモノは、主人だけじゃないのか。クィッキーは筋骨隆々とした、牛の背を思い出す。
あれはターニングポイントであり、節目だ。敵おうが敵うまいが自分の手で清算を付けたがるのも当然か。
既に召された彼ら二人に許しは請わなかった。仲睦まじくやっているだろう二人は絶対に自分を止めるだろうし、何より無粋だと思った。
現実と理想に折り合いを付けたクィッキーに思いつけた手段は、ユグドラシルを利用することだった。
戦闘が始まって、ずうっと観察を続けた。見続けたのは、石の位置。
ユグドラシルと同じような羽根を持っていた男が、あの石を狙っていたことを思い出した。
確証は無くとも、それしか自分の牙が通じる場所が無いと思った。
憎悪が眼球から零れ落ちそうになった時、一瞬、ユグドラシルと眼があった。
気付かれぬようにと位置を変えたとき、自分よりも蒼いそれを漸く怪物の左手に見つけた。
あの化け物を殺す。それが生半可な行為でないことは一番よく知っていた。他の連中ならば、まだ喉を噛み切れば死にそうだが、それで死ぬかも疑わしい。
あのユグドラシルとかいういけ好かない奴に、殺させる、という手も考えた。それが一番合理的に思えた。
しかし、クィッキーはそれを拒否した。奴の死体が見たいのではない。殺すことに意味があるのだ。
そこまで考えて、自分の理不尽さ、その無い物ねだりの原因に思い立った。
自分があの怪物に奪われたモノは、主人だけじゃないのか。クィッキーは筋骨隆々とした、牛の背を思い出す。
あれはターニングポイントであり、節目だ。敵おうが敵うまいが自分の手で清算を付けたがるのも当然か。
既に召された彼ら二人に許しは請わなかった。仲睦まじくやっているだろう二人は絶対に自分を止めるだろうし、何より無粋だと思った。
現実と理想に折り合いを付けたクィッキーに思いつけた手段は、ユグドラシルを利用することだった。
戦闘が始まって、ずうっと観察を続けた。見続けたのは、石の位置。
ユグドラシルと同じような羽根を持っていた男が、あの石を狙っていたことを思い出した。
確証は無くとも、それしか自分の牙が通じる場所が無いと思った。
憎悪が眼球から零れ落ちそうになった時、一瞬、ユグドラシルと眼があった。
気付かれぬようにと位置を変えたとき、自分よりも蒼いそれを漸く怪物の左手に見つけた。
銃声のような騒音が轟く中、自らを丸め、クィッキーは注意深く待つ。
それは外敵に対する防御というよりは、自らの気持ちが折れぬようにと堪える体勢だった。
轟音が鳴り止み、フラフラとクィッキーは雪の中から這い出る。一歩足を出して雪跡を刻む度に、焔に薪が入った。
背中を迂回して、左側面に踊り立つ。あのバカみたいな散弾はもう無い。
殺す。絶対に、絶対に。怪物が奔った。平行して走り、距離を詰める。
糞、何でこんならしくないことをしてるんだ。
「クゥゥゥゥゥィッッキィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
疑問に思った時には、既に身体をそこに向けて踊らせていた。
目測通り怪物の手の甲にしがみつく。その小さな手が半液状の皮膚にめり込んだ。
恐怖を噛み殺すように、歯を石の縁に掛けた。突如、自分の身体がめっためたに揺さぶられる。
眼を瞑ったまま、クィッキーは懸命に噛んだ。これだけは放さない。
ダンダンと身体に何かが打ち付けられる。肉の線維が切られていくという感覚をリアルタイムで実感した。
意識を飛ばしながらも、クィッキーは泣きながら噛み続けた。これだけは話さない。
こんなはすじゃ無かったのに、畜生、畜生。
クィッキーだったモノが引き離されたとき、まだ歯は、その縁に挟まったままだった。
それは外敵に対する防御というよりは、自らの気持ちが折れぬようにと堪える体勢だった。
轟音が鳴り止み、フラフラとクィッキーは雪の中から這い出る。一歩足を出して雪跡を刻む度に、焔に薪が入った。
背中を迂回して、左側面に踊り立つ。あのバカみたいな散弾はもう無い。
殺す。絶対に、絶対に。怪物が奔った。平行して走り、距離を詰める。
糞、何でこんならしくないことをしてるんだ。
「クゥゥゥゥゥィッッキィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
疑問に思った時には、既に身体をそこに向けて踊らせていた。
目測通り怪物の手の甲にしがみつく。その小さな手が半液状の皮膚にめり込んだ。
恐怖を噛み殺すように、歯を石の縁に掛けた。突如、自分の身体がめっためたに揺さぶられる。
眼を瞑ったまま、クィッキーは懸命に噛んだ。これだけは放さない。
ダンダンと身体に何かが打ち付けられる。肉の線維が切られていくという感覚をリアルタイムで実感した。
意識を飛ばしながらも、クィッキーは泣きながら噛み続けた。これだけは話さない。
こんなはすじゃ無かったのに、畜生、畜生。
クィッキーだったモノが引き離されたとき、まだ歯は、その縁に挟まったままだった。
横合いからの虚撃に怪物は全くの無防備だった。
怪物よりも二歩前にそれを察していたミトスは素早く、詠唱を開始する。
『あああああああ!!!!!!!! 何を、何をッ!! 何してんのよォ!!』
ゴミが、襲ってきたと油断して、“ゴミがピンポイントでアキレスを狙ってきた”という重大さに気付いたシャーリィは完全にミトスに横合いを晒した。
想定外の事態に、彼女の視野が急速に狭まる。
振り解こうとして一秒。叩き付けようとして、全力で殴ればエクスフィアが傷つくかもしれないと躊躇して半秒。
右手を完全に使って叩き、それでも離れず握り潰すのに一と半秒。合わせて三秒の時を要した。
『ハンッ!! ゴミ屑が頑張っても精々これよ!! 私の想いの前には、これだけにしかならない!!』
混乱と昂揚を混ぜ合わせたまま怪物は腹に右手を深々と突き入れ、魔剣を取り出した。
攻撃と防御を一挙に行える一策だった。
よりにもよって詠唱。シャーリィは自らの想いが神に通じていることを噛みしめた。
この剣に気を遣って術撃を選んだのだろうが、上級術でこの身体を滅しようにも、あと数秒の時は要する。その間に大切断だ。
『私は、絶対にお兄ちゃんに会いに行く!! 絶対に、この想いは絶対よ!!』
号砲一喝と雪原表面の雪がふわりと舞った。その霞の中で、ユグドラシルは。
『生憎と、死者に想いを馳せるなんて非生産的なこと、僕の趣味じゃないよ』
怪物よりも二歩前にそれを察していたミトスは素早く、詠唱を開始する。
『あああああああ!!!!!!!! 何を、何をッ!! 何してんのよォ!!』
ゴミが、襲ってきたと油断して、“ゴミがピンポイントでアキレスを狙ってきた”という重大さに気付いたシャーリィは完全にミトスに横合いを晒した。
想定外の事態に、彼女の視野が急速に狭まる。
振り解こうとして一秒。叩き付けようとして、全力で殴ればエクスフィアが傷つくかもしれないと躊躇して半秒。
右手を完全に使って叩き、それでも離れず握り潰すのに一と半秒。合わせて三秒の時を要した。
『ハンッ!! ゴミ屑が頑張っても精々これよ!! 私の想いの前には、これだけにしかならない!!』
混乱と昂揚を混ぜ合わせたまま怪物は腹に右手を深々と突き入れ、魔剣を取り出した。
攻撃と防御を一挙に行える一策だった。
よりにもよって詠唱。シャーリィは自らの想いが神に通じていることを噛みしめた。
この剣に気を遣って術撃を選んだのだろうが、上級術でこの身体を滅しようにも、あと数秒の時は要する。その間に大切断だ。
『私は、絶対にお兄ちゃんに会いに行く!! 絶対に、この想いは絶対よ!!』
号砲一喝と雪原表面の雪がふわりと舞った。その霞の中で、ユグドラシルは。
『生憎と、死者に想いを馳せるなんて非生産的なこと、僕の趣味じゃないよ』
手首に掛けたミスティシンボルをクルクル回しながら、ユグドラシルが指を弾いた。
「第一節・ファイアボール」
ユグドラシルの頭上に炎の球が出現し、怪物を目掛けて襲いかかった。
怪物は剣を盾にして構える。
『ご大層なこと言った割にこんな術? こんな弱い術で何が出来るっての……ガァッ!?』
「キープスペル解凍―――――第二節・ライトニング」
怪物の頭上に雷撃が落ちる。生きている神経群が、強制的に反射を起こした。
剣が蹌踉めき、その右手首に炎が狙い澄まして集中する。たまらず魔剣が落ちた。
『クソ……小細工ばっかりしてえ!! もう種切れの癖ににいcう゛!!!!!!』
怪物の声をかき消すように、鈍い音が数度雪の中微かに鳴り響いた。
その背中に剣ほどの大きさの氷の針が数本、突き刺さった。最後の一本が右手を地面に縫いつける。怪物の上体が崩れた。
半ば自然と、怪物の顔が向いていた。
『晶術並列運行―――――第三節・アイスニードル』
射程圏ギリギリから、アトワイトが、自らを怪物の目線に向けていた。
シャーリィはここまで来て、漸く悟った。自分はこの技を知っている。いや、この島に来た者ならば誰もが知っている。
果敢にも王に挑んだ、魔王の手札。常識破りの連殺術式。
ミスティシンボルが回転を更に強める。ユグドラシルの12枚の羽根が雪に舞い散る。
「魔術直列起動―――――第四節・グレイブ!!」
怪物の身体が地面から浮いた。土塊の大槍は怪物の真芯を射抜く。
完全に封じられた怪物は、ただもがくだけだった。
ユグドラシルの頭上に炎の球が出現し、怪物を目掛けて襲いかかった。
怪物は剣を盾にして構える。
『ご大層なこと言った割にこんな術? こんな弱い術で何が出来るっての……ガァッ!?』
「キープスペル解凍―――――第二節・ライトニング」
怪物の頭上に雷撃が落ちる。生きている神経群が、強制的に反射を起こした。
剣が蹌踉めき、その右手首に炎が狙い澄まして集中する。たまらず魔剣が落ちた。
『クソ……小細工ばっかりしてえ!! もう種切れの癖ににいcう゛!!!!!!』
怪物の声をかき消すように、鈍い音が数度雪の中微かに鳴り響いた。
その背中に剣ほどの大きさの氷の針が数本、突き刺さった。最後の一本が右手を地面に縫いつける。怪物の上体が崩れた。
半ば自然と、怪物の顔が向いていた。
『晶術並列運行―――――第三節・アイスニードル』
射程圏ギリギリから、アトワイトが、自らを怪物の目線に向けていた。
シャーリィはここまで来て、漸く悟った。自分はこの技を知っている。いや、この島に来た者ならば誰もが知っている。
果敢にも王に挑んだ、魔王の手札。常識破りの連殺術式。
ミスティシンボルが回転を更に強める。ユグドラシルの12枚の羽根が雪に舞い散る。
「魔術直列起動―――――第四節・グレイブ!!」
怪物の身体が地面から浮いた。土塊の大槍は怪物の真芯を射抜く。
完全に封じられた怪物は、ただもがくだけだった。
『晶魔四連―――――――――――――――テトラスペル。奴が生きていたら遣うつもりだった、僕の切り札だ。
オリジナルより些か精度に落ちるが、第三節以外は術を選ばないのが自慢でね。冥土の土産にでもするといい』
ユグドラシルは魔剣を取り、そばに寄ったアトワイトに持たせた。
『僕も、お前も、少し勘違いをしていたんだよ。あの動物を見て思い出した。動物は何時だって賢くて、気高い』
ミスティシンボルを再び回し、ユグドラシルの周りに魔法陣が起動した。
『お前は、そのお兄ちゃんとやらを救うのに、全員を殺そうとしているんだろ? 大変だね。ご苦労様』
巨大な円陣が雪原を刻む。
『でも、僕は、そんな面倒なことをする必要がない。だって、姉様はここに生きてるんだから。
だからお前を殺すことは諦めるよ。恨み辛みは、操る方が性に合ってる。ま、エクスフィアは逃がさないけどね』
紋章を持たない手の方に、一つの実が存在していた。
『死んだ奴が生き返る? あの莫迦な王が生き返らせてくれる? 僕は信じないね』
天に光が満ちる。
『僕は僕の手で、全てを叶えてみせる。王なんてお呼びじゃない』
黄泉路に続く門が開く。
『何が違うのか、最後に教えてやる』
世界が帯電する。雷雲が轟いた。
『神はいない。故に、神を越えることは出来ない。それが出来てしまったお前は、願いを享受する側から与える側に回ってしまった。
お前は、上り詰め過ぎたんだ。甘えることを覚えるべきだった』
ユグドラシルが背を向けた。
『最後にチャンスを上げるよ。セネルを諦めれば、ひょっとしたらお前は生きて戻れるかもしれない。お前が死ねば、僕の姉様は確実に蘇る。
自分か、お姉ちゃんか、好きな方を選びなよ』
言い終わった瞬間、ミトスは術を撃った。既に解答は聞くつもりが無かった。
神の雷が、怪物の左手に落ちた。爆音が開けたこの広場を満たす。雷の通った路にあった雪と雲は強制的に電解しイオン臭を放った。
怪物の左手、その意志は、粉々に砕け散った。雪の中に混じって、文字通り消え失せる。
オリジナルより些か精度に落ちるが、第三節以外は術を選ばないのが自慢でね。冥土の土産にでもするといい』
ユグドラシルは魔剣を取り、そばに寄ったアトワイトに持たせた。
『僕も、お前も、少し勘違いをしていたんだよ。あの動物を見て思い出した。動物は何時だって賢くて、気高い』
ミスティシンボルを再び回し、ユグドラシルの周りに魔法陣が起動した。
『お前は、そのお兄ちゃんとやらを救うのに、全員を殺そうとしているんだろ? 大変だね。ご苦労様』
巨大な円陣が雪原を刻む。
『でも、僕は、そんな面倒なことをする必要がない。だって、姉様はここに生きてるんだから。
だからお前を殺すことは諦めるよ。恨み辛みは、操る方が性に合ってる。ま、エクスフィアは逃がさないけどね』
紋章を持たない手の方に、一つの実が存在していた。
『死んだ奴が生き返る? あの莫迦な王が生き返らせてくれる? 僕は信じないね』
天に光が満ちる。
『僕は僕の手で、全てを叶えてみせる。王なんてお呼びじゃない』
黄泉路に続く門が開く。
『何が違うのか、最後に教えてやる』
世界が帯電する。雷雲が轟いた。
『神はいない。故に、神を越えることは出来ない。それが出来てしまったお前は、願いを享受する側から与える側に回ってしまった。
お前は、上り詰め過ぎたんだ。甘えることを覚えるべきだった』
ユグドラシルが背を向けた。
『最後にチャンスを上げるよ。セネルを諦めれば、ひょっとしたらお前は生きて戻れるかもしれない。お前が死ねば、僕の姉様は確実に蘇る。
自分か、お姉ちゃんか、好きな方を選びなよ』
言い終わった瞬間、ミトスは術を撃った。既に解答は聞くつもりが無かった。
神の雷が、怪物の左手に落ちた。爆音が開けたこの広場を満たす。雷の通った路にあった雪と雲は強制的に電解しイオン臭を放った。
怪物の左手、その意志は、粉々に砕け散った。雪の中に混じって、文字通り消え失せる。
『そんなの決まってる。お前が死んで、お兄ちゃんが生きるよ』
スカーフを口元まで上げる。
終ぞ、ユグドラシルは望む死を観ることが出来なかった。
終ぞ、ユグドラシルは望む死を観ることが出来なかった。
「終わったな」
ヴェイグが剣を持ちながら、雪の向こうに目を凝らしていた。
『ああ、予想通りというか、クィッキーが動いた分、僅差でミトスが勝ちを握った』
ディムロスが淡々と戦況から熱を抜いた言葉を放つ。
ヴェイグが剣を持ちながら、雪の向こうに目を凝らしていた。
『ああ、予想通りというか、クィッキーが動いた分、僅差でミトスが勝ちを握った』
ディムロスが淡々と戦況から熱を抜いた言葉を放つ。
『ミトス、怪我ノ治リョうを』
「不要だ。それよりもアトワイト、あの肉塊にレイズデッド一発。無いとは思うがあの細胞一辺にシャーリィの意志が残留していた場合面倒だ」
ユグドラシルは押さえきれない焦りを早口に表しながらまくし立てた。
キョロキョロと辺りを見回し、何かを探っている。
「不要だ。それよりもアトワイト、あの肉塊にレイズデッド一発。無いとは思うがあの細胞一辺にシャーリィの意志が残留していた場合面倒だ」
ユグドラシルは押さえきれない焦りを早口に表しながらまくし立てた。
キョロキョロと辺りを見回し、何かを探っている。
ヴェイグが背に掛けたディムロスの柄に手を掛ける。
「仕掛けるか?」
『いや、まだだ。向こうも今この瞬間を待ちかまえているだろう』
そういうディムロスに、ヴェイグは納得できないという溜息を付いた。
『確かに、回復されては面倒が……あの毒はそう簡単には治療できまい』
「なら?」
ヴェイグの問いに、ディムロスは一拍を置いた。
「仕掛けるか?」
『いや、まだだ。向こうも今この瞬間を待ちかまえているだろう』
そういうディムロスに、ヴェイグは納得できないという溜息を付いた。
『確かに、回復されては面倒が……あの毒はそう簡単には治療できまい』
「なら?」
ヴェイグの問いに、ディムロスは一拍を置いた。
「仕掛けて来ないか……出来れば完全排除したかったが仕方あるまい。アトワイトの時間も残り少ない、か」
ユグドラシルは苦々しげにスカーフを千切り、深手を縛り付ける
ユグドラシルは苦々しげにスカーフを千切り、深手を縛り付ける
『情報が正しければ、絶好の奇襲点が一点残っている』
ディムロスのレンズが暗く輝いた。
ディムロスのレンズが暗く輝いた。
「アトワイト、時間だ。これを何とかするのにソーディアンが要る以上はこちらを先にするしかない。その身体を返して貰う」
ユグドラシルが首をこつりと叩いた。アトワイトから魔剣を手に取る。
ユグドラシルが首をこつりと叩いた。アトワイトから魔剣を手に取る。
『失敗するにせよ成功するにせよ、儀式の結果が出た瞬間こそ、奴が無防備になる一瞬だ』
「さあ―――――――――――――――――――――――――――――万願成就の瞬間だ」
「さあ―――――――――――――――――――――――――――――万願成就の瞬間だ」
ありとあらゆるモノが蠢く中、最後の歯車が回り始めた。
【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP45% TP30% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り 極めて冷静
両腕内出血 背中に3箇所裂傷 中度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走
エクスフィギュアの正体を誤解 キールの惨たらしい死に動揺
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル
基本行動方針:優勝してミクトランを殺す
第一行動方針:ミトスの儀式終了後、襲撃
現在位置:C3村中央広場・民家屋根上
備考:フォルスによる雪は自然には溶けません
状態:HP45% TP30% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り 極めて冷静
両腕内出血 背中に3箇所裂傷 中度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走
エクスフィギュアの正体を誤解 キールの惨たらしい死に動揺
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル
基本行動方針:優勝してミクトランを殺す
第一行動方針:ミトスの儀式終了後、襲撃
現在位置:C3村中央広場・民家屋根上
備考:フォルスによる雪は自然には溶けません
【SD】
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調 感情希薄? エクスフィギュアの正体を誤解
基本行動方針:優勝してミクトランを殺す
第一行動方針:ヴェイグをサポートする
第二行動方針:シャーリィやミトスの戦力を見て分析する
第三行動方針:アトワイトが気になる
現在位置:C3村中央広場・民家屋根上
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調 感情希薄? エクスフィギュアの正体を誤解
基本行動方針:優勝してミクトランを殺す
第一行動方針:ヴェイグをサポートする
第二行動方針:シャーリィやミトスの戦力を見て分析する
第三行動方針:アトワイトが気になる
現在位置:C3村中央広場・民家屋根上
【アトワイト=エックス@コレット 生存確認】
状態:HP30% TP10% コレットの精神への介入 ミトスへの羨望と同情 エクスフィア侵食 “コレット”消失
思考を放棄したい 胸部に大裂傷(処置済) エクスフィギュアの正体を誤解 全身打撲 全身に擦り傷や切り傷
所持品:苦無×1 ピヨチェック ホーリィスタッフ エクスフィア強化S・A(エクスフィア侵食中)
基本行動方針:積極的にミトスに従う
第一行動方針:儀式を行う
現在位置:C3村内
特記事項:エクスフィア強化S・Aを装備解除した時点でコレット死亡
状態:HP30% TP10% コレットの精神への介入 ミトスへの羨望と同情 エクスフィア侵食 “コレット”消失
思考を放棄したい 胸部に大裂傷(処置済) エクスフィギュアの正体を誤解 全身打撲 全身に擦り傷や切り傷
所持品:苦無×1 ピヨチェック ホーリィスタッフ エクスフィア強化S・A(エクスフィア侵食中)
基本行動方針:積極的にミトスに従う
第一行動方針:儀式を行う
現在位置:C3村内
特記事項:エクスフィア強化S・Aを装備解除した時点でコレット死亡
【ミトス=ユグドラシル@ユグドラシル 生存確認】
状態:HP40/50%(毒特性:最大HPカット) TP60% 良く分からない鬱屈 高揚 頬に傷 右腿裂傷 右肩貫通 左足指欠損 左脇腹裂傷
所持品:ミスティシンボル 大いなる実り ダオスのマント(治療に消費) キールのレポート エターナルソード
基本行動方針:マーテルを蘇生させる
第一行動方針:蘇生儀式を行う
第二行動方針:襲撃者を警戒
第三行動方針:蘇生失敗の時は皆殺しにシフト(但しミクトランの優勝賞品はあてにしない)
現在位置:C3村中央広場・雪原
状態:HP40/50%(毒特性:最大HPカット) TP60% 良く分からない鬱屈 高揚 頬に傷 右腿裂傷 右肩貫通 左足指欠損 左脇腹裂傷
所持品:ミスティシンボル 大いなる実り ダオスのマント(治療に消費) キールのレポート エターナルソード
基本行動方針:マーテルを蘇生させる
第一行動方針:蘇生儀式を行う
第二行動方針:襲撃者を警戒
第三行動方針:蘇生失敗の時は皆殺しにシフト(但しミクトランの優勝賞品はあてにしない)
現在位置:C3村中央広場・雪原
【??? ???】
状態:???
所持品:プリムラ・ユアンのサック リーダー用漆黒の翼バッジ メルディの漆黒の翼バッジ ダブルセイバー 魔杖ケイオスハート
基本行動方針:???
現在位置:C3村中央広場・雪原
状態:???
所持品:プリムラ・ユアンのサック リーダー用漆黒の翼バッジ メルディの漆黒の翼バッジ ダブルセイバー 魔杖ケイオスハート
基本行動方針:???
現在位置:C3村中央広場・雪原
ドロップアイテム(全て汚染):マジックミスト 占いの本 首輪×3 ソーサラーリング ベレット セイファートキー
凍らせたロイドの左腕 邪剣ファフニール C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) マジカルポーチ 分解中のレーダー
ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック メガグランチャー UZISMG フェアリィリング
凍らせたロイドの左腕 邪剣ファフニール C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) マジカルポーチ 分解中のレーダー
ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック メガグランチャー UZISMG フェアリィリング
【クィッキー:死亡確認】