The last battle-終結~第五回放送-
既にそこは雪原と言うには、余りにも汚れすぎていた。
上級魔術と大規模天候操作の応酬、そして最後に交差した水素爆発と光の審判は、この村の中央広場を中央跡地に変えてしまうのに十分な結果だった。
『取り逃がした……ッ!!!!』
その荒れ果てた決戦跡でディムロスが、腹の底から感情を救い出すように吐き捨てた。
ミトス=ユグドラシルがこの局面で逃げ出すなど、誰が予測できただろうか。
否、それは幾らディムロスでも予想は不可能だった。
あのジャッジメントはミトスが渾身の知恵を巡らせて作り上げた、ヴェイグを殺す最後の勝負だったはずだ。
なぜならあの時点でミトスは両足を失っており、これ以上の継戦は物理的に不可能だったからだ。
だからこそ、例えその被害がミトス本人にまで及ぼうと、ここで退くなど戦術的に有り得ないのだ。
例え逃げても、もうミトスに挽回のチャンスなど存在しないのだから。
『なんという見通しの甘さ……やられた。奴は天使、その定義は寧ろソーディアンに近いのだ……
もし、禁止エリアで寸断された東のエリアにでも逃げられ、篭城でもされようものなら、我等に追撃する手段が無い!!』
そう、ディムロスは戦争を担ったものが誰しも一度は陥る、決戦主義の幻想に嵌ってしまったと言えるかもしれない。
ミトスの方から全てをかなぐり捨てて最強の札を切ってきたのだから、ここが勝負所なのだという予断がディムロスの中に確実に存在していた。
残り二人という状況、ましてや。互いに最後の札を切るか切らぬかという瀬戸際の局面で、“撤退”などという選択肢は無いと、
ディムロスはミトスの人間性を過大評価し過ぎてしまった。
そう、この勝負は別に、ここで全てを終わらせなければならない決戦などではない。唯の一勝負なのだ。
逃げていけない理由など何処にも無い。いや、サバイバビリティに特化した無機生命体ならば、この行為は理に適ってすらいる。
『ヴェイグ、急げ!! 長距離のテレポートは幾ら奴でも出来ん。今捉えきらねば、全ての利を失うぞ!!
聞いているのか、ヴェ……』
そう捲し立てたディムロスの言葉を遮ったのは、その言葉を送った人間から滲み出る、あまりの辛さだった。
「違う。違わない。俺は、逃げてなんか、間違って、俺は、俺は」
既に使い物にならなくなった左腕はだらりと項垂れていたが、右手は頭蓋を潰しそうなほどの指圧で、自らの頭を抱えていた。
ヴェイグはその中で壊れたように単語を並べ、自らの中の何かが決壊を塞ごうとしていた。
『ヴェイグ、ミトスの戯言になど耳を貸す必要は無い!! 迷えば死ぬのはお前だぞ!!』
ディムロスは言葉でヴェイグの背中を叩くが、それが大した効果にならないだろうということは、本人が良く分かっていた。
「ディムロス……この世界は、全部間違いなんだ。それは絶対に間違い無いんだ。
でも、じゃあ、俺は何を間違えたんだ? 俺は、どうすれば良かったんだ?
俺が進んだ道は、本当に俺が選んだ道なのか? 俺は、何処に行けばよかったんだ? クレア、カイル、ティトレイ……誰でもいい、教えてくれ……」
包帯が取れて洞が露出した左目は何処までも黒く、右目は銀髪が掛かって何も写さない。
ヴェイグは、諦め、割り切ったはずの問いに直面し、そしてその答えを知らなかった。
『ヴェイ……ッ!!』
上級魔術と大規模天候操作の応酬、そして最後に交差した水素爆発と光の審判は、この村の中央広場を中央跡地に変えてしまうのに十分な結果だった。
『取り逃がした……ッ!!!!』
その荒れ果てた決戦跡でディムロスが、腹の底から感情を救い出すように吐き捨てた。
ミトス=ユグドラシルがこの局面で逃げ出すなど、誰が予測できただろうか。
否、それは幾らディムロスでも予想は不可能だった。
あのジャッジメントはミトスが渾身の知恵を巡らせて作り上げた、ヴェイグを殺す最後の勝負だったはずだ。
なぜならあの時点でミトスは両足を失っており、これ以上の継戦は物理的に不可能だったからだ。
だからこそ、例えその被害がミトス本人にまで及ぼうと、ここで退くなど戦術的に有り得ないのだ。
例え逃げても、もうミトスに挽回のチャンスなど存在しないのだから。
『なんという見通しの甘さ……やられた。奴は天使、その定義は寧ろソーディアンに近いのだ……
もし、禁止エリアで寸断された東のエリアにでも逃げられ、篭城でもされようものなら、我等に追撃する手段が無い!!』
そう、ディムロスは戦争を担ったものが誰しも一度は陥る、決戦主義の幻想に嵌ってしまったと言えるかもしれない。
ミトスの方から全てをかなぐり捨てて最強の札を切ってきたのだから、ここが勝負所なのだという予断がディムロスの中に確実に存在していた。
残り二人という状況、ましてや。互いに最後の札を切るか切らぬかという瀬戸際の局面で、“撤退”などという選択肢は無いと、
ディムロスはミトスの人間性を過大評価し過ぎてしまった。
そう、この勝負は別に、ここで全てを終わらせなければならない決戦などではない。唯の一勝負なのだ。
逃げていけない理由など何処にも無い。いや、サバイバビリティに特化した無機生命体ならば、この行為は理に適ってすらいる。
『ヴェイグ、急げ!! 長距離のテレポートは幾ら奴でも出来ん。今捉えきらねば、全ての利を失うぞ!!
聞いているのか、ヴェ……』
そう捲し立てたディムロスの言葉を遮ったのは、その言葉を送った人間から滲み出る、あまりの辛さだった。
「違う。違わない。俺は、逃げてなんか、間違って、俺は、俺は」
既に使い物にならなくなった左腕はだらりと項垂れていたが、右手は頭蓋を潰しそうなほどの指圧で、自らの頭を抱えていた。
ヴェイグはその中で壊れたように単語を並べ、自らの中の何かが決壊を塞ごうとしていた。
『ヴェイグ、ミトスの戯言になど耳を貸す必要は無い!! 迷えば死ぬのはお前だぞ!!』
ディムロスは言葉でヴェイグの背中を叩くが、それが大した効果にならないだろうということは、本人が良く分かっていた。
「ディムロス……この世界は、全部間違いなんだ。それは絶対に間違い無いんだ。
でも、じゃあ、俺は何を間違えたんだ? 俺は、どうすれば良かったんだ?
俺が進んだ道は、本当に俺が選んだ道なのか? 俺は、何処に行けばよかったんだ? クレア、カイル、ティトレイ……誰でもいい、教えてくれ……」
包帯が取れて洞が露出した左目は何処までも黒く、右目は銀髪が掛かって何も写さない。
ヴェイグは、諦め、割り切ったはずの問いに直面し、そしてその答えを知らなかった。
『ヴェイ……ッ!!』
ディムロスが、何か益体も無い気休めを口にしようとしたときだった。
『諸君、聞こえるだろうか?』
天より大気を伝う、声ならぬ声が響き渡る。
『ミクトランッ!?』
ディムロスが叫ぶ。ヴェイグが無言のまま、ビクリと大きく一度震えた。
天より大気を伝う、声ならぬ声が響き渡る。
『ミクトランッ!?』
ディムロスが叫ぶ。ヴェイグが無言のまま、ビクリと大きく一度震えた。
『バトルロワイアルも既に60時間が経過した。これより、第五次定時放送を行う。
ああ、紙とペンは用意せずともいい。既に無用だ』
ああ、紙とペンは用意せずともいい。既に無用だ』
ヴェイグが、ゆっくりと天を見上げた。
既に自らが仕掛けた雪と雲は晴れていて、そこでようやく、この世界がもう夜であることに気づく。
既に自らが仕掛けた雪と雲は晴れていて、そこでようやく、この世界がもう夜であることに気づく。
『禁止エリアは……そうだな、今より10分後、残るエリア全域を禁止エリアと発動する。
…と、いってももう意味も無いがな。一応は体裁として必要だろう』
…と、いってももう意味も無いがな。一応は体裁として必要だろう』
『何を言っている…正気か、ミクトラン』
唖然としたディムロスは天声の半分を聞き入れられないという感覚だった。
対してヴェイグは、ディムロスよりもほんの少しだけ早く、その意味を掴む。
唖然としたディムロスは天声の半分を聞き入れられないという感覚だった。
対してヴェイグは、ディムロスよりもほんの少しだけ早く、その意味を掴む。
『それではお待ちかねの、死亡者発表だ。気が向けば名簿に書き込んでも構わん。
過去最高数だ。随分多いが、まあ気楽に聞くがいい。
―――――――リオン=マグナス、プリムラ=ロッソ、トーマ、シャーリィ=フェンネス』
過去最高数だ。随分多いが、まあ気楽に聞くがいい。
―――――――リオン=マグナス、プリムラ=ロッソ、トーマ、シャーリィ=フェンネス』
名前が呼ばれ始めると同時にディムロスが沈黙した。心中は穏やかならずとも、聞かねばならないと経験が伝えていた。
『―――――――カイル=デュナミス、ティトレイ=クロウ、ミント=アドネード、クレス=アルベイン』
歯軋りが聞こえるほどにヴェイグは奥歯を噛み締め、唇の端から血を流した。
『―――――――ロイド=アーヴィング、メルディ、キール=ツァイベル』
ヴェイグが無言のままディムロスを掴んで、何かに引き摺られる様にして立ち上がる。
『―――――――コレット=ブルーネル、グリッド、以上13―――――――ん?』
わざとらしい一拍を置いて、ミクトランはもったいぶった声で言う。
『ああ、たった今、ミトス=ユグドラシルの死亡を確認した。以上、14名だ』
その瞬間、ヴェイグの周囲に光の線が走った。
『ミトスが、死んだだと……いったい何が?』
「ディムロス」
『ミトスが、死んだだと……いったい何が?』
「ディムロス」
『ここに計54名の死亡を確認した。よって、天上王ミクトランが宣言する』
線が幾何学的図形を構築し、瞬く間に魔方陣へと変わっていく。
なんだ、とディムロスが無言で相槌を打った。ヴェイグが受け取り、返答する。
「もう、終わろう。いや、終わらせよう」
なんだ、とディムロスが無言で相槌を打った。ヴェイグが受け取り、返答する。
「もう、終わろう。いや、終わらせよう」
『勝者、ヴェイグ=リュングベル。彼の者の勝利を以って、ここにバトルロワイアルの終結を宣言する!!』
「何が間違いだろうが、何が正しかろうが、あのパイの味がなんだったかも、もうどうでもいい。
あと一振りで何もかもが終わるんだ。終わらせられるんだ。付き合ってくれるか?」
あと一振りで何もかもが終わるんだ。終わらせられるんだ。付き合ってくれるか?」
最後の線と線が交わり、方陣が輝きを一層強めた。
『無論だ、我は最後までお前に付き合おう』
ヴェイグの世界の半分が光に包まれる。
一度だけ目を瞑り、次に目を開くときにはヴェイグはきっと何かを捨てている。
それを達観と言うのか、諦観か、覚悟か、それとも自棄か、それは彼本人にも分からない。
それを達観と言うのか、諦観か、覚悟か、それとも自棄か、それは彼本人にも分からない。
「全部終わる。それだけはきっと間違いじゃない」
――――――――――――――――――次にたどり着くは、きっと全ての終着駅。
【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP10% TP15% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り
両腕内出血 背中に3箇所裂傷 重度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走 迷いを克服
エクスフィギュアの正体を誤解 キールの惨たらしい死に動揺 左肩から先重症 全身打撲 頭部裂傷
葛藤 胸部重度火傷 全身に裂傷 腹部大裂傷
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル エクスフィア強化S・A(故障中)
基本行動方針:終わらせよう
第一行動方針:ミクトランを殺す
第二行動方針:自分を終わらせる
現在位置:C3村中央広場・決戦跡→???
状態:HP10% TP15% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り
両腕内出血 背中に3箇所裂傷 重度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走 迷いを克服
エクスフィギュアの正体を誤解 キールの惨たらしい死に動揺 左肩から先重症 全身打撲 頭部裂傷
葛藤 胸部重度火傷 全身に裂傷 腹部大裂傷
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル エクスフィア強化S・A(故障中)
基本行動方針:終わらせよう
第一行動方針:ミクトランを殺す
第二行動方針:自分を終わらせる
現在位置:C3村中央広場・決戦跡→???
【SD】
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調
感情希薄? エクスフィギュアの正体を誤解
基本行動方針:終わらせる
第一行動方針:ミクトランを殺す
第二行動方針:ヴェイグが気になる
現在位置:C3村中央広場・決戦跡→???
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調
感情希薄? エクスフィギュアの正体を誤解
基本行動方針:終わらせる
第一行動方針:ミクトランを殺す
第二行動方針:ヴェイグが気になる
現在位置:C3村中央広場・決戦跡→???