atwiki-logo
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このウィキの更新情報RSS
    • このウィキ新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡(不具合、障害など)
ページ検索 メニュー
テイルズオブバトルロワイアル@wiki
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
テイルズオブバトルロワイアル@wiki
  • ウィキ募集バナー
  • 目安箱バナー
  • 操作ガイド
  • 新規作成
  • 編集する
  • 全ページ一覧
  • 登録/ログイン
ページ一覧
テイルズオブバトルロワイアル@wiki
ページ検索 メニュー
  • 新規作成
  • 編集する
  • 登録/ログイン
  • 管理メニュー
管理メニュー
  • 新規作成
    • 新規ページ作成
    • 新規ページ作成(その他)
      • このページをコピーして新規ページ作成
      • このウィキ内の別ページをコピーして新規ページ作成
      • このページの子ページを作成
    • 新規ウィキ作成
  • 編集
    • ページ編集
    • ページ編集(簡易版)
    • ページ名変更
    • メニュー非表示でページ編集
    • ページの閲覧/編集権限変更
    • ページの編集モード変更
    • このページにファイルをアップロード
    • メニューを編集
    • 右メニューを編集
  • バージョン管理
    • 最新版変更点(差分)
    • 編集履歴(バックアップ)
    • アップロードファイル履歴
    • ページ操作履歴
  • ページ一覧
    • このウィキの全ページ一覧
    • このウィキのタグ一覧
    • このウィキのタグ一覧(更新順)
    • このページの全コメント一覧
    • このウィキの全コメント一覧
    • おまかせページ移動
  • RSS
    • このwikiの更新情報RSS
    • このwikiの新着ページRSS
  • ヘルプ
    • ご利用ガイド
    • Wiki初心者向けガイド(基本操作)
    • このウィキの管理者に連絡
    • 運営会社に連絡する(不具合、障害など)
  • atwiki
  • テイルズオブバトルロワイアル@wiki
  • ある愛の話 -No time-

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

ある愛の話 -No time-

最終更新:2019年10月13日 21:25

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

ある愛の話 -No time-


風、即ち乾。土、即ち坤。対を並べて天地を表す。
火、即ち無限温度。氷、即ち絶対零度。対を並べて万物を記す。
水、即ち創造。雷、即ち破壊。対を並べて推移を示す。

音・波・炎・樹etc……未知なるものも含め細分化された無数の現象、これらを人の手にて類型し六属。

風火水、陽性束ねて光。土氷雷、陰性束ねて闇。陰陽を並べて世界を成す。

あらゆるものの中に遍く在り、あらゆる事象を司る現象そのもの。
物質でもなく精神でもないもの。
神代の時代よりも前から遍在し、物質と精神を渡るもの。

それを何時しか、人は一なるもの―――――『晶霊』と呼んだ。


神々が、セイファートとネレイドが争うよりも前から、
そもそも先ず世界が精神世界<バテンカイトス>だけだった時よりも前から、我らは在った。
我らは存在するものではなく、遍在するものである。風が吹こうが吹くまいが、風という現象は在るように。
「有る」か「無い」か、ではなく「濃い」か「薄い」かで表す方がまだ正しい。有無ではなく疎密なのだ。
その晶霊の「濃い」部分、即ち我等のことをさして人は『大晶霊』という。
万物の現象を司る晶霊、それを取り纏め司る我らもまた広義の意味では晶霊といって差支えはない。
イフリート、ウンディーネに代表される六属を取り纏める者達は根源“晶霊”であり、
その根源晶霊を統括するレム、シャドウもまた統括“晶霊”なのだから。
まず晶霊が存在してそこから大晶霊が顕現したのか、それとも大晶霊ありきで晶霊が生まれたのか、
それを考えることは卵と鶏を追い掛けるほどに無駄なことなので、試したことはない。

だが晶霊と大晶霊を明確に分け隔てる線引きは存在する。意志の有無、そして肉体の有無だ。
精神でない晶霊に知能―――ヒトで言うならば人格に相当するもの―――は無い。
自律思考を行える大晶霊が采配を行うのだから必要がないのだ。
我らが思考できるのだから晶霊にも知能が無い道理はないかとも思うが、これも疎密で表せる現象なのだろう。
一つ一つ(ということ自体が間違いなのだが)の晶霊は単細胞のようなもので、複雑な思考などできるはずがない。
だが、それらが高密度に集まりラインを作れば、神経群となって思考回路を生む。
原始生物から時を経れば猿も人に成り得る、という所だろうか。
大晶霊とは、神霊としての格を持ちうるほどに集った晶霊に他ならない。
そして、集ったものが散らないようにする為には器が要る。
だが物質でもない晶霊はオリジナルの器を持たない。晶霊は八百万の存在に「宿る」ものだからだ。
同じく大晶霊もまた、現象に溶け込んでいる普段は肉体など持つ必要は無い。
しかしながら人が脳という物理的な器を持たねば精神を保持できないように、
高密度晶霊が「大晶霊」であり続けるために何がしかの形は必要なのだ。
イフリートが力強い男性としての男性性、セルシウスが強気ながらも繊細な女性性を持つように、それに見合う形が在るのだ。

精神でも物質でもない晶霊が自我と自己の器、即ち精神と物質を持つ。
それこそが大晶霊と晶霊を分けるものなのだ。



だからこそ『この世界』では我らは現れることが出来ない。それどころか、思考することすら不可能だった。
一体如何なる原理からかは分からないが、我らはこの世界で自分の形を構成できない。
肉体を構成できるだけの晶霊はあるのに、骨子となる核がないのだ。無理に集まっても、形を成せず再び霧散するばかり。
器が整わなければ、杯に注ぐ水もまた形を定めること能ず。大晶霊としての霊格を持つこともできない。
晶霊を扱える人間の指示で形を成すことはできるだろうが、人間のキャパシティでは完全再現などできる筈もない。

まるで、そう、まるで“この世に神は二人と要らぬ”とでも言いたげに、この世界は大晶霊を許容しなかった。

大晶霊にとって異常極まるこの事態に、私はさほど興味がなかった。
そもそもその時の私も他の大晶霊と同様、思考など出来る筈もない。
興味が無かったというこの認識は、今振り返ってみて恐らくそうだっただろうと確認しているだけにすぎない。
ともかく、私にはこの異常の原因にも、この異常がもたらす結果にも興味がなかった。
時は不変にして悠久。ただあるがままに流れるべきなのだから。
だがある時、それが起こった。今私を構成している晶霊が入っていた篭に、一つの羽が入ってきたのだ。
それは、翅というにもボロボロな魂の亡骸。炎を燃やし尽くした後の、無念冷めやらぬ末後の煙火だった。
私はその亡骸が私の身体を構成するのにしっくりくることを理解し、興味を覚えた。
どうせ傍観に徹するのだ。ならばせめて、退屈しない程度の知性は持っておいて損はない。
ゼクンドゥスとして集合する前の私の認識を確認する術はないが、恐らくはそう思ったはずだ。
いずれにせよ私は――――時を司る高位晶霊・ゼクンドゥスはその亡骸を核として肉体を得、神格を取り戻すことになった。
だが、あの時の私にはやはりこの状況に介入する気はなかった。
籠目の中より覗く断片的な世界は確かに興味深くはあったが、それが霞んでしまうほどの愚かさがこの世界には多すぎたからだ。
絶望に塞ぎ闇に沈む者、希望に盲い眩い光に世界を見失う者、
罪に陶酔して現実より目を背ける者、自らの在り方すら理解できずにいる者。
そして、自分の愚かさを知り尽くしてなおその愚性を言い訳にしか用いられぬ者。
どれも等しく愚かだった。賢しい愚者と、普通の愚者と、どうしようもない莫迦しかいなかった。

“たとえ心優しき者でも、その優しさゆえに毒を受け、怒りに、憎悪に、その身を焼かれることもある。
 私もこの目で、その末路を辿った者を見た。いかに聖人君子たれど、彼や彼女もまた人である以上、この猛毒に蝕まれる危険は常にある”

別にそれに対して憤慨する気にはなれない。人間というものは賢さという愚性を付随した獣だから。
ウンディーネあたりならそれすら人間の善き所であると笑いさえするだろう。
だが私はそこまで寛容にある存在ではない。怒りはなくとも軽蔑はある。
ゼクンドゥスは自らが僅かながらにも失意と絶望に傾いていることすらも俯瞰しながら自らを分析した。
×××の遺した言葉、その意味を何一つ学ぶことなく、ただ無意味に同じ所をグルグルと回るだけ。
ただ回るだけならば犬の方がまだ賢いか。
彼らの時間は円ではなく螺旋。下方に罪悪を紡いで、ただ無意味な時間を摩耗させるだけ。
愚か過ぎて手を差し伸べる気になどなるはずもない私は、ただ傍観に徹することに改めて決めた。
時間は誰にでも等しくあるものなのだ。
どうせ手を加えずとも遠からず彼らの世界は終わる。それもまた、一つの時間なのだと。
だから私は何もしない。ただ滅ぶであろう時間をその時まで客観視するだけだ。


そう、思っていたのだが――――――――――――存外、彼らの時間は“しぶとかった”。
何処か懐郷を誘う羽根の輝き、満足そうに悔しそうに終わる命。
何もかもが愚かであることには何一つ変わっていないのだが、愚かさに愚かさを積む噛み合せの妙とでもいうべきか。
もうろくすっぽ残っていない足場を渡るように、紙一重の処でその時間は醜くも保たれていた。
そう、全く以て醜悪だった。大晶霊といえども嘆息の一つでも付きたくなるほどに。
既に破綻した芝居をアドリブでなんとか保たせているようなものなど、見せられる側からしてみれば堪ったものではない。
まだ足掻くか人間よ。終り際こそ美しくあるべきなのは、人も世界も時間も同じなのなのに。
ゼクンドゥスは、大晶霊として客観的に世界の滅びを肯定する。

――――――――――――そら見たことか、あんまりにも愚かしすぎて醜さが際立って仕様がない。

だが、だからこそゼクンドゥスは主観的にその愚かなるそれを肯定できなかった。
ケイジの中から覗く彼の眼が捉えるのは一人の剣士。血に塗れて嗤う殺人鬼。

―――――×××を斬ったその剣で、幾人の血を吸えば気が済むのか。

楽しそうに弱者に跨ってその顔に拳を叩きつけるのを見て、ゼクンドゥスは憐憫も義憤も抱かない。
時間は中立に、何処までも客観的でなければならないのだから。
なのに唯々湧き上がる他者の悔恨、止め処無く溢るるのは主観的憎悪。
ゼクンドゥスは理解している。これは自分の感情などでは決してないことを。

―――――×××を倒した貴様の、なんたる無様なことか。

現世したばかりの筈の体に身に覚えのない古い瑕疵が、疼くように哭く。
決して無勝手に肉体が精神に命じている訳ではない。ただ哭いているのだ。

―――――×を打倒したお前が、そんな無様を二度も曝して許されると思うのか。

古い体に傷と刻まれた存在しない記憶に、ゼクンドゥスは感情を覚えた。
不快にして醜悪、愚かしさにも加減があってしかるべきだ。
故にこの時間という客観に立つ大晶霊は、主観的な感情にその重い腰を上げた。
彼の指先が世界を刻む時間の針に触れる。一撃にて一切合財を終わらせる。
“されど、人を愛する気持ちを忘れるべからず。愛なくして、人は刃を握るべからず”
なればこそその刃、これ以上見るに堪えないというならば。殺すに是非も無い。
右手に集う白光はその殺人鬼という汚辱を消し去るために。工程は滅ぼすという一撃で済む。
否、時間の流動はこの左手の内に。我が絶対領域に於いて一瞬が来る前に終わらせよう。
その泣き散らす涙すら、今の彼には癇に障った。

『下らんな、実に下らん』



自身の“感情”を端的に言い表しながら、ゼクンドゥスは現在を閉じた。
切り離される過去と未来。発動する時間停止に精彩を失った世界。
『ヒトの愚かしさに呆れ、もう関する気も失せていたが。少しばかり不快が過ぎる』
そう、呆れるだけで済めば彼とて動かなかっただろう。
だが彼の肉体は目の前の殺人鬼をただ呆れるだけでは許容できないのだ。
軋る歯の音が憐憫を、飛び退いて土が爆ぜる音が憤怒を、
切り取られた時間の中でも自由に泳げるその事実が、慈しみすらも混交させる。
『我が支配する時間領域で動けるとはな。流石は曰くの魔剣か。だが、如何なる業物を持っていようと畜生は畜生。
 過ぎたる力に呑まれるは人の業なれど、どうにもお前は見るに耐えん。
 あの時もヒトとして愚かしかったが……今の貴様はそれ以下だ』
その右手の光が、眼前の汚濁を消し去ろうと戦慄く。
目前の身に覚えのない宿敵が剣を強く握った。その剣の絶技は、この体の知らぬ傷が承知している。
話に聞く異界の時の剣の威力は本物で、この時間操作に囚われないとなれば条件は五分。
だが、ゼクンドゥスは負ける気は微塵もなかった。
この場にアレを終わらせることの出来るものがいなくなった以上、
例え力は互角だとしても、あの哀れな様はこの自らの手で引導を渡さなければならない。
『お前が積み立てたその無価値な時間ごと虚空に還してやろう。せめてお前の時間を葬る者の名を刻んで逝け。我が名は――――――』
これ以上の醜態を晒す前に終わらせるのは慈悲ですらあると、ゼクンドゥスは彼の知らない縁を了承した。

「なにをやってる、ゼクンドゥス」

その右手が振り抜かれる一瞬、その一歩手前。
水を差す皺枯れたな声にゼクンドゥスは手を止める。声のほうを向いたその先で、そこに男が立っていた。
ゼクンドゥスは彼を知っていた。一度は自分と契約を交わしたこともある晶霊術師。
ただそれだけで、感慨など殆どない。そこで大人しく寝ているのが賢かろう愚者の一人。

「邪魔をするな。お前から消すぞ!!」

だというのに何故立っている、キール=ツァイベル。この世界で限りなく愚かなる者よ。




未だゼクンドゥスの手によって掌握された時間世界の中で、キール=ツァイベルは文字通り“ただ”立っていた。
何をするというわけでもなく何を出来るという状態でもなく、やっと立てたと言っても差支えないほどに。
顔面は拉げ、青痣と出血が上手い塩梅で交じり遠目には紫にも見える。
そんな這う這うの体を晒す男は突如ぐいと、自らの左の親指で曲った鼻っ柱を押した。
鼻に引っ掛かって鼻血が少し洩れ出すが鼻は動かない。
今度は力強くもう一度穿つように押し込むが、非力故かやはり動かない。
唇を奇妙な形に曲げた彼は、周囲が見えていないのかそれとも周りの状況など無縁とでもいうように、
ゼクンドゥスの晶霊が今まで納まっていたクレーメルケイジを懐に仕舞い、両方の指を用いて強引に捻じ込む。
繰り返すこと四五回の後、少しばかりの出血とともに鼻が辛うじて顔の中心線に揃った。
軟骨とはいえ折れた側と逆方向に押し込むだけで元通りになるならば接骨医は要らない。
しかし汗と血に乱れた髪の向こうの眼は胡乱に揺れて、そんなことに気を留める気がないことを雄弁に語っていた。
詰まっていた血が抜けて、鼻の気道さえ通ればそれで構わないとでもいうかのような乱雑さだった。
口周りの血を拭こうとキールは袖で顔を拭うが、4割が裾についてその内の7割が再び顔に着く。
鼻水と涎が混じったことに気づいたのか、数回したところで諦めたらしい。
ゼクンドゥスはその男の情けない様を見ながら、横目でクレスに焦点を合わせた。
出鼻を挫かれたのはゼクンドゥスだけではないようで、
その手の剣は未だ握りを甘くしていないが手を下げたゼクンドゥス同様、腰溜めに蓄えられたままになっている。
むしろ明らかな動揺すらその肩に溢れていた。自分が滅多打ちした男が無理に起きただけにしては大きすぎるほどに。
「良く聞こえなかったな、晶霊術師。貴様、何と言った?」
その視線はクレスの剣の柄に集約したまま、ゼクンドゥスがその口を開いた。
それは質問の体をしただけの脅迫であることは、あからさまだった。
契約を行った事実を忘れた訳ではないが、水を差されて流せるほど彼の気分は安くは無いし、
邪魔な路傍の石を消滅させることを厭うほど、彼は博愛主義ではない。

その“質問”をどう受け取ったか、口元を歪めたキールは止まった世界の零秒で即答した。
「聞こえ、なかっ、たか、ゼクん、ドゥス。邪魔、を、するなと、言、ったんだ」
馬鹿にするというよりは侮蔑に近いアクセントで、キールはさも当然にように吐き捨てた。
既存の時間に縛られた音は全て失せた無音の中で言葉尻を遮るように混じる断続的な呼吸は浅く短く煩く、
聞くもの全てを苛立せることに加担している。
ゼクンドゥスが目を細める。殺意が右手に伝播し、その矛先をキールに向けようとするが僅かに止める。
彼を殺すことに一秒かかることはないだろうが、その僅かな時間をクレスに与えることは出来ないからだ。
何よりも同時にゼクンドゥスは、この人間が“何を邪魔と思っているのか”ということへの疑問を浮かべずにはいられなかった。
「……今は忙しい。こいつを殺した後なら、幾らでも話は聞いてやろう」
意図的に虫けらを扱うような語調で、試すような言葉をゼクンドゥスは選ぶ。
世界で一番気難しい大晶霊の申し出は破格以外の何物でもなかった。
そもそもキール=ツァイベルの目的はこの殺人鬼から後ろの女どもを守ることに相違無く、
そしてゼクンドゥスの目的はこの殺人鬼を一切の余韻なく消滅させることに他ならない。
どれだけ足掻いても彼がクレスを倒すことの出来ないことは、今までの無意味な足掻きで証明されている。
ならばゼクンドゥスと彼は、動機はともかく目的は一致している。
ましてこの不遜な態度を取り続ける男にはもう虚勢以外の一欠けらも残っていないのだから、
有り難がってこそすれ邪魔になどなるはずがない。
だからゼクンドゥスは明確に“クレスを殺した後なら邪魔をしない”と意図を含めた。
既に固まった予測を、何が邪魔であるのかを浮き彫りにするために。



キールは彼の言葉の裏、その意図を見透かしたように顔を卑しく歪め莫迦を諭すように言った。
「それが、困る、と言って、いるんだ」
その手には、ゼクンドゥスを構成する晶霊の入ったクレーメルケイジが握られている。
右手の五指全ての関節を鳴らしながらゼクンドゥスは内心で舌を巻いた。
分かっていたことだが、さてどうしたものかと。
この男を無視して殺人鬼と殺し合いを始めるのが一番手っ取り早い。
小物臭い笑みを浮かべる顔の紫色は、決して痣と血の色のせいだけでなく酸素が足りていない証拠。
既にキール=ツァイベルの戦闘力は無いといってもいいのだから、一度始まれば止めることなど出来ないだろう。
だがただ一点、キールの持つクレーメルケイジだけがその例外だった。
万が一にも、それを壊されれば今度は体に満たすべき晶霊が欠乏しこの存在を維持できなくなる。
それはどうしようもなく本末転倒でしかないが、くすんだ彼の壊れた瞳が露骨にその可能性を示唆していた。
先にキール=ツァイベルから奪ってしまうという手もあるが、それは一瞬とはいえクレスに隙を与え先手を奪われることになる。
一転、打つべき手を詰まされてしまったゼクンドゥスは溜息を付いたような素振りをして、口を開いた。
「何故だ。大した違いはあるまい」
「理由は3つある。一つは言えない。一つは言わない。そしてもう一つは、全部話すには時間が無い」
まるで最初から答えを用意していたかのような滑らかさでキールは速やかに答えた。
無論、それはゼクンドゥスを納得させ得るものであるはずがなかった。
それも承知とばかりに、キールはゼクンドゥスが口を開く前に震える右手を前に出した。
「まあ、待て。話さなイと、いう訳、じゃナいが、とりあえず…、…一息、つかせて欲しい」
気安い調子で口を動かしながら、キールの左手が自らの懐に入り一本の瓶を取り出す。
蓋を開けて、一気に逆さにして口元に流し込む。口の端から液体が漏れていた。
飲み終えてキールは大きく息を吐いた。全身で生命を謳歌するような満たされた呼吸だった。
だが、それが状況と場の流れに適合していない素振りであることは明らかだった。
「貴様、ふざけているのか?」
「まさか。こいつは“特別製”でな。苦しい時には、効果が覿面なんだよ」
重圧を乗せたゼクンドゥスの言葉に、キールは流すように言葉を重ね――――――そこで、初めて視線を別のほうに向けた。
その先にいたクレスが反射的にキールの方を向き、そして目を逸らすわけにはいかないゼクンドゥスに戻そうとしたとき、
そこでようやく、彼の脳が目に映った画像を処理し、痙攣したように視線が止まる。
その先にあるのはキール、否、彼の持つ唯の瓶。だがクレスには瓶の中にもう一つの意味があった。
それは、まさか、否、もう無いはずじゃあ。
殺人鬼の表情から零れたそれを目聡く確認したキールは、虫を捕食するような賤しさを露わにして言った。
「お前も飲むか、クレス? お前ならこれをよく知っているだろ?」
幽かに揺れた瓶の中で、液体が揺れる音がした。
「そうさ、お前がデミテルから貰ったモノだよ」



途端、目に見えてクレスに異常が発生した。
散大する瞳孔、乱雑に途切れる呼吸音。皮膚に浮かぶ脂汗は、陽の落ち始めた夕の涼やかさには似つかわしくない。
小瓶を凝視したかと思えば、直ぐにゼクンドゥスに視線を戻し、また瓶に移ろう。
剣だけは確りと握りしめられているが、その覇気は明らかに揺らいでいた。
その様を横目に観察していたゼクンドゥスは嘆息をついて、睨め付けるようにキールに吐き捨てる。
キールはクレスの方を注視しながら、ゼクンドゥスには目は合わせずに答えた。
「……やってくれたな。最初から取り込む用意はあった訳か」
その態度にゼクンドゥスは確信した。咄嗟の判断で苦し紛れに付いた嘘にしては余りにも堂が入りすぎている。
懐に仕込んだボトルの用意の良さは、明らかにクレス=アルベインを懐柔しようと目論んでいた事を教えていた。
「別に最初から全てを準備していたわけじゃない。ただ、無策よりは愚策の一つでも持っていた方がマシというだけだ」
叱られたことを屁でも思っていない悪童のように、キールの言葉には罪悪の欠片もなかった。
ロイドを捨てるという奇策にキールは全てを賭けていた。
そんな一世一代の大勝負だからこそ、考えうる全ての状況に思考を巡らせなければならない。
ミトスがクレスとぶつかり、先に死んでしまうという最悪のケースを。
キールにとって重要なのはロイドではなくクレスではなく、ミトスですらない。
最後に残った時空剣士を手中に収めることだったのだから。
なれば、クレスが生き残ってしまう最悪の状況に手を考えるのは至極当然ともいえた。
クレスを御するに一番いい手は何か? 手段も時間も無いこの極限状況で一番簡単で効果の期待できる手法。
それはデミテルがクレスに打った呪術式をそっくりそのまま流用するのが最も手堅い。
それさえできれば、ミトスも要らなかっただろう。デミテルの位置にそっくりそのまま滑り込んでしまえばいいのだから。
だがそれ故にキール=ツァイベルは諦めざるを得なかった。不可能なAが可能ならBが可能、というのは条件にすらなっていない。
ゼクンドゥスは何故か理解している。あれを作るには相応の外法の知識と相応の材料が不可欠だということを。
そのどちらも無いキールにはその画餅に過ぎないプランを弄ぶ余裕などなかった。
そもそも彼はクレスに起きた“病”を“呪”としてしか認識できていないのだ。開始線にすら立っていない。
彼が知る事実はたった一つ。クレスは呪いが発症したとき、何かを飲んでいたということだけ。
回収したデミテルの所持品から、クレスの持っていた瓶が各参加者に一般的に支給されているものであることは判明している。
ならば、同じ瓶を用いれば、騙すことが出来るのではないか?
―――――――――論外だ。キール=ツァイベルの結論は至極真っ当だった。
その場を凌ぐためだけならばともかく、長時間拘束できるとはとても思えない。
そして、そんな安い策を打って失敗し無様に死んでしまうというのは、流石に納得できない。
キールは、ミトスへ下ることの妥当性を補強するためにそこまで考えて順当に下策を廃棄した。
たかだがその程度の想いつきをここまで弄繰り回すあたり、彼がどこまで狂い、逼迫していたか推し量ることができる。



そしてこの一手誤れば死に至るこの状況下で捨てた案を躊躇いなく用いたキールは、
間違いようもなくその時の狂気を遥かに凌駕していた。
普通に用いたとしても苦し紛れの時間稼ぎにしかならない口八丁など策とすら言えない。
クレスの側からしてみれば判断に迷う必要すらない。その瓶を持っている腕を切り落としてしまえばいいだけなのだ。
仮にその瓶を隠されたとしても同じこと。本当に作れるのか分かるまで殺してやればそれで済む。
取引とはある一定以上の力の均衡が働かない限り成立しない。だから、キールとクレスの間に駆け引きが差し挟まる余地は無い。
単体では時間稼ぎにも使えない下の下策。
だが、“クレスが動きを止めざるを得ない状況が先に存在していたならば”話は別だ。
ゼクンドゥス。ロイド亡き今、クレスと単体で渡り合える鬼札。
この二者の拮抗を見切ったのか、キールは恐らくこのバトルロワイアルが始まってから最も迅速な決断を下した。
時を掌る人と時を司る神の睨み合い。人であるならば誰もが傍観してやり過ごしたくなるシチュエーション。
だからこそ彼は動かねばならなかった。一度火蓋が切られれば、もう彼が介入できる余地がなかっただろうから。
新しい策を用意できるような時間もなく、そこからキールが辛うじて見出した計略は一つだけ。
薬を自ら作ることができなければクレス自身に作らせればいい。
かくしてキール=ツァイベルの才覚は発動した。
ゼクンドゥスを前にして動けないクレスに、それらしく瓶の中の中身を仄めかす。
疲れ切った自分が飲む一掬いの水の癒しは何処までクレスの呪いと酷似しただろうか。
下手に情報を与えて嘘だと露見されても困るから、此方からは不用意に嘘はつかない。
必要なのは『薬があるという真実』でも『薬があるという嘘』でもなく『薬があるかもしれないという幻』。
後は勝手にクレスが中身を勘違いする。瓶の中に、精巧に自分の妄想を投影する。
それこそデミテルが作ったオリジナルよりも遥かに甘露なる毒を作り上げるだろう。
夢はいつだって現実より都合よくできているから。
ゼクンドゥスとの対峙はただそれだけで消耗に繋がる。
そのタイミングで、既に無いと思われていた物があるかもしれないとなればクレスが食いつかないはずがない。
本来なら今すぐにでもキールのもとに駆け寄り、切り伏せてその小瓶を奪い取ってしまいたいだろう。
だがだからこそクレスは動けない。“それは目の前の最強に対して致命的な隙に他ならないから”。
単体では時間稼ぎにもならない下策を、キールは予測外に発生した時間稼ぎの補助に回した。
いずれクレスは耐え切れずに振り切れるだろうが、それでもいつ振り切れるか分からない状況からは脱した。
延びる時間は一分か、一秒か。だが、その時間こそはこの半死半生の人間にとって値千金に他ならない。



ゼクンドゥスは誰にでも聞こえるほどの大きさで舌打ちをした。
この限定領域下にて、一番無力な男が残り二人を手玉に取っている。
後々のことを見据えれば、どう考えても壊せるはずのないクレーメルケイジ。
そもそも存在しない、虚勢以外の何物でもない幻の禁薬。
いわば使い物にもならない玩具のナイフとピストル。だが、そう分かっていても動けない。
この狂人を抑えに動けば相手に殺される。かといっても無視も出来ない。
結果、状況は彼が動かさない限り動けなくなった。動きようをなくしてしまった。
そんな玩具の鉄砲でこの血潮に塗れ卑しく笑う男は、この場の主導権をこの二強から奪い取ったのだ。
当然、神が人に弄ばれて快く思う者などいない。
だが超越存在というよりも強者としての気分が強いゼクンドゥスは、種族的にではなく個人的な感情で彼に不快を持っている。
同時に、今までの興味もまた強まるのを認識していた。
一歩踏み外せば何もかもを台無しにしてしまうような手を躊躇いなく打つこの男が、未だ一線で狂っていないが故に。
「………で、何時までそうしているつもりだ? 聞きたいことがあるなら早くしてくれ。見ての通り、喋るのも億劫なんだ」
見透かしたように薄らと笑うキールの額には溶けた垢交じりのどろどろとした汗がびっしりとついていた。
相も変わらず不遜な態度を取るのは、狂っているならばただの思い上がりで済む。
だが人と晶霊の在り方を知るキールがそれでもその態度を改めないのは、
敵でも味方でもない大晶霊と自分が親密な関係にあるとクレスにアピールしたいが為。
クレスに逡巡の要素を付加して少しでも時間を稼げれば御の字という、明確な足掻こうとする意思。
主導権を握ったのは、先手を取って何かをしなければならないから。そして時間を稼ぐということは手段にすぎない。
“キール=ツァイベルには、ゼクンドゥスを止めてでも為さねばならない何かがある”。
それは一体何だというのか。何故ゼクンドゥスがクレスを殺しては駄目なのか。
まさかプライド? 今更ここまで闘ったのだから最後は自分の手で倒すというような感傷だというのか。
それこそ真逆だ。可能ならばクレスにすら尻尾を振るつもりだった男が、そんなものを持つとは考え難い。
悠久なる流れにあるゼクンドゥスはその捻じれに捩じれ切った正気にこそ不満を抱き、そして興味を深く覚えたのだ。



その視線をクレスに向けたまま、キールは頭を掻いて傷口を血を拭い、頭皮の脂交じりのそれをちゃにちゃと弄りながら尋ねた。
「言えない理由を言う前に確認させて欲しい。この首輪の時間は止まっているのか?」
ゼクンドゥスは微かに喉を鳴らし、押し黙った。頭の回転が早い彼はそれだけで“言えない理由”の大凡に見当をつける。
「止まっている。この世界の存在条件にも依るが、仮に首輪が止まっていないとしても、
 空間の時間が止まっている以上電磁波・音波も進まない。お前が危惧するように、聞かれていることは無いはずだ」
「うん。僕もそう判断する。少なくとも、お前の時間停止なら全員の首輪が止まってるはずだ」
二日分の頭皮の油を指で練りながらキールは今までの捩れ方からはとても想像できないほど素直に同意した。
首輪にタイムストップを防ぐ仕掛けを仕込むことはあまり意味がないからだ。
この世界において、術は敵味方などの『自己とそれ以外』以外の線引きを引くことができない。
これを他世界の時間停止魔術・タイムストップに適応すれば恐らく自分以外の全てが止まるはずである。
となれば、この停止時間中は盗聴はあまり意味がない。
本人以外の誰も喋ることができないのだから、この間に大した小細工は出来ないし、
唯一縛りを受けない術者本人の首輪さえ確認できていれば、それで問題はないはずだ。
ジェイから聞いたクライマックスモードという技の存在も加味すれば、恐らくはその仮定で問題ない。
参加者がタイムストップを使えば、その術者の首輪からその使用が確認できる。
なら、参加者以外の奴がタイムストップを使ったらどうだろうか。
“術者以外のすべてが止まってしまうタイムストップを参加者でない奴が使う”なら、考えうる結果は一つ。
参加者全員が止まる。何が起こっているのか、何が起きたのかは闇の中。
「証明する手法も時間もないから原理から導くことはできないが……最初に確認したときクレーメルケイジの中に大晶霊は居なかった。
 今大晶霊がここにいる事実、そしてお前がタイムストップを平然と行使できる事実。それを受けてなおミクトランが手を打たない事実。
 この三点から導き出せることは一つ。お前の登場は、ミクトランにとってイレギュラーであることは間違いない」
キール=ツァイベルが直ぐにこの話を切り出せなかった理由。
それは天上の観客席にてこの殺し合いを観戦するミクトランに他ならない。
果たしてこの大規模な時間停止が、首輪のどこにまで作用するのか。限りなく零秒で行われる会話を奴は聞くことができるのか。
それを明らかにしない限り、彼はとてもではないがまともに言葉を紡ぐことなど出来ないと思っていた。
否、ゼクンドゥスが能動的に舞台に上がってしまった以上そこは諦めざるを得ない。
だから彼が今の今まで確認したかったのは、この会話が何処まで踏み込めるのかどうか。
『聞いているが、危険ではないから反応しない』と『聞こえていないから反応しない』では大きな違いがある。
そしてそれを分かつのは、突如ケイジの中に存在したゼクンドゥスがミクトランのシナリオに組み込まれているのかどうか。
その一点についてキールは首輪にかかるタイムストップの作用及びそれ作成するミクトランの利得損失、
そしてこの世界における大晶霊の立ち位置から分析し、これをイレギュラーと断定した。
ゼクンドゥスの存在がイレギュラならばこのタイムストップはゼクンドゥス以外のすべてに作用することになる。
最も、そのゼクンドゥスのタイムストップをキャンセルしたキールとクレスの首輪が盗聴可能になっているケースを
キールは完全に否定することができなかった。だが、その点に関してはキールはさほど警戒を抱いていない。



ミクトランが別空間で、時間が止まった世界の盗聴ができると仮定しよう。
それはつまり、ミクトランが時間が止まっている間の時間を刻んでいるということだ。
例えばタイムストップで午後5時から1時間、時間を止めたとする。盗聴ができるからその1時間をミクトランは経過する。
そうすると“タイムストップが解けたときミクトランは午後6時に居る”ことになる。
するとどうなるか。この世界はまだ午後5時なのに、午後6時だから放送をしなければならないという事態になる。
勿論これは極論だ。だが理解は容易くできるだろう。
ミクトランが静止時間を把握できるということは“止まった時間の分だけミクトランと参加者の時間に差が出てくる”ということ。
一回のタイムストップで10秒しか止められないとしても、6回で1分。
1時間狂わうことはそう難しいことではない。
禁止エリア、首輪の動作…………最悪、最長8日で終わるはずのバトルロワイアルがさらに伸びる可能性すらある。
その歪は、バトルロワイアルの運営を困難にすることは想像に難くない。
故に、ミクトランは静止時間を盗聴しない公算が高い。できないのではなく、しない。
より大きな困難を避けるために、小さな困難を甘んじて受けることは理に沿うからだ。
だが、それを時間の支配者に語るほどキールは暇人ではなかった。
「もしこの会話を盗聴していたと仮定して、それでもここまでアクションを起こさないということは、
 少なくとも今この状況に介入する気がないということに等しい。クレスをお前に殺されてもいいということだからな」
「成程。故に今ここで会話する分には問題ないということか」
少し理屈として弱いか、と思いかけたキールは直ぐに思い直す。
いや、これはこれで結果論として判断材料に成り得るだろう。背理法による証明というやつだ。
重要なのはミクトランに気づかれないこと。気付かれたとしてもミクトランの不興を買う限界線を見極めること。
それが根源的な意味での首輪への対処法。首輪の解体は最終的な詰めでしかない。

ここまでの会話はキールにとってそれを判断するための反応確認に過ぎなかった。
分かり切った事実を言語化し、一から組み直して原点に立ち返ったのはゼクンドゥスに語る為。
そしてそこから先の言葉とそれを紡げるだけの呼吸を作る為の時間稼ぎ。
「そう、ここまでは問題ない。だがお前がクレスを殺すことは問題足り得るんだ。
 気付かれていなくても気付かれていても、だ。解るか?」
莫迦にするなと言いたげにゼクンドゥスは目を閉じた。
タイムストップ中に誰かを殺すと、実時間で換算すれば突然死んだように見える。
会話だけならば後には何も残らないだろうが、誰かを殺せば物的な証拠が残ってしまう。
ミクトランがタイムストップに気付いていなかったとしても、こうなればクレスが突然死んだことに気付く。
しかし参加者は誰もタイムストップを使っていない。バトルロワイアルを円滑に進めてくれている存在が原因不明の他殺に死ぬ。
それを看過してくれると思えるほど、キールはミクトランの人間性に評価を与えていなかった。
ミクトランが余程の無能でもない限りこの事実から、遠からず大晶霊―――――ゼクンドゥスの存在に気付くだろう。
ミクトランがもとからゼクンドゥスに気づいていたと仮定しても同じこと。
黙認の時間は終わり、不興を買うどころか逆鱗に触れる可能性を考えるほうが健全だ。
キールは知っていた。ミクトランはルールを超越して、マリアン=フェステルの首輪を爆破していることを。
口実を与えれば敵に付け入る隙を与えることになる。
そして彼女と同じ被害を被るとすればそれは首輪に縛られないゼクンドゥスではなく、十中八九そのマスターである晶霊術師。
つまりゼクンドゥスの行為はキールとメルディにとって迷惑以外の何物でもない。
「だから私が手を出すのは困る、と?」
「それ以外に解釈の仕方があったら是非聞いてみたい」
キールは瓶を握り再び喉を潤す。一定のリズムで飲む感覚を短くすることは忘れない。
それは出来る限り、クレスにこれが『それ』であると思わせるためにか。



突如、乾いた笑いがゼクンドゥスから漏れた。右目だけでキールは窺う。
「お前の言い分は、解った。―――――――――だからどうした?
 今私が為したいことは、あの愚かなる者を絶滅させることだ。
 その後のことなど、況してやお前達のさして面白くもない時間の保証などしてやる義理も道理もない」
馬鹿を素直に馬鹿と罵るような調子で嘲笑を浮かべるゼクンドゥス。
どんな言い訳をこじつけてくるかと思い蓋を開けてみれば、その程度でしかない。
キール=ツァイベルが言いたいことを要約すれば、
『ゼクンドゥスが勝手なことをして、自分の首輪が爆破されてはたまらない』ということでしかない。
ただ自己の未来、その保身しか考えていない。そしてそれはゼクンドゥスにとって重視するべきものでは決して無い。
ましてゼクンドゥスは、彼の為してきた時間が如何に無意味かをよく知っている。
それこそ、ゼクンドゥスの行為によって首輪が爆破されて死んでも、大して違いはないだろうに。
「この際、お前の好みはさして重要じゃないんだよ、ゼクンドゥス」
「ならば貴様のヒロイズムにも意味はあるまい」
もう王手をかけられ滅ぶことが運命付けられた物語。だからこそ、好み位は通さなければ仕様がない。
この期に及んで首輪を気にしたところで、それは皮算用に過ぎない。
いや、そもそもの前提が現実との位相から大きく逸脱している。
ゼクンドゥスが仮にクレスを殺すことを止めたとする。その後誰がクレスを殺すというのか?
殺せない。キール=ツァイベルでは、クレス=アルベインに勝てない。
低俗な希望や浅薄な楽観を上乗せしても到底届かない絶対の現実。
いや、キール=ツァイベルにもクレスを殺すことはできるのだ。それが、正に今だ。
完全なるインディグネイションを破棄し、魔力を枯渇した彼に出来る唯一の法は、
召喚を以てゼクンドゥスという他者の力を借りること以外にない。
だから、キール=ツァイベルの死が確定するとするならば今この瞬間こそが岐路。

首輪の警戒、ミクトランを念頭に置いた状況の分析をゼクンドゥスは認めた。
だがそれが人間の限界だ。推移とは無数に切断された現在の連続。
未来の死を回避したとしても、現在の死を回避できなければそれは無意味なのだ。
キール=ツァイベルは計算された未来に目を向けることで逆に現実から目をそむけている。
だから、ロイドを殺す算段すら立てられるのだ。
「語るに落ちたな。アレは私が殺す。その檻で私を縛れるというなら、やってみるがいい」
ゼクンドゥスは、キールに向けていた意識の大半をクレスに設置しなおした。
体内に晶霊を循環させ力を練り始めると、血が出るほどに頬に指を食い込ませたクレスが反応する。
これ以上の茶番はゼクンドゥスにとって無駄でしか無かった。
キールがクレーメルケイジに手を出すならばそれもよし。こさえる死体が一人分増えるだけだ。
ゼクンドゥスは目を細め、その拳を硬く固めた。



ゼクンドゥスがその侮蔑を内心に含めた時を見透かすような、絶妙な間だった。
「ひゃ、ははっ、ひゃはははははははっ!!!!」
戦闘態勢を取りきったゼクンドゥスの耳朶を、乱れた音が打った。
笑い声ということも憚れるような、乾き、崩れかけた音の奔流。
嘲るというよりはただ感情が漏れ出したような、不快そのもの。
「好みは重要かそう来たか。カカッ、そうだよ正しくそうなんだよ。ヒガッ、お前らは何時だって傲慢に勝手だ。
 だがなゼクンドゥス、時を司る神よ。好みを通そうというお前の理を通そうというならば、だ」
人差し指を目に向けてくるキールの顔は、最初に比べてかなり膨らんで腫れていた。
だがその腫れた瞼の奥から覗く眼光は濁って尚鋭い。神すら射殺せるほどに。
「僕も通しておかなきゃいけないことがある。聞かせろ―――――――何故あの時僕達を助けた」
ゼクンドゥスはこの時初めて、この人間に対して威を感じ取った。
その眼より放たれる眼光は脅威であり、威力を持つと。
そして通常の理解速度よりも若干遅く、ゼクンドゥスは目の前の男の言う時に思い至った。
「お前が出てきた今ならあの時を簡単に説明できる。
 今より約半日前。ネレイドと僕達が戦ったあの時、僕たちは死ぬはずだった。
 ネレイドのほうが僅かに一手早かった。それを覆したのは、お前以外を置いて出来る訳が無い」

この島に生き残る殆どの人間が関わった物語の一つ。
闇よりなお黒い全てを支配する神・ネレイドとの戦い。リッドとメルディを生かすためだけに組んだ勝利への方策。
キールは知っていた。彼らは、メルディを救うことが出来ずそのまま死ぬはずだった。
多層精神による多重詠唱。ほんの些細な、気付けていれば幾らでも対処できたことを見逃した為に、
彼らは未来に一歩届かずに終わるはずだった。
その届かない未来と現実を引き寄せたのは、或る神の気まぐれ。
「…………大した意味は無い。目覚めたばかりの体で何処までの力が出せるか試しただけだ」
ゼクンドゥスは正直に答えた。嘘を吐くことに意味がないから。
「つまりは好みを通したと。いいよなあ、そういう好き勝手が出来るやつらは。本当に」
目を細めたようにキールが甘ったるい声を出した。
弱者が強者に本能的に抱く憧憬が、腫れた瞼の奥に光っている。
キールはそれを弄ぶように瓶の先を摘まんでグルグルと回した後、何かの堰を切った。
「時の大晶霊・ゼクンドゥス。瑣末なる人より忠言を申し上げる。――――――――あまり、舐めるな」
正真正銘に、きっぱりとキールはそう言った。その顔に怯懦も竦みも無かった。
強者に弱者が抱く綺麗でないものを全て吐き出すような憎悪に包まれた言葉だった。
ほう、とゼクンドゥスは捨て去った評価を組みなおす。無論、殺すべきかどうかという再検討のために。
「お前は一度僕たちをお前の好みで生かした。自分の都合の為だけに。
 お陰で僕はこうして生きて、こんな下らないことをしている訳だ。ははっ、死にたくなるほど笑えるだろ?」
泣き笑いに近い形を作って、キールは嘲った。彼の周りには勝手に生きて勝手に死んでく奴らしかいない。
それは当然だ。死だけがこの世界で絶対に保障された権利なのだから。
「今更だな。あの時死にたかったというなら、今死んでも大差ない」
ゼクンドゥスは呆れたように言った。死は等価値故に選択権があるのだ。
犬に食われて死ぬのも、孫にみとられて死ぬのも、結果は等しく大差ない。
「同意するよ。死は等価値で生は無価値。人生のなんと浅薄なこと」
自分の愚かさを言い聞かせるようにキールは言った。だが、と区切る。
「だがなゼクンドゥス。それを理解していないのはお前だって同じだろう。
 お前がやろうとしていることは自己満足で、それはお前が愚かだと切り捨てたあいつらと同じなんだ」
キールの視線の先には一つの死骸があった。既に終わってしまった命を推して、最後まで羽ばたいた男の末路があった。
ゼクンドゥスの目が強く絞られた。×××の記憶が、何処かで猛っている。
その内側で燻ぶる何かは青く燃える。命を賭けて戦い、そして後に続く者に託した願い。見知らぬどこかの10億の命。



ゼクンドゥスは迷わずにキールに殺意を向けた。時間の流れがなく死まで零距離なら、もう死んでいることになるのだろうか。
「愚かな奴らに失望していると言ったな。換言すればそれは希望の証明だ。失う望みが無くては失望できない。
 お前は期待していたんだろう? 僕たちが何とかする可能性を、あの時お前は確かに持っていたはずだ」
指を突き刺してキールはゼクンドゥスを指摘した。指先の微かな震えが無ければ様になっていただろうが、
それが失血からくるものか恐怖からくるものかは分からない。
「逆上せ上がりも其処までくると妄想だな。お前たち如きの為に動く気など爪一本分も無い」
「そこまでお前が僕たちの為に動くなんて思っちゃいない。だが髪の毛一本分くらいはあったはずだ。
 準備運動に晶霊術が使いたかっただけなら、食らわせる相手は誰でも良かった。
 僕でも、リッドでも。ネレイドでも良かった。お前はその三択からネレイドを“選んだ”。恣意は確かにあるんだ」
キールの語り口はまるで今ネレイドとの戦いを行った後の様に臨場をゼクンドゥスに感じさせた。
ゼクンドゥスに否定は許されない。体を動かしておく必要があったのは事実であっても、
そのタイミングや対象を選んだのは彼本人。肯定する必要は無いが、それを証明するものが無いから否定も出来ない。
「一度肩入れして旗色が悪くなったら失望か。羨ましいご身分だ。
 流石僕たちが遠く及ばぬ存在、脳味噌も天に飛んでいる。希望も絶望も、現象としては変わらないというのに」
諸手を胸まで上げてやれやれと呆れる素振り。煽っているのか狂っているのか、外目には判別しづらい。
ゼクンドゥスの中の葛藤は沸々と煮立っていた。之もまた策なのか、それとも策を弄しているつもりの奇行なのか。
その判断がつかないまま、怒りだけが純化していく。
人間は、下らない。それを世界の一部として当然だと受け流す自分。
人間は、下らない。それを忌まわしきものだとして吐き捨てる自分。
誰よりも公平であるはずの大晶霊が“誰かに期待し誰かに絶望する”という矛盾。
「そんなお前はクレスを殺すという。何とも自分勝手、何処までも自己中心。
 ――――――――――――――――――――勝手に生きて、勝手に死んだそこに転がった莫迦共と何が違う。
 お前が愚かだと一笑に付したあいつ等と同じじゃないか」
既に事切れたロイド、未だ臥したままのグリッドたちを顎で示すキールの言葉。
それは心の底から彼らを侮蔑する音階だった。ゼクンドゥスは、言葉に初めて感情を上乗せする。
「それを貴様が言うか。奴らを贄にして自分一人生き延びようとしたお前が。
 奴らの生き様を愚かだと嘲笑いながら何一つ為せないお前に、その言葉を吐く権利があると思うのか」
軽蔑にして批難。風刺に近い毒を秘めたその言葉に、キールは初めて顔に苦渋を浮かべた。
体に浮かぶ内外百近くの傷を受けてなお嘲笑う男には似つかわしくない顔。
だが、それを万力で捻じ曲げるように不自然なほど顔全体の筋肉を総動員して、キールは笑みを浮かべた。
「有る。あいつ等を見捨て、あいつ等を認めなかった僕だけがあいつ等を侮蔑する権利を持つ。
 世界中の誰からも馬鹿にされうることを知る奴だけが世界を嘲笑える。
 だからこそ僕以外の奴があいつ等の有様を馬鹿にすることは許さない。それは他でもない、最も愚かな僕だけの特権だ」
自嘲というよりは自傷。自分の中の不確かな憤りをそれを生み出す愚者の頂点にぶつけ、
そして返された言葉にゼクンドゥスは息を呑まざるを得なかった。
誰よりも愚かに賢しらに立振る舞おうとしたこの男は、誰よりも自分の在り方を恥じている。
恥じて自分の愚かさを知って尚、それでも自分の愚かさを捨て切れない矮小さを更に恥じている。
なんと哀れなのだろう。何かと重ねるようにゼクンドゥスはそう思った。
もし自分の愚性すら気付けぬ程の愚かさであれば、まだ救いがあったものを。
もし彼に力があったのなら、こうも捻じれ曲がらなかっただろうに。なんと憐れなのだろう。



ゼクンドゥスは、薬への欲求と殺人への欲求の間で苦悶する男を横目で見た。
気が触れかかったような有様は、正しく醜悪の一言に尽きる。
去来するは、ある男が打倒された過去。
エターナルソードを持って戦いに臨んだ彼等は×××を打倒するに十分な力を持っていた。
男が戦う理由を知ることなく打倒した。知無き力は、希望しか掴むことができない。
ゼクンドゥスは自分の掌を見つめた。
だが、果たして×××が正しかったかといえばそれも否だ。救うべき十億の民。
×××一人が命を燃やした処で届く願いではない。それでも人間に絶望した×××には、信じられる力がそれしかなかった。
だから×××は愚かにも魔王になるしかなかった。力なき知は、絶望しか識ることが出来ない。
そしてこの世界も、そのどちらかだけでは救われない場所なのだ。
「あいつ等を笑うというならあの時お前は僕たちに手を貸すべきではなかった。
 乞食に与える一時の施しも、乞食に与える冷たい罵倒も、どちらも富める者が持つ傲慢以外の何物でもない。
 恣意を介入させておきながら賢しらに、ぬくぬく傍観者を気取るお前にだけは、あいつ等を嘲笑う資格は無い……ッ」
狂気というよりは、憐憫を誘うような矮小さだった。淀んだ瞳に光など殆どない。
ああ、とゼクンドゥスは自分が目の前の弱者に興味を抱いた理由を本能的に理解した。
こいつは私ではない“×”と同じなのだと。
力でもなく、格でもなく、魂でもない。その在り方と苦悶の形こそが相似していた。
世界を敵に回してでも何かを為さねばならない、その覚悟を以て悪にすら至る存在。
だからこそ、ロイド・リッド……嘗て誰かが信じた者たちと相反する。
「御託はもう十分だ。古い証文を持ち出し、私があの殺人鬼を殺すことの論理的矛盾を説くまではいい。
 些か論理をすり替えているきらいがあるがこの際だ、否定もすまい。だが――――――ならば貴様はどうしろというのだ」
キール=ツァイベルの持つ本質を見切ったゼクンドゥスは核心を突いた。
誰からも理解されず、誰も彼も見捨てて何をそこまで頑なに通そうとしているのか、何を守ろうとしているのか。
ゼクンドゥスはそれを問わなければならない。
「大晶霊に強要を強いれるほどの力なんて僕にあるはずも無い。
 僕は理を説いただけだ。お前は僕に僕たちに借りがあると。僕たちを生かした責任を取らなければならないと。
 一度僕たちを勝手に助けた以上は、せめて仁義は通すべきが道理だろう?」
依然として瀕死に、彼我の優位差は変わっていない。
ゼクンドゥスはその真実を見極める為の、最後の試しを投げかけた。
「答えになっていない。万歩譲って私が貴様に借りがあるとして、その清算を何で払えと?」
「―――――――――――――機会だ。ここでお前が戦うという時間そのものを買い上げたい」
ゼクンドゥスには力がある。この問答の時間すら無かったことにできるだろう。
そも人と大晶霊の間に駆け引きが成り立つ訳がない。神と人の関わりは、畏怖か契約しかないのだ。
それでもキールは震えを隠せないまま、大晶霊に、神に不敵な笑いを送った。
ゼクンドゥスの中で様々な事象が組み上げられ、その中で最も重要なことを問う。
「その時間を得て、貴様は何を為す? 唯でさえ時間の使い方が下手な人間のすること、瑣事ならば与える意味もない」



時間の止まった世界の中で更に時間が止まったような、そんな無言。
呼吸の律動だけが生を示す点の中で、キールは確かめるように言った。
「―――――――――――――――――――――――手に入れる。彼女の未来を」
確かに、彼はそういった。気恥ずかしそうな素振りなど欠片もなく。
初等数学を解くかのような当然さでそう答えた。それが強がりであったかどうかは、ゼクンドゥスにとってどうでも良かった。
「それはどう繋がる?」
目的語に視線を向けながらゼクンドゥスは尋ねた。髪が千切れるほどに頭を抱えながら剣を少しずつ上げるクレス。
振り切れるまで、そう時間は残っていない。
「ここでお前を使うという手段は、最初から考えていた。それが最も楽で、容易であることも」
キールは握り拳を弱弱しく作った。掌を開いて閉じて、辛うじて握力らしき物を示す。
「だが駄目だ。そのルートじゃ、詰む。それは大局的に理に沿わない。
 エターナルソードに期待が出来ない以上、僕にはお前を使ってメルディをこの世界から逃がす他の手段が思いつかない。
 そしてお前の存在を悟られれば最後の切符もご破算だ。完全に詰んで、チェックメイト」
口元を指で拭い、唾液が凝固した滓を掬って朱に塗れた服に捻じるキールは淡々と告げた。
大晶霊を用いる手段を既に模索していたことに、ゼクンドゥスは驚きつつもある種の納得を持った。
キール=ツァイベルがゼクンドゥスというカードを出し渋ったのは命惜しさだけではなかった。
“彼女を救う手段が潰えてしまうから駄目だった”。
未来しか見ていないのではなく、無限に続く現在の一つとしてそれを計算していただけに過ぎない。
彼にとって、彼女以外のものはもう利用するべき要素でしかないのだ。
「だから、お前は取っておく。それ以外に活路がないが故に」
少なくともそう思い込まなければならない。精神の内側でその感情を弄ぶ余裕など、弱者には与えられないのだから。
それを、世界を敵に回す者の孤独を、ゼクンドゥスは識っている。
そうでなければ、人は鬼にも魔王にも成れない。




「これが最後の問いだ。大晶霊ゼクンドゥスが、キール=ツァイベルに問う」
一切の感情を改めて排除し、荘厳さだけで周波数を決めたような神声と共に、ゼクンドゥスはキールに尋ねた。
「お前はこれ程に絶望を知り、人を信じず、小娘一人の為に世界を棄てる覚悟すら抱いている。
 そんなお前が、これほどの回りくどいことを行うことそのものが矛盾だ。
 彼女以外の全員を殺し、その後自害するという手を考えなかったのは何故だ」
風の概念が無い場所にも、凪は訪れる。
そう、それは当然行き着かなければならない疑問と結論。
瓶に口を付け、全て飲み干す勢いでキールは水を呷った。そうしなければ言葉も通らないというかのように。
「当たり前なことを聞くなよ。あのメルディを一人放っておいて、あいつが一人で生きていてくれると思うのか。
 一人生き残ったあいつが、何かを願うとでも思うのかよ」
キールはそう、臓腑と血液の全てを体外に絞り出すように答えた。
女に纏わる全てを背負い、潰されようとしている男の嗚咽だった。
ゼクンドゥスは彼の賢者に関する全てを確信し、幽かに頷いた。
遠くで、獣の遠吠えが聞こえた。
キールによって引き出された理性と、ゼクンドゥスによって刺激された本能が鎌首をもたげて壊れ始める。
静止した昼夜の稜線、自分の打った策。どちらの崩壊も近いと見切ったか、キールは誠意以外の全てで言葉を紡いだ。
「ゼクンドゥス。僕を信じろとは言わない。信頼に値するものを僕は何一つ持たない。
 だから、ただ哀願する。“僕に賭けろ”。対価は――――――――――――――お前が失った未来だ、×××」
潤ったはずの彼の喉は乾き、嗄れたように痺れていた。未来、なんとも不確かでなんとも曖昧な言葉だろう。
だからこそ追い求めざるを得ない光。何もない若者には、そこにしか託すものが無い。
「駄目だ。お前を信じる理由はない。不確かなものを拠り所に一方に寄ることはない」
ゼクンドゥスの言葉に熱は無かった。大晶霊は、時間は常に中立であり何処かに偏ることを許されないから。
ただでさえそうであるキールの醜い表情が一気に険しくなった。
だが、それは諦めではなく、何処をどう徹底的に傷めつければゼクンドゥスが折れるか言葉の銃弾を選んでいるような目付きだった。
「――――――――故に私はお前を試そう。お前に順番をくれてやる。
 その一回で見せてみろ。お前の言葉の真贋、そこで見極めよう」
ゼクンドゥスが漏らしたその言葉を聞いた瞬間、腫れた瞼の奥、彼の小さな眼が年相応の輝きを浮かべたのを大晶霊は見逃さなかった。
「お前が何も為せずに死んだならば、その時は何もかもを反故にするぞ。
 私がクレスを殺す。そしてお前たちがどうなろうと一切の考慮をせん」
だが、その輝きは瞬きのうちに立消え、再び目まぐるしい散乱と縮小に濁る。
キールの中で、一瞬崩しかけた計算が未来と命を貪るように舞い上がった。
「これは契約だ。人と大晶霊が結ぶ儀式。私の力を貸すに値するかどうかの吟味。
 見せてみろ、お前の意思を。ここまで啖呵を切ったのだ。真逆、否応はあるまいな?」
甘いか、とゼクンドゥスは思った。順番を、時間を貸し与えるだけでもゼクンドゥスとしては破格としか言いようがない。
微かに人間の口より告がれた誰かの名前。心に突き刺さった棘のようなものが、ここまで弛ませるとでも言うのだろうか。
否と大晶霊は思い直した。決してこれは試練などという生ぬるいものではない。
キールとクレスの戦力差、それは今もこうして絶対の差として存在している。
まっとうに考えて勝てる相手ではない。ほぼ間違いなく、ゼクンドゥスがクレスを殺すことになるだろう。
だが、それでも甘いと思ってしまうのは。
乱杭歯のように犬歯をむき出しにして笑う悪鬼が、余りにも嬉しそうだったからだろうか。

「それこそ真逆。是非も無いさ」




ゼクンドゥスの横を通り過ぎるようにして、キールは数歩前に出た。
語ることはもう無いと判断したか、ゼクンドゥスの体が幻に揺らぎ粒子のように籠の中に納まっていく。
二色の世界に罅が入る。時間が可塑性を以て空白を埋めていく。あと十秒経たずにこの零秒は終わるだろう。
そして、また現実が始まる。命を死に晒しながら、蟲のように甚振られて朽ちていくようなそんな人生が。

上等じゃないか。屑に相応しい人生がこれ以上にあるだろうか?

キールの中で様々な計算が組み上げられていく。それは常に行われていた。
クレスと闘っていた時も、ゼクンドゥスを説き伏せていた時も、片隅のどこかで演算が組まれていた。
畜生が、何でこんな痛い思いをしてまで立ち上がってるんだこの馬鹿は。
へへ、と彼の口元がこれ以上ないほど卑しく歪む。
クレスを討つ算段はもう立っている。布石も全て打った。後は上手く事態が転べば、多分殺すことは出来るだろう。
いやそうでもないのか。もっと楽にどうにかする手段はいくらでもあった。
大晶霊が、ゼクンドゥスの存在などとっくに読み切っていたのだから。
大晶霊に手を汚させるほど面倒を打つ必要もない。
ゼクンドゥスにちょちょいと時を止めさせて、“コレットを殺してしまえば良かったのだ”。
彼の中の三分の一の何かが拍手を喝采した。手首、いや、10秒じゃ指が限界か。
ともかく彼女の肉と骨の一部を切り離して、クレスに投げつければいい。狗ならそれに喰いつくだろう。
その間に彼女と逃げればよかったのだ。そうしなかったのは実に手痛い。
いや、とキールは血流が渦巻く脳の中で、詰らないことを思い出した。
もっと、もっとお前は効果的に使うつもりだったんだよ、ゼクンドゥス。
全てが上手くいって、ミトスを懐柔できたとき最後の最後でミトスを出し抜く為に。
コレットにマーテルを降ろした瞬間、タイムクレーメルで時間を止める。
彼女の体に死者の魂が入っているかどうかなんてどうでもいい。
お前以外の全てのカードを曝して、それっぽく誘導して、マーテルが入ったと思い込ませて、
最高の人質を手に入れることさえできれば、僕の計画は完璧だったのに。
キールは小刻みに頭を振った。何を女々しいことを考えているんだろう。
もうミトスを抱き抱える手は使えない。それは何時の間にか零れてしまった計略。
屑が。自業自得という言葉の意味を忘れようとする為にこれほど無駄な思考を回さなきゃいけないのか。



瓶の縁を掴み、プラプラとさせる。クレスの奇声が耳に障り、駆動率を二分減衰させる。
少し黙ってろよ。お前はどうせ死ぬんだ。殺す。僕が知る限りの知識を総動員して殺し尽くす。
だけど未だだ。未だ見えない。まだ計算が終わっちゃいない。
“どうやれば、彼女を救えるのかまだ筋が見えない”。
ゼクンドゥスが最後に尋ねた言葉を思い出して、キールの二割三分がくすと笑った。
優勝? それも考えたさ。でもそれじゃ駄目だったんだ。
知略の限りを尽くして、僕と彼女が生き残る。その後出来ることはたった二ツ。
僕が死んだら、メルディは一人だ。空っぽのあいつは遠からずきっと死ぬ。
彼女が死んで、僕が願うなんて、考えられるはずもなかった。例え本当に願いがかなうとしても、メルディを殺せる訳がない。
だから、あれしかなかった。彼女の未来を守るにはそれしか無かった。
せめて、せめて彼女がもう少し壊れていなかったら――――――――――――
突如、キールの中の八割九分が灼けるように膨れ上がりダウンしかける。
殺意に等しい怒りと軽蔑が怪物のように腹の中でのた打ち回る。
莫迦か、度し難いほどの莫迦かお前は。“全部僕のせいじゃないか”!!
あの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時もあの時も、
もう少し僕にほんの少しブドウ糖と勇気があればこんな碌でもないことにはなっていなかったはずなのに。
結局自業自得なんだから、笑えるくらいに死にたくなる。
内側を駆け巡る怪物を宥め賺して飼い慣らし、キールは回路を整理した。
死ねない。未だ死ねない。僕は罪を清算していない。僕が無残に死ぬことは構わない。
だが彼女は別だ。これ以上あんなメルディを放っておくことなんて、僕には想像もつかない。
例え、ミトスを使った一世一代の大計が壊れたとしてもそこで諦められるほど僕の罪は軽くない。
彼女だけは、彼女だけは何とかしたい。僕が今おめおめと生きるのはそれだけだ。
その為には彼女を守らなければならない。故にクレスはどうにかしなければならない。
ここまでは当然だ。だがクレスを“ただ”殺すだけではもう足りないのだ。
殺して、その後どうする……? もう、きっと疲れ切った僕は、彼女以外の全てを殺すことでしか彼女を救えない気がする。
そしてそれでは彼女はきっと救えない。命は救えても、僕が全てを賭けてまで取り戻したかった彼女は二度と帰ってこない。
それでは駄目なのだ。彼女の為にではない。僕がそれでは満足できない。

は―――――――――――――ハハハハハハハッ!!!!!!

自分の中に見つけたある一つの結論に、キールの全てはこれ以上ないほどのおかしみを覚えた。
結局自分の為なのか? 彼女の為と嘯きながら、あんな締まりのない人形じゃ僕が愉しめないから彼女を取り戻すのか。
彼女への償いなのか自分への欲望なのか。これではゼクンドゥスを、ロイドを莫迦に出来ないじゃないか。

知ったことか。そんなの彼女を救ってから考えろ。



思考・演算・演繹。尋常でない脳への負荷を和らげようという本能か。酩酊のように狂ったように心が昂る。
余裕はない。キールは割ける限り有りっ丈の細胞を現実に回す。
もうバトルロワイアルも寄せの段階だ。もう時間がない。駒もろくすっぽ残ってない。
この条件下でその虹を掴むように在るかどうかも分からない未来を掴もうとするならば、ここから先、一手たりとも外すわけにはいかない。
一手、一手たりともだ。“マーダーを殺してから考える”なんて白痴のような莫迦は絶対に出来ない。
メルディを救うという明確なヴィジョンに対し、其処までの手番全てを読み切らなければ届かない。
もしそれを抱く前にクレスを殺してしまえば、何の手がかりもなく殺してしまったら。
その想像をキールは皮肉にも明確に見ることができてしまった。
確かに勝算はある。その為の準備も確信も得た。だが、それは命を賭けることが前提項。
僕はきっと、気が触れる。計算することに疲れ摩耗した理性がもう保たないだろう。そんな状態であのメルディの顔を見たら――――。
だから、今しかない。死線に身を晒すこの瞬間しか計算時間は無い。
ゼクンドゥスの存在が薄れ、同時に接近してきたキールに焦点を定めたか、
クレスの剣がキールに向けられる。剣先の震えがゼクンドゥスが現れる前よりも大きくなっていることだけを確認して、
キールはポーンと30㎝程瓶を空に上げた。
クレスの目線がそこに拘束されている間に、キールはロイドの遺骸を見た。
畜生、お前は、何処までも理想を貫いて死ぬと思ったのに。最後の最後でクレスを殺すと思っていたのに。
畜生、畜生。最後の最後で、悔しそうな顔しやがって。何でそれを、もう少し先に見せてくれなかったんだ。

錯覚するじゃないか―――――――――――――――僕も、お前みたいになれるのかと。


「随分と嘗められている。一騎当千の力を持つと、態度がでかくなるのはどこの莫迦も変わらない……なッ!!」

殺人鬼のよろよろと伸ばす手に呆れるような素振りを見せたと思った瞬間、キールは手に納まった瓶を、片腕が許す限りの全力で高く高く夕空に上げた。
クレスの眼が、顔が、首が、空を見上げる。もう色づいた世界が芽吹き始めている。針が動く。幕間が終わる。

「人間一人の大脳、その細胞総数凡そ140億」

全てを今ここで解き明かす。例えそれが六徳よりも虚空よりもか細い道だとしても。
届いてみせる。否、届くと信じろ。この虚構こそが、僕を現実に引き留める。

「例え、お前が一騎当千、否、万夫不当だったとしても」

僅かに休まった身体は気休めの息を吐き、再びいつ終わるとも知れぬ煉獄へと自らを晒す。
計算された痛み、予測された苦悶、その程度に臆するほど正気ではいられない。
彼女の痛みを理解できない痛みで割れば、所詮は零に等しい。

「この脳<中身>は光の速さでシナプスを連携する140億の群勢――――――――――端から僕の勝ちは決まっているッ!!」

彼はそういって、駆け出すように通過点へと自らを一手進めた。




【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP20% TP25% 善意及び判断能力の喪失 薬物中毒による禁断症状発症・悪化
   戦闘狂 殺人狂 殺意が禁断症状をやや上回っている 放送を聞いていない
   背部大裂傷×2 全身装甲無し 全身に裂傷 背中に複数穴 軽度の痺れ
   重度疲労 調和してない錯乱 幻覚・幻聴症状 目の前の魔王に驚愕
所持品:エターナルソード クレスの荷物
基本行動方針:全てを壊す
第一行動方針:キールを殺す(出来れば瓶の中身がほしい?)
第二行動方針:本物のミントを救う
第三行動方針:その後コングマン(=グリッド)の遺体を完璧に消す?
第四行動方針:ティトレイはまだ殺さない?
現在位置:C3村西地区・ファラの家焼け跡前
※今のクレスにはコレットとミントの区別が付きません
※数点のキーワードからグリッドをコングマンと断定しました
※クレスは天使化を知らない為、彼が左胸を刺したグリッドは死んだと思っています

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:HP15% TP25% フルボッコ 半発狂 酸素欠乏(微弱回復)筋肉疲労 頬骨骨折 鼻骨骨折 歯が数本折れた 
所持品:ベレット セイファートキー キールのレポート ジェイのメモ ダオスの遺書 首輪×3
    ハロルドメモ1 2(1は炙り出し済) C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) 魔杖ケイオスハート マジカルポーチ
    ハロルドのサック(分解中のレーダーあり) 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ミラクルグミ
    ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック(メガグランチャーとUZISMG入り)
    C・ケイジ@C(風・光・元・地・時)
基本行動方針:メルディを救う
第一行動方針:クレスと闘いつつ、メルディを助ける具体的な方策を模索する。
第二行動方針:カイル・ヴェイグを利用してミトス・ティトレイを対処?
第三行動方針:磨耗した残存勢力を排除?
ゼクンドゥス行動方針:二人の勝負に決着がつくまで静観
現在位置:C3村西地区・ファラの家焼け跡前

※ゼクンドゥスによる時間停止状態が解除されました。

前 次

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
タグの更新に失敗しました
エラーが発生しました。ページを更新してください。
ページを更新
「ある愛の話 -No time-」をウィキ内検索
LINE
シェア
Tweet
テイルズオブバトルロワイアル@wiki
記事メニュー
今日 - 昨日 - 総合 -
検索 :



wiki編集用

  • トップページ
  • メニュー



本編

本編SS目次・投下順
  • 【000~050】
  • 【051~100】
  • 【101~150】
  • 【151~200】
  • 【201~250】
  • 【251~300】
  • 【301~350】
  • 【350~】

アナザーSS目次・投下順
  • 【327~】


最近の更新(30件)

※ネタバレの危険あり
表示
取得中です。

記事メニュー2

更新履歴

取得中です。


ここを編集
人気記事ランキング
  1. 【251~300】
  2. 【151~200】
  3. 【000~050】
  4. 【301~350】
  5. 【350~】
  6. 【101~150】
  7. 【051~100】
  8. Normal End -君に届け-
  9. 終焉への砲火
  10. 嘆く真実
もっと見る
最近更新されたページ
  • 155日前

    Reverse-Red Aqua-
  • 155日前

    トップページ
  • 1033日前

    Sword Dancers
  • 2117日前

    【201~250】
  • 2189日前

    【151~200】
  • 2189日前

    【101~150】
  • 2189日前

    本当の安息
  • 2189日前

    悪夢は近い
  • 2189日前

    【327~】
  • 2189日前

    メニュー
もっと見る
人気記事ランキング
  1. 【251~300】
  2. 【151~200】
  3. 【000~050】
  4. 【301~350】
  5. 【350~】
  6. 【101~150】
  7. 【051~100】
  8. Normal End -君に届け-
  9. 終焉への砲火
  10. 嘆く真実
もっと見る
最近更新されたページ
  • 155日前

    Reverse-Red Aqua-
  • 155日前

    トップページ
  • 1033日前

    Sword Dancers
  • 2117日前

    【201~250】
  • 2189日前

    【151~200】
  • 2189日前

    【101~150】
  • 2189日前

    本当の安息
  • 2189日前

    悪夢は近い
  • 2189日前

    【327~】
  • 2189日前

    メニュー
もっと見る
ウィキ募集バナー
急上昇Wikiランキング

急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!

  1. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  2. 提督たちの憂鬱 支援SSほか@ まとめウィキ
  3. イナズマイレブン 染岡さんと愉快な仲間たち wiki
もっと見る
人気Wikiランキング

atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!

  1. アニヲタWiki(仮)
  2. ゲームカタログ@Wiki ~名作からクソゲーまで~
  3. 初音ミク Wiki
  4. ストグラ まとめ @ウィキ
  5. 機動戦士ガンダム バトルオペレーション2攻略Wiki 3rd Season
  6. 検索してはいけない言葉 @ ウィキ
  7. 発車メロディーwiki
  8. 機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 INFINITEBOOST wiki
  9. オレカバトル アプリ版 @ ウィキ
  10. Grand Theft Auto V(グランドセフトオート5)GTA5 & GTAオンライン 情報・攻略wiki
もっと見る
新規Wikiランキング

最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!

  1. MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  2. MADTOWNGTAまとめwiki
  3. まどドラ攻略wiki
  4. ちいぽけ攻略
  5. Shoboid RPまとめwiki
  6. SurrounDead 攻略 (非公式wiki)
  7. シュガードール情報まとめウィキ
  8. 戦国ダイナスティ攻略Wiki@ウィキ
  9. ソニックレーシング クロスワールド 攻略@ ウィキ
  10. 魔法少女ノ魔女裁判 攻略・考察Wiki
もっと見る
全体ページランキング

最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!

  1. 参加者一覧 - MADTOWNGTAまとめwiki
  2. 参加者一覧 - MadTown GTA (Beta) まとめウィキ
  3. angler - MADTOWNGTAまとめwiki
  4. 魔獣トゲイラ - バトルロイヤルR+α ファンフィクション(二次創作など)総合wiki
  5. XVI - MADTOWNGTAまとめwiki
  6. 行列のできる法律相談所 - アニヲタWiki(仮)
  7. 白狐 - MADTOWNGTAまとめwiki
  8. 参加者一覧 - ストグラ まとめ @ウィキ
  9. 868 - ストグラ まとめ @ウィキ
  10. 模擬ドラフト結果 - おんJ模擬ドラフトまとめwiki
もっと見る

  • このWikiのTOPへ
  • 全ページ一覧
  • アットウィキTOP
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー

2019 AtWiki, Inc.