リッド・ハーシェルは目の前の光景を、信じられない、という様子で眺めていた。
おそらく、想定可能であった事態の中では、最悪から二番目。まざまざとリッドの瞳に映っていた。
自分がなるべく倒したいと思っていた3人のうちの2人…すなわちマグニスと青い髪のゴツい男バルバトスが、並んで森の中を闊歩しているのだ。
しかも、2人とも持っている武装が半端ではない。
マグニスが携えているのは、下手をすればマグニス自身の体ほどもある巨大な斧。刀身の輝きだけで業物であるとうかがい知れる。
バルバトスが担いでいたのは、同じく彼自身の体ほどもありそうな長大な金属の筒。
しかも筒の先端部には、剣を二つに割って溶接して作ったと思われる、刃が取り付けられている。
リッドはすぐさまそれを見て、ミアキスを愛する剛健な壮年、フォッグの得物を思い出していた。
リッドのあずかり知らぬところではあるが、今バルバトスが持ち歩いているのは歩兵用対戦車榴弾砲。
最初これを持て余していたバルバトスは、あえてマグニスとの戦いの際には用いなかった。
しかしながらマグニスの機転でもって、榴弾砲は今やバルバトスのお気に入りの武器へと変貌を遂げていたのだ。
まずバルバトスが持っていたグラディウスの刀身を、マグニスはオーガアクスできれいに両断。
両断した断面をマグニスの魔術「イラプション」で呼び寄せたマグマに当て、溶かしたところを榴弾砲の砲口付近に押し付け、溶接して今の武器を作ったのだ
言うなれば、ベイオネット(銃剣)付きの榴弾砲。「銃剣」の名こそあれ、使用感はバルバトスの得意とする斧と大差はない。
もし発砲した榴弾にジェノサイドブレイバーを重ね合わせて撃てば、おそらくその破壊力は炎の高位魔術「エクスプロード」をもはるかに越えるだろう。
下手をすれば「ビッグバン」級の威力を叩き出すかも知れない。
リッドは残念ながらそこまでの分析は出来なかったが、とにかくこの光景は桁外れに危険な兆候だということは体が理解した。鳥肌さえ、立ってくる。
リッドは、自らの引き当てたエルヴンマントに、並々ならぬ感謝を捧げた事は言うまでもないだろう。
2人は草むらに隠れたリッドのことなど全く気付かずに、ハーフエルフの千年王国の建立だの、歴史をあるべき姿に改変するだの語り合っている。
やがて2人の足音が遠くに去ったとき、リッドは深々とため息をついた。
とにかく、これで当面の危機は乗り切れた。今のうちになるべく多くの仲間と合流し、あの2人を、そしてヒアデスを撃破する算段を立てねば…。
しかし、リッドの身に降りかかる危険は、それだけで終わりではなかった。
「!!!!」
リッドは、ムメイブレードを引き抜いた。「居合い」という名を冠してもいいほどの、神速の抜刀。
だがそれでも、リッドは自らの身に達する皮一枚ほど手前で、ギリギリ受け止めたに過ぎない。短いながらも、確実にリッドの急所を狙い込んでいた死の刃を。
「…ほう、今の一撃を受け止めるとはな」
リッドが振り返ってみれば、そこには男が立っていた。ぼさぼさの深緑色の髪、目元以外を覆うマスク。
そして何より、幽霊を思わせるような、かすかで不気味な存在感。
「あのガタイのいい男どもを追っかけて追跡をかけてみたら、新しい獲物とこんにちは、か。
あの2人を仕止めるのは厳しそうだと諦めかけていたが、今日の俺は運がいいみたいだな」
「ッ! 離れろ!!」
リッドは怒鳴りつけながら、ムメイブレードで強引にマスクの男と間合いを離す。マスクの男はそれに無理に逆らわず、間合いを離してやった。
「くくくく…悪いがそんな布きれを身にまとったぐらいで隠れたつもりなら、俺の目は誤魔化せないぜ」
「ただの布きれ」と言い切るマスクの男だが、リッドがまとうのはエルヴンマント。これによる隠れ身を見破るなど至難の業である。
それをマスクの男はやすやすと成し遂げた。少なくとも彼の隠密戦の実力は、侮ることなど出来ない。
「たっぷりと切り刻んでやるぜ…この俺様、クルザンド王統国の『トリプルカイツ』の一角を担う、『幽幻』のカッシェルがな」
カッシェルと名乗りを上げたマスクの男の身は、たちどころに霧のように消え去った。
「くッ…!!」
リッドは身構える。どこから攻撃が来るのか、これでは一手分の先読みでさえ困難な戦いとなる。
運命の悪戯か、奇しくもつい先ほど友を窮地に追いやった敵と、リッドは今や対峙する事になっていたのだ。
おそらく、想定可能であった事態の中では、最悪から二番目。まざまざとリッドの瞳に映っていた。
自分がなるべく倒したいと思っていた3人のうちの2人…すなわちマグニスと青い髪のゴツい男バルバトスが、並んで森の中を闊歩しているのだ。
しかも、2人とも持っている武装が半端ではない。
マグニスが携えているのは、下手をすればマグニス自身の体ほどもある巨大な斧。刀身の輝きだけで業物であるとうかがい知れる。
バルバトスが担いでいたのは、同じく彼自身の体ほどもありそうな長大な金属の筒。
しかも筒の先端部には、剣を二つに割って溶接して作ったと思われる、刃が取り付けられている。
リッドはすぐさまそれを見て、ミアキスを愛する剛健な壮年、フォッグの得物を思い出していた。
リッドのあずかり知らぬところではあるが、今バルバトスが持ち歩いているのは歩兵用対戦車榴弾砲。
最初これを持て余していたバルバトスは、あえてマグニスとの戦いの際には用いなかった。
しかしながらマグニスの機転でもって、榴弾砲は今やバルバトスのお気に入りの武器へと変貌を遂げていたのだ。
まずバルバトスが持っていたグラディウスの刀身を、マグニスはオーガアクスできれいに両断。
両断した断面をマグニスの魔術「イラプション」で呼び寄せたマグマに当て、溶かしたところを榴弾砲の砲口付近に押し付け、溶接して今の武器を作ったのだ
言うなれば、ベイオネット(銃剣)付きの榴弾砲。「銃剣」の名こそあれ、使用感はバルバトスの得意とする斧と大差はない。
もし発砲した榴弾にジェノサイドブレイバーを重ね合わせて撃てば、おそらくその破壊力は炎の高位魔術「エクスプロード」をもはるかに越えるだろう。
下手をすれば「ビッグバン」級の威力を叩き出すかも知れない。
リッドは残念ながらそこまでの分析は出来なかったが、とにかくこの光景は桁外れに危険な兆候だということは体が理解した。鳥肌さえ、立ってくる。
リッドは、自らの引き当てたエルヴンマントに、並々ならぬ感謝を捧げた事は言うまでもないだろう。
2人は草むらに隠れたリッドのことなど全く気付かずに、ハーフエルフの千年王国の建立だの、歴史をあるべき姿に改変するだの語り合っている。
やがて2人の足音が遠くに去ったとき、リッドは深々とため息をついた。
とにかく、これで当面の危機は乗り切れた。今のうちになるべく多くの仲間と合流し、あの2人を、そしてヒアデスを撃破する算段を立てねば…。
しかし、リッドの身に降りかかる危険は、それだけで終わりではなかった。
「!!!!」
リッドは、ムメイブレードを引き抜いた。「居合い」という名を冠してもいいほどの、神速の抜刀。
だがそれでも、リッドは自らの身に達する皮一枚ほど手前で、ギリギリ受け止めたに過ぎない。短いながらも、確実にリッドの急所を狙い込んでいた死の刃を。
「…ほう、今の一撃を受け止めるとはな」
リッドが振り返ってみれば、そこには男が立っていた。ぼさぼさの深緑色の髪、目元以外を覆うマスク。
そして何より、幽霊を思わせるような、かすかで不気味な存在感。
「あのガタイのいい男どもを追っかけて追跡をかけてみたら、新しい獲物とこんにちは、か。
あの2人を仕止めるのは厳しそうだと諦めかけていたが、今日の俺は運がいいみたいだな」
「ッ! 離れろ!!」
リッドは怒鳴りつけながら、ムメイブレードで強引にマスクの男と間合いを離す。マスクの男はそれに無理に逆らわず、間合いを離してやった。
「くくくく…悪いがそんな布きれを身にまとったぐらいで隠れたつもりなら、俺の目は誤魔化せないぜ」
「ただの布きれ」と言い切るマスクの男だが、リッドがまとうのはエルヴンマント。これによる隠れ身を見破るなど至難の業である。
それをマスクの男はやすやすと成し遂げた。少なくとも彼の隠密戦の実力は、侮ることなど出来ない。
「たっぷりと切り刻んでやるぜ…この俺様、クルザンド王統国の『トリプルカイツ』の一角を担う、『幽幻』のカッシェルがな」
カッシェルと名乗りを上げたマスクの男の身は、たちどころに霧のように消え去った。
「くッ…!!」
リッドは身構える。どこから攻撃が来るのか、これでは一手分の先読みでさえ困難な戦いとなる。
運命の悪戯か、奇しくもつい先ほど友を窮地に追いやった敵と、リッドは今や対峙する事になっていたのだ。
【リッド・ハーシェル 生存確認&戦闘開始】
状態:無傷。精神に若干の焦り
所持品:ムメイブレード エルヴンマント
現在位置:B2の森林地帯
行動方針:カッシェルを撃退する
状態:無傷。精神に若干の焦り
所持品:ムメイブレード エルヴンマント
現在位置:B2の森林地帯
行動方針:カッシェルを撃退する
【「幽幻」のカッシェル 生存確認&戦闘開始】
状態:無傷。若干の高揚
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯
行動方針:リッドを抹殺する。形勢によっては撤退も視野に入れる
状態:無傷。若干の高揚
所持品:ショートソード アワーグラス
現在位置:B2の森林地帯
行動方針:リッドを抹殺する。形勢によっては撤退も視野に入れる