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  • End of the Game -禽獣層・鏡の中の自由な真実-

テイルズオブバトルロワイアル@wiki

End of the Game -禽獣層・鏡の中の自由な真実-

最終更新:2019年10月13日 23:37

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

End of the Game -禽獣層・鏡の中の自由な真実-


雨が降っていた。
押さえきれない悲しみを表すように、苛烈に。
けれど雨は重たい水滴で身体を濡らすだけで、更に気持ちを募らせ鈍らせる。
決して、その穢れを洗い流すような真似はしてくれない。

逃げる背中に追い打ちをかけるように雨は降っていた。
惨めな自分を責める雨は、細かく細かく、目を凝らさねばよく見えないほどの量だった。
当然、洞窟に雨が降る訳が無い。白妙に目が眩むほどの、攻撃術の雨だった。
雨垂れにしては大きすぎる炎の滴、霧雨にしては白く輝きすぎている光の粒。
過剰纖滅の雨は、防がれることなく、少年と抱えられた少女の死体を掠める。
決して自然の音ではない、けたたましい半鐘<サイレン>の音。時折、無数の視覚センサーが赤い光を覗かせる。
雨は優しくなどなかった。
雨は、侵入者を排除するためのプログラム――望むならば、大量の同胞を殺された憎しみに過ぎなかった。
先程まではいくら束になって数で襲おうとも雑魚でしかなかったが、今は違う。
戦意を喪失した、逃走しか能のない奴に躊躇する理由はない。高らかにサイレンを鳴らし、天上万歳、天上王万歳と人を殺す機械は行進するのみ。
幼い怪物の泣声が雨音に混じる。雲霞む軍列の中に、不規則な重量感ある足音が響く。
それだけで、彼の剣は怯懦に震えた。その両腕は、か細い亡骸を包むことしかできなかった。
雨は外側より鳴りて、彼の身を紅く濡らす。死ねと、死ぬべきだと。
雨は内側より鳴いて、彼の心を黒く塗らす。どうして、どうして生きているのと。
強い雨足で降り注ぐ音の中で、少年の弾むような息はかき消されてしまって聞こえてこない。凍えた吐息も、白くは色つかない。
ただ重さに平伏し、ただ跪いて息絶えろと、雨は背中を追い立てる。

やがて背を押していた雨は、向かい風が吹き、身体の表側を傷付けていく。
顔を上げると、天上の機械モンスターが大群割拠として、波のように広がっていた。
ひとりに向けるには幾ら何でも多すぎる量だ。絶望以上のものを与えようとしているのか。
前から後ろから、過去から未来から耳から頭から半鐘の音が交差する。
重なり合い、追随し、ぐわんぐわんと響き渡る不協和音は、もはやどこから聞こえるのかも分からない。
ただ、あの日の憎悪と悲痛が蘇るようで。脇に抱える少女の体は、半分なのにいやに重くて。
ああ、煩い。黙れ。何も聞こえないくらいに煩すぎる。
何も聞こえない無音に終ぞ耐えかね、少年は大口を開けて向かい風に牙を剥いた。
耳の周りを飛ぶ蠅を払う様に、握った時の剣を振るう。白い雨の中に、黒に近い暗すぎる蒼が光を放つ。
彼の感情を物語るかのように、蒼い光は音速を越えて忌まわしき鐘の音を呑み込んでいった。
切り裂かれた雨を、彼――クレス=アルベインは駆け抜ける。更に彼の身体が傷付かれようとも。





◇◆◇


あの鏡は何だ。
いきなりどこからか声が聞こえたかと思えば、作り物の短い足が生えた鏡が遠くから迂回しながら走ってきた。
盤のそばまで来たかと思えばピョンと跳ねて立ち止まる。登場にしてもダイナミック過ぎないだろうか?
対岸の椅子に腰掛ける女神が唖然とする。
それを差し置き、鏡はまるで胸を張っているかのように身体を仰け反らせて女神の方を見る。
一体なにをそんなに誇らしげにする必要があるのか。だが、誇らしげになる理由も分かる。
鏡には女神の表情が映っていた。状況に追いつけてないのがありありと分かる、何とも間抜け面だった。
対面する道化師サイグローグはこれは愉快と、ほの暗い笑い声を上げ、目を細めて微笑を被る。

『どったの? お腹冷えたとか~?』
いきなり現れたかと思えば、いきなり言葉で責めてきた。
なんと無礼にも程がある鏡だろうか。結果として反発心が表に出る。
女神が握り拳を作り上げ、卓上へ向かってどしんと拳を叩きつける。柔和な顔つきに似つかわしくないほど、表面を歪めさせていた。
そんな怒気など通じない、いや、そもそも怒りを向けられていることさえ理解せず、鏡は人懐こそうにグリューネをマジマジと見つめる。
その瞳に、一瞬でも醜く浮かび上がった感情を見逃すことはしない。また愚かしい表情が銀盤の上に映る。
「何の趣向ですか」
「さあ……私は何も……聞くのであれば、あちらの精霊にお聞き下さいませ……ほう、次は綺羅星ですか……私も勉強しなければ……」
眼を鏡から背けるように道化に問うが、サイグローグは女神の詰問もするりと抜けてわざとらしく書物を読んでいた。
ひょいと手を捻らした途端、手の中には虫眼鏡が現れる。
仮面越しに虫眼鏡を使って、老人のように書物の文字を見ている。読んではいない。あくまで、見ているだけだ。
何も言わない女神に、サイグローグは手の虫眼鏡をぐうっと相手の方へと伸ばす。届いてさえいれば押しつけてしまうほどに。
「グリューネ様……まぁた顔が歪んでおりますよ……」
にたにたと笑うサイグローグに、女神グリューネは苦虫を噛み潰したような顔をした。
当然だろう。虫眼鏡越しに見れば顔が歪んで見えて当たり前だ。
しかし、グリューネの方から虫眼鏡を覗いてもサイグローグの瞳は見通せない。
仮面の奥に隠れた目はどこを見ているのか、見当すらつかない。見当も付けたくなかった。
これ以上、いたちごっこをしていても仕方がない。グリューネは顎を持ち上げ、道化師の後方で空に漂う精霊を見つめた。
鷲のように大きな翼と、翡翠を思わせる緑色の長髪。
髪を留める、花のつぼみと枝葉を模した簪の飾りが女性らしさを更に引き立てていた。何よりも、彼女が大樹に纏わる者であることの証左になる。
本来ならば、敵対すべき存在ではない筈なのだが――目尻を引き絞り、大樹の守護者を見据えた。
「ノルン、この鏡は一体?」
『先ほど述べた通りですよ……あの時の紡ぎ手ともあろう者が、とても酷い顔をしていたものですから。
 一度ご覧になった方が良いのではないかと思い、こうして呼んだのです。日曜大工程度の拵えとはいえ、使う分には役に立ちますから』
ノルンの答えに、随分と楽しそうな家具がいたものですね、とグリューネは呆れがちに息をついた。
当の鏡はというと皮肉が通じないのか、頭(と思しき鏡の上部)に手を当てながら盤面の裏側をマジマジと見つめている。
『ふんふん、凄っご。こーなってるのか~~……ってあれれ? いつのまにか置いてけぼりでお話~? こら~無視するな~!』
と思えば急に諸手を上げ、地団太を踏んでぷんすかと怒り出すものだから、こっちの方が愉快なのではないかと思ってしまう。
「顔なら見ました。私としたことが、随分と取り乱してしまったようですね。少しはポーカーフェイスというものも学ばないといけませんね」
目を閉じ、テーブルの上で手を重ねるグリューネ。鏡の方へは、もう見向きもしなかった。
もう用済みだから引っ込みなさいと言わんばかりの態度に、鏡は怒ったままだ。
そうだ、そのまま無視してしまえばいい。このようなもの、道化師と審判者の単なる幻惑、戯れだ。

『――――1つだけ、忠告をしましょう』



耳の鼓膜が、後ろ側から撫でられた。もちろん直接ではない。静かな女性の声音が冷水のように浴びせられる。
良く言えば冷静で客観的な、悪く言えば冷徹で感情の乏しい声に、ぶるりと身体が震えた。
『ポーカーフェイスは“表面だけを隠すもの”です。確かに心の内を悟られぬようにするのは、有効かもしれません……ですが』
いつの間にか、前方にいた筈のノルンがグリューネの後ろへと立っていた。
振り返って確かめるまでもない。否、振り返ることができないのだ。
いつの間にか目前のテーブルと盤は消え、代わりに先程の鏡が立っていたのである。
そして、鏡に映る自分の顔が、
『それは、悟られるだけの心の内を自分が知る時のみ。真実を知らなければ、嘘はつけません。
 真実のみを純粋に求めるこの鏡の前には、真の無い偽りなど無意味―――――さあ、見えるでしょう?
 貴方の心がざわつき、荒れているのが。そう、嵐の日の時化のように』
平静をまるで隠さず、ひどく怒り狂ったものだった。
あまりに自分とは似ても似つかぬ姿に、とても目を逸らすことなどできなかったのだ。
「一体、何を。こんなもの、ただの“まやかし”でしょう」
『まやかしかどうかは、鏡に問えば分かること……鏡よ、この場で一番醜いのは誰ですか?』
『えっとねー、グリューネって人が現在世界ナンバーワンだってさ』
痛烈な皮肉に、ぎこちない笑みを浮かべるグリューネとは反対に、魔法の鏡は楽しげにくるりと一回転してみせた。
回転したところで鏡の向こうにいる自分の表情は変わらない。
「サイグローグを差し置いて私が? 冗談も大概に……」
『まちがーいごーざいませ~ん。嘘だと思うなら何か聞いてみてよ、質問してくれれば何でも答えてあげるよ~!』
「~~~ッ! 何も問うことなどありません。すぐに去りなさい!」
勢いよく手を払うも、魔法の鏡は天を仰いで考え込むような素振りを見せる。
何て空気が読めない鏡だ。ここは場の空気を汲むところだろう。
空気を読まなければ、まるで、見てはいけないものを。
『あり、つまんないな~。じゃ、ちょ~っと意向を変えて、あたしが質問しちゃおーかな!』
――敢えて。
この鏡は、敢えて空気を読んでいない。珍妙な行動に出るかと思えば、裏側ではかなりの頭脳を働かせている。それすらも自然体というのか。
先程の白銀の騎士のように、サイグローグやノルンの仲間なのか、それとも操られているのかも分からない。
だが、どちらにせよ。この鏡は、確かに女神を追い込むべく動いていた。女神がそれに気付いたときには手遅れだった。

『さっきから酷い酷いってむくれてるけどさ、何がどう酷いのさ?』

先ほどまでと変わらない音調、しかし確かに真剣な声色で鏡は眼前の女神に問う。
『死んじゃった人がいきなり生き返ったこと? 確かに普通は生き返らないよねー。
 けど、バトルロワイアルが始まった時だって、死んじゃった人は生き返ってたんだしさ~。
 別におかしくないんじゃないかな? 悲しいことだけど、あの子だって死んでた筈だよね』
グリューネは下唇を噛んで溢れ出しそうな言葉を堪えた。
確かに、この遊戯の駒は、元いた世界では既に死んでいる筈の者が大量にいる。
かつて時空剣士と刃を交えた魔王も、人を唆して愉しむ蛇も、実験の果てに壊れてしまった狂人も。
王に弄ばれていた幼き客員剣士でさえ、命は零れ落ちてしまっていた筈だ。
何より王は、勝ち抜いた者への褒美として“死者蘇生”ということも吹き込んでいた。
嘘だと考える者もいた。だが、初めから死んだ者が生き返っているのだから、王は死者蘇生が可能だという点も否定できない。
「ですが、これだけ大掛かりな現象を犯したのです! 王とて、何度も蘇生が出来る訳がありません!!」
『出来ないなんて、誰が言ったの? 【蘇生の為に用いられる術】は使えないよ? 制限されてるからねぇ。
 でもさー、制限する側の王様が出来ることは、そんなに不思議? ねえ?』
「そ、それは……!」


最初の一回だけしか出来ないだろう。出来るのであればマーダーを蘇生させているだろう。何度も繰り返した考察だ。
だが出来ないとは、しないとは明示されていない。穴熊に籠った王様のことなど、誰も知らないのだ。確証のない推理など、妄想にも劣る。
正体不明のヴェールに隠れた王様を否定することはできない。それは、例え1パーセントであろうと肯定も在り得るということなのだ。
『あ~っ! それとも、さっき戦ってた剣士くんとあの子が知り合いなのに、戦い合ってたのがダメ?
 そうだよねー。知り合いとなんて戦いたくないもんね~。あたしもまた教官とかと戦うことになったらイヤだな~』
うんうんと頷く鏡に、グリューネの表情が一瞬和らぐ。
たった少しの呼吸の間は、か細い希望は、後に訪れる絶望のためにのみ存在する。
『けど、それはグリューネやあたしの都合だよ。
 もしかしたら、ピピピ~って操られてたのかもしれないよ。お薬とか、魔法とかね。
 もしかしたら、誰かを人質に取られてたのかもしれないよ。大切な人の為なら、仕方ないよ。
 もしかしたら、混乱して相手が誰かも分かってなかったのかもしれないよ。暗いしね。
 もしかしたら、本当に殺そうとしていたのかもしれないよ。優勝して叶えたい願いがあったかも。
 整合する可能性は幾らでもあるよ。なのにさ~“ただ知り合いをぶつけた”ってだけで酷いって言うのは、ちょ~っとイジワルじゃないかなぁ』
悪意も諧謔も無く、純粋に不思議そうに自分を見つめる魔法の鏡に、グリューネは漸くその本質を理解し始めた。
この鏡は論理に真実を求めている。感情面で同調することはあれど、理に沿っていなければ女神に味方することなどないのだ。
サイグローグよりも、ノルンよりも、むしろその在り方はベルセリオスのそれに近い。
グリューネの白磁のような顔に、さっと赤味が差す。決して照れや恥といった類の感情ではない。
膝の上で丸められた手が、僅かに震えていた。
「この状況が認められないことを、ただの意地悪だと言うのですか?」
『ほら、あたし、一応研究者だからさ。目の前の現象をただ納得できないからって否定されたら、堪ったものじゃないよ~
 100回同じ実験をして99回同じ結果が出て1回だけ違う結果が出てさ、その1回をただの偶然とか間違いだって切り捨ててたら実験にならないよ』
がたん、と椅子が倒れる。
「それとこれは話が違います! 王が蘇生できたとして、戦わせることが出来たとして、何故、あの少女である必要があったのです!」
勢いよく立ち上がったグリューネは、もはや目の前の鏡像と同じ表情をしていた。
暢気にふらふらと揺れる鏡に、できることなら椅子を投げ付け割ってしまいたい。
止めていたのは椅子を放り投げるはしたなさとまだ少し残る理性、そして白銀の騎士の末路だった。
『事実は事実。こういうことを出来るかもしれない王様のお城で、こういうことが起きた。それだけだよ』
またしても自信たっぷりに胸を張る魔法の鏡に、苛立ちしか覚えられない。
理不尽に対して湧いて出る不快感は本物だ。だが、理不尽が論理によって主張され、道理となる以上、反論することはできない。
『魔法の鏡、マフラーが曲がってますよ』
『あ、ゴメンゴメンお姉さ……よっととい。それじゃ、いきますか~~~?』
鏡がもぞもぞと動き、表面がぼこぼこと波打っている。
……そもそも。今まで疑問にも思わなかったが、あの鏡、自分のことを研究者だと言っていなかったか?
ただの鏡が手もないのに、一体どうやって何を研究するというのか。そして鏡の内側から聞こえる、不自然な衣ずれの音。
――あの鏡、ただの着ぐるみか!
ならば怒り狂った表情も、単なる作りものに過ぎないということではないか。所詮は幻だ。
『って、ほらほら! よそ見していいの? もうかなりピンチだよ?』
今気付いたと叫ぶ鏡の声につられて盤を見て、グリューネはようやく平静を取り戻した。
気付けば、目の前にいた鏡は消え去り、テーブルと盤が戻っている。
だが、事態は少しだけ動いていた。対面している道化師が、剣士の周りへと無数の駒を“詰め終えていた”。
ピンナップマグを読みながら、サイグローグは足で駒を動かしていたのだ。
「……しまった……!」
身体を前のめりにさせ、グリューネは厳しい目で詰問する。
しかし後方に大樹の精霊を侍らせる道化師は、足の指を開閉しながらいつものように卑しく嗤うだけだ。

「隙だらけでございますよ、グリュゥネさまぁ?」




◇◆◇

気づけば、少し広々とした空洞へと出ていたらしい。おかげで、敵の総量がおぼろげに把握できる。
「虚空蒼破斬」を放った後でも、まだ機械兵士は残っていた。
流石に、蒼破斬の衝撃波に合わせて駆け抜けても、一発だけでは完全に喰らい切れなかったらしい。
いや、喰い尽くすことができなかった。あの機械の中に埋もれた少女の残骸までも喰うことを躊躇った。
前方を蹴散らすことはできたが、生き延びた兵士たちが後続する。
片やエネルギー量はあろうとも疲れを知らない機械、片や少女の亡骸を抱えた手負いの魔王。
物量で考えても、やがて体力を切らして追いつかれ、無慈悲に命を奪われる羽目になるだろう。死に様はあえて想像しないことにする。
遠くからのデルタレイやバーンストライクといった術が、じわじわと血を奪っていく。
動揺が心を支配し、息に混じり嗚咽にも似た声が漏れるが、少女だけは落とすまいと必死に抱えていた。
むしろ落ち着きのない心理が、手に込める力を強めていたとも言えなくもない。
だが冷静さの欠如が仇となったか。それとも前へ逃げていれば何とかなると思ったのか。
“完全に逃れ切るには、時間が必要”なのだ。
逃げるための時間が足りない内は、敵の攻撃を受けることも厭わない。
逃走には相応の覚悟が必要なのだ。時間を止めている訳でもあるまいし。
終わりなき道に、クレスの体力は刻一刻と削られていく。
そして――誰が一体想像するだろうか。
何と情けない。数多の命を屠ってきた魔王は、あろうことか、石に躓いたのだ。
そして、その拍子に一番手放してはならない欠けた躯を手離してしまう。

<あっちゃー。勝負の邪魔をする気はなかったんだよ、ごめんね~。でもコレ私のせいだよね。う~ん、責任感じちゃうな~~~>

すぐさま拾いに立ち上がろうとするが、穿たれる雨がそれを阻む。
前方へ突き動かす力は消え、倒れ伏せたまま、その場に留まる。
顔のない機械兵士たちがニタァと笑ったように見えた。獲物を仕留め、我らが勝利する時を今か今かと待ち望んで楽しんで笑っている。
あるモノは手のサーベルを振りあげ、あるモノは一斉に晶術を唱え始める。

<よっし、じゃあ“ここは私が助けてあげるよ”! カチャカチャ~~ポンっと!!>

不味い、躯を失ったその手で剣を握り直したとき。
そのときには、既に遅かった。


【我が友が吹かせるは祝福<zelhes>の風、夜天の再会を祝して力を貸して<リィンフォース>!!】

“機械兵士”には、遅かった。
――振り上げたサーベルを落とす前に、本体であろう鎧の胴を矢が貫いたのだ。

クレスがはっと顔を上げようとすると、すぐ横を目にも止まらぬ速さで矢が飛び進んでいった。
頬を掠める炎は目が眩むほどに熱い。だが、その後に感じるのは背筋を凍て付かせるほどの憎悪だ。
我を無くしたかのような乱れ撃ちは、決して出鱈目に放たれているのではない。どれもが機械兵士たちの身体の要所を狙っているのである。
矢羽の一部を毟りて曲射。親指を除く四指の関節に矢を挟みて三射。射法八節全てを無視して狙われるは太股、手首、目、首、心臓、眉間。
弄んだり、確実に殺しにかかり。じわりじわりと、確実に。残される傷にはは憎しみしか残らない。
クレスが今見た、そして“かつて見た”その光景は―――――正しく、狩りとしか言いようがなかった。

連続で矢を放ち、時には同時に矢をつがえ、気付けば機械兵士も化物もみな沈黙していた。
クレスは矢の主の方へと振り返る。疲れ切った顔には、それを忘れさせるほどの笑顔さえ浮かんでいた。
数々の技、矢を放出するリズム、どことなく感じる“匂い”。
それらは、決して悪い結果をもたらさないと予感させるものがあった。
見覚えのある、ひとつに束ねられた銀髪。切れ長の瞳。油断のない、正に獲物を狙う豹のような佇まい。
よく彼が戦場で用いていた弓も一緒だ。矢がつがえられ、引き絞られようとしている。
クレスの笑みが凍りつく。
鳴弦の音がいやに大きく聞こえた。

「……チェスター」



親友は黙ったままクレスを通り過ぎて死んでしまった少女の亡骸へと近付き……座り込んだまま、妹を抱え上げる。
下半身を失った躯を深く、深く抱きしめるその背中から迸る感情が、まるでそれ自体が矢のようにクレスに突き刺さる。
そして感情はすぐさま鉄へと変性し、親友――――チェスター=バークライトの鋭鏃がクレスへと向けられていた。
なぜ。それを問う前に、冷たく矢は放たれた。
無意識に避けようとした本能と乱れた理性がせめぎ合うが、鏃に微かに輝く無色の液体を見た瞬間大きく矢を避ける。

噛み締められた唇は強さのあまり血の気が引き、今にも血がぷつりと現れそうだ。
既に息絶えた妹の死に顔を見つめる相貌には、音さえ聞こえてきそうなほど眉間が寄っている。
瞳孔が開いている。青みがかった眼の黒目から、どす黒い憎しみに満ちた冷気が溢れる。
思わず後ずさりし、刺々しい気を放つ親友から遠ざかった。気付かずに湿った洞窟の壁へと肩が触れる。
壁の低熱でさえ、今ここに立っている目の前の彼が作ったのではないかと錯覚してしまう。
こんな姿見たこともない、と言うつもりはない。
クレスには、この表情にどことなく見覚えがあった。全てが終わって始まったあの日も、こんな顔をしていた。
だが何よりも違うのは、身が凍えてしまいそうな視線――――殺意が、明らかに自分へ向けられていることだ。
「何の冗談だよ、チェスター」
張り付けられたような笑みで顔面を固めさせたまま、クレスはうわ言のように呟く。
もしかしたら、殺しという名の薬でキメてしまったせいで幻覚でも見ているのではないか、とさえクレスは思った。
しかし、この予想でさえ理性的な判断の下に弾き出したものである以上、嘘に違いなかった。

<ピンチに駆けつける親友! ロマンだねえ、お約束だねえ。絶望にはそれに見合った希望を――――物語はこうでなくっちゃねえ>

むしろ幻ならどんなに良いだろうか。
チェスターはクレスの言葉に耳を傾けることなく、手で血に固まった妹の髪を解いた。
「こんなにめちゃくちゃに、酷い有様にされて……可哀想に……」
少女の手足は原型を留めていないほどグチャグチャにされており、指も掌も足の甲も記憶の中にある姿を思い出せない。
言ってしまえば少女の体は飾りのついた一本の棒にしか過ぎず、まるで子どもの乱暴で綿を千切り取られた人形のようだった。
そこには人間の尊厳はなく、正に単なる“遊び相手”の姿だ。

<でも“ここは違うよ”。さーって、借金もチャラリらったことだし、あたしに出来ることをやろっかな~!!>

「許さねえ……絶対に……」
チェスターは妹を地面に横たわらせ、幽遠として立ち上がる。
ゆっくりと持ち上げられた腕は、矢を番え、弓を構えて弦を絞る。
身体から指先へ、そして弓へと伝播した憎悪は、鳴弦を首を絞めるかのような音に変化させる。
三日月型にしなった弓の体は美しく、ゆえに冷たくて孤独だ。決して届くことのない、遠い存在。
「俺は絶対……テメェを殺す……!!」


【ほいさ、流れて転ベ紅蓮の螺旋<ファーストアタック>!!】

チェスターの双眸がクレスを捉える。既にクレスは矢で括り付けられたかのように、身動きを取ることができなかった。
暗闇の中に浮かぶふたつの眼は、相手に狙いを研ぎ澄ましているようで、まるで何も見ていないようだったからだ。
空虚に満ちる殺意だけが、今の彼を動かしている。
“殺したい人間”という存在が、的を射止めるためだけに、矢の精度を確かなものとさせる。
放たれた弓は避けてさえいなければ、確実にクレスの心臓を抉り一瞬で命を終わらせていた。
だが、さっきの機械兵士たちのときのように、矢は一本で終わらず霰として降り注ぐ。
太股、手首、目、首、心臓、眉間。チェスターにとって、目の前の殺人鬼は狩りの対象でしかないのである。
「止めろ! 止めてくれ、チェスター!」
抵抗することなく、回避と戦斧による防御を繰り返してクレスは呼びかける。
しかしチェスターが手を緩めることはない。


「テメェがアミィを殺したんだろう! なんだよ、あの傷。逃げるあいつを、甚振るように、楽しそうに!!」
ざわり、と背筋に悪寒が走る。
殺した。確かに――殺したのは僕だ。剣を突き立てたのは僕だ。反論のしようのない事実に喉の奥が渇く。
けれども、甚振ったのは僕じゃない。僕の姿をした、僕じゃない別人だ。
それともあれも僕なのか? 目を逸らしてはいけない、もうひとりの僕なのか?
確かに、あれも僕だ。全力で反吐を吐きたいくらいに僕だ。けど、だけど。
自分と、自分じゃない自分、けれども自分自身。どちらも違く、どちらも正しい。
何を肯定していいのかも分からない感覚に、クレスの頭は混迷し、いっそのこと煩わしい全てを斬り捨てろと心が囁く。
「……違う! あれは、僕じゃない!!」
「そんな物騒な得物を振り回しておきながらよく言うぜ! 全く、大した快楽殺人者だな?」
必死に内側の疼きと、それが齎しただろう惨事を否定するも、チェスターには届かない。
ただ目前の殺人鬼を殺すために指先が弾かれる。せめて荘厳に逝けと音色を奏でるかのように。
「あんな無残な姿になるまで痛めつけるなんて、テメェは人間か?」
「違うんだ! あれは」
キッとチェスターの目付きが鋭くなると、矢に赤い光が集う。
「黙れよ、この気狂い!!」
クレスの身体が跳ね、動きを止める。
矢が首元を掠めていったが、気にする余裕など奪い取られていた。

――――気狂い、だって。僕はもう狂人でしかないのか、チェスター。

血のように赤い光を帯びた矢は……否、矢の形をした光は、幾重にも分岐し無数の矢を形成する。
洞穴を照らす冴えた光は、憎悪に満ちたチェスターの表情と、今にも張り裂けそうなクレスの心を曝け出させる。


【夜鷹の爪跡、円環を描き龍を屠る<ホークネイル>!!】

「殺す……絶対ェ殺してやるっ!! 地獄の果てまで、どこまでだろうと、追いかけてやるッ!!」
背中から数本の矢を掴んで、チェスターは懐の瓶へとその鏃を浸す。
その様からクレスは容易に確信した。先ほどの矢の輝きは、やはり毒か。
だが、クレスの気づきなど知ったことかとチェスターは毒矢を掴んで射撃を放つ。
チェスターの最終弓技・屠龍が、それぞれが歪な曲線を描いてクレスの下へと収束する。
親友の弓の腕は誰よりも知っている。紙一重ならともかく、毒を食らわぬよう完全回避するのがどれほど困難なのかも。
クレスは襲い来る毒爪を防ぐことなく――「不味い」と警鐘を鳴らした無意識が、ひとりでに身体を動かし、前へ進みながら矢を避けさせた。
情けない面貌のまま、無駄のない身のこなしで回避する姿は奇妙にすら見える。
そして意識の制御を離れた肉体は、剣を携え、笑い、何気なく親友の肉を抉ろうと
(だめだ)
剣を握る左手の首を右手で押さえ込む。笑いかけた口の端を必死に歯で食い縛る。
無意識は、もうひとりの僕だ。
理性で御し、意識で抑えなければ、浅ましく血を啜ろうとする欲望が露わになる。
たとえ既知の人間であろうと、幼い頃から一緒だった幼なじみであろうとも。
だが、攻撃を止めて敵に接近するなど痴愚の極みでしかしかない。絶好にして絶体絶命の隙が生じていた。




【前触れの無い悲劇、それは突然の衝撃<サドンインパクト>!!】

そしてこの少女が、阿呆な隙を狙わない理由がない。

「隙だらけです……五月雨ッ!」
クレスは、平静な声が聞こえてやっと後ろに誰かがいることを知った。
ぎりぎりのところまで気配に気づかなかったのは当然である。クレスの背後に立つ少女は忍者だからだ。
悟ったときには、既にクレスの首筋には赤黒く変色した血のような色の刃が添えられ、静かに、
「――――ッ!!」
刃は空を咲いた。
空間翔転移でとっさに移動したクレスは、逆に少女の後ろを取る。
まだ背が低く幼い体躯でも、纏った経験と冷酷さは隠し切れない。大きく束ねられた栗色の髪が目に留まる。
少女は静かに振り返る。横顔が髪の奥から覗く。あどけない面差しに、色のない眼光が宿る。
「すず、ちゃん……どう、して……!」
親友と同じく、ここにはいない筈の少女の姿に、クレスはおののく。
幼き頭領、藤林すずもまた死んだ筈なのだ。そう放送で言っていたではないか。
死者とは思えぬ大きく円らな瞳は悲しみに満たされ、クレスの顔を映していた。
だが、きゅうと半秒目を瞑り、再び開かれた“まなこ”には静湖の如き静謐な覚悟―――忍びの境地が映る。
「その振る舞い……ダオスに洗脳された方とお見受けしますが、私の使命は道半ばで潰える訳にはいかない……御覚悟を!」
立ちはだかる者の命を奪おうと、すずは忍刀を構え、空いた手で複数の苦無を備える。
有り得ない光景に、クレスは胃のむかつきさえ覚えた。
状況はワン・オン・ツー。こちらは剣を振るうことを躊躇し、相手方は仲間と同じ姿のくせに殺る気満々だ。
戦わなければならないのか。仲間を殺さねばならないのか。
悲しみは雨のように降り注ぐ。


【終焉の宣告にはまだ早いよ~~! グルーヴィな音階で運命を導け<フラックスフォーム>!!】

雨を、クレスは剣を翳して除けた。
逆さに突き立てた剣から、方陣が天に刻まれ、青い守護の傘を作り出す。
全ての機械兵士が矢に貫かれたはずが、術の雨は未だ止んではいなかった。
否―――クレスだけを狙って降り注ぐこれは“魔術の雨”だ。
傘越しにクレスが見上げれば、上空では箒に跨った魔女が飛んでいる。
指先にマナを集中させ、銃弾を放つような気軽さで低コストの魔術を連発する。
ファイアボール、アイスニードル、ストーンブラスト、ウィンドカッター。根幹たる四元精霊の基本術を、それこそ雨粒のように降らせている。
「アーチェ……!?」
「チェスター! あたし、チェスターと一緒だよ! 一緒にいるよ! チェスター!!」
桃色の魔女アーチェ・クラインは楽しそうに笑い声を上げながら、クレスを殺そうとしていた。
傘はやがて雨粒の威力に耐え切れず霧散し、やむを得ず虚空蒼破斬の闘気の網で無理矢理にでも術を掻き消す。
それでもなお詠唱を紡ぎ、クレスを誅殺せんと、さながら戦闘機械のように魔術を繰り出していく。
その箒の先につけられた神秘の紋章が、彼女の狂気に呼応するように詠唱を加速させる。
「うるせえぞアーチェ! 喋ってる暇があったらアミィを殺したあいつをそのまま貼り付けてろ!!」
「う~~~~でも、いいよチェスター! それでアンタが喜んでくれるなら、私は誰だってブチのめしちゃえるんだから!!」
魔術と弓術による遠隔攻撃のタッグを、ひたすらクレスは往なしていく。
隙を突いて必殺を狙うすずの一撃を、かろうじて防いでいく。
息が絶え絶えに切れる。何故だ、とクレスは頭の中で何度も何度も問うた。

何故、こちらを攻撃してくる。何故、戦わねばならない。




【……ホントにこれやっていいのかな~~~? ま、いっか! 四連携完了・4倍速詠唱!!
 具現せよ新たなる原罪。その罪贖うは我が振う灰燼の剛腕<ドリームファンダム&フラドブランム>ッ!!】

決まっている――――――戦わなければならないからだ。お前が産み落とした罪を、購う為に。

「なっ……!!?」
突如、噎せ返るような熱波が洞窟内に巻き起こる。
肌を刺す熱が意識を一瞬でも空白にし、強烈な風が髪とマントを煽り立てる。
洞窟が強く赤く照らされた。光源は、洞窟の地面が融解したことによって現れた、活力に溢れたマグマだった。
クレスは絶句する。――どうして。どうして“貴方”がいるのか、と、呻きすらしなかった。
熱気に包まれ、人影はおぼろげにしか見えない。黒い影があるだけで、輪郭すらはっきりとしない。
本当に“貴方”がいるのか、一目見ただけでは分からなかった。
「援護、感謝します! このまま一気に押し切りましょう!!」
『試練でもなく、精霊王を敵に回すとはな……実に業腹であるが、この世界では主の契約に従うよりないか…!!』
だが、すずがイフリートの主と会話しているのを見ては、クレスにとってはそうとしか考えられなかった。
いきり立つマグマの中で聳えるは、火の精霊イフリート。召喚術を使え、そしてすずの仲間なのは、ただひとりだけ。
なぜここにいるのか、という問いさえ最早口に出来なかった。生と死をぐちゃぐちゃにされたこの地獄で、いるいないを問うことも徒労だ。
クレスの疑問に答えることなく、イフリートはゆっくりと炎で燃え盛る腕を掲げる。
「クラ―スさんも、敵だっていうのか……!!」
その光景にはやはり見覚えがあった。
世界の元素を司る高位存在、精霊。召喚術は彼ら彼女らと契約を結びて呼び出す。その威力は計り知れない。
クレスはもはや本能的に、召喚術を阻止しようと動いていた。
アミィのときは、狂気に身を任せずとも何とかすることはできた。
しかし、かつての仲間たちを複数同時に相手にするなど、今の“僕”にできるのだろうか?
否、“温過ぎる”。仲間だからといって剣を振るうこともできないなど、温過ぎる。ただの魔王には荷が重過ぎるのだ。
跳躍し、時空の剣に蒼い光を纏わせる。光は刀身の形を作り、本来の刃よりも数倍大きいものとなる。
時空剣技・次元斬が、精霊の腕から生まれる火球を切り裂かんと、

【すかさず回避! 我を守れ限りなく絶対たる騎士の円楯<アクセルモード・ラウンドシールド>ッ!!】

洞窟を駆け抜ける影が、跳躍し、剣を振り上げる。
クレスの目の前に現れた影もまた、同じように蒼い光を剣に纏わせていた。
長大した光の刃は、クレスの次元斬に酷似していた。ゆえに、それらが鍔迫り合いをすれば、打ち消し合うのも必然と言える。
蒼刃が消え、イフリートの赤光によって影が照らされる。姿が曝け出される。
時空剣技を真っ向から打ち破れるのは時空の剣しかない。
あの機械の群れに“自分”を混ぜてこなかったのはこのタイミングで隙を突くためかと、クレスは驚きを納得しようとした。
しかし、向かい合った自分の眼を見て、クレスはその気持ちを霧散させてしまう。そこにいたのは狂人ではなかった。
傷の付いた年季の入った鎧、赤いマント、赤いバンダナに……濁りのない、茶色の瞳。
クレスは思い出す。そうだ、チェスターが弓を射る隙を守ってきたのは、すずちゃんの忍術と共に前線を守ったのは、
アーチェの、そしてクラ―スさんの詠唱時間を作ってきたのは、いつだって君だった。
それはきっと、魔王が失ってしまった昔日の楯。誰かを失うことなく、その背中に守るべきものをもった青年。

(今更―――――俺に騎士の真似ごとなんて、見せるなよ!!)

剣の魔王は嗤った。自らの狂気に―――“嫉妬”に身を委ね、目の前の“光”を一瞬で惨殺した。




◇◆◇


グリューネは、指先で掴んでいた白い駒をそっと静かに置く。
表情は晴れやかなものではなく、口唇の先は僅かに震えてさえいた。
今は、やむを得ず魔王に敵の一駒を斬り伏せさせたが、本当ならば手を出したくはなかった。
「……こんなオカルト、あり得る訳が……」
【コドクナタタカイヲツヅケタダオスヘノ……】
『セメテモノタムケダ~~ってね。よくできてるでしょ? 名付けて「メカボ中年2号」!』
真正面を見据え、グリューネは鷹揚すら見せずに吐き捨てた。
対面に配置されたのは4つの黒駒。いずれも、明らかにこちらの駒に対応して選出されている。
いくら王の下へ行かせるのを阻むためとはいえ、死んでいった仲間たちと戦わせるなど、鬼畜人外の行いとしか思えない。
道化師の後ろに控えていたノルンは、背の翼でふわりと盤の上空へと浮遊する。
「どうやって作った? いや、それより、何故プレイヤーでもない貴女が指せる?」
『どうやってって言われてもな~~~こう、ドデスカ~コン!ってね!!
 それにこれくらい、このオジサンじゃなくたってルールさえ分かれば誰だってできるよ?』
「…………これも、王の権利行使ですか? ノルン」
『そうです。死者の存在も、異なる世界の人間の召喚も、王は初手にて行っている。全ては合法、故に真実として受理される』
「そうでございます……勿論、ジャッジ……いや、元ジャッジ(仮)である私の目から見ても……これは“通し”でございます……」
無言でグリューネは歯を噛み締めた。
こんなことがあってたまるか! そう叫びたくなったが、法の、ルールの下で成立している以上、何も返すことはできない。
どんなに理不尽で、許しがたくとも、現実として受け入れるしかない。
(ですが……ですが……死者をいくらでも蘇らせることができ、かつ幾らでも追加で駒を召喚でき、
 挙句理由も無く自分の思い通りに動かすことができるというのが絶望側の、王の権力だと云うのなら……それでは……)
『自分に勝ち目がないなんて“酷過ぎる”?』
それが鏡の言った言葉だったのか、自分の心から出た言葉なのか、グリューネは理解するのしばしの時を要した。
自分の顔はさっきの鏡に映ったような醜い顔をしているに違いなかった。思い出す度に戒めねばという気持ちに駆られる。
その鏡はというと、ついに正解を解き明かしたという陽気さで部屋の中でくるくると回って遊んでいた。
ノルンが目配せすると、魔法の鏡は数十秒考え込んだあと、どこかにある手をポンと打った。
「そっかそっか。やっぱりそう思ってたのかあ。なるほどねー。ほんじゃ“いきますか”~~~?」
訳の分からないコンタクトに、グリューネは頭部に電流が走るのを感じた。
何か、何か――嫌な予感がする。
ノルンは手に持っていた杖を魔法の鏡の方へと放り投げる。そして、鏡はどこからか腕をにゅっと伸ばした。
全身が映るほどの鏡に、腕と足だけが付いた、なんて不格好な姿。だが、魔法の鏡はその怪しい外見とは真逆の、厳かな姿を見せる。
精神集中によって杖はくるくると自転する。
敵の連携は全て揃った。陣容が整った以上、向こうがやることは一つしかない。
間違いない。これは、詠唱だ。例えその文句が、どれだけふざけていようとも。


◇◆◇

びちゃり、と空から地面に死体が落ちた。
イフリートの振り落とした炎の腕が、灼熱の衝撃波を生み、死体は数秒で灰となった。
魔王クレスは転移によって後方へと陣取る。けれども、地面に着地した時には既に、次なる一手が訪れようとしていた。

【開け過去の扉。砕けたカケラ、一網打尽にみんな集まれ~~~~~~~~♪】

これまでの闇と打って変わって煌々と燃える地獄の底で、処刑人達が処刑道具を輝かせる。
弓は何本も矢を束ねて構えられている。
魔術は詠唱待機にされ、すぐにでも発動できる状態だ。
姿なき召喚術士は新たな術を紡がんとし、精霊と対話をしている。
そして、それらを庇うかのように、小さな忍者は忍刀を携え構えている。
誰もが、今ここで燃え尽きたクレスを見ていない。その眼は、殺すべき者だけを見据えている。
剣士というものは、例え複数が相手であろうと、攻撃の順序がそれぞれ違っていれば対処ができる。
だが一説によれば……3人同時に襲いかかった場合、世界で1番強い剣豪であろうと、命を散らしてしまうという。
これからクレスに襲いかかろうとするのは、正に“一斉砲火”だ。
仲間たちは、確実にクレスを殺そうとしているのだ。

<両者、布陣を確認……審議を開始します。グリューネ……願わくば、これが結審となることを祈ります>

弓の弦が鳴る。マナが爆発しようとしている。忍んで、静かに命を奪おうとしている。
決断せねばなるまい。ここで死ぬか、それとも――――

【そんじゃお待たせしました! 希望が勝って当たり前、絶望が負けて当り前。
 ―――――まだこれが“そんな物語”だと思ってるそこのカミサマに。アタシが勝利より重き敗北を具現するッ!!】

鏡の国に迷い込んだクレスに向けられるのは、自由な彼女が招きし時を越えた戦士達。
自由に楽しそうに、真実が物語を破壊する。

【いくぜみんな、レッツラゴー! 誰もが夢見た大進撃<ドリームストライカーズ>!! ぅいやっほ―――――いッ!】

悪夢が現へと突撃し、終焉の訪れを告げる銃杖の撃鉄が引かれた。




チェックメイト。



クレス=アルベインは、ここで死ぬ。


【クレス=アルベイン 生存確認】
状態:HP10% TP50% 第四放送を聞いていない 疲労 眼前の状況に重度困惑
   狂気抜刀<【善意及び判断能力の喪失】【薬物中毒】【戦闘狂】【殺人狂】の4要素が限定的に発露しました>
   背部大裂傷+ 全身装甲無し 全身に裂傷多数 背中に複数穴
所持品:エターナルソードver.A,C,4354 ガイアグリーヴァ オーガアクス メンタルバングル
    サンダーマント 大いなる実り 漆黒の翼バッジ×2 コレットのバンダナ装備@少し血に汚れている
基本行動方針:剣を振るい、全部を終わらせる
第一行動方針:君達も斬れと――――――?
第二行動方針:ミクトランを斬る。敵がいれば斬って、少しでもコレット達の敵を減らす。
現在位置:中央山岳地帯地下




【Chester Barklight? 存在確認】

状態:HP100% TP100% アミィを殺した者への深い憎悪 BOSS
所持品:クレインクィン@TOP(残り矢数:100%) 毒(液体) ???? アミィの上半身
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Arche Klaine? 存在確認】

状態:HP100% TP100% チェスターへの狂おしいまでの愛情 BOSS
所持品:ミスティブルーム ミスティシンボル ????
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Fujibayashi Suzu? 存在確認】

状態:HP100% TP100% 忍としての冷徹な覚悟 BOSS
所持品:忍刀・血桜 苦無(20/20本) ????
基本行動方針:号令・お前に任せる発令中。キャラクター固有の思考にて行動します。
現在位置:中央山岳地帯地下


【イフリート 存在確認】

状態:HP100% TP100% 召喚状態 BOSS
所持品:無し
基本行動方針:契約者の指示に従い、敵を焦滅する。
現在位置:中央山岳地帯地下


【Cless Alvein? 死亡確認】
※支給品(1~3。一つは剣型の武器)が周囲に落ちています。

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