鬱蒼とした森の中、木のうろに身を隠す二人の女性とその近くに男が立っていた。
万華鏡の様に折り重なり浅葱に輝く木漏れ日が美しいが、男はそんなことに情緒的になるわけではなく、警戒した様子で周囲を伺っていた。
万華鏡の様に折り重なり浅葱に輝く木漏れ日が美しいが、男はそんなことに情緒的になるわけではなく、警戒した様子で周囲を伺っていた。
マーテルの膝の上で気を失っている、少女の容態が大分持ち直した頃だった。
「…私は周りの様子を見てこよう」
マントに身を包んだ長身の男ーーダオスは言った。
近くに敵の気配はないものの、油断は禁物だった。
この会場が広いとはいえ、五十人をも越えた参加者がいる。
中にはとてつもなく邪悪な者もいる。
(尤も彼もその中の一員かもしれないが)
「気を付けて下さいね」
「ああ」
事前にマーテルには英雄とまで言われた弟がいることを告げられている。
マーテルはなんとしても守りたい所だが、自分に怨恨を持つ者も存在する。
彼は強い。
だからこそ戦闘狂を引き寄せてしまう危惧もある。
よく考えれば彼といるのは危険とも言えた。
奇跡的にその弟と対峙できればマーテルを預けてはどうかということも薄々は考えていた。
英雄とも言われた少年だ。きっとマーテルを守り通せるかもしれない。
ダオスは歩き出した。
ダオスがその場を離れて暫くした所でようやく少女が眼を醒ました。
「…きゃ!!」
いきなり見ず知らずの女性の膝の上に寝ていたことに驚きの声を上げる。
「大丈夫?」
マーテルは優しくその少女に呼びかけた。
「…私は周りの様子を見てこよう」
マントに身を包んだ長身の男ーーダオスは言った。
近くに敵の気配はないものの、油断は禁物だった。
この会場が広いとはいえ、五十人をも越えた参加者がいる。
中にはとてつもなく邪悪な者もいる。
(尤も彼もその中の一員かもしれないが)
「気を付けて下さいね」
「ああ」
事前にマーテルには英雄とまで言われた弟がいることを告げられている。
マーテルはなんとしても守りたい所だが、自分に怨恨を持つ者も存在する。
彼は強い。
だからこそ戦闘狂を引き寄せてしまう危惧もある。
よく考えれば彼といるのは危険とも言えた。
奇跡的にその弟と対峙できればマーテルを預けてはどうかということも薄々は考えていた。
英雄とも言われた少年だ。きっとマーテルを守り通せるかもしれない。
ダオスは歩き出した。
ダオスがその場を離れて暫くした所でようやく少女が眼を醒ました。
「…きゃ!!」
いきなり見ず知らずの女性の膝の上に寝ていたことに驚きの声を上げる。
「大丈夫?」
マーテルは優しくその少女に呼びかけた。
「…敵らしき気配はない、か」
二人にそう離れては居ない場所をダオスはぐるりと見渡す。
しかしその時だった。
背後に感じるいきなり殺気にも満ちた気配にダオスは振り返った。
それと同時に火の玉が彼めがけて突っ込む。
「ふん!!!」
しかしダオスは易々とその火の玉を片手で払いのけた。
「姉さんはどこだ!!!
」 そこには金のロングヘアーの白い衣を纏った少年が怒気を露わにしながら立っていた。
二人にそう離れては居ない場所をダオスはぐるりと見渡す。
しかしその時だった。
背後に感じるいきなり殺気にも満ちた気配にダオスは振り返った。
それと同時に火の玉が彼めがけて突っ込む。
「ふん!!!」
しかしダオスは易々とその火の玉を片手で払いのけた。
「姉さんはどこだ!!!
」 そこには金のロングヘアーの白い衣を纏った少年が怒気を露わにしながら立っていた。
「そう、あなたはシャーリィちゃんって言うの」
「ええ、助けて下さってありがとうございます」
シャーリーはぺこりと頭を下げた。
「本当に…バトルロワイヤル始まってしまったんですね…」
「ええ、悲しいことだけれど…」
二人は俯いた。
「お兄ちゃんが心配…」
「あなたにもご兄妹がいるのね」
「マーテルさんもですか?」
「ええ、弟がいるのよ」
マーテルは悲しそうに天を仰いだ。
変わらずに木々の合間から降り注ぐ光が皮肉的だった。
「弟さん…どんな人なんですか?」
「そうね…とても優しい子よ。だけど…」
「だけど?」
シャーリーが顔をのぞき込む。
「すごく繊細な所があるから…。私がここにいるとなると、ちゃんと気を確かにもってくれるのかどうか…心配だわ」
「ええ、助けて下さってありがとうございます」
シャーリーはぺこりと頭を下げた。
「本当に…バトルロワイヤル始まってしまったんですね…」
「ええ、悲しいことだけれど…」
二人は俯いた。
「お兄ちゃんが心配…」
「あなたにもご兄妹がいるのね」
「マーテルさんもですか?」
「ええ、弟がいるのよ」
マーテルは悲しそうに天を仰いだ。
変わらずに木々の合間から降り注ぐ光が皮肉的だった。
「弟さん…どんな人なんですか?」
「そうね…とても優しい子よ。だけど…」
「だけど?」
シャーリーが顔をのぞき込む。
「すごく繊細な所があるから…。私がここにいるとなると、ちゃんと気を確かにもってくれるのかどうか…心配だわ」
マーテルの予感は的中していた。
ダオスの腕がちりちりと痛む。
本来ならファイアーボールなど簡単に回避できるのだが、それができなかった。
少年は手にしたロングソードですかさず斬り掛かる。
早い。
バックステップで紙一重で回避するが鋭い剣閃がダオスの乱れた金糸を掠める。
しかし少年の猛撃は止まる事を知らず、裏拳を放つかのように足首を回転させ上半身を捻り、水平に凪ぎ払う。
ダオスは腕を垂直に振るって、剣を弾く。
すると次は剣を振りながらも詠唱をしていたのか、風の刃が渦になって襲いかかる。
「…はあ!!」
ダオスは一気に闘気を放出し、なんと大気を歪ませ風の刃をきりもみにし、威力を失速させた。
「うわあ!」
少年も吹き飛ばされ、地面に背中から倒れる。
ふう、と一呼吸おいてダオスは少年に近寄った。
ダオスの腕がちりちりと痛む。
本来ならファイアーボールなど簡単に回避できるのだが、それができなかった。
少年は手にしたロングソードですかさず斬り掛かる。
早い。
バックステップで紙一重で回避するが鋭い剣閃がダオスの乱れた金糸を掠める。
しかし少年の猛撃は止まる事を知らず、裏拳を放つかのように足首を回転させ上半身を捻り、水平に凪ぎ払う。
ダオスは腕を垂直に振るって、剣を弾く。
すると次は剣を振りながらも詠唱をしていたのか、風の刃が渦になって襲いかかる。
「…はあ!!」
ダオスは一気に闘気を放出し、なんと大気を歪ませ風の刃をきりもみにし、威力を失速させた。
「うわあ!」
少年も吹き飛ばされ、地面に背中から倒れる。
ふう、と一呼吸おいてダオスは少年に近寄った。
その様子を木の頂から見ていた者が居る。
「フフ、なる程…少しかき乱してやりましょうかね」
邪悪な笑みを浮かべると、その者は煙幕と共に消えた。
「フフ、なる程…少しかき乱してやりましょうかね」
邪悪な笑みを浮かべると、その者は煙幕と共に消えた。
「なかなかいい筋だが…貴様では私を倒すことはまだまだ出来ぬ」
くっ、と少年が歯を噛みしめ、まだ闘争心の消えぬしかし牢籠とした様子でダオスを睨み付ける。 この眼には見覚えがある。
あの剣士の―――
「まずは話を聞かせてもらおうか」
ダオスは少年に手をかざしたまま、問う。
「姉さんのマナを近くに感じるんだ。お前からも姉さんのマナの香りが微かにする。
まさかお前が姉さんを手に掛けたんじゃないだろうな」
男は嘆息した。
「…早とちりもいいところだな」
ダオスはかざした手を下げた。
しかしダオスは魔王として畏怖されてきた者だ。少年がそう思ってしまうのも無理はない。
「マーテルとは確かに共に行動している。ついてこい」
そう言うとマーテルのいた場所へダオスは歩み出した。
「本当!?」
今の今まで殺意に満ちていた少年の顔がぱっと明るくなる。
少年は、はっと眼を伏せて言った。
「あの…本当にごめんなさい」
素直に謝り、先程の様子からは想像がつかぬ程の無垢な少年の顔になる。
そしてダオスの後をついていった。
その場所に着くと二人は眼を見開いた。
「マーテルさんが…マーテルさんが…」
涙目で震え、取り乱す少女。
その側には…
血に塗れたマーテルの姿。
少年は一瞬硬直しひゅう、と喉をならすと夢中でその場に駆け寄った。
「姉さん!!!姉さん!!!!姉さん!!!!!」
不覚をとった。
油断の出来ぬ少年との戦いの中、マーテルは何者かに襲撃されたのだ。
しかしそれでも本来ならばダオスなら気づく筈だ。ここまで気配を消すとは―――相当の隠密能力に長けた手練だ。
ダオスは己の失態に拳を握りしめた。
マーテルの側で膝を着きながら、振り向かずに少年は言う。
沸々と怒りを煮えたぎらせて。
「…やっぱりお前がやったんだな」
「……」
「…そうなのか?」
「……」
ダオスは無言だった。
己の不徳による事態と考え、弁明はしなかった。
いや、仮にしたとしてもこの少年には分からないだろう。
何より、守ることの出来なかった矮小な自身を責めた。
「お願い、聞いて!!」
「黙れ!!!」
シャーリィの言葉も耳には届かなかった。
ダオスは袋からアイテムを取り出し、ぽん、と地面に投げた。
エリクシールだった。
「まだ息がある。これを飲ませるがいい。
だがその代わりに姉はお前が守れ。…必ずだ」
少年はわああ!!と嘆いてマーテルの側で涙をこぼした。
くっ、と少年が歯を噛みしめ、まだ闘争心の消えぬしかし牢籠とした様子でダオスを睨み付ける。 この眼には見覚えがある。
あの剣士の―――
「まずは話を聞かせてもらおうか」
ダオスは少年に手をかざしたまま、問う。
「姉さんのマナを近くに感じるんだ。お前からも姉さんのマナの香りが微かにする。
まさかお前が姉さんを手に掛けたんじゃないだろうな」
男は嘆息した。
「…早とちりもいいところだな」
ダオスはかざした手を下げた。
しかしダオスは魔王として畏怖されてきた者だ。少年がそう思ってしまうのも無理はない。
「マーテルとは確かに共に行動している。ついてこい」
そう言うとマーテルのいた場所へダオスは歩み出した。
「本当!?」
今の今まで殺意に満ちていた少年の顔がぱっと明るくなる。
少年は、はっと眼を伏せて言った。
「あの…本当にごめんなさい」
素直に謝り、先程の様子からは想像がつかぬ程の無垢な少年の顔になる。
そしてダオスの後をついていった。
その場所に着くと二人は眼を見開いた。
「マーテルさんが…マーテルさんが…」
涙目で震え、取り乱す少女。
その側には…
血に塗れたマーテルの姿。
少年は一瞬硬直しひゅう、と喉をならすと夢中でその場に駆け寄った。
「姉さん!!!姉さん!!!!姉さん!!!!!」
不覚をとった。
油断の出来ぬ少年との戦いの中、マーテルは何者かに襲撃されたのだ。
しかしそれでも本来ならばダオスなら気づく筈だ。ここまで気配を消すとは―――相当の隠密能力に長けた手練だ。
ダオスは己の失態に拳を握りしめた。
マーテルの側で膝を着きながら、振り向かずに少年は言う。
沸々と怒りを煮えたぎらせて。
「…やっぱりお前がやったんだな」
「……」
「…そうなのか?」
「……」
ダオスは無言だった。
己の不徳による事態と考え、弁明はしなかった。
いや、仮にしたとしてもこの少年には分からないだろう。
何より、守ることの出来なかった矮小な自身を責めた。
「お願い、聞いて!!」
「黙れ!!!」
シャーリィの言葉も耳には届かなかった。
ダオスは袋からアイテムを取り出し、ぽん、と地面に投げた。
エリクシールだった。
「まだ息がある。これを飲ませるがいい。
だがその代わりに姉はお前が守れ。…必ずだ」
少年はわああ!!と嘆いてマーテルの側で涙をこぼした。
その様子を見て、ダオスは身を翻し、深い森の中に消えた。
その眼は何者にも比類しないほどに鋭く、熱く、そして冷たさに満ちていた。
ダオスから放たれる怒りに震えたマナが木々をざわめかせる。
その眼は何者にも比類しないほどに鋭く、熱く、そして冷たさに満ちていた。
ダオスから放たれる怒りに震えたマナが木々をざわめかせる。
「…後悔するがいい…愚か者よ」
目的はひとつ――――
手を下した者をこの手で残酷に葬ることだった。
手を下した者をこの手で残酷に葬ることだった。
【ダオス 生存確認】
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯深く
状態:多少MP消費 怒り
行動方針:マーテルを傷つけた者を何としても見つけだし殺害する
所持品:エメラルドリング
現在位置:B7の森林地帯深く
状態:多少MP消費 怒り
行動方針:マーテルを傷つけた者を何としても見つけだし殺害する
【ミトス 生存確認】
所持品:ロングソード ???
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少MP消費 擦り傷 怒り
行動方針:マーテルを守る
ダオスを殺す
所持品:ロングソード ???
現在位置:B7の森林地帯
状態:多少MP消費 擦り傷 怒り
行動方針:マーテルを守る
ダオスを殺す
【マーテル 生存確認】
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:重傷
行動方針:???
所持品:双眼鏡 邪剣ファフニール アクアマント
現在位置:B7の森林地帯
状態:重傷
行動方針:???
【シャーリィ 生存確認】
所持品:????
現在位置:B7の森林地帯
状態:混乱
行動方針:なんとかミトスを正気にして誤解を解く
所持品:????
現在位置:B7の森林地帯
状態:混乱
行動方針:なんとかミトスを正気にして誤解を解く
【ソロン 生存確認】
所持品:???
現在位置:???
状態:悦楽
行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
ジェイの監視
所持品:???
現在位置:???
状態:悦楽
行動方針:周りをかき乱し、傍観して楽しむ
ジェイの監視