残された者
ミント・アドネードが金髪の青年スタンと天才ハロルドと行動を共にするようになってから数時間が経過した。
それまで警戒の為の罠を仕掛けたりお互いの状況の整理、これからの行動指針について語り合い、
その間ハロルドは一人で別のことに集中していたようだったが、やがて話が終わったと見えると、
突如二人に対し強烈な行動を取り、彼女等が盗聴されていることを暴いた。
悄然とする彼女等を前に、憤然とするハロルドは紙を取り出し、ペンを握った。
そしてしばらくハロルド直筆による『いかにして私は盗聴に気付いたか?』講義が始まったが、
(要は自分がミクトランの立場だったらそうしただろうと思ったから、らしい)
それも中断せざるを得なくなった。
放送が始まったのだ。
ゆっくりと、いたぶる様な口調で淡々と死者の発表をするミクトランの言葉は、楽しんでいる様にも聞こえた。
そしてそれはスタンとミントに大きな衝撃を与えた。
放送が終わって、十数分が経った。
その放送によりいきなり時を止められてしまったような、洞窟内は先程までとは打って変わって静まり返っていた。
少女は膝を曲げて地面に座り込み、うなだれてすすり泣いていた。
青年は壁に向かって両手を突きながら、顔を下に向けていた。金髪が垂れて表情が見えない。
そしてハロルドはそんな二人を気に掛ける様子は見せず、元の作業に戻っていた。
「くそっ・・・くそっ・・・」
壁に向かって小さく叫び続けていたスタンは、
「くそぉっ!」
やがて勢いよく両手を弾ませると、脱兎の如く洞窟の出口へ足早に歩き出した。
「スタン、さん?」
ミントが涙に濡れた顔を上げ、彼を見やった。
聞こえたのか、聞こえていないのか、彼は構う事無く進んでいた。
「・・・どこへ行くのよ」
机(の様な岩)に顔を向けたまま、ハロルドがゆっくりと、しかし力強く言った。
スタンは足を止め、少女と同じ泣き腫らした顔を彼女に向けると、睨むように見つめた。
「あいつが・・・ルーティが死んだんだぞ!じっとしていられるか!」
やり場の無い感情をぶつけるようにそう言い放ち、ふりむきかけた。
ハロルドは静かに顔を上げ、スタンの背後目掛けて声をかけた。
「それで?」
「・・・・・・」
「それであんた、どうすんの?殺された仲間の仇打ちでもする?どこの誰がやったかも分からないのに?
それとも、あのミクトランの言うこと信じて、全員殺す?殺して生き返らせる?」
スタンは何も言わず、半端に回転しかけて立ち尽くしている。
「それはやめときなさいよ。参加者55人の中で最後の1人になるには、
超単純に計算しても、2%に満たないんだから。」
スタンも、ミントも何も言わない。更にハロルドは続けた。
「大体、このゲームで勝ち残ろうなんて、到底無理なのよ、絶対」
スタンはやおら顔をハロルドに向けた。その表情はまだ強張っていたものの、多少落ち着きを取り戻している。
彼はどうして、といいたげに顔を振った。
「だって、私が居るもの」
表情は変わらず、ただ口を半開きにして彼は彼女を見つめていた。彼女は「それに」と続け、
「あんたがゲームに乗ってやりたいならいつでも相手したげるけど、その時はその子もやらなきゃいけなくなるのよ」
ハロルドがスタンの後方を指差す。
彼がそちらへ視線を向けると、不安そうな顔をしてこちらの成り行きを見つめている少女が写った。
・・・そうだ、この少女もまた、大切な仲間を失って悲しんでるんだ。
・・・それなのに、俺は・・・
次第に彼の中の激情が収まると、静かに首を回しハロルドを見つめた。
彼女はふふん、と笑うと、また机に向かって手を動かし始めた。
そうして1人立ちすくんだスタンは、右手で顔を押さえ、その場に座り込んだ。
まだはっきりと気持ちの整理が付いた訳ではなかった。それは少女も同じだろう。
こんなゲーム、やっぱりどう考えたっておかしい。
何とか、何とかできないのか・・・・・・
やがてハロルドは立ち上がり、つい数十分前そうした様に再度二人に紙を見せた。
「この天才ハロルドを出し抜こうなんて、凡人にはとても無茶な相談なのよ」
そう言いながら見せつけられた、その紙は次のように読めた。
『たとえ、ミクトランであろうと』
それまで警戒の為の罠を仕掛けたりお互いの状況の整理、これからの行動指針について語り合い、
その間ハロルドは一人で別のことに集中していたようだったが、やがて話が終わったと見えると、
突如二人に対し強烈な行動を取り、彼女等が盗聴されていることを暴いた。
悄然とする彼女等を前に、憤然とするハロルドは紙を取り出し、ペンを握った。
そしてしばらくハロルド直筆による『いかにして私は盗聴に気付いたか?』講義が始まったが、
(要は自分がミクトランの立場だったらそうしただろうと思ったから、らしい)
それも中断せざるを得なくなった。
放送が始まったのだ。
ゆっくりと、いたぶる様な口調で淡々と死者の発表をするミクトランの言葉は、楽しんでいる様にも聞こえた。
そしてそれはスタンとミントに大きな衝撃を与えた。
放送が終わって、十数分が経った。
その放送によりいきなり時を止められてしまったような、洞窟内は先程までとは打って変わって静まり返っていた。
少女は膝を曲げて地面に座り込み、うなだれてすすり泣いていた。
青年は壁に向かって両手を突きながら、顔を下に向けていた。金髪が垂れて表情が見えない。
そしてハロルドはそんな二人を気に掛ける様子は見せず、元の作業に戻っていた。
「くそっ・・・くそっ・・・」
壁に向かって小さく叫び続けていたスタンは、
「くそぉっ!」
やがて勢いよく両手を弾ませると、脱兎の如く洞窟の出口へ足早に歩き出した。
「スタン、さん?」
ミントが涙に濡れた顔を上げ、彼を見やった。
聞こえたのか、聞こえていないのか、彼は構う事無く進んでいた。
「・・・どこへ行くのよ」
机(の様な岩)に顔を向けたまま、ハロルドがゆっくりと、しかし力強く言った。
スタンは足を止め、少女と同じ泣き腫らした顔を彼女に向けると、睨むように見つめた。
「あいつが・・・ルーティが死んだんだぞ!じっとしていられるか!」
やり場の無い感情をぶつけるようにそう言い放ち、ふりむきかけた。
ハロルドは静かに顔を上げ、スタンの背後目掛けて声をかけた。
「それで?」
「・・・・・・」
「それであんた、どうすんの?殺された仲間の仇打ちでもする?どこの誰がやったかも分からないのに?
それとも、あのミクトランの言うこと信じて、全員殺す?殺して生き返らせる?」
スタンは何も言わず、半端に回転しかけて立ち尽くしている。
「それはやめときなさいよ。参加者55人の中で最後の1人になるには、
超単純に計算しても、2%に満たないんだから。」
スタンも、ミントも何も言わない。更にハロルドは続けた。
「大体、このゲームで勝ち残ろうなんて、到底無理なのよ、絶対」
スタンはやおら顔をハロルドに向けた。その表情はまだ強張っていたものの、多少落ち着きを取り戻している。
彼はどうして、といいたげに顔を振った。
「だって、私が居るもの」
表情は変わらず、ただ口を半開きにして彼は彼女を見つめていた。彼女は「それに」と続け、
「あんたがゲームに乗ってやりたいならいつでも相手したげるけど、その時はその子もやらなきゃいけなくなるのよ」
ハロルドがスタンの後方を指差す。
彼がそちらへ視線を向けると、不安そうな顔をしてこちらの成り行きを見つめている少女が写った。
・・・そうだ、この少女もまた、大切な仲間を失って悲しんでるんだ。
・・・それなのに、俺は・・・
次第に彼の中の激情が収まると、静かに首を回しハロルドを見つめた。
彼女はふふん、と笑うと、また机に向かって手を動かし始めた。
そうして1人立ちすくんだスタンは、右手で顔を押さえ、その場に座り込んだ。
まだはっきりと気持ちの整理が付いた訳ではなかった。それは少女も同じだろう。
こんなゲーム、やっぱりどう考えたっておかしい。
何とか、何とかできないのか・・・・・・
やがてハロルドは立ち上がり、つい数十分前そうした様に再度二人に紙を見せた。
「この天才ハロルドを出し抜こうなんて、凡人にはとても無茶な相談なのよ」
そう言いながら見せつけられた、その紙は次のように読めた。
『たとえ、ミクトランであろうと』
【スタン 生存確認】
状態:放送による深い悲しみ、精神の動揺
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:ハロルド、ミントと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
状態:放送による深い悲しみ、精神の動揺
所持品:ディフェンサー ガーネット 釣り糸
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:ハロルド、ミントと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
【ハロルド 生存確認】
状態:無傷
所持品:ピーチグミ 短剣 実験サンプル(植物やらなんやら色々)
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:スタン、ミントと共に行動
状態:無傷
所持品:ピーチグミ 短剣 実験サンプル(植物やらなんやら色々)
現在地:G3の洞窟内部
第一行動方針:不明
第二行動方針:スタン、ミントと共に行動
【ミント 生存確認】
状態:放送による深い悲しみ TP中 軽い疲労
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
現在位置:G3の洞窟内部
第一行動方針:スタン、ハロルドと共に行動
第二行動方針:仲間と合流
状態:放送による深い悲しみ TP中 軽い疲労
所持品:ホーリースタッフ サンダーマント
現在位置:G3の洞窟内部
第一行動方針:スタン、ハロルドと共に行動
第二行動方針:仲間と合流