白霧の森

大陸最西部に位置する巨大な半島【掲腕半島】はエルフを中心とする妖精族が暮らす土地であり、その大部分は鬱蒼とした森林と縦横に走る河川とに覆われている。
さらに半島中央部には大小の川から流れ込む環状の大瀑布が存在し、膨大な量の水が流れ落ちた広大な淵の中央に根を張る大陸最大の樹齢を誇る巨木【世界樹】と、それを守るように取り巻く千年樹呼ばれる十二本の大樹が存在する。千年樹の枝は一際巨大に天へと伸びる世界樹中層の枝葉と絡み合って瀑布の中心に枝からなる大地の層を成しており、さながら環状の滝の中に一群れの森が浮かんでいるようであり、常時大量の水を放出する滝から立ち昇った水煙により、折り重なった枝の大地の縁は雲海に囲まれているように見えることから、この中央部またはそれを取り巻く半島全域の森林一帯を指して【白霧の森】そのように呼ばれる。

前述の世界樹を中心として巨木の枝によって作り出された大地は、半島に起居する妖精族の都であり、人間による国家のように明確な支配体系は引かれていないものの、古来より純血種の森エルフの一族がそれぞれの種族、血族によってなる幾つもの集落の取りまとめ役を担っており、その長は敬意を込めて【樹王】と称される。

また、これら枝葉の大地は世界樹を中心に緩やかな丘陵を描くが、中心に行くにつれ隆起した枝が複雑な立体構造を成し、それ自体が一つの居住区や市街を形成している。
世界樹の巨大な幹には洞が存在し、その内部に樹王の一族が起居する館の他、精霊と世界樹を祀りその声を聴く司祭たちの霊殿が設けられている。


世界樹の根は大陸の地中を縦横に走る地脈と直結しているとされ、正常な地脈の霊力を維持管理する役目を担っているという。(同様の役目を担っているとされる土地や、ものは大陸各所に存在するといわれ、著名なものでは凍原地帯に位置する竜眼湖、ウィスタリア帝国の首都北部に位置するアニマ高地、レクサーラ高地王国領内の幻影の谷、南洋諸島群南部の外海の無限の大渦などが存在する)


樹王の治める枝によって成る大地の遥か下層。環状瀑布の底の淵と世界樹の根が張った場所は妖精族の中でも最も精霊に近い存在である伝説上のハイエルフが住まう聖なる場所とされている。彼らはけして多種族と交わることがなく、世界樹と精霊との交信によって外界を監視し、妖精族に指針を与えるといわれる。
一説には世界樹の霊殿に仕える司祭が聴く世界樹の声は、彼らハイエルフの言霊とも言われており、樹王といえど自ら望んで会うことは適わないとされる。
最終更新:2013年01月29日 01:07