キシュフォルド東西二重王国
大公国と左腕海峡を隔てた島に存在する連合王国。
本来は島を二分して王国がそれぞれ主権を保っていたが十年ほど前に東部王家直系が絶えたことにより西部王が暫定的に人的同一君主となり二国を統べる事になった為、現在は二重王国(連合国家)として認定されている。
竜腹内海及び外洋に面し、大陸東部一帯~南西部・北西部への航路中継地として栄える。
また非常に温暖かつ安定した気候に恵まれることから油脂の原料となる果実や茶葉、砂糖の生産にも力を入れており内地の国力も高い。
気候の影響か、国民性は明るく気さく。
人の他、沿岸部には海洋系獣人の集落、沖合いには水生妖精族の集落も存在するが、現在は特に迫害を受けることも無く互いの強みを活かし不足を補う形で共生を図っている。
現連合王(旧西部王)はしたたかな人物で帝国・大公国とは友好的な姿勢を取りつつも組織した私掠船団を海賊へと仕立て、正規海軍によって取り締まる風を装いつつも他国の商船を襲わせることで直接的に、また航路に適度な危険を配置することで商船の護衛を生業とする各地の護衛船団と通じ、航路を旅する商船から間接的な富を得ている。
また、内海航路で海賊行為を行うことで、外洋航路の需要を高め、自国の貿易中継地としての価値を高める思惑もあると思われる
さらに南洋諸島群への植民地化を推し進めており、自文化の継承を重視する諸島部族や小国の幾つかは対抗策として帝国への郡国加盟や同盟を申し出ている。(群国編入には施法院による査察など準備時間も必要な為、編入を希望した諸島勢力はその間、帝国の軍事力の傘へ入りながらも国際的に正式な国境が定まるまで帝国領とはならない)
その間隙を縫うようにして二重王国による諸島への領海侵犯や離島占領が昨今目立つようになってきているが、制裁権限を有しない帝国海軍は後手に回らざるを得ない。(あくまで諸島勢力と二重王国間の問題であり、帝国と二重王国は表向き友好国である為)
連合王は帝国からの詰問に対して「頻繁に領海線の描き替えが行われ、我が国としても海図作成が追いつかず甚だ迷惑を蒙っているが帝国との友誼を思いこの作業に尽力をもって臨んでいる。混乱した現状の一端は帝国にも責があり、共に寛容であるべき時期と存ずる」との回答を寄こしている。
帝国内海軍提督は前代より海運王国の植民地政策に対し、その牽制として内海軍の規模拡張と外洋での運用に適した艦艇の建造を急務として提案しており、その一隻目として外洋航海対応型の巡洋艦【ブロイデ・シュトラール】が海軍の新旗艦として進水し、この夏に処女航海を終えたばかりである。
※二重王国の風土設定・特産品情報などは魔人形教室@Janosmariaさまの設定を大幅にお借りしております、ありがとうございます。
~ステラと、とある大陸東部出身の土いじり大好き男子生徒との会話より~
ええ、二重王国は大陸南西の
カージナル大公国から海峡を挟んでさらに南の島を中心とする海洋国家ね。
どしたのよ、突然?
海の向こうの国に興味があるなんて、野菜作り一辺倒のアンタにしては珍しい質問ね……まぁ興味の幅が広がるのはいいことだけどネ♪
元は東西に別れた二つの王国があったんだけど、現在は両国の君主が同一人物である為にその名を冠されているけど、正式名は【キシュフォルド東西二重王国】
十数年前に東部王国で王家直系が絶えた事によって起こったお家騒動を見かねた西部王が、実子と東部王家傍流の娘との間に生まれた赤ん坊にいずれ東部王国を継がせるって条件で暫定的に二国を預かる連合王として君臨しているわ。
東部人は元は大陸から、西部人は東に位置する南洋諸島がルーツだそうよ。
本島以外に周辺の島々も領有して南洋航路の中継地として西部は貿易と砂糖や茶葉の栽培で栄え、東部は油脂の原料となる果実栽培の他、宝石を産出する鉱山をもって栄えているわ。
外海に面した南岸部では海神信仰が盛んだけど、比較的内陸部では天と地、昼と夜、時と移ろいの境目を司る天地神の敬虔な信者の多い国として、その動向は聖臨山の本山神殿にも一目置かれているらしいわね。
帝国や大公国とは国交があるけれど、帝国南岸から竜腹内海を挟んだ南洋諸島群の植民地化を推し進めていることや、海賊との繋がりなどについての噂が絶えないことから帝国内海軍はピリピリしてて、最近行われた海軍の再編成と増強は二重王国への牽制じゃないかって話よ。
関連人物等
■ビクトリアノ=サラス
身長:204セミルテ 年齢:47歳 性別:male
通称ビクトール。大陸南西に浮かぶ島国、西部キシュフォルド王にして東部キシュフォルド王国後見人を兼ね、暫定的に国号をキシュフォルド東西二重王国とした国家元首としてキシュフォルドⅠ世を名乗る。
若年時は王宮を飛び出し、私財で購入した軍船で私掠行為を働いて纏め上げた船団を、そうとは知らぬ父王から国家指名手配を受けた異色の経歴を持つが、一転二十代半ばで突然王宮へと戻り、父王についてこれをよく補佐する。
父王が身罷ると、即座に王位を継ぎ、強力な牽引力で国内を掌握するに留まらず、周辺諸国の他、遠く
極東王朝や東部列強とも誼を通じる一方で南洋諸島群への勢力拡大を図る。
新神信仰の中心地である聖臨山各大神殿への財施を積極的に行うなど、あらゆる方面との交わりに余念が無い。
【南海の赤熊(しゃぐま)】の異名を持つが、その豪快な外見からはおよそ似つかわしくないほど政の駆け引きに長け、手練手管に富むことから【海狸】などとも揶揄される。
40を越えてから授かった娘のパトリシアを溺愛しており、『パッツィを目の中に入れれば恐らく尋常でなく痛いだろうが、全く痛くないと言い張る自信がある』というよく分らない言を多用している。
東部王国の国王一家事故死に端を発する泥沼の東部王家継承争いに、東部王家外戚の立場から介入し、幾つかの東部重臣と東部国政に対して発言権を持った神殿の承認を得て先々代王の姪の孫娘である地方貴族子女エステルを後継者に推す。
当時エステルは9歳であったが、後継者争いによって上位の継承権保有者を失う事態に陥っていた東部はこれを承認。
さらにスタシア神殿大司教は、縁戚通しでありながら互いに擁立した継承者同士で争った挙句、心労によってことごとく継承者を早逝させるに至った東部重臣たちを非難し、エステルと西部王ビクトリアノ嫡子であるヴァレリアノの婚約と、エステルが女王として戴冠するに相応しい18歳となるまでの後見を西部王が行う旨を提言。
これに対してビクトリアノは後見職については肯くものの、エステルとヴァレリアノの婚約については固辞してみせるが、再三の神殿からの要請に折れてこれを受諾。
但し、婚約の条件としてヴァレリアノから西部王位継承権と西部における政治的影響力の一切を廃し、東部王国貴族とした上で、女王の婚約者とすることを提示。
これを東部王国王家への配慮と受け取った神殿は王家代理として快諾。
西部王家並びに貴族としての一切の特権を失ったヴァレリアノは、新たに東部王国で爵位と封地を得てエステルの婚約者兼、補佐・保護役として東部入りを果たし、現在は二重王国暫定王位にあるビクトリアノに対する東部王国の窓口などを務めている。
東部王家継承を巡るこの一連の経緯については不透明な部分も多く、西部王ビクトリアノによる陰謀説などもまことしやかに囁かれている。
陰謀説を唱える者は、その証左として二重王国暫定王位に就いた後のビクトリアノが東部従来の治世方針に対して事あるごとに改正要求を発布するようになったことなどを挙げるが、神殿、西部王ともどもこれを否定している。
前述のビクトリアノの要求については、西部王太子の身から一転して東部王国の臣となったヴァレリアノによって、悉く後見職職分を越えた要求として撥ね付けられており、サラス親子の仲は上手くいっていないようだなどと噂されている。……あくまで表向きは。
西部王位継承権は現在ビクトリアノの一人娘パトリシアに委譲されており、いずれ東部女王となったエステルとヴァレリアノとの間に第二王子が生まれた場合はこれをパトリシアの婿とすることとしている。
■ヴァレリアノ=メレンデス
身長:187セミルテ 年齢:19歳 性別:male
ビクトリアノ=サラスの長子、元西部キシュフォルド王太子。
東部キシュフォルド王国の王位継承者であるエステル=ウルバーノの婚約者でもあり、彼女の後見人となったサラス王に代わって、その隣で輔弼を行う役目とともに、東部入りした。
但し、エステル次期女王との婚約に際しては西部王国における第一王位継承権、役職の全てを剥奪し、東部王国の一臣下とすることを実父であるビクトリアノが取り決めたことにより、当時断絶していた東部王国の名門メレンデス家の名を継ぐことで東部王国伯爵位を得ており、現在の役職は東部王国執政補。
ビクトリアノが実子をもって東部王国に臣籍降下を決断したことを東部王家への誠意と受け取った東部スタシア神殿によって、王家直轄地から封地を割くことを固辞したヴァレリアノへ、神殿の管理する神殿領を譲渡されたが、伯爵位とは凡そ釣り合わぬ、わずかな領地を持つに留まる。
東部王国の臣となって以降は、西部とは思想的に決別しており、近年東部に諮ることなく『キシュフォルド東西二重王国の王』として聖臨山に対して公式書類を発行し、国際的に認めさせてしまって以降、東部に対して威圧的な態度で臨む実父であるビクトリアノに対して、あくまでビクトリアノは東部王家外戚としてエステル次期女王の後見人であり、事実上の東部王を名乗るは専横である旨の抗議文をビクトリア並びに聖臨山に対して発する他、ビクトリアノの東部への内政干渉と取れる提案等にはことごとく反発するなどしており、東部王家家臣としての立場を守っており、サラス親子の不仲説が噂されている。
しかしこれら一連のやりとりは全て西部王ビクトリアノが実子ヴァレリアノに東部王国の人心掌握を図らせる為に用意された筋書きに沿って進められている。西部王ビクトリアノはヴァレリアノ自身に東西いずれの王位をも与えないことで、ヴァレリアノとエステルとの間に生まれた子によって将来的に東西を単一国家とする目論見があり、ヴァレリアノは全て承知の上で、サラス一族の悲願を継いでいるに過ぎない。
この謀が功を奏し、中流貴族の子女として育ったエステルを始め、東部家臣団の信頼を得るようになり、当初ヴァレリアノの東部入りを歓迎しなかった民からも、東部宰相などと呼ばれ人気を博しはじめている。
このように実父ビクトリアノとの不仲を演じながら、月に一度召集される西部王都での東西会議の合間には演技から開放された父の良き理解者然としてひそかに語らうヴァレリアノだが、本心では父に対して己の野心の為、ヴァレリアノが王となる権利を奪い、道具然として扱われたことに対する鬱屈した思いを隠しており、慧眼で知られる父王をも欺いている。
それゆえにビクトリアノが可愛がっている年の離れた異母妹であるパトリシアに対しても複雑な感情を抱く。
熊と称される父に似ず、至って涼しげな貴公子然とした外見をしており、早世した母に似る。
父譲りの頭脳の冴えを持つが、それを生来の見た目の柔らかさによって包み隠しており、警戒を抱かせない。
婚約者であるエステルに対してはあくまで臣下として接することに徹しているが、己と同じく父王に利用された存在であることを不憫と思っており、彼女に向ける笑顔は本心からのものであることに自身では気付いていない。
最終更新:2013年07月11日 01:15