極東シュティエン王朝

東部列強連盟よりさらに東国、竜の尾中部を版図に収める帝政国家。

竜尾大半島はもともと大小さまざまな民族が入り乱れて起居しており、竜尾半島中東部に存在した曙光の女神を奉る旧シュグァン(曙光)王朝の国家元首である姫巫女アマテラスを調停者として盟主に戴くことで、目立った戦乱を経ず比較的平和裏に民族間の融和を図りつつ、穏やかに文化形成を行ってきた土地柄であったが、半島北部に興った遊牧民族を祖とするフーイェン族(琥眼族:瞳の色が金色であった為にそう称される)が大陸歴1270年代に南侵を開始。調停者ではあったものの、大軍を擁すわけでも軍事的に他部族と連合を行っていたわけでもなかったシュグァン王朝は首府である神都を占領され滅亡。神都跡に本拠を構えた琥眼族はリェリィ(烈日)朝を名乗って国家を樹立。

国号をシュティエン(旭日天)とし、竜尾大半島の制圧を開始。
大陸歴1300年代中には半島中部~最南端の鬼蓋楯状地を除く南部一帯を支配下に置き、1300年代末より北伐を開始するもこれに脅威を覚えた大陸中央東部の軍事連盟である東部列強連盟の頑強な抵抗に遭う。
統一間もない北伐は国力の疲弊を招き、内乱も併発したことから時の帝は北伐を一時断念。国力充実を図る為、大陸中央で同じく東部列強連盟と対立関係にあったウィスタリア帝国と同盟を締結し、連盟の南侵への歯止めとした。
以来、交誼を結んでいる。

  • 極東における魔術

長らく大陸中央部と隔絶され独自の文化を築いた為、魔術体系はセルベア海(極東名:裂海)を境に東西で大きくその体系を異にする。
西に於いて有魔力人の人工比率が右肩上がりに伸長したのに対して、東(極東)ではその増加率は極めて低い。

大陸魔道協会の地質調査によれば竜尾半島に走る地脈の本数、浮遊魔力の放出量ともに西に対して遥かに低いことが判明している。
前述の有魔力人口の推移実態はこの環境によるところが大きいのではないかと見られている。(内練魔力の無意識下開発と発露には浮遊魔力の吸引が影響すると言われている)

制御を要する量の魔力を有した絶対人数の低い極東においては、魔術が一般的技術・学術として社会に浸透することに成功した西側とは異なり、魔術=特異なものという認識が現在でも持たれており、各魔術体系の習得と啓蒙・継承は各流派門閥による統括がなされ、徒弟制度によって伝えられる。
西側に於いても、有魔力人の人口が少なかった時代には同様に特異な存在という認識はあったが、西側においてそれが迫害という形で示されたのに対して、極東では尊敬の対象であった点も異なるといえる。

これは退魔僧・符術士・封妖師などといった職業的魔術士は本来は鬼蓋楯状地(妖鬼の大釜)に住まう妖鬼や妖獣から人を守る為に生まれたものであるという背景や、旧シュグァン王朝の最高主権者がアマテラスと呼ばれる曙光の女神の姫巫女として、強大な魔力(神通力)を有した存在であったという歴史的背景がその根幹に在るものと思われる。

また、内錬魔力の制御法として術式構成を介して制御を行う"魔術"という手法を初期より広く主流とした西と異なり、門閥制によって門戸が限られていたことは、内錬魔力に変換を与えず、純粋な理力として出力・纏用する"錬気"・"丹力"・"発気"などの独自の体技・武技が生まれる土壌ともなった。(これらは西における物体操作系魔術・念動と基本骨子を同じくするが、その用法は主に肉体表層にのみ出力を行う、または短距離の放出に留まる)

極東における有魔力人は大別して、流派・門閥に属して技を修めた術士と、武術としてその体内で練成された魔力を出力する法を修めた者、あるいはその両方を修める者というように分けることができる。


  • 妖鬼

極東に伝わる神話に悪鬼・幽鬼として登場する霊念体。旧き神々が肉体と魂とを分業で創造した際に、一つ器を作り忘れた為に肉体を持てなかった創造物とされている。

地脈から放出される気を喰って存在を保つとされるが、特に強い力を持った存在は人の器に乗り移ってこれを支配し、人界に現れては人体に宿る"気"を愉しみと肉体を持つ生命への憎しみゆえに喰らうといわれる。

神話では竜尾大半島の南部に存在する鬼蓋楯状地に、曙光の女神によって封じられたとされているが、現在も人界に現れては人に仇なす存在。

竜尾半島に存在する地脈の"気"が大陸中央に比べて弱いのは、彼らを封じながらも哀れに思った女神が鬼蓋楯状地に気の大風穴を空け、彼らの糧とするようはからったからだともいわれる。

混同されやすいが、大陸中央に暮らす妖精族で大地の精霊の眷属といわれる有角族、いわゆる鬼・鬼人族(オーガ)とは異なる。
最終更新:2013年04月18日 21:16