ウィザエラ
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大陸中西部に広がる自然豊かな大地。
そこには人による国家は存在せず、人とは異なる生態系を有する獣人や有翼人、爬虫人などが暮らす大地である。
北に迷いの森、東にウィスタリア帝国、南にカージナル大公国及び白霧の森と接し、西部には幾つかの人の国家と境を接する。
~魔道学院にて とある会話より~
獣を祖霊として祀る獣人や有翼人たちは田舎の集落ならともかく、石造りの街中で人に混ざって暮らすのはとても稀なんだけど、交易の為に一定の季節だけ人の街に居留する者たちがいて、彼らの仮住まいは旅する獣人や有翼人の宿がわりに使われることが多いみたいね。
彼らの扱う工芸品や人の足では入手が困難な場所から採取される物品は人にとっては珍しく、彼らにとっては貴重な外貨獲得源だから、交易が盛んな都市ではその他の場所に比べると、彼らとも知り合いになり易いと言えるわね。
じゃあ他の獣人や有翼人はどこに住んでるかって?
まぁ大陸のあちらこちらの土地土地に集落は存在してはいるんだけど、人が住む地域が広がるにつれ、祖先から親しんだ土地を離れてでも人と距離を置こうとした者たちが多くてね。 現在は帝国の最西端、南に大公国、北は迷いの森に挟まれた地域一帯に彼らの里の多くが集まっているわ。
面積としても広大だし、森や草原、山岳には獣人が集落を作り、河や湖近くにはリザードマンや水鳥の有翼人の集落、峡谷の崖肌には多くの有翼人たちの集落が存在するそうよ。
その豊かさゆえにずっと昔は度々人の国家に脅かされた歴史を持っているわね。
ううん、違うよ。そこは帝国領ではないわ。
確かに帝国では便宜的に自治区と呼んでいるし、迷いの森と自治区の間に西部方面軍を駐留させたり森林騎士団の任務には自治区への人による干渉を防ぐことも含まれていて、かつては侵攻した北西部の国家を退けたこともあるけれど、それはあくまで自治区の要請を受けた助勢という形になっているわ。
だから帝国は彼らから租税を取ることはないし、土地を侵すこともしない。
帝国法では各部族を一国家として遇してあたるように記されているしね。
他国の為に軍や騎士団を運営する費用を国民の税から賄ってるのかって?
あはは、ダイジョブよ。 いつから始まったのかは知らないけれど、自治区に集落を構える人々は帝国と交易を行う際、他国に卸すよりも何割か安く商品を卸すんだそうよ。 帝国法では、それらの品物には一定の税が掛けられて国内で捌かれるんだけど、その税は主に西部の治安維持に宛てられているそうよ。
誰が取り決めたのかも分からないし、そもそも何にも記されていないから彼らと帝国の間で取り決められた事なのかさえ不明だけれど、そうやって西部方面軍の台所は賄われているってあるヤツが言っていたわ。
勿論、すべてを賄える訳じゃないでしょうけど、崖壁に生える貴重な薬草や、彼らだけが森から見つけられる香茸なんかをこの先も入手する為に必要な出費と思えばいいのじゃないかしら。
そうだ、最後に自治区に住む彼らが自らが生きるあの場所をなんて呼ぶか教えてあげる。
彼らは自分たちが生まれ、自然へと還るあの広大で険しくも豊かな大地を、風と草の楽園という意味を込めて″ウィザエラ″と呼ぶそうよ♪
かつて人を避けるように里を移した彼らが、一体どうして再び人に心を開き、信頼の証といってもいい、どこにも記されることのない取り決めを子供たちへと伝えるようになったのか、語られない歴史があるのかもしれないわね。
え?さぁ真相はあたしも知らないけれど、でも……そんな風に想像した方が素敵だと思わない?
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砂海地帯
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大陸北東部、東部列強連盟最北端のアインジード聖教国から東部竜骨山脈を越えた先から北海に至るまで細長い土地に広がる乾燥地帯と広大な砂漠を指す。
ウィスタリア帝国カロト・ルフィス領、首長国と並ぶ大陸三大砂漠の一つにして、最大の面積を持つ。 また、他の砂漠と異なった特徴として非常に粒子の細かい砂、つまり流砂となった地域が非常に広い範囲に及ぶ。
暴れなければ沈みきることは無いが、踏み出すごとに足を取られ抜くことのできない砂は、古くは死の大地として、地元に生まれ危険な場所とそうでない場所を見分ける砂読みの能力を持った人々以外にとっては危険極まりない土地であり、侵入するものもなかった。
しかし、振動を与えると流度を増す特性が解明されて以降、消化活動時に微細振動を発するモルモラ貝という甲殻虫を利用した砂海帆船が開発され、砂海航路が開かれたことにより、現在は東部列強を通過しないでウィスタリア帝国と極東王朝を結ぶ北回り商路として賑わっている。
砂海帆船航路の開拓は東部列強連盟にとって、帝国と極東王朝の連携を高めるばかりかキャラバン通過による中間貿易利益の減少を招いた為、過去その出入り口となる地域では帝国×東部列強連盟×極東王朝の間で非常に熾烈な領土争いが繰り広げられてきた土地でもある。
砂海に人は住んでないのかって?
勿論住んでいるわよ、砂の海での"島"にあたる砂質の異なる地域や、オアシスが点在するんだけれど、そこを集落として暮らしているわ。砂海航路船にとっては寄航して水や物資を補給できる貴重な港として機能する集落も幾つかあるわね。
それに砂海船の舷側や船底に張り付けられるモルモラ貝は生き物だからね。
数年に一度取り替え無きゃいけないんだけれど、モルモラ貝を繁殖して砂海帆船公社や、船大工に卸すことを生業としている民もいるわ。
彼らは遥か古、砂海がまだ緑と水の豊かな大地だったとされる時代に存在した王国の末裔とも言われているわね。
今は世界から隠れてしまった水と潤いの女神を祀っていたそうだけれど、女神の怒りに触れ、その呪いによって大地は人の住めない砂の海へと変わってしまったって言い伝えがあるわ。
流砂の海のずっとずっと底には大きな空洞があって、水の女神の神殿とそれを囲む忘れられた都市が今も当時のままの姿で数々の財宝とともに沈んでいるんだって。浪漫よね♪ |
迷いの森
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竜の遺骸に例えられる大陸クレディグナにあってその喉元にあたる中西部に広がった原生林は『迷いの森』と呼ばれる。
その名の通り、この森は侵入者を拒み、足を踏み入れたものの方向感覚を狂わせ、けっしてその中央部へとたどり着くことができないとされる。
古来より『幻獣の森』とも呼ばれ、広大な土地のどこかに幻獣の故郷である幻獣界への入り口があるとも、彼らの隠れ里が存在するともいわれ、過去幾多の冒険者が挑んだが、前述の不可思議な守りの力によってある者は方向感覚を失い、何度試みても森の外へと導かれ、またある者は二度と帰らず、未だその最奥部に関しては明らかになっていない。
大陸中央部最大の国家であるウィスタリア帝国とその境を接し、南部に広がる肥沃な土地には獣化人(獣人族とも)や有翼人などが暮らしている。
南部の獣化人・有翼人にとって原始の姿のまま残る迷いの森は守るべきものであり、私物化しようとすることは当然ないが、不思議なことにウィスタリア帝国もまた開闢以来ただの一度も国として森の接収を試みたことも、森を越えた位置に版図を広げようとしたこともない。
逆に帝国は迷いの森における静謐の維持を目指している節が見受けられ、それを示す証拠として迷いの森との境に配備される森林騎士団ブラットリートの主任務は境界警備とされながら、帝国側境界から森へ侵入しようとする者の取り締まりや、森林外周部の生態保護などが含まれており、帝国民が迷いの森を侵すことを取り締まることを目的としている。
また、騎士団といいながらもその主要構成員は狩人や野伏に近く、装備も主に森林での活動に適したものが採用されている他、団には動植物医術士や学位号を持った者なども構成員あるいはアドバイザーとして多数招聘されており、森林保護官としての一面も備えているといって差し支えないと思われる。
迷いの森に関わる伝承のうち著名なものとして、ドルイド一族の名が知られている。
彼らは緑の守護者とも呼ばれ、迷いの森の守護者・管理者として、浅はかにも迷い込んできた者を森の外へと送り届けたり、森を人の国家が私有化しようとすることに抵抗する存在とされる
見た目こそ人と大差がないが、実のところ彼らは遥か古に人と幻獣が交わって生まれた種族であり、身体のいずこかににその名残を残すとされる。幻獣またはその王たる竜を信仰する。
幻獣と使役契約を結ぶことなくその力を借りることができる。また精霊とも親和性が高いとされ、彼らが操る精霊魔法は人のそれよりも制限が低いとされる。
上記は一般的に語られる伝説上のドルイド族についての特徴であるが、大陸暦1700年代の冒険家の手記には、ドルイド族の末裔を称し、迷いの森北部外周に集落を構える少数部族が存在したという記録が残されている。
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凍原地帯と小国家郡
海上を漂泊する民
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南洋諸島群の南近海を中心に家船を連結した船団を拠点として生活を行う民が存在する。
複数の部族が存在するが国家を形成せず、またいずれの国家にも属さない。
アルタと呼ばれる大型の海カワウソを半洋上飼育しており、アルタとその餌ともなる魚の群れと共に移動する。
アルタは食用ではなく水温の異なる海域を移動する際に生え変わる体毛と分泌される油の採取用であり、それらを加工して衣類や生活に用いる。
主要なたん白源は魚介類であり、狩猟採取の他にアルタの餌としても必要となる為、養殖技術をも有している。
アルタの群れの移動を導く為にクリプという小型のシャチに似た海生哺乳類をも飼いならし、これを乗用したり、アルタの群れに対して牧羊犬のように用いたりしており、その生活と密接に結びつくことから、彼らは自らをクリプの友、クリプの民という意味を込めてクリプティアンと呼ぶ。
生活の基盤は洋上であるが、時折南海に点在する無人島などに上陸しては狩猟・採取や家船の材料となる木材の採取するなど陸上活動も行っている。
陸上に暮らす人々に比して格段に高い肺活量を有しており、概ね8~10ミニム(約8~10分)の潜水しての活動が可能で、長じたものならば30ミニム近く息継ぎせずに潜水活動を行える。
彼らに伝わる口伝承によれば、その祖はこの世界の果ての海を覆う岩礁と霧の海の向こうに広がる陸地のない世界からやってきた、水の精霊の眷属であるとされる。
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世界の果て霧海
鬼人族の地底都市
妖鬼の大釜(鬼崖楯状地)
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大陸最西端である竜尾大半島、その南端に存在する巨大な楯状地(テーブルマウンテン)によって人の住まう土地から隔絶された場所。
伝説によれば人に仇なす霊念体で大地の気(浮遊魔力)を喰らう妖鬼の棲み処。本来妖鬼は浮遊魔力や同属の取り込みなどを行うことでその存在を保つとされるが、人に憑依を行い器を奪ったり、人体に宿る魂の力=生命力は魔力と似通うことから人を襲ってこれを喰らうことから、妖鬼と人界とを隔てる為、遥か古代に曙光の女神が大地を隆起させたといわれる。
この為、雲へと届くほど伸び上がり外界と隔絶するように囲う巨大な崖を"鬼の蓋"(鬼崖楯状地)、妖鬼が封じられたこの土地を"妖鬼の大釜"と呼ぶようになったという。
その内部がどのようになっているのかは全くの不明であるが、言い伝えに寄れば妖鬼の内でも強大な力を有する妖貴鬼が支配する社会が存在するとされ、岩壁に覆われた内部に都が存在するとも、地脈に開いた気の吹き溜まり近くに岩をくり抜いた集落が存在するともいわれる。
また、その内側は妖鬼を封じながらもそれらを哀れに思った曙光の女神によって地脈から気を大量に放出する風穴が幾つも開けられているといわれ、大陸中央部に比べて浮遊魔力量の少ない竜尾大半島中部~北部に比べて大量かつ濃密な魔力が満ちているといわれる。
このことから魔晶石と同様の鉱物資源が豊富に存在するのではないかと目されているが、その採掘行為等は極東王朝ミカドの命によってこれを固く禁じられてきた為、実態は今もって謎に包まれている。
鬼崖楯状地上辺はその出入りを閉ざすように常に雷雲に覆われているが、いまも少なからず妖鬼はどのようにしてか人界へと現れては地脈の気を乱したり、霊(大陸中央部では死霊と分類される)を使役して人へ仇なす他、人の魂を喰らってその器を奪うとされる。
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