【教導師・職員(大陸歴1941年)】
■ ステラ=リリア
身長:128セミルテ 年齢:??(自称23歳)性別:female?
初等部学生と見紛う容姿だが、精神操作魔術、物体操作魔術を担当する本人曰く臨時雇いの客員教導師。
しかしながら現学院長や総寮母を名前で呼び、彼らの若かりし日の武勇伝にも詳しい事情通であり『かつては霊薬学なども担当していた』『昔はそれはそれは見事な翼を持っていた』などという本人の言からも、その種族、年齢、履歴、在籍期間は全くの謎に包まれている。
見た目そのままの年齢なのではないかという噂もあるほど破天荒な言動が目立つものの、風の塔の管理責任者(常駐寮母は別途存在する)を任されるなど、教導師たちからの信頼は厚い。
正規の講義以外の時間を用いて、勉強会と称する私的講義を幾つか開催しており、題目こそ怪しげであるが参加した生徒の大半は予想外に有意義だったと感想を漏らす。
甘いもの、特にプリンに対して異常な執着を持っており、夜間にプリンの口になってしまうと食料保管庫破りも辞さない、行動力の人。
強烈な個性の持ち主だが、学院を訪れた卒業生が彼女に会いに来ることもなければ、在校生とともに彼女の思い出を語らうことも一切ないのだが、誰もそれを不可思議に思うことはない...。
『才能に左右されず、アンタがどう生きたいかを考え、やりたいと思えることを見つけなさい、ここはそのためだけに造られた場所なんだから』
大陸歴1943年 魔道協会本部による強制査察によって異端認定を下され賢者の塔へと連行の後、投獄。
大陸歴1944年 過激派魔導師による魔道協会占拠事件(ハイラル事件)に端を発する乱が勃発。その終息ともいえる、賢者の塔崩落時にも獄中にあったとされ、捜索がなされるも遺体は発見されず消息は不明。獄中死として処理される。同年、一時的に休校となっていた
魔道学院はその運営を再開するにあたり、日月を模していた校章を新たに星を付けくわえた意匠のものへと改めている。
■ ファムネリア=ノエイン
身長:166セミルテ 年齢:24歳 性別:female
陽の当たり方でプラム色にも紫にも見える髪と、蒼紫色の瞳、整った顔立ちだが険しい目つきと、ずけずけとした物言いが災いして、有志生徒による教導師ランキングでは【残念美人】との評を受ける。
結界術及び大規模結界/戦略級攻城魔術の担当教導師にして、若年ながら主任教導師の職責を負う。
炎の塔の管理責任者も兼ね、愛称はファム。
帝国元素魔術の主流派を伝える宗家にして、魔道協会創設以来理事職に何度となくその名を連ねる名門ノエイン家の息女である。
学生時代に既に宮廷魔導師団からの招聘を受けるほどの実力を有していたが、突如としてそれを断り、卒業と同時に教導師に就任。
魔道学院の教導師はいずれも一流の魔術士でもある為、名誉には違いないが、宮廷への仕官を蹴った形になってしまったことで、現職の宮廷魔導師長でもあった父は激怒し、実家からは勘当された形となっている。
家名を気にしてか、本人はあまり乗り気ではないが時々元素魔術の講師も兼任する。
実家との折り合いが悪く、帝都に顔を出すと何かと煩わしいというのが本人の言だが、彼女はなぜか休暇中も学院領を離れず帰省はともかく遠出することもなく、一部の生徒や職員からはその婚期について危惧する声が密かに挙がっている。
ステラ教導師を普段はチビッ子と呼ぶことが多いが、稀に彼女に対して口にする『先生』という響きには一同僚に対する以上の親愛の情が含まれているようにも感じられるのだが……。
『人の罪は人が世界に申し開きをします。それは個々人が背負うべきもので、あなたが背負うべきものだなんて思い込みは悲しくて寂しくて、ほんの少し傲慢だわ』
■ レイシャミリ・アム・クルー・ファララ
身長:157セミルテ 年齢:23歳 性別:female
淡いピンクの巻き毛に朱色の瞳、褐色肌と外見的にも特徴のある南洋諸島の出身(父親は首長国ファララ族の出身)だが、幼少期に両親とともに帝国南方領カロト・ルフィスに移り住んだ為、れっきとした帝国市民。通称はミリアム。
器物への賦与魔術定着の天才であり、治癒魔術にも通じる。
17歳で導師過程を修め、帝国と商工連邦の共同出資による特区・工房都市に名高い魔導器工房【ゲオルギウス】のマイスターとなったものの、僅か3年で『もっと可愛いらしいものに賦与したいです』と謎の言葉を残して工房を辞し、母校である
魔道学院に戻って研究の傍ら、教導師として過ごしている。
独特ののんびりした言動と幼さの残る顔立ちに反して、南方系の特色を色濃く示すスタイルの良さから男女問わず生徒から絶大な人気を博し、有志生徒による教導師ランキングでは3年連続【嫁にしたい教導師】一位。
しかしながら『寝てもらわなきゃいけない病人が元気すぎて困るなら、足を折っちゃいましょうか』『お酒も量を守れば良薬、毒も量を心得れば薬ですよ~』など不穏当な発言も多く、治癒術教室の生徒からはある種の畏怖にも似た感情で敬われている。
無機物に関わらず、有機物への薬効賦与などにも長ける事から霊薬学も担当し、医務室(通称:保健室)、水の塔の管理責任者を兼ねる。
『あらセンセ、あの溶解ゲルはゴミ処理用に作ったものですから、人に使うんなら服だけ溶けるように改造しなきゃダメですよ~』
■ ルゥ=ツァンフェイ (盧 蒼緋)
身長:178セミルテ 年齢:29歳 性別:male
帝国と同盟関係にある
極東王朝の出身、両国友好の証の一つとして東西魔術体系を伝えるために設けられた客員教導師枠に派遣されてきた一人。
学院と極東で交換派遣される者の任期は2年で、同時に赴任した同僚は既に交代が行われているが、彼のみ任期が極東側の要請により継続され、現在2期目。
極東の武人の家系に生まれ、若くして家を相続。五遁術及び、水晶を用いた封魔術を学んだ後、符術・操影術の門下にも所属し修めている。
ミカドに仕える侍従武官(近衛兵)として仕官した経歴を持つ為、武術・体術にも精通するが、本人はあまり宮仕え時代の話をしたがらない。
現在は五遁系術式を用いることは無く、少数教室ながら符呪魔術、操影術の講義を受け持ち、杖術、体術なども担当している。
【歩く無愛想】などと呼ばれているが、故郷に年の離れた妹が三人おり、両親を早くに亡くしており、彼が親代わりを務めたことから子供のあやし方が上手いという隠れた特技の持ち主。
妹の名は、ユンファ(雲華)13歳・ジェイン(結音)10歳・ランレイ(蘭玲)8歳。
赴任初日、昼休みの鐘と同時に二階の窓から飛び降りて購買へと疾走するステラ教導師を学生と見間違い、首根っこを押さえつけ、衆目の中で尻を叩いて危険な行為を叱りつけたという伝説の持ち主。
極東では他人の子であろうと、子供の躾は大人全ての責任という意識と、叱るときに尻を剥いてぶつというのは一般的な文化として受け容れられているのだが、何分文化の異なる大陸中央、かつ相手が経歴上は一応成人女性である教導師であった為、責任を取る等の謝罪発言から、一部生徒たちに幼女趣味と断じられてしまった不遇の人。
『俺はこんな一方的なやり方は好かん。……が、これ位はしてやりたい程度にアレは生徒に好かれているようだ』
■ パール・リヒター=フェルセフ
身長:194セミルテ 年齢:37歳 性別:male
各種魔術による影響解呪に関するエキスパート。
呪詛の他、死霊魔術に関する祓い、死霊魔術応用の触媒魔術等の各種分野の解除に伴う魔術を担当している。
通称はリヒター。
解除術士としても一流であるが、呪詛に関する研究者として魔術学界ではその名を知られており、専門書を数冊刊行している。
呪詛は魔術の祖と言われるように、魔術の体系化以前から各地の風習・伝承に残る呪詛について調査を続けており、いつか一冊の本として纏めることを目標としている。
また、教師としても非常に熱のこもった講義を行うことでも有名であり、時折外部からの依頼で公開講義なども開催している。
外部的な来歴だけを見ると変わり者揃いの
魔道学院において異例ともいえる模範的教導師であるが、彼にはあまり外部には知られていない決定的な欠点が存在する……。
実は極度の人見知りであり、学生時代とある教導師に克服の為だと無理やり演説部に入部させられ追い詰められた結果、壇上に上がると人格が豹変し、前述のように雄弁を振るうようになったに過ぎず、根本的に今もって人見知りは解消されていない。
(ここ最近はとりあえず壇上と呼べるような一段高いところにいればポジティブ人格を維持できるまでになったらしく、公開講義等でも舞台袖の階段を降りるまでは問題なく、その事実はあまり外部に知られていない)
ひとたび壇上から降りるや、大急ぎで上げていた前髪で視界を覆い、折角の長身を痛々しいほど折り曲げた猫背で一目散に執務室に篭るや、文字通り寝食を忘れて研究・執筆活動に没頭している。
生命活動の限界に達して部屋から出てきた彼と運悪く深夜や早朝に出くわした女生徒の中には、髪を振り乱しふらふらと歩く姿を幽鬼の類と見間違って失神、医務室に運び込まれた者もいるほど。
また、普段は蚊の鳴くような声でしか話せず、壇上にない彼と意思疎通することができるのはステラ教導師や、本とも会話すると有名な土の塔2階監督生など、ごくごく一部の相手に限られ、研究上必須となるフィールドワーク時には、意思疎通可能な導師課程在籍の助手ポロッカくんを介するか、筆談を用いている。
『きょ……授……ょう……で……等部の……ぃ徒が……質……もん、いっぱい……てくれ……た』
『へぇ、今日は授業中に沢山質問されて楽しかったんだ?あはは、リヒターがタジタジになるくらいに??相手は授業体験の初等部生だったんでしょ、すごいじゃない。もうある程度術を身に着けて飛び級するような子なのかしら……』
■ ロイス・ジェイ=アビニオン
身長:182セミルテ 年齢:25歳 性別:male
降霊術・受動/能動憑依術・霊体封縛術・探知/走査系術式を担当する教導師。
両眼に強度の"霊視"の魔眼を有しており、霊的存在をあたかも実体があるかのように視えてしまう。
美しき人に賛辞を贈るのは礼儀であるとのモットーを持ち、よく生徒背後の守護霊や、一見何もない壁に向かって愛を囁いている姿が見かけられる。
帝国譜代の名家であるアビニオン家の三男坊で、ファムネリアとは幼馴染みでもある。
端正な顔立ちと、気品ある身ごなしで春から秋ごろにかけては新入女生徒からの人気が高いが、前述の魔眼の影響からか一定の時期を越えると例年、人気が急激に下降する。
実家の家族からは魔眼の能力を気味悪がられているが、本人は気にした様子もない。
『初恋の人にもう一度逢いたくてずっと探しているんだけれどね。困ったことに、彼女が生きた人だったのか、それとも......もうこの世にはいない人だったのかが分からないんだよね。...それを知りたくなくて、ずっと触れずにいたら...逢えなくなっちゃってさ』
■ メルセデス=デアハルト
身長:155セミルテ 年齢:92歳 性別:female
精霊魔法担当の教導師で、
白霧の森出身のエルフ。エルフとしてはまだ若年。
ステラ教導師命名による愛称はメルチェ。
学院赴任前は
白霧の森を治めるエルフ王(樹王)の宮廷に仕える魔導士として採用された経歴をもつ。
地水火風光闇の六属性いずれにも精通する優れた精霊魔法の使い手として嘱望されたが、なぜか一度も宮廷に現れることのないまま、その職を解かれている。
エルフにあるまじき極度の方向音痴であり、特に屋内においては一切の方向感覚を失う。
屋外にあっては風の精霊の助けを借りて事なきを得ているが、屋内移動に要する時間は甚大であることから、彼女の講義が午前中に開講されることはまずないが、昼一番の講義室に辿り着くために彼女の朝は早い。
魔道学院の教導師として18年の実績を持つベテラン教導師であるが、前述の方向音痴特性の為、要職には就いておらず、生来ののんびりした性格も相まってステラ教導師の次に幼い扱いを受けている。
『あらメルチェ、こんな夜中に壁の前で突っ立ってどしたの?』
『風の塔のお風呂に行きたくて...今夜は地図も用意したのですが、地図だとココに扉があるはずなので探しているんですけど...』
『......メルチェ、残念だけどこの地図は実験農場の増築設計図で、まだ着工すらしてないわ。それとアンタが指さしてる場所は、設計図上でも壁よ...』
■ メルトレット=クロム
身長:165セミルテ 年齢:18歳 性別:female
腰痛で入院したパオロ剣術教練師範の代理として招聘された臨時職員。
祖父は"剣聖"として名高いビシャス=クロム。父は帝国直轄領の執政官を勤める。父を凌ぐ剣の才能を開花し祖父の元で育てられた為、剣術の道を究めることよりも政治に邁進する父を快く思っていない。
祖父より、光の霊剣ラディウスを継承したが、未だ剣から主として認められておらず、その力を使いこなせずにいるが、剣士としての腕は帝国近衛騎士にも引けを取らない。
微量ながら本人に魔術素質が見られたことから、ラディウスの真の能力解放には祖父と同じく魔術素養が必要との学院長の薦めにより剣術教練の無い時間帯は自身も一学生として術士課程に籍を置くこととなった。
内錬魔力量自体は、魔術士というには出力の低いものであるが、生来の集中力の高さと身体コントロール、及び魔道器としてのラディウスの補助によって、短時間であれば出力変圧をかけての魔術戦闘が可能な領域に至りつつある。
生真面目な性格な為か、あるいは実父との折り合いの悪さという共通点の為か、ファムネリア教導師とウマが合うようである。
■ パオロ=パーシヴァル
身長:186セミルテ 年齢:68歳 性別:male
魔道学院の剣術教練師範。
元皇室近衛警護隊の騎士であったが、引退後は帝国中央騎士学院にて教鞭を執っていたところを、旧友でもある現魔道学院長の招きに応じて学院領へとやってきた。
剣聖ビシャス=クロムの弟子にして、自身も往時は"影無しの剣"と称された名だたる剣豪。
メルトレットにとっては兄弟子にあたる。
矍鑠とした老人であるが、寄る年波には抗えなかったのか腰を痛めて現在は学院領付属の外郭施療院に入院している。
自身の代理として、父と折り合いが悪く帝国中央での士官を拒み続けているメルトレットを招聘した。
■ カーラ=ピアスン
身長:160セミルテ 年齢:61歳 性別:female
原則として全寮制である学院における生徒・職員の衣食住に関する物品の仕入れから供給・衛生管理等の生活に関する一切と、それに類する事務全般に従事する職員を統括する立場にある当代の総寮母。
水火風土の各寮塔には寮一階に常駐し、寮内の実務を取り仕切る寮母(寮監)が存在することから、差別化のために上記名称で呼ばれるが業務内容的には事務総長であり、役職的には学院長に次ぐ重職。
しかしながらライフラインを統括する総寮母の発言力は絶大であり、学院長といえど蔑ろにすることはできない。
生徒を含む学院関係者の認識は、実質的に最もエライ人というもので一致している。
非常に聡明な女性で、多忙な業務に勤しむ傍ら、生徒たちのみならず教導師・職員からもプライベートな相談を持ち掛けられたり、寮生活に慣れない新入生のメンタルケアを細かに行うなど、文字通り学院の厳しくも優しい母として慕われている。
学院長の良き相談相手でもあり、茶のみ友達。
双子の姉がおり、現職の帝国宮廷女官長を務める。
姉妹共に学院の卒業生、彼女は技師課程を卒後、姉と共に帝都の下級官吏として職を得たものの、結婚を機に退官。
一男を授かるも夫を早くに事故で失くしている。(ピアスン姓は夫ではなく彼女自身の姓である)
夫の遺産には一切手を付けず、突如としてまだ幼い息子の手を引いて学院領を訪れ、一職員の身分で
魔道学院の門を再び叩き、現在に至る。
息子は騎士学院を卒した後、軍部を経て現在は帝国司法機関である施法院の高官となり、亡き父の家名を相続している。
学生時代は人形教室に在籍し、手先の器用さと駆動制御式の構成の緻密さで導師課程を進められた経歴を持つ。
趣味の一環として、食堂に配備されている自律思考型魔人形メイド三姉妹の擬体換装や思考術式のブラッシュアップを長年継続しており、彼女が食堂部責任者となった当初は、自律型としては最初期の作品であり食券販売と一部の給仕補助が自発的にこなせる程度であった三姉妹が、現在はホール業務を全て任されるほどの指先の器用さと、給仕として過不足なく気配りが可能となったのは全て彼女の調整の賜物である。
何かと型破りで、深夜の食料庫侵入常習犯であるステラ教導師にとっては、おしおきを強制執行する唯一にして最大の天敵なのだが、なぜか二人のやり取りは年の離れた姉妹のそれのようでいて、どこか微笑ましい。
『お出掛けになるなら行き先は告げること。無茶をするなとは申しませんが、必ずお帰り下さい。貴女にはその責任があります。……ここは貴女の家なんですから』
【 その他 】
■ ラニウス=ユナイト
身長:174セミルテ 年齢:24歳 性別:male
攻城魔術教室導師課程に季節はずれの推薦編入を果たした青年。黒い髪に象牙色の肌、感情の希薄な瑠璃色の瞳。
常に黒革の手袋を着用しており、誰にも触れず触れさせたがらない。
攻城魔術はその性質上、炎の元素術を応用したものを用いることが多いが、魔道協会本部である賢者の塔に研究室を持つ高位導師からの推薦を得ているにも関わらず、なぜか彼は炎の制御を殊に不得手としており、氷結の術式以外においては術士課程卒相応の魔術行使能力すら欠くと見られる不安定さを示すのだが、担当のファムネリア教導師によれば強力な炎の精霊魔法への天賦を備えているよう感じられるのになぜと、しきりに訝しがられている。
講義や実習がないときには一人で学院の内外壁や門のあたりを散策していたり、郊外の家畜試験牧場で独り土笛を奏でる姿が目撃されている。
■ リリス
身長:約180セミルテ? 年齢:? 性別:?
リリスとは、古代の魔導師たちによって異なる世界から喚び出され、この世に繋ぎとめる処置を施すことによって造りだされた種族である冥魔、その最高傑作にして【夜を歩くもの】と銘された、女王とも祖とも伝えられる伝説上の存在。
風土学者の間では大陸暦400年から1500年頃まで、各地の民間伝承に【夢幻の魔女】【緑の冥魔】【碧焔の死神】等、数々の呼び名で登場する、とある存在に対して、各時代・伝承に記された外見上の特徴が似通うことから、これを同一の個体とみなし、同じく古代魔導王国の伝説に謳われる、冥魔の女王リリスではないかとしている。
古代魔導王国の興亡と、その研究の資料については現存するものがあまりに少なく、なぜ冥魔が造られたのか、その種類や能力などについて判明している事実もあまりに少ないこととも相まって、個体名を知られているものはリリスを含めごく一握りであり、特徴が似ていること以外は民間伝承に現れる前述の存在がリリスであるという証拠はなく、あくまで仮説。
民間伝承を総合すると【夢幻の魔女】は、人類と魔法を憎み、魔術士を狩りその魂を喰らいながら永遠の刻を生きる悪鬼で、冥魔ですら怖れる存在とされているが、大陸暦1100年代以降に記された伝承では、外見上の特徴は似通いながら、その性質が大きく異なること、1400年代末の記録を最後に忽然と消息を絶ってしまったことから実際は大陸暦1000年代に何らかの理由により消滅し、以降の伝承に記されている存在は別の何か、または過去の伝承からの流用ではないかとする説もある。
また同年代に実在した魔法使いの聖人にして、帝国に名高い
魔道学院の開祖として有名なリュミエール卿の伝記にも、リリス退治の逸話が収録されており、これを時代的に符合するとしてリリス消滅説を裏付けるとする声もあるが、リュミエール卿本人によって残された手記に記載された外見上の特徴が、それまでのリリスとあまりに異なる為、これはリリスとは別の存在であるというのが学者達の間では通説となっており、リリスの消息については今も多くの謎に包まれている。(※2)
※1 大陸暦は記録上最初の王を名乗った国家の成立時期を逆算して後に設けられたものである。古代魔導王国の滅亡から大陸暦元年までには、さらに数百年の期間が開いており、現在のところ古代魔道王国滅亡は大陸暦前200~300年頃というのが有力な説である。
※2 本記述は大陸暦1943年現在までに発表された学説を基にしている。
最終更新:2019年08月23日 00:07