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テラカオスバトルロワイアル外伝
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『喰』

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『喰』 ID:0wQ6fcH2


ここに、一軒の無人の民家がある。
家具や装飾品は一通り備え付けられ、広々としたリビングは綺麗に片付いている。
テーブル1に対し椅子4、住人はごく一般的な、しかし温かな家族だろうか?
バトルロワイアルの開催により、今は誰もいないが……
主なき家は、静かにそれの終焉と主の帰りを待ち続け――


「足りぬわぁぁぁぁあああぁぁぁぁッ!まるで足りぬッ!」


――疾風一閃――
次の瞬間には、鬼が全てを破壊していた。
壁を蹴破り、床を踏み抜き、家具を粉砕し、そしてまた壁を蹴り砕く。
他人の家など知ったことか。
そう全身から語っている鬼・範馬勇次郎は我が道を爆進していた。
それすなわち『狩り』
この鬼にとって、バトルロワイアルは大きな意味をもたない。
強き者を喰う。ただそれだけ。
強き者がいないのであれば、主催者を喰い殺して一応は一試合終了。
強き者がいても主催者は喰う。弱者も視界に入ったら喰う。
手当たり次第、全ては獲物。
オレサマオマエラノコラズマルカジリ。

「かあああああぁぁぁぁ!」

もはや普通に移動するだけで、幾つもの建物が崩壊していく。
鬼の一撃に耐え切れぬ家は崩れ瓦礫と化し、耐えても支柱をやられてやはり瓦解。
一直線に続く瓦礫の山は、鬼の移動経路をなによりもわかりやすくあらわしている。
鬼はとにかく北を目指していた。特に理由はない。
強いて言えば、人が集まりそうな場所に行き、集まった連中を残らず狩ろうと思っただけだ。

「んん?」

そして、彼の希望は叶った。
数百軒目の壁を粉砕したそこで、獲物を見つけたのだ。

犬の像――通称ハチ公。
その上に全裸で座る、一人の男を。

自分ほど凄まじい筋肉は持っていないが、引き締まって無駄がない肉体といえる。
全裸で堂々と構えているのは、自分の肉体への絶対の自信というやつだろうか。

その自身を、肉体を、粉微塵にしてやりたい。

「お前……喰うぜ」

鬼が走るのを止め、ゆっくりと獲物へと近づく。


「いいのかい?俺はノンケだって平気で喰っちまう男なんだぜ?」


そして鬼の姿を確認した全裸のいい男――阿部高和も立ち上がる。
彼もまた、鬼鮫の最期を見届けたあとに南下していた。
あの場所にはもう人の気配がなかった。
ならば人が集まる場所だ。そこならいい男も集まるであろうという考えから。

鬼といい男。
この二人はよく似た存在だった。
バトルロワイアルなどは二の次、優先すべきは己の欲望、本能。
求めるものは違えど、己の条件に合う相手を探してこの場所へと辿り着いた。
そして共通思考。










目の前の相手を『喰う』


先に動いたのは鬼。
圧倒的な跳躍力、そこからくり出されるは高空からの踵落とし。
普通の人間がくらえば即死もいいところの一撃は、そのまま犬の像と石床を木っ端微塵にする。
しかし、肝心の対戦相手の姿が見えない。

「……ほぅ!」

上だ。
いい男は空へと跳んでいた。
幾多の男と共にハッテン場で鍛えられた彼の強靭な足腰も、普通ではない。
跳んでいる状態では防御も受身もとりにくいが、いい男はさらに動く。

空中で回転をきめつつ、後ろへ華麗に着地。



その瞬間、鬼の着ていた服がズタズタに刻まれ宙を舞った。
これには、さすがの鬼も一瞬だが動きを止める。


「鬼鮫のを見よう見真似でやっただけだが……案外うまくいくもんじゃないの」
「……おもしろいッ!」

だが動きが止まったのは本当にごく一瞬。
瞬き一つする間もなく、鬼の表情は笑っていた。
並の人間では見ただけで失禁しかねない鬼の笑顔。
その状態のまま、鬼は猛攻をしかける。

一撃一撃が文字通り『必殺』の一撃。
真正面から受けては、どんな優れた戦士もやがては地面に膝をつく。

「おいおい、随分と、荒っぽい、じゃないの!」

いい男も、それをすぐに理解できた。
最初にハチ公像を粉砕したのを見た時からだ。
この鬼の一撃をくらえば、自分などひとたまりもないだろう。
目の前の男が言う『喰う』意味が、自分の『喰う』とは違うのもわかる。
一瞬でも気を抜けば、すぐさま『喰い殺される』
肛からではなく、全身から鮮血を撒き散らして、だ。


しかし、だからこそ。
いい男は燃えていた。


この鬼を、自分が『喰』ったら、どんな快感が得られるのだろうかと。


「ヌウゥゥゥゥッ!」

鬼の凶悪な上段蹴りをすれすれのところでいい男がかわす。
巻き起こる衝撃により皮膚は切り刻まれるが、致命傷はまだくらっていない。

「なかなか後ろはとらせてくれないか……」

ひたすらに危険な回避行動を続けるいい男。
彼の目的は、もちろん鬼の背後をとることであったのだが、それがうまくいかない。
そもそも、いまこうして鬼の攻撃をかわすだけで精一杯なのが現状だ。
いくら自分の体が鍛えられているとはいえ、相手は人外に片足どころか両足を突っ込んでる鬼だ。
長引く程、その差は顕著になって現れる。
細かい傷からの出血が積もり、予想外に出血も激しい。

(これ以上は無理か……仕方がない)

そう結論付けた彼は、この激闘の中でもまだ壊れていないデイバッグから何かを取り出す。
赤と白の色が特徴的な球体。それを地面へと投げつけた。

「この軟弱者がッ!いつまで――」

逃げ回るつもりだという言葉は、割れた球体から発せられた光により遮られる。
目晦ましとは小賢しいと吐き捨てようとした鬼は、しかし次の瞬間には笑っていた。

なにが起きたのかはわからない。
ただ目の前に、巨大で見たこともない三つ首の化物がいたのだ。
全身から冷気を放ち、複数の瞳が鬼を見下ろす。
――龍が、鬼を見下ろしていたのだ。

「こいつは、喰いがいがありそうじゃねぇか……!」

化物など知ったことか。頭よりも先に闘争本能が身体を動かす。

「熊よりはマシかッッッ!?」

そのまま北極熊程度なら一瞬で屠り去る鬼の驚異的な連撃がくり出される。
だが相手は三頭の龍。いわば常に『散眼』の構えであり、連撃は封じられてしまう。

「邪ッッッッッッッッッッッ!」
「―――!!!」

だが手数ではなく単発の力の乗った一撃なら話は別だ。
鬼の常軌を逸した拳は、龍が咄嗟に生み出した氷の盾も粉砕し、そのまま龍の鱗までヒビを入れる。
龍はまったく予想していなかった重い一撃に、たまらずブレスを吐き距離をとろうとする。

「……ククククク、吹雪か!まさかまた自然現象と闘う事になるとはなぁ!」

だが鬼はそれでも止まらない。足が凍り付いても、力づくで強引に氷を砕いて――







「 や ら な い か 」
「ッ!?」


鬼の反応は僅かに遅れた。
呼び出された龍の相手で、この男のことを忘れていた。
不覚ッ!
だが、この程度の男の拳はなんら問題ない。
闘うのは龍だけで十分だ。この男にもう用はない。
カウンターの突きでさっさと心臓を潰して――


「が……………ッ!?」


その思考を最後に、鬼の頭は真っ白となった。
まるで尻にミサイルをぶちこまれたのではないかと錯覚するほどの衝撃。
事実、そこまでではないが凄まじく鈍い音が響いたのは確かだ。
鬼を穿つ、いい男のジャッカル。
たった一撃撃ち込まれただけで、膝が震える。
だが、鬼は崩れ落ちない。その誇りからか、耐えてみせようと歯を食いしばり顔を歪める。


「こ……これは……!かつてないッ――――」
「―――――――――」

だが、一撃二撃三撃。
超高速でくりだされる五月雨突きの威力は尋常ではない。
どんな強き者でも、『腸』まで鍛え上げることなどできはしないのだ。
最後の抵抗として括約筋でもってジャッカルをへしおろうとするが……
最初の一撃ですでに勝負は決していた。
圧倒的速度で深々と突き刺さったそれは、鬼をショック死させるには十分だったのだ。
鬼が倒れず、肛を締め続けるのは肉体そのものが持っている闘争本能故だった。

響く、響く。肉と肉がぶつかり合う音が。
だが程なくして、いい男は仰向けに倒れ、ジャッカルが引き抜かれる。
彼もまた、体力を消耗しきっていたのだ。


そして、いい男が倒れてなお。
鬼は直立不動で立ち続け、逝っていた。


「ちょ……ちょっとはりきりすぎちまったか……」

仰向けのまま、阿部さんは動くことが出来なかった。
そして、彼のもとに先程の龍がやってきた。言葉は発さないが、心配でもしているのだろうか。

「悪いな、あのいい男がなかなかバックをとらせてくれないんでね……」
「――――」
「せっかくのお誘いを悪いが、今は休ませてくれ……お前のひんやりした中もいいが、今はこの熱の余韻を味わいたい」
「――――……」

尻尾を持ち上げ、尻を阿部さんに向けた龍は少ししょんぼりとした感じで消えていった。
この龍は阿部さんが道中出くわした奴を支給品で捕獲したものだった。
彼に支給されていたのは赤と白が目に鮮やかな一般的なモンスターボール。色々なモンスターを捕獲できるボールだ。
襲ってきた龍を返り討ちにして、とりあえず投げてみたらゲットできた、本当に不思議なボール。
まあ相手の体力が1ドットしか残っていない上に麻痺状態だったため当然の結果とも言えるのだが。

「このいい男も……捕獲しておくんだったな……」

そう呟いた阿部さんは、今は余韻に浸りつつまどろむ。
締め付けで股間も、細かい切り傷で体力の消耗はかなりのもの。
今は休むべきなのだ。
だが、彼は知らない。自分が、既に取り返しのつかないほど致命的な打撃を鬼以外から受けていることに。


捕獲した龍が『雌』であったことに……

【一日目・夕方/渋谷区・元ハチ公前】

【阿部高和@くそみそテクニック】
[状態]ダメージ中、いい男、全身に切り傷、疲労大、股間に痛み、まどろみ
[装備]股間のジャッカル
[道具]支給品一式、モンスターボール3ヶセット(氷嵐の支配者入り、残り二つは空か中身入りかは不明)
[思考・状況]基本:いい男を掘る
1:今は休み、体力を回復させる
2:いい男だったな……

支給品紹介
『モンスターボール』
カオスロワではタケシがよく持っているあのボール。
基本捕獲できるのはモンスターだけだが、例外がいまくったりする。
人間でもキョンクラスなら普通に捕獲でき、東方不敗クラスもマスターボールの餌食になったことが。
今回も捕獲できるかは不明だが、できても相当に相手を弱らせなければモンスターであっても捕獲不可。
くりだしたモンスターの活動限界は3分。以降、3時間使用不可。
『氷嵐の支配者』
捕獲されたため扱いは意思持ち品。言葉は話せない。雌。
かつてのカオスロワでは阿部さんに一撃で沈められたことがある。


【範馬勇次郎@範馬刃牙】死亡確認――死因:ショック死
……残り参加者45/46
※勇次郎の支給品は付近に放置されています。
※ハチ公像及びその周辺が破壊されました


059:やがて絶望という名の病 投下順に読む 061:全てを『狩る』影
057:押し寄せる災禍 時系列順に読む 062:本日のスープ
030:鬼鮫の脅威 阿部高和 :[[]]
027:オーガ、吠える 範馬勇次郎 死亡確認

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