ファイト当日、主の部屋にて――
「お願いですお嬢様、どうかこの私にご命令を」
「くどいぞ咲夜、これで何回目だ」
「何回でも。お嬢様がうなずいてくださるまでは」
「無駄だ。咲夜、貴女も完全を名乗る者なら、それ以上無意味な真似を私に晒すのは止しなさい」
「しかし!」
「くどいぞ咲夜、これで何回目だ」
「何回でも。お嬢様がうなずいてくださるまでは」
「無駄だ。咲夜、貴女も完全を名乗る者なら、それ以上無意味な真似を私に晒すのは止しなさい」
「しかし!」
必死で食い下がる咲夜。それも当然。
今回のファイトは、文字通り反吐を浴びせ続けられるという、これまでのファイトと比較しても最上級と言ってよいほど過酷な内容。
主をそんな目に遭わせるならば、いっそ自分が身代わりに――
咲夜がそう願ったのは、従者として当然のこと。少なくとも咲夜はそう考えていた。
今回のファイトは、文字通り反吐を浴びせ続けられるという、これまでのファイトと比較しても最上級と言ってよいほど過酷な内容。
主をそんな目に遭わせるならば、いっそ自分が身代わりに――
咲夜がそう願ったのは、従者として当然のこと。少なくとも咲夜はそう考えていた。
「お嬢様――どうして、どうしてそこまでご自分でのファイトを望まれるのですか?」
「わからない? 咲夜、他ならぬ貴女にも?」
「わかりません! 今回のファイトは、代役が認められています! なのに何故!」
「認められているからこそ、さ」
「え――」
「代役を立てるのもしょうがない、どうせお前には耐えられないだろう――
今回のファイトを決めた者は、暗にそう言っているのだ」
「そ――それは、お嬢様の考えすぎです、そんな」
「よしんば、ファイトを決めた者にその意図が無かったとしても。
私が従者を代役によこせば、周りからはそう思われても仕方ない。
咲夜――お前は、私に、そんな汚名を受け入れろというのか」
「い……いえ、そんなことは……し、しかし、それでも」
「わからない? 咲夜、他ならぬ貴女にも?」
「わかりません! 今回のファイトは、代役が認められています! なのに何故!」
「認められているからこそ、さ」
「え――」
「代役を立てるのもしょうがない、どうせお前には耐えられないだろう――
今回のファイトを決めた者は、暗にそう言っているのだ」
「そ――それは、お嬢様の考えすぎです、そんな」
「よしんば、ファイトを決めた者にその意図が無かったとしても。
私が従者を代役によこせば、周りからはそう思われても仕方ない。
咲夜――お前は、私に、そんな汚名を受け入れろというのか」
「い……いえ、そんなことは……し、しかし、それでも」
なおも食い下がる咲夜――だが。
その咲夜に、レミリアはそっと近づく。
前触れも無く悪意も無いその行動に、咲夜は反応できない。
そうして虚をつかれた咲夜は、なされるがまま、レミリアの細い腕に抱きしめられた。
その咲夜に、レミリアはそっと近づく。
前触れも無く悪意も無いその行動に、咲夜は反応できない。
そうして虚をつかれた咲夜は、なされるがまま、レミリアの細い腕に抱きしめられた。
「何より、何よりね、咲夜」
「え――」
「貴女がそうやって、身代わりを買って出てくれたこと――物凄く、嬉しかったの」
「そ、そんな……従者として、当然の」
「それでも出来ることじゃないわ。今回のファイトは、それほどに過酷だもの……
でも、貴女の目には嘘も迷いも無かった。本気で、私の身代わりになるつもりだった」
「お嬢様……」
「ありがとう、咲夜。貴女は私の自慢の従者よ。
だからこそ――そんな貴女を、汚されたくないのよ」
「っく……ひっく、うぐっ」
「行くわ、咲夜」
「え――」
「貴女がそうやって、身代わりを買って出てくれたこと――物凄く、嬉しかったの」
「そ、そんな……従者として、当然の」
「それでも出来ることじゃないわ。今回のファイトは、それほどに過酷だもの……
でも、貴女の目には嘘も迷いも無かった。本気で、私の身代わりになるつもりだった」
「お嬢様……」
「ありがとう、咲夜。貴女は私の自慢の従者よ。
だからこそ――そんな貴女を、汚されたくないのよ」
「っく……ひっく、うぐっ」
「行くわ、咲夜」
咲夜を離し、レミリアは行った。
どうか無事に帰ってきてほしい――残された咲夜は、ただそれだけを願った。
どうか無事に帰ってきてほしい――残された咲夜は、ただそれだけを願った。
「遅刻ですよ、レミリア・スカーレット」
「ごめんなさい、ちょっと説得に時間がかかって、
って、あれ、閻魔だけ? 下っ端天狗とスキマは? あと対戦相手は?」
「…………」
「?」
「欠席です」
「は??」
「犬走椛は二日酔いで起床後、そのままトイレに直行、胃の中の物を全て吐き出した後ダウン。
それでも一度は起き上がってこの会場に来たのですが、遅刻したあなたを待ちきれずにまたトイレに直行、
そのまま意識を失いました。今は射命丸文に自宅に運ばれて養生しているでしょう。
八雲紫は雲隠れならぬスキマ隠れしました。胃をやられているのに延々胃液を吐き戻せだなんて、
そんな過酷なファイトに協力できるものか、だそうです
ちなみに紅魔館の妖精たちは……皆が他の妖精に押し付けようとして、
結局誰が誰に押し付けたのかわからなくなってしまい、
挙句、その有様をメイド長に発見され、ブチ切れたメイド長に折檻されたそうです。
手加減無しだったらしいので、全員『一回休み』だということです」
「…………つ、つまり?」
「おめでとうございます。あなたの不戦勝です」
「えー……私の覚悟は一体……」
「ごめんなさい、ちょっと説得に時間がかかって、
って、あれ、閻魔だけ? 下っ端天狗とスキマは? あと対戦相手は?」
「…………」
「?」
「欠席です」
「は??」
「犬走椛は二日酔いで起床後、そのままトイレに直行、胃の中の物を全て吐き出した後ダウン。
それでも一度は起き上がってこの会場に来たのですが、遅刻したあなたを待ちきれずにまたトイレに直行、
そのまま意識を失いました。今は射命丸文に自宅に運ばれて養生しているでしょう。
八雲紫は雲隠れならぬスキマ隠れしました。胃をやられているのに延々胃液を吐き戻せだなんて、
そんな過酷なファイトに協力できるものか、だそうです
ちなみに紅魔館の妖精たちは……皆が他の妖精に押し付けようとして、
結局誰が誰に押し付けたのかわからなくなってしまい、
挙句、その有様をメイド長に発見され、ブチ切れたメイド長に折檻されたそうです。
手加減無しだったらしいので、全員『一回休み』だということです」
「…………つ、つまり?」
「おめでとうございます。あなたの不戦勝です」
「えー……私の覚悟は一体……」