パチェ「こんにちは。子供からお年寄りまで皆に優しい東方ファイト風紀会長、パチュリー・ノーレッジです」
咲夜「触手に体じゅう絡ませながら、一体何をおっしゃっているのですか?」
パチェ「私を甘く見ないでよ咲夜。この触手はあくまで捕獲専用の全年齢向け触手。
だからたとえ間違って自分が捕まってしまっても、『そこまでよ』にはならない。あくまで身動きが取れないだけよ」
咲夜「なるほど、服の上から触手が這い回っていてその手の趣味の方々なら喜びそうですが、
あくまで無作為に這い回っているだけで、性的快感を覚えているわけでも無ければ服が乱れているわけでもない、と」
パチェ「さすが咲夜ね、ものわかりのいいこと。で、わかったらそろそろ助けてほしいのだけど」
咲夜「あ、いえそれはできかねます。東方ファイトですので」
パチェ「……え?」
咲夜「触手に体じゅう絡ませながら、一体何をおっしゃっているのですか?」
パチェ「私を甘く見ないでよ咲夜。この触手はあくまで捕獲専用の全年齢向け触手。
だからたとえ間違って自分が捕まってしまっても、『そこまでよ』にはならない。あくまで身動きが取れないだけよ」
咲夜「なるほど、服の上から触手が這い回っていてその手の趣味の方々なら喜びそうですが、
あくまで無作為に這い回っているだけで、性的快感を覚えているわけでも無ければ服が乱れているわけでもない、と」
パチェ「さすが咲夜ね、ものわかりのいいこと。で、わかったらそろそろ助けてほしいのだけど」
咲夜「あ、いえそれはできかねます。東方ファイトですので」
パチェ「……え?」
アリス「あら魔理沙、今日は何の用?」
魔理沙「例のファイトだ。今回は私と咲夜が審判をやることになった。不本意だがな」
アリス「選手に選ばれる私はもっと不本意な気がするけど、まあ安価は絶対だし、しょうがないか」
魔理沙「それなんだが……アリス、自作の薬を誤飲した、って聞いたんだが」
アリス「ええ、飲んだわよ?」
魔理沙「その割にはえらく普通だな?」
アリス「どこかの白黒と同じくらいには普通かも知れないわね。私も田舎暮らしが様になってきたわ」
魔理沙「……まあいいや。ええとだな、ファイト内容は――」
魔理沙「例のファイトだ。今回は私と咲夜が審判をやることになった。不本意だがな」
アリス「選手に選ばれる私はもっと不本意な気がするけど、まあ安価は絶対だし、しょうがないか」
魔理沙「それなんだが……アリス、自作の薬を誤飲した、って聞いたんだが」
アリス「ええ、飲んだわよ?」
魔理沙「その割にはえらく普通だな?」
アリス「どこかの白黒と同じくらいには普通かも知れないわね。私も田舎暮らしが様になってきたわ」
魔理沙「……まあいいや。ええとだな、ファイト内容は――」
今回のファイトは、咲マリ同人誌を作って十日後の冬コミで販売すること。
ちょ、お前十日後とかもう申し込みも印刷も間に合わないだろ、と言われそうだが、
印刷のほうは、ファイト権限で天狗たちを動員すれば直前にでも間に合わせてくれると確約してくれた。
肝心のスペースはというと。
ちょ、お前十日後とかもう申し込みも印刷も間に合わないだろ、と言われそうだが、
印刷のほうは、ファイト権限で天狗たちを動員すれば直前にでも間に合わせてくれると確約してくれた。
肝心のスペースはというと。
パチェ「それは、私は元々自分のサークルで申し込んでるから、そこで一緒に売ってしまえば問題ないわ。
……でも告知無しで新刊もう一冊追加とか、広告見て来てくれるファンはびっくりするでしょうね」
……でも告知無しで新刊もう一冊追加とか、広告見て来てくれるファンはびっくりするでしょうね」
説明しよう。同人作家・パチュリーはサークル「紫図書館」の代表作家なのだ。
詳しくは>>507を参照。
詳しくは>>507を参照。
パチェ「でも、私ようやく本が完成したところで、へとへとなんだけど」
咲夜「そんなへとへとでどうして触手召喚なんて?」
パチェ「執筆中、自分をハングリー精神に追い込むために、必死で魔理沙断ちしてたのよ。
だから全てが終わった今、魔理沙分を補給するために慌てて捕獲用触手を召喚。そしたら制御失敗してこのザマよ」
咲夜「重ねて言いますが、安価指定ですので救出はできません」
パチェ「ならしょうがない、咲夜、口述筆記しなさい。
あと、身動きが取れない私の健康管理もよろしく。手が足りなければ小悪魔も使っていいわ」
咲夜「仕方ありませんわね、ファイト不成立にはできませんし」
パチェ「それじゃ、よろしくね」
咲夜「そんなへとへとでどうして触手召喚なんて?」
パチェ「執筆中、自分をハングリー精神に追い込むために、必死で魔理沙断ちしてたのよ。
だから全てが終わった今、魔理沙分を補給するために慌てて捕獲用触手を召喚。そしたら制御失敗してこのザマよ」
咲夜「重ねて言いますが、安価指定ですので救出はできません」
パチェ「ならしょうがない、咲夜、口述筆記しなさい。
あと、身動きが取れない私の健康管理もよろしく。手が足りなければ小悪魔も使っていいわ」
咲夜「仕方ありませんわね、ファイト不成立にはできませんし」
パチェ「それじゃ、よろしくね」
アリス「……私が一方的に不利な内容ね、今回のファイト」
魔理沙「そうだな。アリスの本もパチュリーのスペースで委託してもらうって予定だが、
それをやると、パチュリーの本目当てで来るはずの客は、ほとんどがパチュリーの本ばかりを買うことになる」
アリス「しかも、あっちは場数を踏んだ同人作家か。手強いわね」
魔理沙「(……へえ、そう言う割には――)」
アリス「魔理沙、あんたの知り合い片っ端から尋ねて、冬コミ参加の同人作家を探してきて。
全年齢向けの漫画本を作ってる人で、できれば実力派をお願い」
魔理沙「注文が多いな、私は中立なはずの審判だぜ?」
アリス「パチュリーの安価指定は触手状態でしょ? 向こうも咲夜の手を借りてるのは間違いないわ」
魔理沙「なるほど、私が手を貸してようやくイーブンか……しかし、細かく注文する理由は?」
アリス「18禁サークルだけは駄目よ、来る客が18禁目当てだもの。
私は東方ファイトを理由に本を出すんだから、全年齢向けしか書けないの。
加えて、実力派のサークルに委託すれば、来る客も自然と多くなる」
魔理沙「ほう……だが一つ問題があるぜ。そんな実力のある作家と肩を並べたら、お前の本が見劣りしてしまうんじゃないか?」
アリス「逆よ魔理沙。そんな実力のある作家と比較されて、見劣りしない本が作れたなら――この勝負、私の勝ちよ」
魔理沙「随分自信満々じゃないか、珍しい――いいさ、付き合ってやるとするか」
魔理沙「そうだな。アリスの本もパチュリーのスペースで委託してもらうって予定だが、
それをやると、パチュリーの本目当てで来るはずの客は、ほとんどがパチュリーの本ばかりを買うことになる」
アリス「しかも、あっちは場数を踏んだ同人作家か。手強いわね」
魔理沙「(……へえ、そう言う割には――)」
アリス「魔理沙、あんたの知り合い片っ端から尋ねて、冬コミ参加の同人作家を探してきて。
全年齢向けの漫画本を作ってる人で、できれば実力派をお願い」
魔理沙「注文が多いな、私は中立なはずの審判だぜ?」
アリス「パチュリーの安価指定は触手状態でしょ? 向こうも咲夜の手を借りてるのは間違いないわ」
魔理沙「なるほど、私が手を貸してようやくイーブンか……しかし、細かく注文する理由は?」
アリス「18禁サークルだけは駄目よ、来る客が18禁目当てだもの。
私は東方ファイトを理由に本を出すんだから、全年齢向けしか書けないの。
加えて、実力派のサークルに委託すれば、来る客も自然と多くなる」
魔理沙「ほう……だが一つ問題があるぜ。そんな実力のある作家と肩を並べたら、お前の本が見劣りしてしまうんじゃないか?」
アリス「逆よ魔理沙。そんな実力のある作家と比較されて、見劣りしない本が作れたなら――この勝負、私の勝ちよ」
魔理沙「随分自信満々じゃないか、珍しい――いいさ、付き合ってやるとするか」
―時間をすっ飛ばし、冬コミ当日、会場にて―
パチェ「じゃあ二人とも。売り子よろしくね」
こぁ「会場でも触手状態なんですね」
パチェ「これでもコンパクトにまとめたんだからマシよ。お客さんにはコスプレで通すからよろしく」
咲夜「触手コスですか。斬新ですね」
パチェ「探せばあるかも知れないわ、同人の世界は広くて深いもの」
こぁ「会場でも触手状態なんですね」
パチェ「これでもコンパクトにまとめたんだからマシよ。お客さんにはコスプレで通すからよろしく」
咲夜「触手コスですか。斬新ですね」
パチェ「探せばあるかも知れないわ、同人の世界は広くて深いもの」
パチュリーの同人誌は、咲夜がヒーロー、魔理沙がヒロイン、パチュリーが悪役なポジションの、コメディアクション小説。
ある日喘息を治す薬を自作したパチュリーは、薬の副作用でヤンデレ化して触手を召喚、
いつも通りに盗みに入った魔理沙を捕まえ、あんなことやこんなことをしようとするが、
そこに颯爽と現れた咲夜が魔理沙を救う。
パチュリーの病みっぷりに一度は逃げ出した二人だったが、魔理沙を求めて幻想郷中を混乱に陥れるパチュリーの暴挙を見て、
二人で止めることを決意する、という内容だ。
ある日喘息を治す薬を自作したパチュリーは、薬の副作用でヤンデレ化して触手を召喚、
いつも通りに盗みに入った魔理沙を捕まえ、あんなことやこんなことをしようとするが、
そこに颯爽と現れた咲夜が魔理沙を救う。
パチュリーの病みっぷりに一度は逃げ出した二人だったが、魔理沙を求めて幻想郷中を混乱に陥れるパチュリーの暴挙を見て、
二人で止めることを決意する、という内容だ。
咲夜「それにしても、容赦なく自分をネタにしましたね?」
パチェ「使えるネタは何でも使うのが作家の心意気、プロもアマも変わりないわ」
パチェ「使えるネタは何でも使うのが作家の心意気、プロもアマも変わりないわ」
アリス「今日はありがとう、わざわざ引き受けてくれて」
藍「何、同人は楽しんだもの勝ちだからな。賑やかなほうが私も楽しい」
アリス「でも意外だったわ。あなたが同人漫画を描いてたなんて」
藍「いや、恥ずかしながら、これも修行の一環でな……私はどうも、アナログな方面の能力に欠けている節があってな」
アリス「なるほどね、趣味兼修行として始めたのが、今や中堅サークルか……」
藍「ところで魔理沙は?」
アリス「私の本読んだら逃げたわよ、顔真っ赤にしてね」
藍「なるほど、それは作家冥利に尽きるというものだな」
藍「何、同人は楽しんだもの勝ちだからな。賑やかなほうが私も楽しい」
アリス「でも意外だったわ。あなたが同人漫画を描いてたなんて」
藍「いや、恥ずかしながら、これも修行の一環でな……私はどうも、アナログな方面の能力に欠けている節があってな」
アリス「なるほどね、趣味兼修行として始めたのが、今や中堅サークルか……」
藍「ところで魔理沙は?」
アリス「私の本読んだら逃げたわよ、顔真っ赤にしてね」
藍「なるほど、それは作家冥利に尽きるというものだな」
アリスの同人誌は、切ないラブストーリー仕立てとなっている。
咲夜に片思い中の魔理沙は、あれやこれやと理由をつけて咲夜に会いに行くものの、
肝心なところで素直になれず、咲夜にはとがった態度を取ってしまう。
嫌われたくない、でもこの思いを伝えるのはあまりに恥ずかしい――
できれば今のまま、時間が止まってくれればいいのに――魔理沙は半ば、そう考えていた。
そんなある日、魔理沙の家を突如訪れる咲夜。
咲夜の真意が見えず緊張しっぱなしの魔理沙、そしてついに動く咲夜。二人の恋の結末は――
咲夜に片思い中の魔理沙は、あれやこれやと理由をつけて咲夜に会いに行くものの、
肝心なところで素直になれず、咲夜にはとがった態度を取ってしまう。
嫌われたくない、でもこの思いを伝えるのはあまりに恥ずかしい――
できれば今のまま、時間が止まってくれればいいのに――魔理沙は半ば、そう考えていた。
そんなある日、魔理沙の家を突如訪れる咲夜。
咲夜の真意が見えず緊張しっぱなしの魔理沙、そしてついに動く咲夜。二人の恋の結末は――
~さらに中略、結果発表~
咲夜「パチュリー様の本は230冊売れましたわ。パチュリー様いわく、上々だ、だそうです」
藍「アリスの本は180冊だ。初めてにしては十分過ぎるほどだが……ファイトとして考えれば負けだな」
藍「アリスの本は180冊だ。初めてにしては十分過ぎるほどだが……ファイトとして考えれば負けだな」
ほっと肩を撫で下ろすパチュリー、そう、と素っ気無く応えつつも少し残念がるアリス。
藍「アリス……お前、漫画描いたの、初めてだったろう?」
アリス「よくわかったわね」
藍「わかるさ。絵は確かに上手いし、コマ割、集中線、トーンなんかも丁寧にこなしてはいるが、
漫画の構成はあくまで無難、演出による表現力が不足しているから、多少ぎこちなさがある」
アリス「器用さとストーリーには自信あったから、何とかなるかな、と思ったんだけどね」
藍「そうか、七色劇団――人形劇の台本は全部、自作だったな。
だったらなおさら、なぜ小説本にしなかった? 小説のほうがもっと無難にできただろう」
アリス「初見の、ネットでの知名度も皆無の人間の小説本なんて誰も買わないでしょ? 選択の余地は無かったのよ」
パチェ「は、初めてですって!?」
アリス「よくわかったわね」
藍「わかるさ。絵は確かに上手いし、コマ割、集中線、トーンなんかも丁寧にこなしてはいるが、
漫画の構成はあくまで無難、演出による表現力が不足しているから、多少ぎこちなさがある」
アリス「器用さとストーリーには自信あったから、何とかなるかな、と思ったんだけどね」
藍「そうか、七色劇団――人形劇の台本は全部、自作だったな。
だったらなおさら、なぜ小説本にしなかった? 小説のほうがもっと無難にできただろう」
アリス「初見の、ネットでの知名度も皆無の人間の小説本なんて誰も買わないでしょ? 選択の余地は無かったのよ」
パチェ「は、初めてですって!?」
割り込んでくるパチュリー。ちなみに触手からは既に脱出してます。
パチェ「こ……この内容、丁寧さ、中身の濃さで、初めての漫画!? 初めての同人誌で180冊!?」
アリス「自分ではかなり自信あったんだけど、やっぱり勝負は、いえ、同人は甘くないわね」
パチェ「嘘、嘘よ、ありえない! 初めての同人誌なんて20冊売れれば上出来でしょう!?
あなた、どんなカラクリを使ったっていうの!?」
アリス「強いて言うなら、自分を信じたのよ」
パチェ「は?」
アリス「本気を出せばなんでも出来る、だって私は天才都会派魔法使いアリス・マーガトロイド。
そんな素晴らしい私の本気を手に取れば、読者はたちまち私の魅力に圧倒されるに違いない。
私は最初から最後まで、そう信じて行動した、それまでのことよ」
パチェ「な……ナルチシズムこそが才能の証……言われてみれば漫画家や作家の大御所ってそんな人多いわよね……」
咲夜「惚れ薬の効果が思わぬ形で出たということですね」
アリス「自分ではかなり自信あったんだけど、やっぱり勝負は、いえ、同人は甘くないわね」
パチェ「嘘、嘘よ、ありえない! 初めての同人誌なんて20冊売れれば上出来でしょう!?
あなた、どんなカラクリを使ったっていうの!?」
アリス「強いて言うなら、自分を信じたのよ」
パチェ「は?」
アリス「本気を出せばなんでも出来る、だって私は天才都会派魔法使いアリス・マーガトロイド。
そんな素晴らしい私の本気を手に取れば、読者はたちまち私の魅力に圧倒されるに違いない。
私は最初から最後まで、そう信じて行動した、それまでのことよ」
パチェ「な……ナルチシズムこそが才能の証……言われてみれば漫画家や作家の大御所ってそんな人多いわよね……」
咲夜「惚れ薬の効果が思わぬ形で出たということですね」
勝ったのに、敗北感たっぷりのパチュリーだったのでした、まる。