「早速ですが、勝負はまず、シュールストレミングを調達してくる所から始めなくてはならない」
藍の台詞に、集まった一同はどよめいた。
「な、何で? 勝負に使う缶詰は紫がこっそり持ってくるって言ってたじゃん」
というか、本来なら今この場で勝負をアナウンスするのも紫のはずだ。彼女の友人である萃香が問うた。
代理人なのであろう藍は鎮痛な面持ちで続けた。
代理人なのであろう藍は鎮痛な面持ちで続けた。
「確かに、紫様はスキマを日本の外のとある国に繋いで缶詰を持ってこようとした。
なぜわざわざ外国に繋いだかというと、件の缶詰は気圧差で簡単に破裂する代物らしく、
外の人間の輸送手段である空輸が使えず国内での入手がほぼ不可能だからなんだそうだ」
「で、その為のスキマ輸送なんでしょ? まさか、失敗?」
「ああ、スキマの中の亜空間にも、やっぱり気圧差があったんだな。
おかげで紫様が両手で抱えた缶詰は連鎖的に破裂、発酵した魚の身がスキマの中に飛び散り、
紫様は見るも無残な姿でご帰還なされた」
「じゃあ、紫は……」
「ああ、今の紫様は正真正銘の悪臭ババアだ。私や橙は妖獣で臭いに敏感だから、
紫様が帰るなり橙は卒倒、私も残った僅かな意識で命からがら逃げてきた。
戻ってみると、『探さないで下さい。勝負の仕切りはよろしく』という手紙が、
強烈な臭いとともに残されていた。正直、読むのも一苦労だった」
なぜわざわざ外国に繋いだかというと、件の缶詰は気圧差で簡単に破裂する代物らしく、
外の人間の輸送手段である空輸が使えず国内での入手がほぼ不可能だからなんだそうだ」
「で、その為のスキマ輸送なんでしょ? まさか、失敗?」
「ああ、スキマの中の亜空間にも、やっぱり気圧差があったんだな。
おかげで紫様が両手で抱えた缶詰は連鎖的に破裂、発酵した魚の身がスキマの中に飛び散り、
紫様は見るも無残な姿でご帰還なされた」
「じゃあ、紫は……」
「ああ、今の紫様は正真正銘の悪臭ババアだ。私や橙は妖獣で臭いに敏感だから、
紫様が帰るなり橙は卒倒、私も残った僅かな意識で命からがら逃げてきた。
戻ってみると、『探さないで下さい。勝負の仕切りはよろしく』という手紙が、
強烈な臭いとともに残されていた。正直、読むのも一苦労だった」
思い出すだけでも苦痛といった藍の様子を見て、一同は戦慄した。
「あ、あの八雲紫を倒す缶詰って……」
「臭い付いたら嫌だなぁ……」
「臭い付いたら嫌だなぁ……」
ヤマメとミスティアの二人は、わが身に起こる事にうち震えていたのだが。
「悪臭紫、嫌すぎる!」
残りの連中の心の裡は、今まさに一つになっていた。
◆
で、幻想郷にある物と能力を使って何とかシュールストレミングを再現する事になったのだが、
よく分からない事実なのは、製造過程で最も活躍したのが選手の二人である事だ。
よく分からない事実なのは、製造過程で最も活躍したのが選手の二人である事だ。
「はーい、新鮮なヤツメの開き入ったわよー」
「病を操る力で、良い菌だけを選択培養すればいい訳ね」
「病を操る力で、良い菌だけを選択培養すればいい訳ね」
気が重い事このうえなかった二人は、思わぬ活躍の機会に大ハッスルであった。
「これを私の能力で高密度に圧縮し、」
「あとは半年(いっしゅん)待てば出来上がり、と」
「あとは半年(いっしゅん)待てば出来上がり、と」
そして萃香と咲夜の能力を使えば出来上がりである。
「そういえば、『さくや』と『くさや』って似てますよ……(ドス、バタッ)」
本日の犠牲者第三号は紅美鈴であった。
◆
「どんどん出来上がっていくわねー」
「ええ、もう臭って来る。正直、私には厳しいです」
「ええ、もう臭って来る。正直、私には厳しいです」
積み上がっていく圧縮魚肉ブロックを遠目に見ていた藍に、西行寺幽々子が声を掛けた。
「何というか、本当に楽しそうですね」
「ええ全くね。彼女たちは理解しているのかしら」
「ええ全くね。彼女たちは理解しているのかしら」
「「アレを食べるのが、自分たちであるという事実を」」
ヤマメ - ミスティア 引き分け (積み上がった魚肉を見て両者卒倒)
なお、生き物というのは臭いに慣れるモノであって、出来上がったシュールストレミングは
製作途中で既に慣れていた残り一同が酒の肴に美味しく頂きました。
製作途中で既に慣れていた残り一同が酒の肴に美味しく頂きました。
悪臭も、みんなで付ければ怖くない
――理科の実験でクラス一同硫黄臭を体験した515
――理科の実験でクラス一同硫黄臭を体験した515