コエテから手作りのチョコレートをもらってからもうすぐ1か月か。あれからたまにメイド服を着て料理とかスイーツを作ってきてくれるが、段々腕が上がってきているなぁ。もちろん最初に作ってくれた甘酸っぱい柑橘チョコレートが美味しかったのは間違いないが、この間作ってくれたカップケーキはそれを上回るくらいの味だった。いつもニコニコして楽しそうに持ってきてくれるものだから、私もつい笑顔になってしまう。そんな風にコエテの作ってくれる料理を楽しみにしていたり、この一か月の仕事に集中していたら、うっかりホワイトデーでお返しするものについて考えるのを忘れてしまっていた。幸い、今日は12日。まだ間に合う。よし、今からどんな贈り物にするか考えに行くとしよう。
こうして私はお返しにあげる贈り物を探しに都心へ向かった。
お菓子も色々あるし、季節の花とかもたくさん取り揃えてあるものだな。たぶんコエテもバレンタインの時、こんな感じで色々見て回ったんだろうな。きっと彼女のことだから、「どれもいい値段して学生の身では買えないよ~!」とか言っていたんだろう。そして最終的に勇気を出して自分で作ることに挑戦したんだな。私は大人だし、自分で好きに買っちゃってもいいんだよな~。でもそれだと、せっかく頑張った彼女に対して失礼になっちゃうだろうからなぁ。どうしよう。
私はかれこれ1時間半くらい悩みながら、可能な限り多くの店を見て回った。
うーん、やはり決まらない。花だったら、たくさん買ってブーケにして渡すのもいいよなぁ。でも彼女、花より団子って感じだからお菓子とかそういう口にできるものの方がたぶん喜ぶんだよねぇ。そうなってくるとお菓子になってくるのか?いやいや、それだとなんか普通すぎるんだよなぁ。コエテが喜びそうなものでお菓子以外……。そうだ!コーヒーとかお茶という手がある!どちらもコエテが大好きなものだ!それにさっき専門店を見つけたし、完璧だ!問題はどちらにするべきかだ。最近のコエテが作っているスイーツはどちらかというと、お茶に合うようなものを作っている傾向があるんだよなぁ。と考えると、そろそろコーヒーに合うスイーツを作る可能性が出てきたな。よし、コーヒーで決まりだな!
こうして私はお返しにコーヒーを彼女にあげることにしたのだが…
やっぱりコーヒーだけだとなんか物足りない。あの時の彼女みたいにちゃんと手作りのお菓子もセットでつけてあげようかな。今回買おうと思っているコーヒーと合いそうなのは……チーズケーキ!そういうのもあるのか!これで贈り物はバッチリだな!よーし、今から材料を買いにいくぞー!
一括りにチーズケーキと言っても、色々種類があるからな。コエテが好きなのは深煎りのコーヒーだからどちらかというと、レアチーズケーキよりもベイクドチーズケーキの方がいいのかな。そうなってくると今買うべきチーズは……これとこれとこれだな。あとは土台に使うビスケットも買う必要もありそうだな。うん、いいんじゃないかな!
一通りの材料を買った私は学園に戻り、キッチンでチーズケーキの制作を始めた。
まずはオーブンを温めておくのか。なるほど、温めているうちに他の準備をしておくんだね。次は砕いたビスケットにバターをなじませて型に敷き詰めるのね。ほほう。その後にチーズとか卵とかを撹拌すると。そして最後にそれを型に流し込んでさっきのオーブンで温める。なんとなくわかったかも!よし、さっそくやってみるか!
手順通りに進めて無事、担当にあげるためのチーズケーキが完成した。
よし、完成っと。ん~、いい香り!食べたいけど……、ううん、楽しみはあとで!コエテをトレーナー室に呼ばないと。喜んでもらえるといなぁ。
一方そのころ、トキヲコエテは自身のもとに届いた一通の手紙を読んでいた。
お、なになに、トレーナーから手紙が来るとは。どんなことが書いてあるのかな~
「このたびは、身に余るほどに麗しきバレンタインの贈り物を賜り、誠にありがとうございます。頂戴いたしました品は、恐れ多くも私ごときには過分なものでございますが、お嬢様の温かきお心遣いに、深く感謝の念を抱いております。
つきましては、ささやかながらお返しをさせていただきたく存じます。もしご都合がよろしければ、控えめながら茶会を設けたく存じますので、何卒お時間を頂戴できますと幸甚にございます。
お部屋にてお待ち申し上げておりますので、お嬢様がお越しになられますこと、心より楽しみにいたしております。」
私がお嬢様⁉照れるなぁ~。というか、どういうことなんだ?
「このたびは、身に余るほどに麗しきバレンタインの贈り物を賜り、誠にありがとうございます。頂戴いたしました品は、恐れ多くも私ごときには過分なものでございますが、お嬢様の温かきお心遣いに、深く感謝の念を抱いております。
つきましては、ささやかながらお返しをさせていただきたく存じます。もしご都合がよろしければ、控えめながら茶会を設けたく存じますので、何卒お時間を頂戴できますと幸甚にございます。
お部屋にてお待ち申し上げておりますので、お嬢様がお越しになられますこと、心より楽しみにいたしております。」
私がお嬢様⁉照れるなぁ~。というか、どういうことなんだ?
トキヲコエテはよく分からないまま、手紙の通り、トレーナー室へ向かった。
トキ「トレーナーさーんいますかー?ってトレーナーさん⁉」
トレ「お待ちしておりました、お嬢様」
トレ「お待ちしておりました、お嬢様」
彼女が部屋に入ると、そこには執事の恰好をしたトレーナーがいた。
トレ「まずはこちらをお受け取りください。」
トキ「(なるほど、確かに今の私の立場はお嬢様だ。ここは私もお嬢様としてふるまわなきゃ。)これは、チーズケーキとコーヒーですわね。まさか、このチーズケーキ、ご自身で作られたのですか⁉とても美味しそうですわ!」
トレ「はい、私の方で心を込めて作らせていただきました。是非一口召し上がってください」
トキ「ではいただいてみますね。んー、口の中にチーズの味が広がってきてとても美味しいですわ。コーヒーと間違いなく合いますわね!」
トレ「喜んでいただけて何よりです。」
トキ「そういえば、頂いた手紙の中に茶会を設けるとございましたが……」
トレ「もちろん、準備しております。どうぞ、お掛けになってください」
トキ「(なるほど、確かに今の私の立場はお嬢様だ。ここは私もお嬢様としてふるまわなきゃ。)これは、チーズケーキとコーヒーですわね。まさか、このチーズケーキ、ご自身で作られたのですか⁉とても美味しそうですわ!」
トレ「はい、私の方で心を込めて作らせていただきました。是非一口召し上がってください」
トキ「ではいただいてみますね。んー、口の中にチーズの味が広がってきてとても美味しいですわ。コーヒーと間違いなく合いますわね!」
トレ「喜んでいただけて何よりです。」
トキ「そういえば、頂いた手紙の中に茶会を設けるとございましたが……」
トレ「もちろん、準備しております。どうぞ、お掛けになってください」
椅子に座ったトキヲコエテとトレーナーは慣れない言葉遣いで会話しながらしばらくの間、茶会を楽しんだ。
トキ「おかげでとても優雅で楽しいホワイトデーになりました。本日はお招きいただきありがとうございます」
トレ「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。私から普段の感じで一言申し上げたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
トキ「はい、なんでしょう」
トレ「いつも、大変なトレーニングを付き合ってくれたり、レースでみんなに夢を見せてくれてありがとう。私はコエテと二人三脚で歩むことが出来て本当に良かったと思っているよ。この先、山あり谷ありだと思うけど、一緒に頑張っていこうね。」
トキ「はい、今後も長ーいお付き合いになりますが、よろしくお願いいたします。また、今回みたいなお茶会を開いたり、チーズケーキを作ってもらいたいのだけど、よろしいかしら?」
トレ「ご所望とあらば、何度でもお作りいたします。何なりとお申し付けくださいませ、コエテお嬢様。」
トレ「こちらこそ、お越しいただきありがとうございます。私から普段の感じで一言申し上げたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
トキ「はい、なんでしょう」
トレ「いつも、大変なトレーニングを付き合ってくれたり、レースでみんなに夢を見せてくれてありがとう。私はコエテと二人三脚で歩むことが出来て本当に良かったと思っているよ。この先、山あり谷ありだと思うけど、一緒に頑張っていこうね。」
トキ「はい、今後も長ーいお付き合いになりますが、よろしくお願いいたします。また、今回みたいなお茶会を開いたり、チーズケーキを作ってもらいたいのだけど、よろしいかしら?」
トレ「ご所望とあらば、何度でもお作りいたします。何なりとお申し付けくださいませ、コエテお嬢様。」
私たちのレース街道はこのコーヒーのように甘くはないだろう。しかし私たちが今日のチーズケーキとコーヒーのような関係ならばどんな困難にも打ち勝つことが出来ると私は信じている。