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  • uma-musumeになりたい部 @ ウィキ
  • 夢の蕾、広げて(フラワリングタイムSS)

uma-musumeになりたい部 @ ウィキ

夢の蕾、広げて(フラワリングタイムSS)

最終更新:2025年02月13日 11:37

floweringtime

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SS フラワリングタイム


あらすじ

開花の時。ウマ娘のフラワリングタイムは、なかなか勝てずにいた。周りとのレベルの違いに悩み、苦しみ、ついに学園からいなくなってしまう。彼女の挫折と復帰の物語。


主要な登場人物

+ フラワリングタイム
主人公。桃色の髪が特徴的な小柄なウマ娘。しっかり者で苦労人。成績優秀だが、ちょっと頭が固い。
+ トレーナー
フラワリングタイムの担当トレーナー。本名は塚田。基本作中ではトレーナーと呼ばれる。
+ ハルノコンパクト
地方のウマ娘。訳あって、フラワリングタイム達と交流を行う。

本編

+ 1話 咲かぬ蕾
開花の刻。夢見る蕾は、華々しい中央の園にひっそりと佇んでいた。ポツポツと周りがその花弁を広げる最中、蕾はじっと耐えて開花を待ち続けていた。その娘の名は、フラワリングタイム。桃色の髪が美しい、とても背丈の小さなウマ娘。本格化を迎え、世代の頂点を競うクラシック級へと歩みを進めていた。
「……勝てない…」
しかし、彼女の顔は暗かった。短距離戦で無事にデビューを果たし、マイル距離や短距離に挑み続けた。…確かに勝負にはなる。食らつけない訳じゃない。けれど、勝てるのはオープン戦まで。リステッド競走。G3。レベルが上がるにつれて、周りの速度は上がっていく。いつしか、掲示板に入ることさえ、出来なくなっていた。
「…やっぱり…私には才能が…」
気付けば、口から漏れる声。辛い。諦めてしまいたい。けれど、それは裏切りだ。私に期待を込めて中央に送り出してくれた、家族や友達に対する裏切り。諦めてはいけない。我武者羅にでも脚を動かし続けろ。自分を鼓舞し、必死にトレーニングを続けてきた。
「…弱音を吐いちゃ駄目。頑張れ私!」
夜のコースを駆け抜けていく。地面を蹴り抜く音。足りない。頬を切り裂いていく風。足りない。周りの子は。周りの子はもっと力強かった。もっと速かった。どうして私の脚は…力強く走れないんだろう…
「…リング!」
「…トレーナーさん…」
「どうしたんだ、これ以上はオーバーワークだぞ?」
「……ごめんなさい…」
分かっています。でも、今の私じゃ勝てないから。重賞レースに勝つには、今以上に努力しないといけないから。……顔に出ていたのでしょうか。彼はふぅ、と肩を竦めました。
「頑張りたい気持ちはよく分かる。でも休む時は休まないとな。脚を壊して走れなくなったら元も子も無いだろ?」
ポン、と優しく頭に添えられる手。私は背が低いので、よくトレーナーさんに頭をぽんぽんされます。多分、癖になってるんだと思います。
「…分かりました」
その日は、練習を止めて休む事にしました。

世代最強マイラーを決める、クラシックGI、NHKマイルカップ。選ばれし18人の精鋭達がターフに集う。彼女はそれを、画面越しに眺めていた。
「いよいよ始まるな。じっくり研究しよう!」
「…はい。ごめんなさい…私、出走のチャンスすら掴めなくて…」
「気にするなって。GIに出れる子はほんのひと握りだ。それにこれからもチャンスはある!頑張ろうな!」
「……はい…!」
この人はいつだって、足りない私を信じてくれている。走ることを諦めるという事は、彼も裏切ってしまうということ。だから諦めちゃ駄目。頑張れ、私。でも…その言葉が何故か、私の胸に深く突き刺さる。苦しい。辛い。…言い出せなかった。

春のGI戦線も終わりを告げ、太陽が厳しく照りつける夏がやってきた。この時期はトレセン学園で最も重要な時期とも言える、夏合宿の期間。生徒達は海沿いの町へと移動し、各々トレーニングを行う。
…ところが。
「リングがいない!?」
合宿日当日、彼女の同室の子にそう伝えられ、焦る担当トレーナー。急いでスマホから連絡を送るも、返事は帰ってこない。
「なにがあったんだ…!」
彼女は真面目なタイプだ。夏合宿をサボるような真似はしないはずだ。急いで学園と話をつけ、彼女の捜索に当たることにした。商店街、神社、レース場。彼女が行きそうな場所を当たってみたが、見つかる気配は無かった。
「……駄目か…」
手詰まりになり、諦めるしか無いかと思われたその時、トレーナーの携帯にピロンと一通の連絡が届いた。フラワリングタイムからだった。
『勝手な事をしてしまい、申し訳ありません』
『二人でお話がしたいので、あの場所に来て頂けませんか?』
あの場所。二人が初めて出会った、二人だけの内緒の場所だ。トレーナーはその文を読むなり、脇目も振らずに走り出した。彼女が心配だった。何があったのか。街並みを越え、土手を駆け上がり、川沿いを駆け抜けた。ゼェゼェと立ち上る荒い息も、脚に蓄積されていく疲労も、すべて根性で噛み殺して駆け抜けた。

やがて川沿いに、小さな原っぱが開けた。なんの変哲も無い小さな公園。ここが、二人にとって大切な出会いの地。誰にも邪魔されず、二人で話せる秘密の場所。一輪の花も咲いていない淋しい公園に、彼女は一人で佇んでいた。
「リング!」
「…トレーナーさん。…ごめんなさい」
先ず、彼女は謝った。勝手にいなくなった事。心配をかけさせた事。探させてしまった事。そのすべてに。
「謝る事は無いさ。…ちゃんと訳を聞かせてくれたらな」
彼女は賢い子だ。理由も無く逃げ出したりはしないだろう。トレーナーは彼女を信じていた。
「…はい。お話します」
真っ直ぐに彼の目を見て、自分の心情を吐露した。レースに勝てないこと。周りに着いていけないこと。そして、諦めたくないと自分を追い詰めた末に、耐えきれなくなって逃げ出してしまったこと。
「私…もう頑張れない…です……」
そして、そんな自分への自己嫌悪。どこまでも真面目で、愚直で、素直な子だった。成長出来ていない現実を素直に受け止め、心が折れてしまった。気付けば、彼女の目が涙で溢れていた。
「…よく話してくれた」
滴る雫に、何もしてやれない自分が憎らしかった。彼女の力になれない自分が悔しかった。しっかり指導してやれれば、こんな事にはならなかったのに。
「君が望むなら、俺はそれに従うよ。もう、覚悟は出来てるのか?」
「……出来ていないと言えば、嘘になります…」
「そうだな。簡単に結論なんか出せないさ。一時の気の迷いかもしれない」
でも。とトレーナーは続けた。
「一番大事なのは、君の心だ。辛いのに、嫌なのに、無理矢理走って心を壊してしまったら?…今だけじゃなく、一生を棒に振る事になる」
怯えるように震える彼女に、トレーナーは優しく諭すように伝えた。
「逃げるのは決して恥ずかしい事じゃない。走る事をすっぱり諦めて、他の道で幸せになるのも立派な人生だ。だからここで辞めたって俺は何も言わないし、続けるなら、君を応援し続ける。ただし、自分の身体と相談して…本当に自分の為になる方を選択してくれ」
「トレーナーさん…」
私は、目を閉じて自分の胸に手を当てました。聞こえていたけど、聞いていなかった、自分自身の声。私はどうしたいの?……ううん、本当は分かってる。諦めたくない気持ちは、きっと胸の奥に燻ってる。でも……私は私の為に……
「…決めました。トレーナーさん」
「そうか。教えてくれるか?」
「はい。……私は…」
+ 2話 消えぬ思い出
夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が訪れた。12月。もう誰も来ない原っぱに、彼は一人で訪れていた。彼女がいなくなって、はや半年。毎日ここに訪れては、一つだけあるベンチに座って、彼女の記憶を思い出す。
『君、なんでこんなところに?』
『貴方も…どうしてここに?』
出会いは、ほんの偶然だった。体力作りのランニング中に寄り道をして、偶然ここを通りかかった事。桃色の髪の美しい少女が花を愛でていたのだ。
『ここは春になると、綺麗な花が咲き乱れるんです。表の通りからは見えないので、ちょっとした隠れスポットなんですよ』
『そうだったのか……時期的にそろそろだな。俺も一緒に見せて貰って良いかな?』
『もちろんです!』
それから数日後、見せてもらった花畑はとても綺麗だった。赤、白、青。綺麗なコントラストが公園いっぱいに広がっていた。
『ふふっ、綺麗ですよね』
『ああ。とっても綺麗だ』
満開の花弁。この小さな花園の風景に心奪われていたが、ふと、視界に入ったものがあった。それは何よりも美しく、彼の心を強く引き付けた。
『どうかしましたか?』
『いや、なにも……』
夢を見るかのように輝く美しい瞳。なんて綺麗な目をするのだろうか。いかん、このままでは俺はロリコンだ…自分を取り戻し、花の鑑賞を楽しんだ。

『かけっこが得意なのか?』
『はい。地元ではいつも一番で、中央に行くように勧められたんです!』
『へえー、それで本当に中央に来れるなんて大したものだな』
それから、彼女とは何度かこの花園で出会い、そのつど、話をするようになった。自分もトレーナーであることを明かし、彼女の夢を聞いていた。
『そう言えば、中央での目標はあるのか?勝ちたいレースとかは?』
『私は花のように大切に育てて頂きました。だから…育ててくれた皆様にお礼がしたいんです。大きなレースを、花束のように束ねたいです!』
『おお、野望家だな。GIを沢山取って、皆に渡せると良いな』
『はいっ!』
俺は彼女に何を持たせてやれただろうか。…言ってみろ。彼女は何を持って、地元に帰った?答えてみろ。中央のトレーナー。彼女は何も。何も持たずにここを去ったじゃないか。頭が痛い。やめてくれ。
『君が走る所、見せてくれないか?』
『私の?…私で良いんですか?』
『ああ。君だから見たいんだ。トレーナーとして、君のウマ娘としての実力を知りたい』
『なるほど…分かりました。頑張ります!』
選抜レース、1200mの短距離戦。14番のゼッケンを背負って、彼女はゲートから飛び出した。力強い短距離勢の脚にも負けず、彼女は4コーナーを曲がっていく!
『はあああああああっ!!』
『……!』
あの輝き。短距離レースでありながら、後方から差しに行くあの鋭い末脚。間違いない。彼女は素質のあるウマ娘だ。一気に加速し、直線一気。そのまま先頭を駆け抜け、見事に一着でゴールした!
『やったな!フラワリングタイム!』
『ありがとうございます!…私の走り、如何でしたか?』
『最高だった!』
こんな走りができるなら、本当に夢を掴めるかもしれない。彼女のこれからへの期待に、胸を弾ませた。そして、そんな彼女を担当したいという想いも胸に募って行った。
『えへへ…良かったです。…あの、トレーナーさん』
『ん?』
『もし、よろしければ、私の事を担当して頂けませんか?』
『俺でよければ。…是非とも担当させて欲しい』
『…はいっ!よろしくお願いします!』

ブツリ。と映像が途絶えた。幸せな日々は途絶え、全てが消え去った、冷たい冬が目の前に残っていた。一年半。君は本当によく頑張った。…だから、俺も諦めはつけるつもりだった。
「忘れられないもんだな…」
一年半付き添った担当を失い、次の担当も直ぐには見つからないだろうとの事で休養を貰っているが、どうしても彼女の事が忘れられない。
『何かあったら、ここに連絡をお願いします』
スマホに残された最後のメッセージを見る。彼女が何かあった時の為に残しておいた、最後の連絡。けれど、ここにメッセージを送る事は無かった。自分が声をかけて、また走る事を思い出してしまったら悪いと思ったのだ。
『様子を見に行っても良いか?』
そこまで打って、カチッと電源ボタンを押した。スリープモードの黒い画面を、穴が空くほど見つめる。送っても良いのだろうか。嫌ではないだろうか。不安に駆られ、一歩を踏み出せないでいた。
その時、フワリ。と、枯れた花弁が画面に乗っかった。邪魔なのでどかそうとした拍子に、画面が起動してしまった。そしてそのまま、手を滑らせるように送信ボタンを押してしまった。
「や、やばっ……!」
急いで取り消そうとしたが…既読が直ぐについた。ついてしまった。今更取り消しなど無意味だ。ドキドキと高鳴る心臓を抱え、彼女の反応を待つしかない。5分か、10分くらい経った頃だろうか。音を立てて返信が付いた。
『大丈夫ですよ。少し遠いですが、良ければお越しください』
そうして、送られて来たのは彼女の実家の花屋のホームページ。かなりの大手らしく、広大な敷地が映し出されていた。多分、ここに来て欲しいという事だろう。彼女に許可を貰った喜び半分、嫌ではないだろうかと不安半分で、彼は電車に飛び乗った。

小一時間程電車を乗り継ぎ、夕方頃には彼女の実家へたどり着いた。広大な敷地の大半は花の育成に使用されており、その中にある家とお店、両方を兼用として使われているであろう建物部分へと立ち寄った。
「失礼しまーす…」
「いらっしゃいませ…トレーナーさん!」
「リング!」
バッタリ出会ったのは、店番中のフラワリングタイム。お互いビックリして、それからシーンとなった。何から言うべきか、お互いに迷っているようだった。
「ひ、久しぶり。元気か?」
「…はい。トレーナーさんもその…お変わりなく…?」
「そうだな。変わらず元気だよ」
「そうですか!良かった……えっと、そうだ。立ち話もなんですから、上がってください。これからお店を閉めるので、その後に話しましょう」
「ああ……片付け、手伝おうか?」
「大丈夫です、すぐに終わりますから」
そう言って彼女は、店の片付けへと向かって行った。彼女はてきぱきと商品であろう花を片付けて、10分ほどで完璧な状態で店じまいを済ませた。
「お待たせしました、トレーナーさん」
「ああ、構わないよ。…お店のお手伝いをしてるのか?」
「はい。学園で上手くいかなかった時のプランとして、実家を継ぐ事を決めていたんです。今は見習い練習中…と言ったところです」
「そうか…偉いな」
落ち込んでいないか心配だったが、元気にやれているようで何よりだ。ホッと安堵の息が漏れ、今まで身体に詰まっていた緊張も軽くほぐれた。
「でも、突然どうしたんですか?今まで…音沙汰も無かったですし…」
耳も垂れてシュンと落ち込む。全く連絡されなかったのが、少しショックだったようだ。
「君に声をかけて良いか迷ってたんだ。…もし、俺が声をかけて辛い事を思い出してしまったら、君に悪いと思って」
「トレーナーさん…ありがとうございます。大丈夫ですよ。むしろ、ずっと放置されていて、ちょっと寂しかったです」
ぷくっと頬を膨らませる。背の小ささも相まって、動作の一つ一つに小動物的可愛さがある。
「それはごめん……」
「良いですよ。ちゃんと来てくださいましたから。久々にトレーナーさんと話せてホッとしました」
小さくはにかみ、鈴を転がすように笑った。前と変わらず、愛らしく、可愛かったが、どこか、彼女の目は濁っているように見えた。
「俺も元気な君が見れてよかった。…トレセンを辞めてしばらく経つけど、気持ちの整理は済んだか?」
「…正直に言うと、まだ…です。もう少し頑張れば良かったかなって、ときどき思うんです」
「そうか…でも、あの日出した答えは間違いだとは思わない。君は、自分をしっかり省みて判断を下したんだから」
「ありがとうございます。…」
何かを言おうとして、もごもごと口ごもった。トレーナーもそれには気付いたが、彼女の心情が分からない以上、下手に追求して刺激するのは避けるべきだと思った。
「だから、その、なんだ。あんまり気にしなくて良いからな。来て欲しくなったら呼んでくれ。また見に来る」
「…はい。ありがとうございます」
それじゃあ、様子も見れたしこの辺で、と立ち上がろうとした時、フラワリングタイムが声を上げた。
「トレーナーさん。良かったら、ご飯、召し上がって行きませんか?」
「え?良いのか?…家族に迷惑だったりしないか?」
「大丈夫です。お母さんにも、元担当トレーナーさんだと説明しますから」
「それは助かるけど…」
だとしても迷惑じゃないか?と思っていたが、腹の虫は素直にぐるるるぅ〜…と情けない声をあげた。折角誘ってもらったので、夕食をご馳走になる事にした。

「そうですか、娘がお世話になりました」
彼女の母もウマ娘だった。どこかで見た事あるような姿だったが、イマイチ思い出せなかった。彼女によく似て、とても美人であった。
「こちらこそ、彼女にはお世話になりました。…この様な結果になってしまい、申し訳ありません」
「まあ、気にしないで下さい。貴方にはしっかり、あの子の気持ちを尊重して頂いたのですから」
皿洗いに従事するフラワリングタイムの後ろで、おおよそこんな問答を何度か繰り返してから、トレーナーはそろそろ帰る事を彼女に伝えた。
「では、俺はこれで。ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「お粗末様でした。トレーナーさん。よろしければ…また、あの子の様子を見に来てくださいませんか?」
「ええ、それはもちろん。彼女が望むなら…ですが」
「是非。…あの子、とても元気そうに見えたでしょうけど…昨日まで、あんな様子は見せなかったんです。きっと、貴方が来ると分かって嬉しかったのでしょう」
「……!」
自分が来ると分かって、元気になるものだろうか。まさか、関係も無くなった自分に会いたい訳ではあるまい。だとしたら…もしかしたら彼女は……
「…分かりました。また、必ず」
母親に頷いてから、トレーナーは最後に皿洗いを済ませたフラワリングタイムの方へ足を運んだ。
「リング、今日はありがとう。とても楽しかった」
「えへへ…どういたしまして。もう、行ってしまうんですか?」
「ああ、今日の所はな。でもまた、すぐに様子を見に来るよ」
「そうですか!私も楽しみに待ってますね」
「ありがとう。もし、君が良ければ…次来る時は、君の走りを見せて欲しい」
「私の…走り……」
彼女は一瞬驚き、それからしばらく目を泳がせて躊躇ったが、ギュッと目を閉じてから真っ直ぐにトレーナーの方を見つめて答えた。
「…わかりました。お見せします」
「ありがとな。…楽しみにしてる」
ぽんぽん、といつもの癖で頭を撫でてから、トレーナーは帰路へと向かった。
+ 3話 春のコンタクト
それから数日。有馬記念も終了し、冬のGI戦線も終わりを告げた。冬休み期間に入ったトレセン学園に一旦別れを告げて、トレーナーはフラワリングタイムの元を訪れた。事前に連絡を入れておいたので、今回はすんなりと向かうことが出来た。
「よっ、久しぶり…って程でもないか?」
「ふふっ、お久しぶりです。トレーナーさん。今日は…」
「…ああ。約束通り、君の走りを見せて貰いに来た。準備は出来てるか?」
「はい。大丈夫です」
また日も高い昼頃、二人は近くの公園へと立ち寄った。ここはウマ娘用のランニングコースが用意された公園で、地元の学生であろうウマ娘達がジャージ姿で走り込んでいた。
「お、やってるな。流石はウマ娘だ」
「そうですね…トレーナーさん。本当に私の走りで良いんですか?」
彼は新しい担当を探さなくてはならないはずだ。自分にばかり構ってもらう訳にもいかないだろう。トレーナーは小さく頷いた。
「ああ。君の走りが見たい」
「…わかりました」
軽く準備運動を済ませると、ラチと安全用の仕切りを兼ねている柵の扉部分を開けて、彼女はコースへと降り立った。中央トレセンのジャージが目立つのか、周りのウマ娘は彼女を見てガヤガヤとしていた。
「いつも通りで大丈夫ですか?」
「そうだな。いつもみたいに短距離想定で走ろう」
一週2000m。短距離を想定し、その半分の1000mを走る。ゴール地点にトレーナーが立ち、フラワリングタイムがスタートする。彼女はスタートすると、綺麗にコーナリングを決め、あの頃と変わりない、鋭く差し込むような走りでゴール板を駆け抜けた。その走りは、近くにいた地方のウマ娘達が驚く程に軽やかだった。
「ゴール!…凄いな、あの頃からタイムが落ちてないじゃないか」
「えへへ…たまたまです。それで…走りを見て、なにか分かりましたか?」
「そうだな。色々悩んでたんだが…今の走りを見て確信したよ。君がまだ……走る事を諦めきれていないって」
「……!」
夏に学園を飛び出してからもう半年。何もしていないウマ娘が、自分のタイムを保持し続けられる訳が無い。コースを無駄なく走り抜け、従来通りのタイムを出せるとすれば、彼女がしている事はひとつだ。
「まだ、諦めきれて無いだろ?自主的にトレーニングを積んで…いつかまた、返り咲こうと努力してた。でなきゃ、このタイムは出せないはずだ」
「……凄いですね。トレーナーさん…私が自主練習していた事を見抜いてしまうなんて」
「これでも一応、中央のトレーナーなんでな。君達の事には敏感でいるつもりだ」
そして、そんな君をトレーナーとして放っておくわけにはいかなかった。もし、まだ君が走る気があるなら。まだ頑張れる気力があるなら、再び中央で走ってほしい。
「リング。君が良ければ…もう一度、一緒に走らないか?」
「ありがとうございます。誘って頂いてとても嬉しいです。…私も…もう一度走れたら良いなって。…そう思ってました。ですが…」
彼女の顔が陰った。それから、彼女は自分の胸に手を当てて伝えた。
「…でも、怖いんです。負けてしまったらどうしよう。また、周りに置いていかれてしまう。負ける私が…私は怖い…」
そうして、彼女は目に涙を滲ませた。
「…私は逃げてしまいました。もう負けたくなくて。辛い思いをしたくなくて。大事なクラシック期間も…すべて捨ててしまった。今から復帰しても…私はもう…皆には追い付けない…」
戦いから逃げ出した者に、現実は深く重くのしかかる。もう追いつけない絶望。耐えられない重圧感。これは本人にしか分からない苦しみだろう。
「……そうだな。辛いだろうし、怖いだろう。それでも俺は、君に伝えたい」
すう、と軽く息をつく。そして、真っ直ぐに彼女の顔を見つめた。
「…やらずに後悔するより、思いきって挑戦して欲しい。君はまだ、花開けるはずだ」
彼女の気持ちはよく分かる。負けて悔しかった。負けて苦しかった。全部俺の指導不足だと思った。だから。
彼女は、優しく微笑んだ。けど、その笑みは空元気で作り出したものだ。トレーナーには直ぐに分かった。
「…ありがとうございます。とっても嬉しいです。でも…やっぱり負けるのが怖いです。走れる自信がありません…」
「…そうだよな。それが嫌で学園を抜けたんだ。無理に治せとは言えないな」
「……ごめんなさい」

彼はそっと頭をぽんぽんと撫でた。
「良いんだ。君がその気になったらで良い。君のやる気が知れて良かった。今日はありがとう」
「……はいっ…」
私はなんて情けないんでしょう。こんなにも誠心誠意支えて下さっているトレーナーさんの想いを無下にしてしまって。負けるのが怖くなければ…また…学園に戻れるのに…私は……

「よし、確かめたい事も確認できた。走ってくれてありがとう。そろそろ帰るか?」
「…そうですね。走る気が無いのにコースにいても邪魔でしょうから」
トレーナーが先に扉を開け、コースから出る。フラワリングタイムもそれに続くように、コースを出ようとしたその時だった。
「あの、すみません!」
「「?」」
二人を引き止めたのは、桃色の髪を携えたウマ娘。先程までフラワリングタイムの走りを見ていた、地方のトレセン学園の生徒だった。
「さっきの走り、まっことカッコ良かったです!流石は中央のウマ娘さんですね!」
「…!…ありがとうございます…でも私は……」
それを続ける前に、トレーナーが笑った。
「はは、そうだろそうだろ。なんたってリングはオープンウマ娘なんだ。重賞レースだって走った事あるんだぜ」
「オープンウマ娘!しやり素晴らしいです!」
目を輝かせる地方のウマ娘さん。彼女には本当の事を伝えた方が良いのでしょうか。でも…
「それで、俺達に何か用?」
「あ、いけない…目的をすっかり忘れてました……あ、あの!私と競走して頂けませんか!」
「競走……」
ちらり、とフラワリングタイムは彼の方を困ったように見つめた。地方のウマ娘にとって、中央は憧れの世界であり、目標でもある。一緒に走ったとなれば、自分の力がどれ程なのか知るのにも良い機会になるだろう。
「せっかく頼まれたんだ。走ってあげようぜ。リング」
「そうですね。…私で良ければ、相手になりますよ」
「やったー!ありがとうございます!ええと、どんな距離で走りましょう?」
「君の得意な距離で良いよ。こっちはオープンウマ娘だしな。それくらいはハンデとしてちょうど良いだろ」
「はい、私も大丈夫です。貴方の得意な距離で走りましょう」
「本当ですか?ありがとうございます!私はクラシックディスタンスが得意なんです。それくらいでお願い出来ますか?」
「OK、それじゃあ日本ダービーと同じ2400mにしようか。ぐるっと一周して……ここがゴールだ」
ラインカーで白線をぴーっと引いて、ゴールラインを作り出す。クラシックディスタンス。いわゆる中距離レースの事で、フラワリングタイムはあまり走った事が無い距離だ。
「分かりました!精一杯走らせていただきます!よろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします(…地方のウマ娘さん。彼女も真剣なアスリート。本気で挑まないと失礼ですね)」
ざり、と公園の土を踏みしめる。距離は2400m。走った事が無いわけじゃない。短距離路線で勝てなかった時、何度かトレーナーさんと練習したから。二人はスタートラインに並び、準備を済ませる。

「準備は良いか?用意…!」
ピーッ!と開始の合図が鳴り響く。二人のウマ娘は土を蹴り上げ、力強く第一コーナーへと差し掛かっていく。前を走るのがフラワリングタイム。その少し後ろに、あのウマ娘がつける。
「(差し…!私と同じ作戦ですね…)」
「ほっ…ほっ……!」
華麗なコーナリングにも見事に食らいつき、2バ身ほどの差を保ちながら向正面へとさしかかる。ハンデがあるとはいえ、見事な足さばきだ。
「(良い調子…脚も保てています。これなら…)」
「ふっ!」
────ミシッ……!
「(っ!?)」
トレーナーも驚きの、まさかの中盤からのロングスパート。コーナー入口でフラワリングタイムの横に並ぶと、そのままじわじわと速度を上げて彼女を抜き去っていく!
「(凄い加速……っ!)」
こちらも負けじとスパートを開始するが、やはり慣れない中距離。思ったよりも速度が出ず、彼女との差が全然縮まらない。そのままコーナーを曲がりきると、最後の直線へ入った。

彼女が先。このままじゃ、負ける。

また、負けてしまう。

どうしようもない恐怖が、ずしりと彼女の背中にのしかかった。

嫌だ。負けたくない。負けたくない。あんな嫌な思いは。もう二度と…

脚が重い。もう、辞めてしまいたい。やっぱり、私は……

「頑張れ!」

トレーナーさん…応援してくれてる…
……ねえ。逃げるの?私。
逃げて、逃げて、逃げて。辛い思いをしなくて、それで満足?
違うでしょ。…本当は分かってる。怖いけど。嫌だけど。でも。
私は……

『私は走りたい!走って勝ちたい!』

瞳が燃える。闘志が揺らぐ。今、胸の中に燃え盛っているこの想い。忘れていた。僅かに揺らめく想いの篝火。とても小さい。けれど、この想いは絶対に消えない。私という命尽きるまで、決して燃え尽きる事は無い!

「っあああああああああああ!!!」
「っ!来たッ!」
風を切り裂く音。吹き抜ける突風。もう伸びないかと思われたフラワリングタイムは、末脚を繰り出して加速し始めた!ラスト200m。ロングスパートを仕掛けていた彼女の横に再び並び、ゴール板直前で一気に半バ身差をつけて圧勝した!

「はぁ…はぁ……勝った…!」
「ぜぇ…はぁ…ま、負けたーっ!悔しー!」
ヘロヘロになって倒れ込む彼女を、フラワリングタイムは優しく抱えて介抱した。傍から見ていると、二人ともとても楽しそうな顔をしていた。
「良い走りでした。思わず胸が熱くなっちゃいました!
「えへへ…ありがとうございます。私もです!」
「二人ともお疲れ様だったな。白熱したレースだった」
周りには他にもウマ娘や一般人もいたが、二人の白熱したレースを見て拍手やら声援やらが贈られてきていた。二人も照れくさそうに顔を赤くしていた。
「ありがとうございます。フラワリングタイムさん、凄く強かったです!」
「貴方もとても強かったですよ。ええと、お名前を伺っても?」
「いけね…名乗り忘れてました。私、ハルノコンパクトって言います」
「素敵なお名前ですね。…ありがとうございます、ハルノさん。楽しいレースが出来ました」
「こちらこそ…ありがとうございました。トレーナーさんも、ありがとうございますです!」
「ああ、どういたしまして。…それじゃ、今度こそ戻るか」
「はい。…そうだ、ハルノさん。良かったら連絡先、教えて貰えませんか?」
「えっ!?良いですけど、私なんかの連絡先、使いますか?」
「はい。一緒に走った友達ですから。良ければ、これからも仲良くして欲しいなって思ったんです」
「…!こ、こちらこそ!お願いします!」
こうして、ハルノコンパクトの活躍によって、フラワリングタイムの心に再び闘志が宿った。二人は友達として連絡先を交換し、お互いの事について文章で語り合ったりしたのだった。

…その日の帰り道。

「面白い子だったな」
「…はい。最初は驚いちゃいましたけど、凄く素直で素敵な人でした」
トレーナーも先程の走りを見てから、なんだか顔色が明るく見えた。フラワリングタイムが、楽しそうに笑っていたからだった。
「…俺も彼女に学ばされたよ。君に何を教えるべきだったのか、やっと気付いた」
「……それって…?」
「走った後の君達を見て分かった。楽しそうに微笑む君。負けても楽しそうに笑ってた彼女。レースが楽しいものってことを、君に思い出させるべきだった」
「……!」
確かに、負けるのは怖かった。私もトレーナーさんも、負けて落ち込む事ばかりに目がいって、肝心な事を見落としてしまっていた。レースは楽しいものなんだ。真剣勝負。本気で挑む。その通りだ。間違っていない。でも、楽しむ事を忘れたら心は疲れてしまう。私たちは、二人揃って見落としてた。こんなに簡単な事なのに。

私達、似たもの同士なのかもしれませんね。

「…もう一度、聞いても良いか?」
トレーナーがその場に立ち止まる。夕陽が映る川沿いは赤く照らされ、とても綺麗で美しかった。
「もちろんです。どうぞ」
まるで愛の告白でもするかのように、トレーナーは彼女を見つめた。泣きそうなのを堪えているのが、フラワリングタイムからも分かった。ちょっと可愛らしかった。
「また、俺と一緒に走ってくれないか?…君と二人で、レースを思いっきり楽しみたい!」
「…はい。喜んで。私も貴方と…レースを楽しみたいです!」
ずっと言いたかった言葉。ずっと秘めていた言葉。二人はその言葉を伝えて、それから、二人揃ってボロボロと泣いていた。そして笑っていた。彼女は、トレセン学園を戻る事を決意したのだった。
+ 4話 ダイヤモンドS
冬休みも終わり、ウマ娘達が学園へと戻る時期がやってきた。可愛らしい学園の制服を着て、フラワリングタイムは今一度学園の門を潜ったのだった。突如いなくなったことで同期や先輩からも大変心配されていたらしく、戻ってきてからしばらくは色々な子に声をかけられていた。
「お待たせしました。トレーナーさん」
「おう。今日も可愛がられてたな」
「はい…皆さん、本当に心配してくれてたみたいで…申し訳ないです…」
「まあ、半年くらい音沙汰無しだったし仕方ないな。学園には無事に戻れた訳だし、じき落ち着くさ。…さて、今日はちょっと君に提案がある」
「なんでしょう?」
「これから走る君のレースなんだが…短距離路線から別の路線に変えてみないか?」
「えっ……!?」
まさかの提案。路線を変えるというのは、そう簡単な事ではない。我々の肉体も、短距離向きの筋肉がつく者や、長距離向きの筋肉がつく者がいるように、ウマ娘にも得意距離というものが存在する。自らの筋肉と合致した適性距離を選ばなければ、当然その道のスペシャリストに蹂躙される。超一流のウマ娘でも無い限りは、路線を変えるのは悪手という事になる。
「えっと…構いませんが……どうして路線変更を?」
「この前、君と一緒に走ったあの子だ。彼女の事が気になって調べてみたんだが、彼女は大井所属でAクラスを走ってるらしい」
「Aクラス…!」
大井と言えば、地方の中でも最強クラスの南関東トレセンの代表。国内ダート最強候補を送り出す強豪校だ。そして、Aクラスはその大井の中でも最強のグレード。交流戦で中央の猛者と叩き合いを行う程だ。
「君の方が力は上とはいえ…君に不利なバ場、距離で対等に渡り合えるハズが無いと思ったんだ」
「なるほど…それで私に…」
「ああ、もしかしたら中距離以上にも適性があるんじゃないかと思った」
距離適性があれば、不利なバ場だとしても最後に差しきる事も出来るだろう。
「分かりました。やってみます!…具体的にはどの路線を目指しましょうか」
「まだ具体的には決められないな。中長距離を走ってみて、適性があれば長距離路線も視野に入れよう」
「はいっ!」
それから彼女達は、試行錯誤の段階へと入った。自らの適性を知る為、あらゆるコースを走る。マイル路線、中距離路線、長距離路線。普通は一通り走ればどこが得意かは分かるが、困った事に、どのコースで走ってもそこそこ良い成績が出てしまうのである。
「…ふう、終わりました!」
「お疲れ様だな。タイムはいい感じか…困ったな。これじゃどの距離が本当に得意なのか分からないぞ…」
「そんな……」
ガーン、とショックを受ける。どう距離を変えても、ラストの末脚のキレが変わらず、タイムもそこそこ止まりに落ち着いてしまう。オールラウンダーと言えば聞こえは良いが、要は器用貧乏である。
「まあでも…ここまで何度も走りを見れば傾向は分かってきたな。君は短距離向きと言うよりは、中長距離向きのウマ娘だろう」
「えっ!分かったんですか!?」
「ああ。かけっこが得意で、短距離路線でも勝ててたから勘違いしてたが…君の本当の武器はそのスタミナだ」
スタミナ。言われてみれば、色々なコースをこなしたはずなのに、身体はあまり疲れていない。基本的に、中距離を走れるだけのスタミナはスプリンターには無いはずだ。
「じゃあ私…本当は長い距離の方が強いってことですか?」
「かもしれない。だが、短距離よりは確実に得意なはずだ。…挑戦してみないか?中長距離、王道路線!」
「…わかりました。挑戦してみます!」
こうして、二人の新しい戦線が始まった。復帰と共にフラワリングタイムは中長距離路線へと目標を変更し、挑戦を開始した。始動は、2月開催のダイヤモンドS(GIII)。短距離路線を走っていた娘がいきなり3400mを走るという事になったので、GIIIながらにそこそこ話題を呼んだ。

とはいえ、去年の8月からのブランク。更にクラシックを棒に振ってしまったこともあり、人気はドベの16番人気。勝てるか勝てないか、客観的に見れば、勝てない要素の方が圧倒的に多かった。
「こうして体操着を着るのも、久しぶりですね」
「だな。サイズは大丈夫か?」
「はい、ピッタリです。…あの、トレーナーさん…」
「どうした?」
「その、もしこのレースで勝てたら…頑張ったねって褒めてくれませんか?」
「もちろん褒めるさ。それに…君はもう十分頑張ってるよ。偉いな、リング」
ぽふぽふ、と優しく頭を撫でる。手を離すと、触れられたアホ毛が嬉しそうにぴょこんと跳ね返った。それから、トレーナーは続けて言った。
「君は強い子だ。思いっきりやれば、絶対に結果はついてくる。全力でぶつかってこい!」
「…はいっ!」

東京競バ場。芝3400m、左回り。16人のウマ娘達がターフに降り立ち、それぞれ出走の時を待ち続けていた。G3だけあって、メンバーも錚々たるものが揃い、GI天皇賞・春への出走を予定しているウマ娘もいた。メンバーもガラリと一新しただけあって、フラワリングタイムは若干浮いていた。
「(やっぱり少し気まずいです…)」
「フラワリングタイムさん」
「ふぇっ!?は、はいっ!…あっ、ルミナスさん!」
「覚えていて貰ったようで何よりです。まずはご復帰、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます!ルミナスさんもご活躍されてるようですね」
「そうですね。ステイヤーとして、活躍の場を頂いています。今回も勝たせて頂くつもりです」
彼女の名は、ホープルミナス。フラワリングタイムの同期だ。菊花賞で2着に入り、そのまま次走のステイヤーズステークスでも、シニア相手に2着。期待の新人ステイヤーとして活躍しており、今回のレースは一番人気に選ばれていた。
「流石ですね。私も負けませんよ」
「ええ。…復帰出来たのは喜ばしい事ですが、勝負となれば別です。全力で潰させて頂きますよ」
「望むところです!」
そして、ファンファーレが鳴り響く。全員が続々とゲートインを済ませ、スタートの準備を整える。フラワリングタイムが入ったのは、内枠の1枠2番。長距離レースとしては、圧倒的に有利な内側。運が向いてきていると言っても良かった。

『各ウマ娘ゲートイン完了…!スタートしました!』
────ガコンッ!
「はっ!」
好スタートを決め、一気に中団に入り、内側で脚を溜める。先頭を駆け抜けるのは、大逃げを宣言した、8枠16番のフジノタカ。ハイペースで坂をかけ登り、2番手のホープルミナスから4バ身差を広げて走る。コーナーの緩やかな坂で加速し更に逃げて差を広げ、8バ身差ほどで一気に向正面へとかけていく。
「(無理について行く必要は無い。ハイペースで警戒すべきは逃げウマよりも後方の差し…)」
先行策で前に出たホープルミナスは息を潜めながら、前をゆっくりと駆け抜けていく。すると、周りの先行ウマ娘達は広げた差を縮めようと前に前に進んでいく。ペースが加速していく。
「(焦らなくても大丈夫…!トレーナーさんと何度も練習したから!)」
フラワリングタイムは、後方後ろから3番手に控えていた。大逃げしているウマ娘とはかなりの差があるが、焦る必要は無い。これは3000m越え。この大きなコースを一周半もしなくてはならない。大逃げをかませば、必ず潰れる。そして、それに着いていく者も潰れる。焦れば焦るほど、最後に不利になるのだ。
「(…そろそろ仕掛けますか)」
一週目が終わり、勝負の二週目へと差し掛かる。坂を登り、緩やかな下り坂の第三コーナーへ。既に2000m以上走っている。フジノタカを筆頭に前を走っていた面子に疲れが見え、段々と群れが散り散りになっていく。
────ゴォッッ!!
そして、その隙間を縫うように、一陣の風が突風となって駆け抜けた。その娘こそ、一番人気のホープルミナス。第三コーナーの終わりと同時に、バテて沈んできた先行組を抜きながら一気に先頭へ襲いかかる!
『きたきたきたァ!!一番人気のホープルミナス!バ群を通り抜け、先頭を走るフジノタカ目掛けて突き進んでいく!』
「やはり来たか…!流石は菊花賞で2着に入っただけある…!」
応援していたトレーナーも、流石にこれは冷や汗が流れる。彼女は言うなれば格上。伸びてくるのは分かっていたが、まさかこれ程の力があるとは。
「リング…!行けるか……!」

「(…行けますよ、トレーナーさん!)」
見つけた。下り坂を駆け抜けながら、切れたバ郡の内側へと差し込む。誰もいない内ラチ沿いを最短距離で駆け抜けながら、一気にトップ3の争いにくい込んでいく!
『さあ!ここで内側から一人ウマ娘が伸びてきた!あれは……フラワリングタイム!?』
どよめく場内。無理もない。彼女は16番人気、まさかここで伸びてくるとは。じわじわと加速していくフラワリングタイム。最後の直線。高低差2mの坂が、スタミナを奪い尽くされたウマ娘達に力強くのしかかる。先頭を駆け抜けていたフジノタカが沈んでいき、最後はフラワリングタイムとホープルミナスの一騎打ちになった。
「(伸びてきましたか…ですが、貴方の出現も想定内ですッ!!)」
「(絶対差し切るッ!登れぇぇぇぇっ!!!!)」

────ダンッッッ!!
坂を登りきり、ホープルミナスが一番手で最後の直線に差し掛かる!ここからは末脚勝負。キレのある差しのウマ娘達も、後ろからどんどん加速していく。
「負けない…!負けないッ!」
フラワリングタイムは持てる力を全て振り絞り、更に加速していく。ラスト200m。じわじわ伸びるフラワリングタイムの脚に、観客は驚きと喜びの声を上げていた。しっちゃかめっちゃかになる観客席の中で、トレーナーは静かに叫んだ。
「走れ!フラワリングタイム!!」
「っ…はあああああああああっ!!!」
「(抜かせない!…)…負けるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そして、二人は並んでゴール板を駆け抜けた。大興奮の観客からは悲鳴のような喜びのような様々な声が舞い上がり、GIIIとは思えないほどに盛り上がった。掲示板を見ると、写真判定となっていた。

果たして、どちらが。全員が固唾を飲んで見守る中、ついに判定がついた。

1着 ホープルミナス 3:31.2
2着 フラワリングタイム ハナ
3着 オリエントトレイン 1/2バ身
…

勝ったのは、ホープルミナスだった。一番人気の勝利に会場は盛り上がり、フラワリングタイムの健闘に会場は更に盛り上がった。盛り上がる会場の中、フラワリングタイムは悔しそうに息を整えていた。
「…お疲れ様でした。良い走りでした」
ガシッ、と差し伸べられた手を掴む。
「ありがとうございます…!」
しかし、その目は、かつて勝てずに落ち込んでいたフラワリングタイムのものでは無い。互いに激闘を繰り広げた、猛者のそれであった。次は負けない。目がそう語っていた。
「…その様子だと、一皮むけたようですね。喜ばしい事です」
「ありがとうございます。…また、一緒に走りましょう!」
「ええ。次の対戦を楽しみにしています。…行きましょうか、ウイニングライブ」
「はい!」

こうして、フラワリングタイムの復帰初戦は、2着という好成績を収めた。これには周りのウマ娘達も驚き騒いでいたが、実のところ、一番驚いていたのは本人であった。
「トレーナーさん、戻りました!」
「おかえり。頑張ったな、リング!」
「はいっ!…えへへ…私、こんなに力が出せたんですね…!」
GIIIとはいえ、菊花賞2着のウマ娘相手にここまでの接戦。そして、最後の振り絞り。きちんとスタミナを残せていた証拠である。長距離適性は間違いなくあると言って良いだろう。
「ああ。凄い走りだった!偉いぞ〜」
「えへへ…そんなに撫でられたら恥ずかしいですよ〜…」
「沢山褒めて欲しいって言ってたろ。よーしよしよし!」
「言いましたけど〜…」
よしよしよし。それはそれは嬉しそうに、彼はフラワリングタイムの頭を撫でた。

嬉しそうに笑うトレーナーさん。とっても白熱したレース。…そっか。やっぱり、レースって楽しい。
+ 5話 悪戦苦闘
こうして、フラワリングタイムは徐々に活躍を見せていく事になる。冬が終わり、春のGI戦線が訪れた。とはいえ、フラワリングタイムは賞金不足。まずは賞金を積むべく、賞金ギリギリ、滑り込みセーフ枠で、日経賞(GII)へと出走していた。前走がかなり強い走りだった事もあり、そこそこ人気は伸びたが、相手は天皇賞・春に向けてステップレースとしてこのレースを使うメンバー達。彼女達相手では部が悪く、8番人気止まりであった。
『さあ!最終コーナーを曲がって、最初に駆け抜けてきたのはトルマリン!しかし後続も詰めてきている!』
「はあああっ!」
『おっと!ここで外から伸びてきたのはフラワリングタイム!更に大外からトリプルジェットが襲いかかる!』
「っ…あああああっ!!」
『決まったああああああ!!トリプルジェット!差し切ってゴール!!力強い走りで、見事に日経賞を制しました!』
流石に格上なだけあり、勝利を掴むことは出来なかった。しかし、4着としっかり掲示板に入る活躍を見せ、応援してくれたファンの皆を大いにわかせた。そして、彼女の前走がフロックでない事の証明にもなった。
「はぁ…はぁ……ごめんなさい、届きませんでした…!」
「大丈夫だ。ちゃんと掲示板に入れただけ立派だ。とはいえ…君と皆には、夏合宿分の大きな差が開いてる。それを埋めるには長い時間がかかると思うが、頑張れるか?」
「……はい。頑張ります!絶対に埋めてみせます!」
「よし、その意気だ!これからもビシバシ鍛えて行くぞー!」
「おー!です!」
次走は、5月開催の目黒記念(GII)。2500m戦であり、長距離レースというよりは中距離レース区分に近い。今回はフラワリングタイムが中距離レースに適性があるかどうか確認する為に出走するレース。シニア級が相手とはいえ、面子はステップレースより1段落ち、フラワリングタイムはオープンウマ娘ながら、5番人気とかなりの人気を集めていた。
『さあ!ここからスパート!一気にレースが動きます!最初に上がってきたのはミヤビリボン!これはセーフティリードか!?』
「(しまった…!スローペースで逃げられた!差しきれないッ!)」
『逃げる逃げる!後ろのウマ娘達も追いかけるが差は縮まらない!これは決まったか!?』
「(少しでも…前へ……ッ!!!)」
『2番手のトルマリンが迫るが、まだ余裕がある!ミヤビリボン!今ゴールイン!!見事に重賞二連覇を達成しました!』
しかし、フラワリングタイムは得意の差し戦法が上手く刺さらずに6着。スローペースで流れると後方待機勢が不利になるのは鉄則だが、フラワリングタイムにはそれを捲るだけの末脚が無かった。力不足を感じさせられる一戦であった。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ…ふぅー…フラりん!今日もお疲れー!」
「トルマリンさん。お疲れ様です」
「サンキュー!いやー、悔しいね!まさかミヤビんがミドルペースで逃げてたとは!」
「はい…私もすっかり騙されました」
ステイヤーは出れるレースが少ない関係で、割と同じメンバーと走りやすい。トルマリンとは前走も一緒に走った仲という事で、友達になっていた。こうした友達が増えていく事も、フラワリングタイムの心の支えになっていた。
「次こそ差し切りましょうね!」
「だねー!次は勝つ!」
そして、この2戦を終えてから春の戦線は終了。負け込んでこそいたが、少しずつ強さの片鱗を見せ始めていた。

夏。再び合宿の時期になり、トレセン学園には夏の日差しが容赦なく照りつけ始めていた。今年はフラワリングタイムも合宿に参加するため、バスの発着所に並んでいた。
「おはよう。リング」
「おはようございます。トレーナーさん」
「今年は行けるな、夏合宿」
「はい!…去年はすみませんでした…」
「大丈夫だよ。去年は君も追い込まれてたんだ。そこからきちんと復帰出来たんだから、それで十分だよ」
ぽふぽふ、と頭を撫でる。相変わらずの癖だ。それでも、フラワリングタイムは嬉しそうだった。去年は諦めた夏合宿に、ついに行くことが出来るのだから。
「はい…私、頑張ります!」
「ああ、俺も期待してる。お互い頑張ろうな」
「はいっ!」
夏合宿。それはウマ娘達が大きく成長するために避暑地へと合宿に赴き、夏が終わるまで本格的にトレーニングに打ち込む期間である。この時期はGIレースが無く、王道路線を走るウマ娘達はあまりレースに出走しないため、全力で特訓を行える夏合宿はとても都合が良いのだ。
「はあああああああああっ!!」
砂を蹴り上げ、一気にトレーナーの目の前を通過する。タイムを確認し、トレーナーも軽く頷く。
「良い調子だ!末脚もだいぶ仕上がってきてるな!」
「本当ですか!やったー!あ、あれ…」
喜んだと同時に、力が抜けてばしょんと砂の上に倒れる。無理もない。朝から夕方まで全力でトレーニングを行っていたのだから。
「限界みたいだな。今日はこの辺りで休もうか」
そう言って、彼は優しく彼女をお姫様抱っこした。
「はい!…って!?トレーナーさん!?自分で歩けますよ!?///」
「倒れるほど疲れてるんだろ?無理に動いて怪我したりしたら大変だ」
「そ、それはそうなんですけど……///」
見ての通り、フラワリングタイムはめちゃくちゃ意識してる。だが、トレーナーは違った。彼女は異性と言うよりは、親戚の子くらいの気分で接していたので、今自分が彼女をとてつもなく女の子扱いしている事に気付かなかったのだった…

甘ったるい二人の関係とは裏腹に、トレーニングは過酷を極めた。彼女の遅れは他のウマ娘の一年分。生半可なトレーニングでは、前年度の夏合宿を乗り越え、更に鍛え上がったシニア級にはくらい付けないと判断したからだ。早朝から夜間まで。みっちりと走り込みを続けた。だが、その甲斐あってか、フラワリングタイムの身体は着実に進歩を遂げていた。
「はああああああああっ!」
「おりゃああああああ!!」
彼女が併走しているのは、以前日経賞で全く届かなかったトルマリン。彼女の素早いペースに、遅れることなく食らいついているのだ。そのまま、二人並んでトレーナーの前を通り抜けた。
「ゴール!二人とも良い調子だ。競り合いでのスタミナ消費を上手く抑えられてるぞ」
「よっしゃー!トレーナーに褒められたー!ありがとね!フラりん!」
「こちらこそ、併走して頂いてありがとうございました!」
「気にしないで!それじゃあ私、やることあるから行くね!」
「はい、ありがとうございましたー!」
トルマリンは日経賞での好走から、GI天皇賞・春にも出走した手練。天皇賞制覇には至らなかったが、掲示板に入るなど実力を遺憾無く発揮した。彼女に食いついていけたのは、間違いなく成長を遂げたと言って良いだろう。
「良い走りだった。これなら、今年は重賞戦線も勝っていけるかもしれないな」
「えへへ、ありがとうございます。…でも、相手も成長していますよね」
「そうだな。長距離路線を走るなら無視できないのが……」
ふと、鋭く潮風が砂浜を吹き抜けた。二人の視線の先にいたのは、今年の天皇賞・春を制覇したホープルミナス。覚醒した彼女の走りは凄まじいもので、2着に4バ身もの差をつけてGIを制覇したのだ。シルバーコレクターの名を返上し、一躍世代の頂点へと立ったのだった。
「ルミナスさん…!更に腕を上げましたね…」
「そうだな。菊花賞ウマ娘、ディープヤードに4バ身差をつけての勝利。間違いなく強敵になるだろうな」
そして、吹き抜けた潮風の先にいるのは、菊花賞ウマ娘のディープヤード。最も強いウマ娘が勝つと言われる菊花賞を勝った後に療養を挟み、休み明けの天皇賞・春にて敗北。こちらも自らを鍛え上げ、ホープルミナスへの勝利に燃えていた。
「そして…彼女も侮れないな。ステイヤー気質が強いスタミナ勝負での先行粘り勝ち。戦歴から見て、君と何処かで当たるのは先ず彼女だろう」
「ヤードさん…!菊花賞ウマ娘ですよね…私は…勝てるでしょうか…」
強敵を前にして、だんだん自信が無くなってきたフラワリングタイム。しかしトレーナーは、心配するな、と彼女の肩を優しく叩いた。
「大丈夫。君はあのホープルミナスにハナ差まで迫れたウマ娘だぞ。絶対勝てる!」
「…そうですね…頑張ります…!」
+ 6話 オールカマー
そして、熱い夏合宿の時期は終わった。夏合宿明け、二人が最初に目標としたのは、GII、オールカマー。秋のGI戦線に向けてステップレースとして使用するメンバーが多く、毎年大きく盛り上がるGIIのひとつだ。
「オールカマーは芝2200の外回り。君にはちょっと短い距離だが、外回りはスタミナの有無が鍵になる」
中山競バ場、外回りのコースは、最初に坂をかけ上る。その後、大きなカーブの坂を登ってから、緩やかにカーブを下っていく。コースを一周し、更にもう一度、直線に差し掛かったところで最後の坂をかけ登ってゴールだ。平坦なルートで走れないので、見た目以上にスタミナが必要とされるコースになる。
「鍛え上がった今の君なら、今回集まった猛者達が相手でも絶対勝負になる。自信を持って挑んでくれ」
「大丈夫です。…自信は貴方につけてもらいました。必ず、良い結果を持ってきます!」
「その意気だ。行ってらっしゃい」
「はい。…行ってきます!」
オールカマー。かつて、オグリキャップやビワハヤヒデ等もここを勝利し、GI戦線に名乗りを上げたスーパーGII。勝者には天皇賞・秋への優先出走権も渡される程のグレードレースだ。誰も彼もがGI級。オープンウマ娘のフラワリングタイムでは流石に分が悪く、人気も16人中の9番人気とかなり低かった。
そんな精鋭達の中でも人気を集めたのは、フラワリングタイムの一つ上の世代、ダービーウマ娘のメジロエースであった。彼女はジュニアGIも制覇しており、既にGIを二つも取っていた。
「行ける、エース?」
「大丈夫です、姉様!」
そんな彼女が何故オールカマーに出走しているかと言うと、今まで怪我で出場出来ていなかったから。久々の大物の出場ということもあって、彼女のファンがどっと中山競バ場に集まった。
「フラりんちゃん!」
「エース先輩!復帰出来たんですね!」
「えへへ。皆のお陰様でね。…今日はライバルだね。全力でぶつかろう!」
「はいっ!負けませんよ!」
握手をかわし、二人はパドックへと向かっていく。強敵達が、最後に入場してきた二人を見つめる。前に立つのは歴戦の猛者。フラワリングタイムは、それにも負けていなかった。
「(勝負です。…皆さん!)」

────ガコンッ!!
ゲートが開き、一斉にウマ娘達が坂をのぼっていく。フラワリングタイムはいつもの後方へ。一番人気のメジロエースは、先行策で前から4番手を追走していく。大きな坂をゆったりと登っていき、第二コーナーを駆け抜ける。
「(後ろなら前の様子がよく見える…!どのルートで抜ければ…)」
バチバチッ!と見えない電撃が頭の中を走った。鍛えた身体が、本能的にレースにのめり込む。蓄えた知識が、自然と身体を突き動かす。分かる。行ける。どこを通れば前へ抜けれるか、ハッキリと見える。
『さあ!第三コーナー!最初に駆け抜けるのはフジノタカ!続いて3バ身後ろに一番人気!メジロエースが迫っている!』
「(ここからが勝負だよ…!)」
先頭を駆け抜けるフジノタカが直線に入るとほぼ同時に、後ろのメンバーも猛スパートをかけはじめる。それはまるで、背後から迫る荒波。下り坂の加速を利用して、一気に距離を詰めていく。
「はあああああああっ!」
「くっ……!?」
中でも圧倒的な末脚を見せたのは、やはり一番人気のメジロエース。彼女は坂にさしかかる前にフジノタカを抜くと、一番前を突き進んでいく。復活したダービーウマ娘。その活躍にファンは大歓声を上げた。このまま、一気にちぎるか。否。それに待ったをかけるものがいた。
────ゾクッ…!
「(この足音…!上がってきたね!)」
『メジロエース先頭!このままちぎるか……いや!外から迫ってくるのは…!フラワリングタイムだ!!』
「あああああああああああッ!!!」
咆哮を上げ、一気に駆け上がるフラワリングタイム。その凄まじい末脚は、中距離のスペシャリスト達にも引けを取らない程だ。土を踏み締め、力強く蹴り上げる。最終直線、スタミナが落ちたウマ娘達を襲う、試練の坂。けれども、彼女は全く速度が落ちない。坂にも負けない力。フラワリングタイムの末脚は、更に上のレベルへと成長していた。
「(…でも、負けない!)…はああああああああああっっ!!!」
「(私が……勝つ!)…あああああああああっ!!」
坂を登りきる。メジロエースが持っているリードは半バ身。坂での負担差が出たのか、ほとんど互角と言っても良い末脚。であれば、フラワリングタイムに勝てる要素は無い。諦めるしかないのか。
「頑張れ!リング!」
「(…トレーナーさん…!)…諦めるもんかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
脚が重い。腕が痺れる。限界だ。それでも。それでも。私はハイペースで走り抜けた。周りはよく見えなかった。少しでも前へ。それだけを考えて、走り抜けた。ゴール板を通り抜けると同時に、疲れがどっと押し寄せてターフに倒れ込んだ。筋肉が重い。適性距離とはいえ、本来はステイヤーの肉体。不慣れな中距離のペースで走ったせいで疲れが溜まって悲鳴を上げている。
「(結果は……どうなった…?)」
「お疲れ様、フラりん!」
「あ…お疲れ様です。エース先輩」
掲示板を見ようとしたその時、メジロエースが彼女の前に姿を表した。彼女の手を借りて、よろめきながらもなんとか立ち上がる。改めて掲示板を確認すると…

1着 メジロエース 2:11.8
2着 フラワリングタイム アタマ
3着 サマーローズ 1/4バ身

…負けていた。もうあと一歩。彼女には届かなかった。それでも、オールカマーでこの順位。決して恥ずかしい結果ではなかった。勝者を讃える拍手と、フラワリングタイムに向けられた健闘の拍手が会場から湧き上がる。
「凄いね、あと一歩で捕まる所だったよ!」
「えへへ…ありがとうございます。次は絶対、逃がしませんからね!」
「ふふ。次も私が勝つよ!今日はありがとう!とっても楽しかった!」
「はい!私もです!」
+ 7話 アルゼンチン共和国杯
オールカマーも終わり、秋のGI戦線がスタートした。フラワリングタイムも賞金は十分に積み重なったため、GIへの出走が可能になった。とはいえ、秋のGIは中距離戦やマイル戦が多い。更に得意距離の有馬記念はファン投票で選ばれる必要があり、参加は厳しいと判断した。天皇賞・秋への出走も視野に入れていたが、2200m戦でメジロエースに惜敗し、彼女がそのまま出走するとなると流石に分が悪いため、回避する事になった。
「というわけで次の目標だが…普通に行くとなると、ステイヤーズステークスになるな」
「ですね。…あの、トレーナーさん」
「どうした?」
「次は、アルゼンチン共和国杯に出られませんか?」
「アルゼンチン共和国杯か…構わないが、一体どうして?」
「私、出たいGIがあるんです。それに出るには、ステイヤーズステークスだと遅すぎるんです」
フラワリングタイムの適正であり、ステイヤーズステークスだと間に合わないGI。となれば、彼女が出たいGIはひとつだ。
「なるほど…有馬記念に出たいって事か」
「はい!なので、賞金を集めて…票を頂くためにアルゼンチン共和国杯に!」
「分かった。君がそう言うなら、有馬記念を目指そう!次の目標はアルゼンチン共和国杯だ!」
「…ありがとうございますっ!」
「どういたしまして。…でも、どうして有馬記念に出たいんだ?」
「実は…約束したんです。ハルノコンパクトさんと」
「彼女と…!」
携帯を見せてもらうと、彼女との約束が履歴に残っていた。今年じゅうに、お互いにGIに出場しようと約束を取り決めたのだ。彼女はGI、東京大賞典に出走する予定らしい。
「なるほどな。約束、しっかり守ってあげないとだな!」
「はいっ!」

GII、アルゼンチン共和国杯。その名の通りアルゼンチンで開催される…訳ではなく、東京競バ場で行われる。芝2500m。左回り。スタートからゴールまで3回も坂を昇る必要があり、かなりのスタミナが要求される。スタミナたっぷりのフラワリングタイムの適正としてはピッタリだ。
「有力なメンバーは皆GI戦線に出払っているが…安全安心とは言えないな」
「ですね。ステイヤー路線の皆さんが顔を出していますし…それに…」
まず最初に、ミヤビリボン。重賞戦線で着実に勝ちを拾い、GIにも出走した事がある強敵だ。続いてマチカネソナタ。中距離路線で活躍するシニア級ウマ娘で、京都大賞典を制覇している。そして警戒すべきは、同期の菊花賞ウマ娘、ディープヤード。スタミナはメンバーの中でも破格で、今回のレースでは一番人気を背負っていた。
「フラワリングタイム、久々だな」
「リボンさん、お久しぶりです!」
「また腕を上げたと聞いている。今日は全力でぶつかろう」
「はいっ!…そう言えば気になっていたんですが…」
「ああ、私も気にしていた所だ。…彼女、一体どうしたんだろうな」
二人が気にしているのは、一番人気のディープヤードの様子。誰から声をかけられても返事する事は無く、一人でじっと考え込んでいる様子だった。集中していると言えばそれまでだが…
「(……私はもう、負ける訳にはいかない…)」
菊花賞の後、ディープヤードは負けが込んでいた。天皇賞・春で敗北し、続く宝塚記念でも4着。有馬記念への参加さえ危ぶまれる状況だった。これ以上醜態を晒す訳にはいかない。ここを勝って、私は最も強いウマ娘に返り咲く。
その瞳に、青い炎が宿っていた。

『お待たせいたしました!いよいよウマ娘が本バ場入場です!15人の精鋭達がターフに集います!』
「頑張れー!フラワリングタイムー!」
「はい!頑張りまーす!」
前走のオールカマーの激走が響いたのか、彼女はOP戦以来の人気枠、二番人気に選ばれていた。鳴り響く歓声に答えながら、トレーナーの方にチラッと視線を向けた。
「(頑張れ、リング!)」
「(……はいっ!)」
互いに頷き、ゲートインを開始する。フラワリングタイムは1枠1番。幸運な事に、最内枠を引き当てていた。最初に枠に収まると、後ろのウマ娘達も続々とゲートに入っていく。順調にゲートインが進むかと思いきや、一人ごねているウマ娘が。
「いやー!今日は狭いところダメなの!占いに書いてあったんだから!」
ごねているのはマチカネソナタ。綺麗なソプラノの声を悲鳴っぽく奏でて、係員を必死にお尻で押しのけていた。あははは…と皆が笑う中、青い炎がゆらりと煌めいた。
『とっとと入れ』
「…ひゃ!?は、はいいっ…入ります…!」
誰かが喋った訳でもない。ただ、ディープヤードが睨みをきかせただけ。それだけで、彼女は大人しくなり、おずおずとゲートの中に入っていくのだった。その異様な光景に、笑っていたウマ娘達も不気味な何かを感じ取った。
「(今のは…ディープヤードさん?)」
「(…惑わされるな、私。レースに集中しなくては)」
そして、ゲートインが完了する。観客もしんと静まり返り、発走を今か今かと待ち続ける。今回、フラワリングタイムは勝利を確実なものとするためにある作戦を用意していた。
『各ウマ娘体制完了!…今!』
────ガコンッ!
『スタートしました!各ウマ娘順調に…おおっと!フラワリングタイム!最後方からのスタートです!出遅れたか!?』
観客からどよめき。人気枠の彼女がまさかの一番後ろを走っているのだ。しかし、フラワリングタイムの様子は落ち着いていた。
「(…今回の作戦は追込。最後の最後まで足を溜めて、最後の直線で仕掛ける!)」
夏合宿のトレーニングを思い出す。
『率直に言うとだな…君の末脚は、いたって普通の平均的なものだ』
『平均的……』
『速度と加速、共に並のウマ娘くらいの才能しかない。良い所までは行けるが、勝ち切るには速度が足りないって感じだな』
『そうですか…私、やっぱり才能がないのでしょうか…』
『ハッキリ言うとそうだが……悲観的になるほどじゃない。平均点を取れるという事は、努力すれば並以上のスピードに化けるって事だ』
『なるほど…!でも、具体的には何をどうすれば良いでしょうか…?』
『君の場合、スタミナを活かして末脚を長く使う必要がある。今まで通りに差しの走りをしながら、追込の走り方も出来るようになろう。溜めた足をどれだけ長く爆発させられるか。そこがキモだ。そのコツさえ掴めれば、君は必ず強くなる!』
『わぁ…!分かりました!頑張ります!そうと決まれば早速トレーニングしましょう!』
『ああ!』

「(最後方は前もよく見える…でも、後ろにいる分心が焦ってる…落ち着いて行こう…!)」
フラワリングタイムが最後方につき、ミヤビリボンが先頭でペースを作る。彼女はフラワリングタイムよりも、先行策で2番手を走るディープヤードを警戒していた。かなりのハイペースで第2コーナーを曲がり、1000m時点での通過タイムは59.4と、中距離並のペースで逃げていた。
「(後ろに見えるのはディープヤードとキャッチユー…競り合いを避けているのか?)」
無言で2番手をひた走るその姿は、他のウマ娘から見ても恐怖だった。他から避けられ、まるで押し出されるかのようにピッタリとミヤビリボンの後ろを走っていた。直線の坂に差し掛かっても、展開は変わらなかった。そして、下りの3コーナーを緩やかに下っていく。
「(ここで加速して突き放す!誰も抜かせはしないッ!)」
────ダンッ!!
下り坂の勢いをそのままに、ミヤビリボンが後ろを突き放しにかかる。二番手との差は6バ身。けれども、ディープヤードは不気味に動かなかった。彼女のハイペースに触発されてか、マチカネソナタを中心とした後方の差し勢も続々とペースを上げ始める。

そして、最後の直線に差し掛かった時だった。
「(…行くぞ)」
青い炎が、ターフの上を駆け抜けた。後方の差し組の末脚を遥かに上回る速度で、先頭を走るミヤビリボンへとぐんぐん差を詰めていく。3バ身。2バ身。異次元の末脚を繰り出し、最後の坂に差し掛かると同時にミヤビリボンの横へと並んだ。
「(くッ……!?もうここまで来たのか!?)」
「(私は…負ける訳にはいかないんだ!!)」
────ゴオオオオッ!
焼け付くような熱気。ミヤビリボンとの叩き合いを制すると、彼女は一番最初に試練の坂を登りきった。残りは、かなりのロングスパートとなる最終直線。だが、彼女は止まらない。後ろの差しのメンバーさえ、力で押しつぶすような末脚。勝負あったか。誰もが彼女の勝利を確信したその時。
『抜け出した!抜け出した!ディープヤードが先頭だ!最後の直線に入る!誰も彼女を咎められないのかーッ!』
そんな訳がない。ここには、もう一人強者がいる。ラスト300m、青い炎が駆け抜ける中、内側から桃色の閃光がカッ飛んできた。見覚えがある。あの走り方。小さな身体。いつだってGI級の強者を脅かしてきた、最強のオープンウマ娘。
『いや!いたぞいたぞ!内側を抜けてフラワリングタイム!ミヤビリボンを抜いて二番手から一気にディープヤードへ襲いかかる!』
「はああああああああああああッ!!」
「ッ!?…おおおおおおおおおおッ!!!」
後方、内側に待機していたフラワリングタイム。最短距離を駆け抜けた事でスタミナを温存し、差し勢が早めに動き始めたことで開いた内側から突っ込んできた。スタミナは十分。速度も最高速。長い長い東京レース場の直線を、フルパワーで駆け抜けていく!
『残り200m!どちらも一歩も譲らない!ディープヤードか!フラワリングタイムか!』
「(…負けるものか!ここまで来て!負けてたまるかァァァァァ!!)」
「(ずっとここまで頑張って来たんだ…!今日こそ勝つ!今日こそ!)」

「「ああああああああああああああああああああああああッ!!!」」

ちら、と観客席の方が見えた。白熱した試合。湧き上がる観客。私の為に応援してくれる人達。…そして、私の事をいつも見てくれる、大好きなトレーナーさん。ありがとうございます。私の走りで、皆が喜んでくれるから。私はもっと!走りを楽しめる!!

────ダンッッ!!

「なッ!?」
『フラワリングタイム!ここで更に加速!ディープヤードを抜いて先頭に立った!止まらない!止まらない!これは決まったか!!』
「(クソ!逃がすな!負けてたまるか!負けてたまるか!動け!動け!動けぇぇええええッ!!!)…っあああああああああああああ!!!」
だが、ディープヤードも楽には逃がさない。渾身の力を込めて末脚を繰り出し、フラワリングタイムに追い付かんと加速する!
「飛び込め!リング!!!」
「はああああああああああっ!!!!」

───

そして、フラワリングタイムは一番前でゴール板を駆け抜けた。二番手との差は一バ身。文句無しの快勝であった。ドキドキと高鳴る鼓動。荒い息を抑えながら、湧き上がる観客の方を、トレーナーの方を見つめた。
『フラワリングタイム!優勝はフラワリングタイムです!重賞初制覇!見事に人気に応え、並いる猛者達を差し切ってみせました!』
「勝ちました…!私…私っ!勝ちましたあぁぁぁっ!!」
「「「ワァァァァァァァァァァッ!!」」」
喜んでくれる観客。嬉しそうに笑うトレーナーさん。これまで頑張ってきた全てが報われたと思うと、嬉しくてつい涙が出てきてしまった。ポロポロ零れる涙を必死に堪えて、私は勝者として、精一杯振る舞った。
「クソ……負けた…また負けた……私はどうして…」
「…ディープヤードさん…」
「…なんだ、フラワリングタイム。負けた私を嘲笑いに来たのか?」
「ち、違いますよ!…貴方の走りは素晴らしかったです。展開一つ違っていたら、きっと勝てませんでした。だから…その…」
「…励ましは不要だ。…私はもう…いや。言っても仕方ないか。…おめでとう、フラワリングタイム」
「…ありがとうございます。…また、一緒に走りましょう!」
「…………」
ディープヤードは、何も言わずに立ち去ってしまった。どうしたものかと悩んでいたが、続々と他のメンバーが集まってきて、フラワリングタイムを祝福した。
「おめでとう!フラりーん!」
「ソナタさん、ありがとうございます…!」
「私からもおめでとう。完璧な走りだった」
「リボンさんもありがとうございます!」
「さて、ウイニングライブがあるんだったな。まずはトレーナーと喜びを分かちあって来ると良い」
「…はい!」
二人は控え室で再会するなり、嬉しすぎて、揃って声を上げて泣いていた。ひとしきり泣き終わってから、ようやく落ち着いて、いつもの調子を取り戻した。
「…改めて…おめでとう!フラワリングタイム!」
「はい!ありがとうございます!…ぐすっ…」
「おいおい、さっき十分泣いただろ…!」
「トレーナーさんだって泣いてますよ…ぐすん…」
無理もない。シニア級、重賞初制覇までにかかった時間は3年近く。努力と試行錯誤を重ね、ようやく手にした栄光の一勝。そう簡単に感動が収まるはずが無かった。
「そりゃ嬉しいからな…でも、この後はウイニングライブだし、いつまでも泣いてられないぞ」
「そうですね…!応援してくれた皆さんにも、感謝の気持ちを伝えないと!」
「だな。一着の踊りは覚えてるか?」
「バッチリです!…それでは、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
ウイニングライブを済ませ、彼女達はライブ会場から舞台裏へ下がった。そこで、フラワリングタイムは先程逃げるように場を去ったディープヤードに声をかけた。
「あのっ!ヤードさん!」
「……」
「…走るの…辞めるおつもりなんですか?」
「……!…よく分かったな」
「なんとなく…そんな目をしていましたから。…どうして…」
フラワリングタイムが尋ねると、彼女は悔しそうに拳を握りしめて言った。
「…最も強いウマ娘が勝つ。菊花賞はそう呼ばれているな」
「…はい」
「私はそこに勝ち、世代で最も強い事を証明した。だが、そこから勝てていないんだ。次第に世間の認知は私から離れ…私は、終わったウマ娘と言われた」
「見返してやろうとは思った。だが…同世代のやつに全てを取られたよ。天皇賞・春。宝塚記念。そして、このアルゼンチン共和国杯。…私は、弱い私にもううんざりしてしまった。…もう嫌なんだ」
よほど固く握りしめていたのであろう。彼女の手からは、血が流れていた。
「……行って良いか?」
「…いえ。行かないでください。…貴方の辛い気持ちはよく分かります。ですが…」
「…分かるだと?お前に…お前に私の何が分かるんだ!勝ったお前に……お前に……ッ!!」
掴みかかった片手を、フラワリングタイムは優しく手で包み込んだ。それから、微笑みかけるように話した。
「…私も、弱い自分が嫌で、学園から逃げ出しましたから。自分が嫌で辞めたくなる気持ち。誰よりもよく分かります」
「っ……そうか………お前は…」
「……辛い時、苦しい時、私はある人を思い出します。彼女が私に教えてくれた事が…辛い時も私を励ましてくれますから」
優しい同情。その声色に、ディープヤードは掴みかかっていた腕をそっと離した。
「『レースは楽しむもの』だと、私は彼女に教わりました。本気で取り組むのは正しい事ですが…追い詰められてしまっては意味がない。競争を楽しんだ上で、真剣勝負をすべきだと」
「楽しむ…か…」
ディープヤードは胸に手を当てた。自分は本当に、レースを楽しめていただろうか。否。楽しめていないからこそ。固い思考でいたままだからこそ。本気でレース楽しむ彼女に負けてしまったのでは無いだろうか。
「…ですから…無理にとは言いませんが…楽しんで走ってみませんか?レースを辞めるのは、それからでも遅くないと思うんです」
「………そうだな。…だが、お前の言う事を素直に聞くのも癪だ。何様のつもりだ」
「ぅ…そ、それはすみません…」
「…だから約束しろ。私は楽しんで走ってみる。…お前は、楽しんで走る者が強い事を証明してみせろ」
「……!…はい、もちろんです!」
嬉しそうに微笑んで、フラワリングタイムは握手を求めた。ディープヤードはそれを軽く受け取ると、すぐ恥ずかしそうに振りほどいて歩いて行った。
「(…ありがとう、フラワリングタイム)」
+ 8話 夢のグランプリ
こうして、フラワリングタイムは晴れてGIIタイトルを手に入れたのだった。それから時は流れ、12月。運命のファン投票の日がやってきた。このファン投票によって、年末最後のGI、有馬記念への出走権が獲得できるのである。
とはいえ、今年の面子は粒揃い。
二つ上の世代から、三冠ウマ娘のディープシルバー。前年度の有馬記念で彼女を負かした、ゴールドロード。
次いで、一つ上の世代からは天皇賞・秋を制覇したメジロエース。ジャパンカップを制覇したサニーレモン。謎に長距離適正のあるマイラー、エクレールアロー。
そして同期からは、ダービーウマ娘のブレイブソード。天皇賞・春を制覇したホープルミナス。そして、高知優駿、ジャパンダートダービーを制覇したウマ娘、地方の怪物ハルノコンパクトが地方枠から出走を予定していた。
「ハルノコンパクト!?有馬記念に出て大丈夫なのか?あの子、ダート路線しか走ってないだろ…?」
「私もお聞きしたんですが…一応芝も走れるから大丈夫…だそうです」
「凄いな…東京大賞典もすぐだってのに…さて。俺達についてだが…ファン投票の結果、有馬記念の人気投票での序列は11位という事になった」
「11位!…という事は…?」
「……出れない。今のところ…」
「えーっ!?」
有馬記念は、URA推薦枠や海外枠など色々な枠があり、人気投票で入れるのは上位10人までなのである。11位のフラワリングタイムは、誰かが抜けないと入る事は出来ないという訳だ。
「強くなったとは言っても、やっぱりGIIウマ娘には厳しいよな…」
「そんな…うぅ…ハルノさんに約束守れなくてごめんなさいって伝えないと…」
ぐすんぐすん、と涙目でスマホをいじくるフラワリングタイム。こればっかりは流石にどうしようもない。グランプリとはそういうレースなのだから。また来年頑張ろう、二人がそう思っていた時だった。トレーナーの携帯に一通の電話が入る。
「はい、もしもし?…えっ!?本当ですか!?」
電話を切るなり、トレーナーは嬉しそうに飛び上がってフラワリングタイムの方を見つめた。
「…誰かが出走を取り消したらしい!出られるぞ、有馬記念!」
「えっ!?本当ですか!…でも一体誰が…?」
「そこまでは分からないが…多分、上位10人の中の誰かだな。言い方は悪いが、そのお陰で出られるって事だな」
「そうですよね…ありがたいことですが…複雑な気持ちです」
「ま、そんなに重く考えなくて良い。ローテーションの関係で厳しい子だっているしな。…そうだ、GIに出るならアレを決めないとだな」
「アレ…?…あっ!勝負服!」
勝負服。GIを走るウマ娘達が特別に着る、レースの為の衣装。ドレスやスーツなど華やかなものが多く、着ているウマ娘の力を最大限に発揮するという。これを着られるウマ娘はほんのひと握りであり、自分達もいよいよここまで来たという実感が湧いてきた。
「そう!有馬記念も近いし、急いで発注しないとだな。君の好きなデザインで決めて行こう!」
「はいっ!」
それから二人は、試行錯誤を重ねて完璧な勝負服を作り上げた。彼女が纏ったのは、白を基調とした華のような美しいドレス。ハイネックドレスで、ノースリーブの腋から肘まで、緑色の混じった白のレースの袖が伸びていた。そして、手元は手首まで覆う純白の手袋。花弁のようなスカートは太もも辺りまで伸ばし、その下にはレースのタイツを履いていた。靴先はネモフィラの造花が添えられたパンプス。緑のひし形の宝石が横に連なるネックレスを首に下げ、胸元にピタリと留めていた。いつもは横に跳ねている髪の毛も丸く整えて、上から見ると、一輪の大きな花が咲いているかのようになっていた。
「…どうですか?似合ってますか?」
「凄く似合ってる!お姫様って感じだな!」
「えへへ…ありがとうございます!これを着てると、なんだか力が漲ってくるみたいです!」
「そうか、それは良かった!…よし!その勝負服を着て、有馬記念も制覇を目指そう!」
「はい!頑張ります!…えへへ…」
その日の夜。お気に入りの勝負服をようやく脱いで、いつものパジャマに着替えてベッドに入った時だった。友人のハルノコンパクトから連絡が届いた。
『フラりんさん!私、有馬記念は回避する事にしました!』
『えっ!?ど、どうしてですか!?』
驚き戸惑う自分に、彼女は丁寧に説明した。
『有馬記念は出たいですけど、やっぱり東京大賞典に狙いを定めた方が良いと思いまして。すんません』
『そうでしたか…分かりました。頑張って下さいね、東京大賞典!』
『ありがとうございます!…そうだ、フラりんさん。有馬記念には出るんですか?』
『あ、はいっ!順位が繰り上がったので出走を……貴方のお陰ですね。ありがとうございます』
『いやいや、気にしないでください!私の枠でフラりんさんが走ってくれるなら、私も嬉しいです!…有馬記念、絶対見に行きますから、勝ってくださいね!』
『…任せて下さい!貴方の分まで、しっかり走りきって見せます!』
最愛の、そして恩人とも言える親友に誓って、彼女は決戦に向けてぐっすりと睡眠を取った。

開花の刻。夢見る蕾は、ゆっくりとその花を開き始めた。中央の花園、その誰にも負けないような大きな華を、大きく広げて咲き誇り始めた。その娘の名は、フラワリングタイム。今、純白の花弁を広げて、日本一のグランプリ、有馬記念に堂々と降り立っていた。GIを制覇してきた強豪達にも負けず劣らず、GIIウマ娘でありながら、七番人気に支持されていた。
「いよいよだな。有馬記念」
「はい。…ついにここまで来たんですね」
「そうだな。必死に努力して、何度も負けて、それでも諦めずに頑張ってきた。だからここに君はいる。とても偉い。立派だ…」
まさか、本当にGIの舞台に立つことができるなんて。トレーナーはそれを実感するなり、嬉しくて始まる前から泣きそうになってしまった。
「トレーナーさん、泣くのは走ってからにしましょう!まずはレースに集中です!いつも通り、作戦を教えてください!」
「…そうだな…!よし、いつも通り行くか!相手はGI級のメンバーだ。普通に走ってたら、最後の末脚比べで絶対に負ける」
有馬記念は長距離区分でこそあるが、距離は2500m。中距離が得意なメンバーも大半は問題なく走れる距離だ。そのため、展開次第では、後方で待機している内に、前が逃げ切ってしまう可能性もある。
「理想としては前回のように内側で最短距離でスタミナを溜めてロングスパートをかける事だが…」
「今回のスタートは外枠ですね…」
枠の公開抽選会で、くじ引き風にトレーナーが抽選を行ったのだが、魔の大外枠とも言われる8枠15番を引いてしまったのだった。後ろについて内側を走るのは簡単だが、GIクラスのメンバー相手にブロックを避けながら追い抜きを仕掛けられるかと言えばNoだ。かと言って外から行けば、距離ロスが大きくなり、中距離のようなペースで長距離レース並の距離を走らされる事になる。
「…ゴメン。だから無理に内側に入る必要は無い。後方で様子を見て、隙があれば外から抜いていくのを基本にしよう」
「分かりました。内側に隙があれば…って感じですね」
「ああ。臨機応変に対応して欲しい。でもって、今回マークして欲しいのは、三番人気のラブプラウドだ」
「ラブプラウドさん…一つ下のトリプルティアラのウマ娘さんですね」
「その子だ。圧倒的な逃げで、無敗のまま三冠達成、そのままエリザベス女王杯も無敗で制覇してる。今回のレースも彼女がどう逃げるかで展開が変わるはずだ。他の面子にも注意しつつ、彼女の動向を探ってくれ」
「了解です!位置取りも覚えましたし、これで準備万端ですね」
「…だな。リング。心の準備は良いか?」
「はい!大丈夫です。…ごめんなさい、嘘をつきました。ちょっとだけ不安です」
「そっか…俺もだよ。ちょっぴり不安だ。…でも、同時にドキドキしてる。とても楽しみだ」
「…はい。私もです。私が…私達がどこまで通用するのか、楽しみです」
「ふふ、おんなじだな」
「はい、おんなじです」
トレーナーはぽんぽん、と優しく頭を撫でた。それから、笑顔で彼女を送った。
「頑張れよ、行ってらっしゃい!」
「はいっ、行ってきます!」

年末最後のグランプリ、有馬記念。中山競バ場、芝2500m、右回り。外回りコースの半ばからスタートして内回りコースに入り、そこを一周してゴールとなる。ラストは310mしか直線が無く、直線でスパートをかける関係上、後方はかなり不利になる。加えて直線には高低差2mの坂が備わっており、この直線をどう利用するかで勝敗が決まると言っても良い。当然、ここにいる面子はコースの事も研究し尽くしている。
「(…これがGI。やっぱり雰囲気が違う…!)」
ドギマギしながらパドックを歩いて行くと、見知った顔がフラワリングタイムの視界に飛び込んできた。綺麗な勝負服を身にまとったホープルミナスだった。
「久しいですね。フラりん。ダイヤモンドS以来でしょうか」
「お久しぶりです!今日はよろしくお願いします!」
「よろしく。驚きましたね。まさか、貴方と同じGIに出る事になるとは」
「私も、夢にも思っていませんでした。今日は全力で勝負させて貰いますよ!」
「良いでしょう。受けて立ちます!と言いたい所ですが…今日ばかりは流石に私も挑戦者の立場ですね」
どういう事?と思った次の瞬間、観客席からどっと大歓声が上がる。何かと思ってパドックのステージを見ると、一番人気と二番人気のディープシルバー、ゴールドロードが姿を表した。まさに圧倒。そこにいるだけで、周りを熱狂させるウマ娘。歓声がビリビリと肌を刺す。この人気。まさに最強のウマ娘と言っても過言では無かった。
「こ、これが金銀伝説……」
「アレに勝たないといけないのですから大変なものです…」
「うひゃー、流石は大先輩だね。まさか私が四番人気に追いやられちゃうなんて」
「あっ、エース先輩!」
「やっほー、フラりん。ふふ、勝負服凄い可愛い!とっても似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます…」
照れ照れ。恥ずかしがるフラワリングタイム。
「どういたしまして。レースでは本気だから、そこん所よろしくね!」
「はい!全力で勝負です!」
「うん!…あっ、エクレールちゃーん!」
メジロエースは、今度は同期の友達に声をかけに行った。フラワリングタイムもホープルミナスと別れ、パドックで準備運動を進めていく。と同時に、観客席の方をチラチラと見る。
「(ハルノさん、来てるかな?)」
いたら声をかけようと思っていたのだが、なかなか見つからない。それから本バ場入場まで軽く探ってみたが、やはり見つかる気配は無かった。仕方ないので出発しようかと思った矢先、声が飛んできた。
「おーい!フラりんさーん!」
「あっ!ハルノさん!」
「すみません!遅くなっちゃって!色々ありまして…とにかく、間に合って良かった。頑張ってください!」
「ありがとうございます。絶対、一位を取ってきます!」
「期待してます!」
コツン、と軽くぶつけられる拳。そして、フラワリングタイムは急いで本バ場へと向かう。ハルノコンパクトには、自分より背丈の低い彼女の背中が、とても大きく見えていた。そうして、その背中に憧れていた。
「やっぱり…凄いです。フラりんさん。絶対、私も貴女みたいになります!」
+ 9話 決戦、有馬記念
ファンファーレが高らかに鳴り響く。いよいよゲートインの時間だ。各ウマ娘がゲートインしていく中、フラワリングタイムは内枠のラブプラウドを軽く見た。
「(クラシック級で有馬記念に出走…トレーナーさんが警戒するだけありますね。この面子相手でも自信満々です)」
「(ごめんあそばせ。先輩方。今回勝つのはこの私よ!)」
頭に白いハートの模様がついた芦毛。綺麗に整えた髪をゆらめかせながら、彼女はゲートに収まる。続々とゲートにウマ娘が入っていき、最後に大外枠のフラワリングタイムの番だ。
「(大丈夫…行ける!)」
十六人がゲートに収まって体制完了。年末最後の大舞台、有馬記念。集まったファン達に見守られて、集いし強豪達が今……

────ガコンッ!!
『スタートしました!さあ!ハナを奪っていくのはやはりこの子!ラブプラウドです!人気の一角、ホープルミナスがそれに続きます!』
大歓声に贈られながら、全員が最初のコーナーを曲がっていく。ラブプラウドが先頭。3バ身空いて、二番手にホープルミナス。メジロエース、エクレールアローと続き、後方集団にサニーレモン、ブレイブソード、ゴールドロード。最後方にフラワリングタイムとディープシルバーが並んでいた。フラワリングタイムはスタミナを抑えるべく最後方集団に入るが、そこに入ったせいか、前を走るゴールドロードと、内側を走るディープシルバーに挟まれる形になった。
「(凄い威圧感…!でも負けちゃダメ。私の走りを……私のありったけを!)」
歓声を浴びながら、一周目のホームストレッチを抜けていく。流石はGIなだけあり、出ている面子の動きには微塵も隙がない。最後方の内側を走るが、前の陣形は堅く、そうそう前に抜けられる状態ではなかった。勝負は動かず、そのまま向こう正面へと入った。
「(ハイペースで逃げても二人が有利になるだけ。ここからはスローペースでスタミナを抑えるわ!)」
ラブプラウドを注視していたフラワリングタイムは、彼女の走り方が変化した事に気が付いた。ペースダウン。おそらくは差しのゴールドロード達を警戒してのペースメイクだろう。それに気付いた後方の面子は、それぞれ策を用意していく。
「(……なるほどね。それなら私は…)」
『さあ向正面!…おっと!ブレイブソードがもう仕掛けた!するすると中団から上がっていく!掛かり気味か!?』
「(嘘でしょう!?もう上がってくるなんて!…まさか、私の作戦を…!?)」
「(ご名答。さあどうする?)」
ホープルミナスを抜いて、ブレイブソードが真後ろで二番手を追走する。スローペースになってしまえば、先行策を取っている方が有利だからだ。しかもこの位置。真後ろにつかれてしまえば、ラブプラウドの集中力は自ずと背後に奪われてしまう。
「(上等よ。受けて立つわ。ついてこれるものなら着いてきなさい!)」
────ドバッッッ!!
ブレイブロードに触発されて、ラブプラウドは再びペースを上げる。ハイペースになることを承知の上で、彼女との勝負に踏切ったのだ。逃げ切れば勝ち。誰が相手だろうと関係ない。ラブプラウドの走りは自信に満ちていた。
「(またペースが上がった…!残り1500m…スタミナは温存しとかないと…!)」
フラワリングタイムは周りを確認しつつ、前の走りを慎重に伺う。横に立っているのがディープシルバー。前を塞ぐのがゴールドロード。最強の二人に挟まれるように、フラワリングタイムは動けなくなっていた。彼女達が動かない限り、自分の柔軟な走りが通用しない。
「(大丈夫…!活路は必ずあるはず!)」
その時だった。ペースが上がった事で差しのメンバーがスタミナを抑えるべく後方に下がってきていた。
「(開いたッ!)」
その隙を見つけて、フラワリングタイムはこの壁から差しの集団へと潜り込む。上手く走れるようになり、ほっとしていられるのつかの間。勝負所の第三コーナーへと差し掛かる。
「(中山の直線じゃ私は加速しきれない…だから…)」
今回のレースは直線が短い。前回のように直線でロングスパートをかけている暇が無い。故に、自分の持ち味を最大限に活かすならば。
────ダンッ!
「「!」」
「(コーナーからの超ロングスパートで!)」
彼女の進出と同時に、ゴールドロードとディープシルバーも動き出した。第3コーナーを通り抜けると同時に、スパートをかけ始めた三人が後方集団から先行集団に近付き重なっていく!
「(しまったッ!二人もここで仕掛け始めるなんて…!)」
フラワリングタイムの末脚に才能は無い。末脚比べとなれば、当然、天賦の才を持つディープシルバー達に軍配が上がる。フラワリングタイムの加速を、更に後ろから捕えんとばかりに追従する。
『いよいよ第四コーナー!最初に上がってきたのはラブプラウド!しかし後ろとの差はもう僅か!後方のメンバーも上がってくる!』
「絶対に……負けないわ!」
ラブプラウドも負けじと加速していく。しかし、ブレイブソードとの競り合いで奪われたスタミナが重く彼女の脚にのしかかる。好機と見たブレイブソードが、一気に内から差し込みに行く!
「はあああああああっ!」
「くうううううっ!!」
そして、その後ろからスパートをはじめた先行集団達も迫ってくる。もはや集団はひとかたまり。誰が勝ってもおかしくない程に逼迫しはじめた。
『ラブプラウド苦しいか!おおっと!ホープルミナスが上がってくる!更にサニーレモンだ!後方からはフラワリングタイムも上がってくる!』
「はああああああああああああっ!!」
フラワリングタイムはコーナーからスパートをかけた関係で、遠心力で大きく外に振り回されていた。かなりの距離ロス。普通に走っていれば、まず勝てない程の距離差。しかし彼女にはスタミナがある。持ち前の長所を存分に活かし、大外を凄まじい速度で駆け抜けていく!
『さあ!いよいよ最後の直線だ!ラブプラウドが粘るか!あーっと!やはり来た!上がってきたぞ!金銀揃って!二人が外側から捲ってくるッ!!!』
湧き上がる大歓声。大外、フラワリングタイムと、内側を走った先行集団の間を通り、ゴールドロードとディープシルバーが中団をガンガンちぎって先頭へと躍り出る。その脚は、まさに異次元。二人は全員からマークされていたはず。けれども、それを難なく跳ね除ける走り。歴戦の猛者がどれ程のものなのか、その身で語っていた。
「(こんなに…速いなんて…ッ!)」
今、真横を駆け抜ける猛者達。自分の末脚では敵わない。理解出来てしまう。完璧に陣取った上で、スタミナを全て使い尽くしても、横を走る二人を抜く事は出来ない。
「(……負けたくない…!)」
でも。気持ちだけは負けていない。ここにいる誰もが、それだけは同じだ。勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。燃える想いが、滾る熱気が、彼女達の脚に力を与える。
「(…勝ちたい!)」
そして、その熱気は観客席にも確かに届いていた。大興奮を巻き起こしながら、自分が応援するウマ娘へ必死にエールを贈っていた。
「負けるな!エース!」
「粘れ!ラブプラウドー!」
「行けーッ!ホープー!」
「頑張れー!フラりんさーん!」
そして、ここにも一人。
「(頑張れ…!走れ……フラワリングタイム…!)……リングーッ!!!!君の走りを……見せてくれーっ!!!」

想いは届く。蕾が花開く。満開の花弁を広げ、彼女達はターフという園で力いっぱいその花を咲かせる。ラスト1ハロン。最後の坂に差し掛かったその時、奇跡が起きた。
「……!」
確かに、聞こえた。応援してくれるファンの声が。約束を交わしてくれた親友の声が。私を信じてくれたトレーナーさんの声が。全ての声が、鼓動となって身体を駆け巡った。
「っ……ああああああああああああああっ!!!!」
────ドバッッッッ!!!
『さあ!金銀共に並んで先頭だ!あああああーっ!!大外!大外からフラワリングタイム!フラワリングタイム!ここで更に加速する!』
驚き、歓喜、興奮、あらゆる感情が混じった歓声が舞い上がる。何度もGIを制覇してきた王者達に、無冠の花娘が王手をかけているのだから!
「はあああああああああああああああああああああっ!!!!」
2バ身。1バ身。その差はぐんぐんと縮まっていく。そして最後の坂を駆け上がった所で、完全に横一列に並んだ!まだ止まらない。まだ身体は動く。全身全霊をかけろ。応援してくれる全ての人に!全力の感謝の花を捧げろ!
「(届け!とどけ!とどけえええええええええッ!!!!!)」
『フラワリングタイム!フラワリングタイム!並んだ!並んだ!差し着るか!届くか!!三人並んで、今ゴールイン!!!』
「はぁっ……!はぁっ…!」
フラワリングタイムの激走に、もう観客席はしっちゃかめっちゃか。興奮のあまり応援席の柵をガンガンぶっ叩いて喜びまくるトレーナー。近くのフラワリングタイムのファンと抱き合うハルノコンパクト。荒い息を整え、フラワリングタイムは掲示板を見つめた。

1着 フラワリングタイム 2:31.3
2着 ゴールドロード ハナ
3着 ディープシルバー ハナ
4着 メジロエース 1 1/4
5着 エクレールアロー 2

「……勝った…!私……GIで勝てた…!」
喜びと驚き。そして感動からか、その目にじんわりと涙が浮かんでくる。ずっと夢見ていた、GI制覇。まさか、有馬記念で達成する事になるとは。
『やりました!フラワリングタイム!並み居る猛者達を跳ね除け!見事!GIウマ娘に名を連ねました!』
「フーラーりん!フーラーりん!」
誰かがコールを始めた。それに合わせて、観客達もコールを連ねていく。それが大合唱になる頃、フラワリングタイムは皆の前に立ち、一本指を掲げた。
「「「ワァァァァァァァァァァァァッ!!!!」」」
それを見て、負けた金銀の二人は嬉しそうにターフを去るのだった。たとえ負けても、悔いなく走りきれたこと。そして、次の世代が台頭してきた事。これで安心して次を任せられる、と安堵した表情だった。
「おめでとー!フラりんちゃーん!」
「わわっ!?エース先輩!?」
メジロエースに抱きつかれ、そのままドサリとターフに倒れる。それから、レースに敗れた者たちも続々と集まってきて彼女を祝福した。
「おめでとう、フラりん。完敗だ」
「おめでとうございます。次は負けねーですから」
「おめでとー。エクレールね、嬉しいからね、お祝いする!」
「皆さん……ありがとうございます!」
皆にお礼をしていると、ふと泣いている声が聞こえた。今まで無敗で逃げ切り勝ちをしてきた、ラブプラウドの声だった。
「ぐすん…なんでなのよ…!私ちゃんと逃げきれたはずなのに…!」
子供みたいに泣いていたが、こんな情けない所は見せられないと必死に涙を拭って、フラワリングタイムの方へと歩いてきた。
「…おめでとうございます。でも次は負けないから!また勝負して貰えますよね!フラりん先輩!」
「…はい。受けて立ちます。何度だって!」
ふん、と泣きそうなのを堪えながら帰っていくラブプラウド。彼女を見送ってから、フラワリングタイム達も地下バ道へと戻って行った。

「…トレーナーさん!」
「リング!…おめでとう!」
「ありがとうございます。…私…勝てたんですね…GIっ!」
「ああ!…立派だった!最高だった!」
再会するなり、お互いに抱き合って泣き出してしまう。ずっと憧れていた、夢の大舞台。そこで頂点を掴み取る事が出来たのだから。トレーナーは彼女を抱きしめて、優しく頭をぽんぽん撫でるのだった。ウイニングライブを済ませ、二人はGIタイトルを手にトレセン学園へと帰ったのだった。
+ 10話 夢の蕾は大きく咲いて
「走れー!走れー!コンパクトー!!」
「行けー!そこです!!きたきたきたー!!!」
二人揃って、大井の観客席の柵をバンバン叩く。中央と地方の交流GI、東京大賞典。二人が応援しにきたのは、もちろんあのウマ娘。
『ハルノコンパクトだ!上がってきた!上がってきた!内から懸命にチーズロマンも差し返す!最後は二人の競り合いだ!!どっちだー!!!』
夜の大井競馬場を、大歓声が包み込んだ。レースが終わったハルノコンパクトの元に、二人は急いで駆けつけた。
「お疲れ様でした!凄い走りでした!」
「フラりんさん!…えへへ、ありがとうございます!応援、来て下さったんですね!」
「そりゃあな。君は俺達の大恩人だ。これからもファンとして精一杯応援させて貰うからヨロシク!」
「げにまっこと嬉しいです!いつでも見にきとうせ!…これからも、よろしくお願いします!」
「はい!」
フラワリングタイムは彼女と握手を交わし、そしてウイニングライブを見届けた。ナイターの後に即ウイニングライブって時間帯とか脚とか大丈夫なのかね…と俺は色々思うのだった。

それから、季節は流れて再び春がやってきた。ある日の事、天皇賞・春に向けてスケジュール調整を行っていると、休みにしていたはずのフラワリングタイムから一通の連絡が届いた。
「あれ?今日は休みって伝えたよな?」
『突然すみません、二人でお話がしたいので、あの場所に来て貰えませんか?』
「わかった、すぐ行くっと…」
仕事を一区切りさせて、川沿いを歩いていく。春の陽気に誘われてか、川沿いの道をランニングしている人も増えてきた。けれども、秘密の花園にはやっぱり誰もいない。彼女が一人、ベンチに佇んでいるだけだ。
「お待たせ、リング」
「トレーナーさん!どうぞ、座ってください!」
「ああ、失礼しますっと」
「…ふふ。今年も綺麗ですね」
「だな。…」
二人並んで、目の前の花畑を見つめる。満開に広がった花達は、とても美しかった。君と見る花は、本当に何より美しい。ここで君に会えた事に、俺は心から感謝していた。
「…と、いけない。見とれてたな。話したい事って?」
「…はい。貴方に感謝を伝えたくて」
「感謝…」
「…ずっと言いたかったんです。…貴方と一緒だったから、私はここまで来れたんだと思います。どんな時も傍にいてくれて…私の事を誰よりも思ってくれている。貴方に助けられたから、私はGIウマ娘になれました」
そう言って、彼女はベンチから立ち上がった。まっすぐこちらを見つめて、深く頭を下げる。
「本当に、ありがとうございます!」
「…どういたしまして。頭、上げてくれ。俺は君を信じただけだよ。頑張ったのは…花開いたのは、全部君の力だ」
そう言って、いつもの癖で頭を撫でてしまう。これ、治せないだろうか。
「…ありがとうございます。えへへ、トレーナーさん。私の頭、心地良いですか?」
「えっ!?あ、あ、ああ!そうだな。ふわふわしてていい匂いで…」
って、何言ってんだ俺は。彼女はクスクスと笑うと、ふわりと頭を上げた。
「ありがとうございます。嬉しいです!」
「そ、そうか!良かった!」
なにがだ。我慢せい。彼女に恋してしまったら俺はロリコンなんだぞ!…本当、花が良く似合う綺麗な子だ。
「ふふっ。…これからも、どうぞよろしくお願いします。トレーナーさん」
「こちらこそ、よろしく!」
彼女に差し出された手を取って握手する。これからも彼女は、一線級の活躍をしていくだろう。俺に出来ることは、その輝きを支えていく事だけ。どうかこれからも、めいっぱい咲き続けてくれ。フラワリングタイム。

『さあ!春の天皇賞!二番人気を紹介しましょう!前年度の覇者!ホープルミナス!』
湧き上がる大歓声。すっかり一線級となった彼女は、前年度の実績もあって二番人気に推されていた。そんな彼女の人気をも上回るウマ娘とは誰だろうか。そんなの決まっている。
『さあ!一番人気の登場です!1枠1番、単枠指定!有馬記念を制覇したグランプリウマ娘!大きな華を咲かせて、フラワリングタイム!』
痺れるような大歓声に包まれて、本日の一番人気、フラワリングタイムが堂々と登場する。観客席は湧き上がり、トレーナーも横で見ているハルノコンパクトと一緒に騒ぎ立てる。
「ははっ。流石は一番人気ですね。ですが…先頭は私が貰いますよ!」
「ありがとうございます。残念ですが、レースの一番も私のものです!」
握手を交わし、ライバル同士がパドックで準備を進めていく。再長距離GI、天皇賞・春。果たして、勝つのは誰か。
「リング!思いっきりやってこい!」
「…はい!」

『さあ!各ウマ娘ゲートイン完了です!体制完了────』


────ガコンッ!!

どことも知らぬ、小さな公園で、花弁がひとひら舞った。その花びらは、フワリとベンチに舞い降りて、それから風に流されて空へと舞った。その花弁は空を飛び、ある人の掌の上に舞い降りた。その花弁に、彼は見覚えがあった。
「…あの時はありがとう。君のお陰だ」
そっと花弁を指から離すと、春風に乗って再び空へと舞い上がった。その花びらの行方は、もう誰にも分からない。
「トレーナーさん!はやくはやく!ご褒美のスイーツ!約束ですよね!」
「ああ、分かってるって。約束だもんな。行こうか」
二人の道は続いていく。ずっと、これからも。二人の歩みは、まるで花の種のように。二人の後ろには、一緒に咲かせてきた、綺麗な花道がどこまでもどこまでも続いていた。

これからも、一緒に咲いていてくださいね。トレーナーさん!

〜Fin〜

+ EX.天皇賞・春
さんさんと降りしきる春の雨を受けながら、18人のウマ娘達が京都の地へと降り立った。集いし強豪が狙うは、本日のメインレース。最長距離GI、天皇賞春。一帖の楯を求めて、日本最強のステイヤー達が名乗りを上げる。
「さあ、本日の一番人気の登場です!1枠1番!大きな華を咲かせて、フラワリングタイム!!」
雨にも負けず、大歓声が響き渡る会場。桃色の王者が、威風堂々とパドックに姿をあらわした。グランプリウマ娘、フラワリングタイム。覚醒を迎えた彼女の力は凄まじく、今回の天皇賞制覇にも大きな期待がかかっていた。
「フラりんさん、今日は負けませんよ」
「ええ。私こそ負けません」
対する二番人気は、前年度の覇者ホープルミナス。走り慣れたこの地で発揮される実力は、フラワリングタイムのそれをも凌ぐ可能性が大いにある。完全に二強ムードとなった天皇賞・春だが、懸念要素が一つ。
「(……今日は雨。バ場状態は不良。リングの苦手な場だな)」
トレーナーは固唾を飲んで見守る。有馬記念。あの時フラワリングタイムが最後に見せた鬼のような末脚は、固い良バ場があってこそのものだった。あれから何度か末脚を出す練習をしたが、良バ場でなければテンポが合わないのか、終ぞ雨の日にそれを繰り出す事は出来なかった。
「(ホープルミナスは今やGI級。以前戦った時のようにはいかない。あの末脚を出せないと勝ち目は無いぞ)」
ちら、と視線を彼女に向ける。フラワリングタイムもそれは分かっているのか、静かに頷くだけだった。
「おっと!忘れてはいけません!名乗りを上げたるは砂の宝刀!9番人気の紹介だ!」
最後にパドックにやってきたのは、もう一人の桃色。高知出身、地方から乗り出し、天皇賞へと名乗りを上げた最強のウマ娘。
「8枠16番!ハルノコンパクト!」
白と緑を基調とした勝負服に身を包み、堂々とパドックに現れる。後ろ髪を縛り上げた艶やかなポニーテールが、強者の風格を悠々と醸し出していた。皆に挨拶を済ませると、いの一番に彼女の元へとかけて行った。
「フラりんさん!」
「ハルノさん!出られたんですね!」
「はい!重バ場ならチャンスはあるってトレーナーさんが教えてくだすったんです!…全力で挑ませて貰います!」
「受けて立ちますよ。全力で」
ギュッと握手を済ませると、二人はそれぞれ準備運動へと移る。雨は弱まるどころか徐々に勢いを増し、ドロドロのバ場をより劣悪なものへと変えて行った。
天皇賞春。京都レース場芝3200m。右回り。向正面半ばからスタート。外回りを1周半走るコースで、最後の直線がかなり長いのが特長。スタート後のコーナーに急坂があるため、そこでスタミナをどれだけ抑えられるかが勝敗を決する鍵になる。ラストの直線はかなり長く、ロングスパートをかけるフラワリングタイム的にはかなり有利なコースだろう。
「(加えて、リングの得意な内枠。内を抜けて切り出せれば、他のウマ娘はくらい付けないはず…だが…)」
やはりこの大雨。田んぼのようなドロドロの不良バ場を踏みしめながら、18人の名だたるステイヤー達が淀のターフへと降り立つ。前のレースの影響もあって、コース内側の状態は最悪だった。
「(……大丈夫。私は私のレースで……勝者になります)」
一番人気。一枠一番。本来なら緊張していてもおかしくない場面。けれど、フラワリングタイムは落ち着いていた。王者として、期待を背負う者として、勝つ為にここにいるのだから。
『さあ!順調にゲートインが進んでいます!ハルノコンパクトも入りまして、最後は大外グランドレディ!』
全員すんなりとゲートに収まる。18人揃って体制完了。春の楯をかけた頂上決戦が今、幕を切って落とされた。
────ガコンッ!
「ふっ!」
『スタートしました!それほど大きな出遅れはありません!さあ、伸びる伸びる!大外からハナを奪っていくのはグランドレディ!』
「私が最強のステイヤーデース!」
先頭を駆け抜けていくグランドレディ。その後ろに続くのは、先行策のホープルミナス。彼女を筆頭に先行集団が駆け抜けていき、その後にハルノコンパクト。差し勢の更に後ろ、殿を走るのがフラワリングタイムだ。
「(フラワリングタイムはハイペースでベリーグッド!故に私は……!)」
────ダンッ!
グランドレディは大逃げを決めると、そのまま自分の得意なスローペースに持ち込んで逃げはじめた。後ろを走るフラワリングタイムを警戒してか、先行勢は誰もグランドレディを攻められない。
「(スローペースはむしろ大歓迎。下手に手出しをする必要はないでしょう。ただし、簡単に逃がしはしない)」
ホープルミナスは冷静に戦況を見つめ、自らのペースで駆け抜けていく。
「(前が怖いけど、やっぱり私が一番警戒したいのは……!)」
更にその後方集団。ハルノコンパクトは、フラワリングタイムの右前にピッタリとつけていた。一番人気への徹底したマーク。後方勢は皆それを行っていたが、中でもハルノコンパクトのマークは執拗な程だった。コーナーを終えても、ついぞ変わらずフラワリングタイムの前をひた走る。
「(徹底的なマーク…!ハルノさん、私の走りを潰しに来ましたね…!)」
「(気付きましたね。フラりんさん。でも貴方をマークしてるのは私だけじゃねえですよ!)」
前を走る全員。その全てがフラワリングタイムを警戒している。これが一番人気。経験したことの無い感覚に、思わず冷たい汗が頬を伝う。圧倒的なプレッシャー。それに打ち勝ち活路を切り出す力が王者には求められる。
「(でも、大丈夫……こうなる想定は常にしてきましたから!)」
それを想定してのトレーニングも織り込み済み。逃げのウマ娘が作り出すスローペースに合わせて、差しの位置へと進んでいく。前は複数人が壁となっており、フラワリングタイムの進路を完全に塞いでいた。加えて、右前にはハルノコンパクト。得意な内側に蓋をするような形で彼女が走っていた。
「(大外に回したら流石にスタミナが持ちませんね……かと言って内側も走れない。だとしたら……)」
一周目のホームストレッチ。泥を蹴り上げながらウマ娘達が第二コーナーへと差し掛かっていく。先頭は大逃げ中のグランドレディ。誰にも邪魔されずに走れているお陰か、しっかりと息を入れられている。
「(ここは我慢比べと行きましょうか!)」
後方に立つ以上、懸念したい材料は二つ。前を走るホープルミナスを逃がさないこと。そして、後ろのフラワリングタイムに自由に動かれない事。片方に気を使い過ぎれば、もう片方が動く。どちらかが自由に動けば、その時点で自分の勝機を失う。故に、後方を走るウマ娘はいずれは痺れを切らして飛び出さねばならない。フラワリングタイムが狙うのは、その一瞬の隙。
二週目の向正面。長らく動きは無かったが、ここでホープルミナスが異変に気付いた。前を走るグランドレディの様子だ。
「(オーケィ!脚は十分にリメイン!)……ここからは、私のドクセンジョーデース!」
────ダンッッ!!
「「「!?」」」
グランドレディが仕掛けた。それも、3コーナーの坂を登っている途中から。幾多のステイヤーを打ち倒してきた、魔物が潜む淀の坂。スタミナを切らさぬため、ゆっくりと登るのが定石だ。そこからスパートをかけて勝てたウマ娘など、ほんのひと握りしかいない。そんな大胆不敵な行動を取られれば、当然後ろは動揺する。
「(バカな…そこから仕掛けて勝てる訳がありません…いや…しかし……)」
グランドレディ。海外GI、メルボルンカップに挑戦した世界級のステイヤー。自分達に続く三番人気。海外レースから帰国してなお、タフなレースを見せる彼女の持つスタミナは異常と言っても良いだろう。
……もし。本当にそこから逃げ切れる算段があるとすれば?もし。本当に最後まで逃げきれてしまうなら?そこから仕掛けても問題は無いのでは。
そんな不安が、後続を走るウマ娘達の頭をよぎる。
「…だとしたら…!」
ホープルミナスはもちろん、更に後ろを走るハルノコンパクト達も先頭の異常に気付いた。勢い良く坂をかけ登った彼女。もし。だとしたら。このまま逃がす訳にはいかない。各々、徐々にギアを上げてスピードアップを図る。
────ドドドドッ!
「(動いた!私は内側から……!)」
「……行かせませんよ!フラりんさん!」
「くっ!」
内側にピッタリ食らいつき、ハルノコンパクトが右前をキープする。フラワリングタイムの得意技、内側を切り抜ける一手を完璧に封じている。
「なんてマークだ…!リング!焦らずそのまま加速しろ!」
トレーナーは失念していた。本当に警戒すべきは、マークしてくるハルノコンパクトでは無かった。今このタイミングで加速してはいけない事に、気が付いていなかった。

「はああああっ!!」
こちらもスパートをかけはじめ、坂の頂上へと登りきったホープルミナス。残るは下り坂を駆け下り、ラストの長い長い直線を走り抜けるのみ。普段の自分ならば勝てるだろう。…しかし、前の光景を見て、理解した。
「(……グランドレディ…!良かった、まだあまり距離は離されていな…い…)」
妙だ。あまり距離が離れていない?相手は先にスパートをかけているのに?自分の速度が早すぎたか。否。相手のスタミナが切れたのか。それも否。前を走る彼女は、むしろ抑えている。だとすれば、考えられる事は一つ。
「……嵌められた…!」
「…ソーリー!これが私のやり方デースッ!」
言うなれば、偽スパート。スパートをかけたように見せかけ、後ろのペースを乱す幻惑技。京都レース場、淀の坂の高低差は4m。先に先頭で坂を登りきってしまえば、後ろから前を走るウマ娘の姿勢は全く見えない。故にスパートをかけ続けていても、かけていなくても、後ろはそれを認識できない。それを利用し『グランドレディはスパートをかけはじめた。彼女はそこからでも体力が持つかもしれない。速く追わなければならない』という後方の心理を利用してまんまとスタミナを奪う事に成功した。
「さぁ!ここからラストの勝負デスッ!!!」
────DOBAAA!!!
スタミナは十分。後ろは消耗済。勝つための手筈を全て整え、グランドレディが最終直線へと差しかかる。ホープルミナスを筆頭に、スパートをかけ始めたメンバーに、淀の坂の負担が重く脚へと襲いかかる。
『さあ最終直線!先頭はグランドレディ!リードは6バ身!後ろのウマ娘は追いつけるのかー!?』
歴戦のステイヤー達も、グランドレディの奇策に嵌められ、なかなか前に進む事が出来ない。それはフラワリングタイム達も例外ではない。
「(く……!やっぱりグランドレディさんのペースになりましたか!しかも…右前に陣取られているせいで内側にスパートはかけられない!なら…!)」
────ダンッ!
疲れからかスパートをかけられず、壁のように垂れていくウマ娘達。その隙間を縫うように、フラワリングタイムはぐんぐん加速していく。だが、差しのペースに合わせたのが運の尽きか。淀の坂の負担が脚に重くのしかかる。
「(速度が足りない!加速しきれない…!このままじゃ逃げ切られる…!)」
想定以上の疲労に苦戦しているフラワリングタイム。彼女をこれ以上マークする必要は無いと踏んだか、ハルノコンパクトはグッと脚に力を込めた。
「(フラりんさん、お先に!)…はああああああああっ!!」
「く……!」
ハルノコンパクトも苦しいながらにスパートをかけはじめる。足元はドロドロの重バ場。ダートを主戦としてきた彼女には最適のフィールドだ。ハルノコンパクト達も直線に入り、最後の決戦が始まる。
「GOGOGOGOッ!!!!」
先頭はグランドレディ。続いて2バ身離れてホープルミナス。その後ろ、垂れてきた先行勢を切り抜けながら、桃色の二人が勢い良く駆け上がってくる。これが、史上最強のステイヤーを決める戦い。重バ場と淀の坂の暴力。耐えきれなくなった脱落者を横目に、究極に仕上げたウマ娘達が、最後の直線を駆け抜けていく。
『上がってきた上がってきた!フラワリングタイム!更にハルノコンパクト!ホープルミナスに迫るッ!!』
「絶対に渡さない……!二連覇は私のものだ!」
瞳にゆらめく炎。限界を超えたその先へ。ホープルミナスが更に加速する。全力全開、全ての力を振り絞ってグランドレディの背中を追う。
「(ずっと……貴方に憧れてきました。ずっと、貴方に勝ちたいって思っていました。今日は一緒に走れて、とても嬉しいです!…だから…)フラりんさんに…私が勝つ!」
踏みしめる芝が、より激しく蹴りあげられる。京都レース場、内ラチ側。ラチの無い最内側を抜けながら、ハルノコンパクトがホープルミナスに並ぶ…いや。並ばない。それは言うなれば、圧倒的なスタミナの暴力。元々、超ロングスパートを得意とする程のスタミナの持ち主だ。多少のアクシデントなど、彼女には通用しないだろう。そして、桃色の閃光が、内側から突き抜けていく。その姿はまるで────
「(リング……いや、違う!フラワリングタイムは……)」
『内側からハルノコンパクト!届くか!地方の!公営の!高知の意地だ!ラスト200m!フラワリングタイムは来ないのか!?』
「はぁっ……!はぁっ……!」
脚が重い。肺が痛い。フラワリングタイムは既に体力の限界だった。徹底的なマークに、苦手なスローペース。不良バ場。加えて相手の作戦をもろに受けてしまい、完全に体力を使い切ってしまった。一番人気がこんなに辛いなんて。…正直、諦めかけていた。
「(……ああ、覚えています。この感じ…!)」
それは、ずっと前。ハルノさんと一緒に走ったあの日。前を行く彼女を見て、やっぱり自分はダメだと諦めようとしていたあの時。応援してくれたトレーナーさんに応えたくて。ハルノさんに負けたくなくて。欲しい。欲しい。勝ちたい。勝ちたい。自分の根性が再び燃えだした、あの日のように。
「負けるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
────バシャンッ!
力強く芝を蹴り上げ、一気に猛加速する。…繰り出せた。負けたくない気持ちがトリガーとなり、弾け飛んだ。全身全霊、ど根性が繰り出す最後の猛追。これがフラワリングタイムの真骨頂。前を行くホープルミナスを抜き、更に桃色の閃光の真横まで並んだ。
『────いや!来たぞ来たぞ!外から!外からフラワリングタイム!三人が横に並ぶッ!』
「What!?」
前を行くグランドレディとの差は半バ身。ゴールまで残り100m。降りしきる雨が身体を力強く叩き、ウマ娘達の力を容赦なく奪っていく。最後の半ハロンでさえ、恐ろしく長く感じる。
「絶対にィッ!前はッ!!譲りまセン!」
「フラりんさんに勝つッ!!頂きに立つのは私だああああっ!!!」
「(まだ差しきれる!まだ届く!伸びろ伸びろ伸びろッ!!!)天皇賞は……私のものだぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「はああああああああああッ!!!!」」」
『並んだ並んだ!横一線だ!横一線!三人同時に並んでゴールインッ!』
三人、綺麗に並んで横一線。栗毛の巨人を強襲する桃色の閃光。その閃光が先頭を走るグランドレディの真横に並んだその瞬間。三人はゴール板の前を全速力で駆け抜けた。誰が勝ったのか全く分からないゴール。観客達も、掲示板を固唾を飲んで見守る。
1着
2着 写真
3着
4着 ホープルミナス 1バ身
5着 クッシャロクィーン 3/4バ身

やはり写真判定であった。前を走り抜けた三人は、息を整えながらじっと掲示板を見つめる。打ち付ける雨も次第に弱まり、やがて陽射しがさし込み始めた頃、掲示板に結果が表示された。大雨の中の激闘。勝利の女神が微笑んだのは────

1着 グランドレディ 3.18.9
2着 フラワリングタイム ハナ
3着 ハルノコンパクト ハナ
4着 ホープルミナス 1バ身
5着 クッシャロクィーン 3/4バ身

栗毛の巨人、グランドレディだった。最後のゴールライン際、全員の位置はほとんど同じだったため、その分、身長の大きなグランドレディの身体が真っ先にゴールラインに届いていた。まさしく、ほんの僅かなハナの差による決着。知力。体力。スピード。展開。運。その全てを持って勝ち得た完璧な勝利だった。柔らかな陽射しに照らされながら、グランドレディはガッツポーズする。それから、観客席に向かって駆けていく。
「皆サーン!私!ついに!GIを手に入れましたヨー!」
「「「「ワァァァァァァァァッ!!!!!!」」」」
「おめでとー!レディー!」
「やっぱり君は最高のワールドワイド・ステイヤーだ!」
大盛り上がりの観客席。フラワリングタイム達も、勝者に拍手の雨を贈っていた。負けこそしたが、悔いはなかった。かなり不利な条件下でのハナ差2着。王者の力を示すには十分すぎる威光だった。
「おめでとうございます。レディさん」
「サンキュー!フラリン!アナタもナイスファイト!あと一歩で負けるところでシタ!ソウソウ、ユーもナイスガッツ!日本のダートウマ娘も侮れまセーン!」
「えっ!?わ、私!?ありがとうございます!えへへ……私からも、おめでとうございます。…参りました!」
「サンキュー!…Oh!トレーナーサン!デハ、私行ってきマスね!トレーナーサーン!!」
元気いっぱいにかけていく彼女を見送って、フラワリングタイム達も地下バ道からそれぞれの控え室へと戻った。控え室に入ると、フラワリングタイムはキョロキョロと周りを見回した。トレーナーはいない様子だった。
「……負けた…」
洗面台に向かって、そっと言葉を吐露する。持てる力を全て振り絞って、全開で繰り出した末脚も僅かに届かなかった。ほんの僅かなハナ差。しかしその差が、とてつもなく大きく感じた。
「負けちゃいました……」
ぽろぽろと涙が頬を伝う。それはそうだ。確かに走りに悔いは無い。だからこそ、負けて悔しい。勝ちたかった。ドロドロに汚れた純白の服が、彼女の心を写しているかのようだった。
「勝ちたかったのに……ううっ……うううっ…!」
必死に堪える。けれど涙は留まる事を知らず、つーっと頬を流れ落ちた。悔しい気持ちが、胸いっぱいに詰まっていた。
「……リング」
「トレーナー…さん…!」
「……悔しいか?」
「はい……悔しいです……!」
「なら、次で勝とう。そのためにも今は……思いっきり泣いてもいい。泣いてスッキリしよう」
優しい声色で話す。それで涙腺が決壊したのか。フラワリングタイムは思いっきり泣いた。声を上げて、悔しい気持ちを吐き出すように。一通り泣き叫んで、気持ちも晴れやかになった。
その日の夜。彼女はウイニングライブを完璧にこなし、残るは帰宅だけとなった。すっかり晴れて月が綺麗な夜空の下、駅までの道を二人は歩いていく。楽しそうに話しているが、内容は今日の反省会だった。
「本当によく頑張ったな。そういや、レースの後に気付いたんだが、グランドレディの策には俺もまんまと嵌められたよ」
「トレーナーさんもですか!?やっぱり世界を渡り歩くウマ娘さんは凄いですね……」
「ああ。彼女なら、あそこから最後まで走れるんじゃないかと思っちまった。……でもって、今回の敗因は幻惑逃げの可能性を視野に入れなかった俺の指示ミスだ。ごめんな」
「いえ、私の方こそ……雨の日は本調子で走れた事も無かったですし…」
「いいや。今日は最高のパフォーマンスだったぞ。上がり3ハロンも有馬記念の時並だ。そこまでやっても届かなかったって事は、きっと相手が生粋の重バ場巧者だったんだろう。にしても、なんで雨の日なのにあの末脚が出せたんだろう?」
「それはよく分かりませんが……ハルノさんに負けたくないって思った時に、脚にグッと力が入ったんです」
「そうだったのか……という事は、負けたくない、勝ちたいと思う負けん気が君の末脚を繰り出すトリガーになっていたのかもしれないな」
「なるほど…!そういえば……晴れた日に末脚を出せたのも、一緒に走ってくれる併走の方がいてくれたからですね…」
「あー……確かに……雨の日に外コース借りたがる物好きも少ないしな…」
自分たちもまだまだ、GIクラスに向かっていくにはあと一歩足りないんだなぁと実感させられるひと時だった。それから、二人は府中に戻った。
「そうだ。天皇賞も頑張った事だし、ご褒美に君の好きなスイーツを食べに行こうか」
「え……本当ですか!?」
「ああ。なんでも構わないぞ。今までダイエットも頑張ってきたしな」
「ありがとうございます!では私、行ってみたいカフェがありまして…!」
それから数日後。二人は一緒にスイーツデートへと向かった。そこで、大好きなトレーナーに思い切り甘えるフラワリングタイム。幸せな時間に包まれながら、彼女は甘味を嬉しそうに口に運ぶのだった。
今年の天皇賞は他人に譲ってしまったが…次は負けない。しっかり覚悟を決めていた。そんな彼女がこのビッグタイトルを制するのは、また来年の話であった。

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