わたしは、ただ――吸血鬼が、怖かった

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発言者:[[アリヤ・タカジョウ]]
対象者:[[トシロー・カシマ]]


獲物であるトシローを狩れず、彼の言葉に翻弄され続け、焦りと苛立ちが限界にまで達していた白木の杭・アリヤ。
平静を欠いた彼女が、憎悪のままに自らの「大事な」存在―――
&bold(){主である[[ニナ>ニナ・オルロック]]にまで害を及ぼす可能性に思い及んだ時、}
&bold(){&ruby(ウォッチャー){[[夜警]]}トシローの心は冷たく研ぎ澄まされ、この狩人の少女の完全なる排除を決意した。}


そして、迎えた決戦の時……
[[師>ヴィクトル・シュヴァンクマイエル・クラウス]]に鍛えられたアリヤの戦技は、確かに人類最高峰と評してよかったものだが、
かつて、[[その師本人と極限の死闘を繰り広げた経験のある>吸血鬼だと……化物だと…………許さん、許さんぞぉォ――――ッ!!]]トシローには、今の彼女は真の『白木の杭』と呼ぶことはできなかった。

&color(#040414){&bold(){あの、人類を「愛し」、滅私して人に害を成す一切を狩り尽くす[[究極の狂信者>白い杭]]には、届かない。}}
&color(#040414){&bold(){アリヤ・タカジョウからは、あの男が謳った、その核心となる&ruby(・・・・){人間賛歌}が出てこない。}}
&color(#040414){&bold(){白木の杭という&ruby(かざり){称号}に逃げ込み、弱さを隠そうと吼える、ただの少女にしか見えはしない、と。}}


自らの生み出してきた過去の因縁に導かれ、この地に現れた少女。
厭わしいものと感じてきたはずにも関わらず、&color(#040414){&bold(){これで終わりか……}}などと、
奇妙な感覚に自嘲しながらも、&ruby(忠){任務}を果たすと黙したトシローは――&color(#cc0000){&bold(){ついに、アリヤの身体を深々と切り裂いた。}}


自らの血の河に沈むアリヤ。虚ろな瞳をさらし、死は時間の問題だった。
その中で、彼女が独り語った思いは――――


&size(18){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){「いやだ……負けたくなんて、げぼっ―――な、い……。}}}}}
&size(18){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){あなた、なんかに……吸血鬼…………なんかにっ」}}}}}


&bold(){吐き出したのは、己の力が届かぬ悔しさ―――}


&size(19){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){「―――ぁ、ぁぁ、いや……やだ、やだよ……こないで、おね……がい」}}}}}


&bold(){吐き出したのは、過去に受けた、膝を屈してしまうほどの怯え。}


&size(19){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){「斃す……ちがう、逃げる……でも、強く、なれば――」}}}}}


&bold(){吐き出したのは、自らへの迷い、そして&ruby(とうひ){決意}。}


&bold(){涙を流し、虚空に手を伸ばした少女は、最後に澱んだ瞳をトシローに寄こしながら―――}


&size(20){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){「あ、ぁぁ………そう、でした……わたし、は」}}}}}


&size(21){&color(#38496B){&bold(){&tt(){&italic(){「ただ―――&ruby(あなた){吸血鬼}が、怖かった」}}}}}


&size(14){&color(#38496B){&bold(){自分から全てを奪った存在が&ruby(・・・・){怖かった}。だから力を求めたのだと。}}}


&bold(){真実の言の葉は、そこで終わり……開いたままの瞳を、男は静かに閉じた。}
&bold(){こうして、[[フォギィボトム]]を揺るがした災いの芽が一つ、取り除かれたはずだったが……}


&size(15){&color(#00004C){&bold(){記憶に押し込めた恐怖と、それに反する強者の装い。}}}
&size(15){&color(#00004C){&bold(){育ての親を盲目的に信奉し、与えられた生き方を、輝きに導かれた在り方をひたすら&ruby(・){是}とする在り方。}}}
&size(15){&color(#00004C){&bold(){最後まで仮面を被り続けた、アリヤという少女が死に際に残した&ruby(よわね){本音}。}}}

そこにトシローは、&bold(){主であるニナの未来の姿が映っているように視えて―――}


&size(23){&color(#040414){&bold(){「違う}―――&bold(){そうはならない、彼女は違うっ……!」}}}


&size(14){&bold(){その否定の言葉も力はなく、男は新たに煩悶するしかなかった……}}


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&size(15){そして―――彼女のもう一つの&ruby(どうしてこうなった){[[可能性>ああ───愛おしいですよ、トシロー]]}…………}
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