「まったくだ、まともなんて辞めちまえ。碌なもんじゃないぜ?」
「流石、いい腕してるな。このイケメンには傷一つ付いてないぜ」
「そうかい……マジって訳か。なるほど、おまえはそういう男だったな……
────けどな。如何におまえでも、自分で自分の影を裁けるのか?」
「……答えろ。あれは、おまえの仕業か?炎の中で、おまえは俺を待っているのか?」
『───ああ、なんだ。やらないさ、あんなの。面倒くさい』
「……それは本当か?間接的な関与としても?」
『やる理由がないさ、俺の獲物がいないんだ。意味がない、骨折り損だよ』
「雛鳥風情に負けはしない……ま、シェリルはやばかったけどな。俺に勝てる奴は、この世に一人しかいないんだ」
「答えは出てるはずだろ、トシロー。気づいていることは聞くもんじゃない。
ずっと、ずっと……おまえの影を追い求めていた。それだけだ」
「そうだとも、ダークヒーロー……俺の焦がれたおまえは、無敵だった」
「少年時代からそうなのさ、負けて特訓するヒーローが
滑稽に見えて仕方がない……ダサく見える」
「『後で強くなるくらいなら、最初から負けるなよ』ってな……
当時は貴重品だった冒険小説を、顰めっ面のまま読んでたわけさ」
「……随分と可愛げのない子供だ」
「ハハッ……そっちもだろ?」
違いないと苦笑し……愛刀に視線を落とす。
刃に宿していたはずの想いは、今や遠い昔過ぎて思い出せない。
……少年の日々、俺はこの無骨な刃さえあれば全てを守り通せると思っていただろうか?
「ああ──何時からだろうな。過去の思い出が耐えがたい傷になったのは……」
「決まってる。ほんの少しでも、人生設計が外れてしまった時からさ……」