私の望みは、ずっと変わってないもん。ただ、照と一緒にいたいだけ。 照と同じものを見て、たまにズルやインチキもしながら普通に生きていきたい

発言者:安宅 真魚
対象者:暮坂 照


真魚がずっと抱え続けていた気持ちを聞かされた照。
それを知った照も──「お前に否定されて……見捨てられてどうしたらいいかわからなくなった」「俺はなにかに失格(・・)しちまった」
「どんなにキツくても人間として失くしちゃいけない宝みたいなものを落としちまったんだって」

……そんな、自らが独り抱えていた想いを噛み締めながら語り続ける。

「もう俺は、真魚みたいに何も失くさず綺麗には生きられないんだ。そう思ったら、自分が辛くてさ……」
「傷ひとつないおまえが妬ましくて、憎くて、大嫌いになって…
……でも、意地でもそう思ってる自分を認めたくなかった」
「だからおまえみたいに真っ当で正しい奴を見下すようになった」

「大事なものを失くした自分自身を見たくないから、誰からも愛され肯定される存在に敵意を向けるしかなかったんだ……」


自虐的なことを言いながらも不思議と爽やかな表情になる照。
そんな照に真魚は告げる────

「私、自分がそんな綺麗で正しい人間だなんて思ったことはないよ。そうなりたいとも思わない」
「私の望みは、ずっと変わってないもん。ただ、照と一緒にいたいだけ。
照と同じものを見て、たまにズルやインチキもしながら普通に生きていきたい」
「本当に、ただそれだけだよ」

その言葉に、一瞬泣きそうに表情を歪ませる照。
ようやく互いのすれ違いに気づいた二人は語り合う。

「俺はずっと一方的に、おまえに置いてかれちまったと思ってたんだぜ……なんだよ、それ」
「マジ噛み合わねーよな、俺ら…」

「だね。本当に相性最悪」
「でも、そういう二人が一緒にいたって別にいいよね?」

何もかもがまぶしくて、金色の寂しい光に溶けてしまうような錯覚の中……
真魚と照は、つがいの小鳥みたいに唇を触れ合わせていた。



  • 一瞬インチキがトンチキに見えてしまった… -- 名無しさん (2020-08-19 19:56:52)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年08月19日 19:56