「そういやおまえ、さっき女のためとか言ってたな……
なら良い格好してみせたって、肝心の相手は見てやしないじゃねえか。ヘッ……意味のないところで意地張りやがって」
卑怯者の
惚れた女の為に行った
一生に一度の格好つけを目にして───
「俺が負けたみたいな流れになっちまってねえか?」と不満をあらわにする天願。
「じゃ、どうすりゃいいんだよ……?」と困惑する照に対して天願は告げる。
「ならここから、おまえより格好つけてみせるしかないだろうが……この俺がよ」
そして自らの前腕部にナイフの刃を押し当て
ジプシーQへと確認をとり後を任せると告げる。
顔をあげ、照を見つめて、天願はガキみたいに勝ち誇った、無邪気な笑顔で高らかに叫ぶ。
「これで……」
「俺の、勝ちだぜッ!!」
ナイフを自分の腕肉に押し込み深く引き切る天願。
切断された動脈から血を噴水みたいに激しく飛び散らせながら男は笑う。
――未練や後悔はかけらひとつも見えないガキみたいな晴れやかな表情で。
――自分はやり切った、勝ったのだという誇らしさに満ち溢れた叫び声で。
愚にもつかない小競り合いなんかじゃなくもっと大きな何かに対して勝利宣言を行いながら。
「はははは……ッ!どうだ、見たかよ……!!
ここまではおまえにもできねえだろうがッ……!!」
「なら、この勝負は俺の勝ちだぜ……ッ!!」
「ああ、愉しいなぁ……愉しかった、なぁ……」
天願の咲かせた命の散華に思わず心奪われ、魅入られてしまった照は自らの負けを認めざるをえなかった。
そうして……勢いだけで始まった男二人の馬鹿比べのチキンレースは、天願の永遠の勝ち逃げで終わりを迎えるのだった。
- クロアプの方の昏式ラインのクライマックス、普通に闘いで勝って終わりじゃないのが毎度いいよね -- 名無しさん (2019-07-15 14:25:14)
最終更新:2021年05月31日 23:19