血族による魂の合意なく、常人が一方的に力だけを与えられ転化した、
準血族とも呼べる存在の事。
外見の特徴や身体能力は
吸血種のそれに近いものとなり、元がいかに非力な者であろうと対人類相手であれば圧倒的な力を発揮できる。
そして何よりも敵対勢力にとって恐ろしいのは、
《血染ノ民》の転化条件の緩さ。
正統な吸血種族を生むには、通常百年前後を生きた血族が自らの力を人間に分け与える《洗礼》行為が必要となるが、
社会集団の中で考えた場合大本の血族の弱体化を招く上に、そこから次の世代の血族を作る行為に時間が非常にかかるという欠点がある。
しかしこの《血染》行為は、
転化したばかりの血族でも容易に可能であり、さらに生み出した継嗣からさらにその子世代へと……鼠算的にその数を増大させることができる。
しかも、上位者の命令を絶対とする
《血の縛り》も、正統な血族同様末端の血染ノ民にも働いていくという。
これを自国の民に広く実行された結果、内側から数の暴力により食い破られ、滅亡あるいは征服された国家は多数に上るとされる。
欠点とすれば一度《血染ノ民》に転化した者は、余命僅かとなる事。
生き残ったとしても、数か月程度の命しか彼らには残されておらず、死ねばその肉体は灰となって滅び去る為、用途はあくまで一時的な従僕もしくは兵隊に限られる。
ローマ帝国との戦争で《血染》が実行された際、その有効性と同時にあまりの非道さと壊滅的な被害が認識され、
血族同士での戦争では禁じ手として封じられていたが、航海技術が発達した後世においてアジアや新大陸の異民族制圧に対しては再び積極的に用いられるようになったという歴史がある。
…そして最後に一つ、何よりも恐ろしい使用方法を上げておく。
それは非血族に対して吸血行為を行う事で強制的に《血染ノ民》と化させることを『手駒とするのではなく相手の余命を縮める』という攻撃手段とすること。
相手が非血族だからこそ有効な手であるが、それを差し引いても相手の余命を強制的に数ヶ月にさせ、生存は勿論長期的な戦略や構想等を御破算させることが可能というある種の人類種からすれば問答無用の即死技よりも恐ろしい攻撃となりうるのだ。
最終更新:2021年12月18日 11:18