「……どうしてこんなことになっちゃったんだろう」
無人のストリートのど真ん中で、
伊狩鎧は弱音とも取れる声を漏らしていた。
前触れもなく、見知らぬ他者から大規模な殺し合いへの参加などを強要されれば、誰しも今の彼のようになるだろうが……誰にも負けないほどに強い正義感と勇気を持つ鎧は決して、我が身を襲った不運ばかりを嘆いているわけではなかった。
生殺与奪の権利を握られ脅されようとも、己が命を繋ぐために誰かを殺すなど、鎧にとってはあり得ないことだ。また自分自身に対する不安より、バグラモン達の跳梁を許し、他の参加者達をこの事態に巻き込んでしまったことに対する申し訳なさの方が、彼の中では大きかった。
「ジョーさん達は……無事なのかな」
そしてそれ以上に鎧の関心が大きかったのは、バグラモン達によって拉致される寸前まで、自分達が臨もうとしていた状況の方だった。
ゴーカイジャーが敗れ、ザンギャックの大艦隊による蹂躙を許すこととなってしまった地球。その命運を懸けて、三十五番目のスーパー戦隊、海賊戦隊ゴーカイジャーの一員として夜明けと共に最終決戦に身を投じるはずだった自分が――目を覚ましてみれば、まるで無関係な事件の中に囚われてしまっているということが、鎧にとっては耐えられないほど悔しかった。他にもっと気に掛けるべき事柄があることはわかっていたが、ようやく仲間達から一人前の海賊として認められ、しかも宇宙海賊でしかないと嘯いていた彼らがスーパー戦隊を継ぐと決意してくれた矢先に、仲間や地球の護るべき人々に迷惑を掛けてしまう失態を犯したことは、とても無視できることではなかったのだ。
しかもそれだけに留まらず、鎧は殺し合いに呼ばれて早々に取り返しのつかないミスをしてしまった。挙句一度死んだところを、殺し合いの駒とするためだけに主催者に蘇生させられるなど、情けないにもほどがある。
こんなことでは、数多の星々を股に掛ける宇宙海賊の、六人目の男という名に見合っているとは言えない。とても、栄光あるスーパー戦隊の、199番目の戦士にはなり得ない。
(あーっ! やっぱりまだまだダメだなぁ俺!)
そこまで考えたところで、鎧はいっそ大仰なほどに頭を抱えた。
やっぱり自分は未熟者のまま、本来なら見習いが良いところなのだろう。こんな調子では、ヒーローとしても、海賊としても失格であることは言い訳できない。だが、それでも……
(それでも、マーベラスさん達は認めてくれたんだ)
つい先程確認した名簿に同じく参加者として記されていた、ゴーカイジャーの偉大な船長、キャプテンマーベラスは。彼を慕う仲間達は。確かに鎧を、一人前の海賊として認めてくれた。
ならば鎧も、本当は未熟なままであろうと、彼らの期待に応えないわけにはいかない。
何処とも知れぬ街で一人、途方に暮れている場合ではないのだ。
「――見ていろよ、バグラモン、マリーチ! 悪事のためにこのゴーカイッ、シルバーを生き返らせたって、おまえ達の思い通りにはいかないぞ! 必ず、後悔させてやるからなっ!」
そこに思い至った鎧は、空を見上げ大声で宣言していた。
己の意志を自らの内に溜め込むだけでなく、口にすることでこの心を鼓舞するために。
そうとも。今は悪の掌の上で弄ばれているような状況だろうと、何も彼らの思惑通りになる必要などないのだ。
彼らの野望を打ち砕き、あの時死んだままにしておけば良かったと、己の傲慢とそもそも鎧と敵対する原因となった悪行を悔い改めさせれば良い。そしてマーベラス達と共に早急にこの殺し合いを収束させ、地球を護るために帰還しなければ。
そこまで考えたところで――鎧の首筋に、首輪とは違う冷たい金属の感触があった。
「はい、叫ぶのはそこまで」
背後から若い女の声が聞こえるに至り、ようやく鎧は、いつの間にか肉薄していた何者かの気配を認識する。感触に導かれて視線を降ろすと、幻想的なまでに美しい、白銀の刃が――何の支えもないまま虚空に浮かび、鎧の首元に添えられていた。
「わーっ!?」
「さ、わ、ぐ、な、って言ってんでしょうが!」
先程よりも苛立ちの色を強くした声が頭蓋に響いた後、鎧を包囲するかのように、同色の刃がさらに数本、虚空から生じた。威圧するような凶器の群れに、思わず息を呑んだ鎧の視界の端っこから、すっと一つの影が躍り出て来た。
「どう見ても暑苦しいから、口で言っても無駄そうだと思ったけど。刃物で脅しても騒ぐとかあんた、自分の置かれた状況がわかんないわけ?」
腕組みして鎧を見下して来るのは――中学に入るか否かといった年頃の、直立した姿勢で空に浮いた少女だった。
苛立たしげに逆立てられた柳眉は、鎧を取り囲む刀剣と同じ、白っぽいほどの明るい銀色をしていた。同色の長い髪や、人間離れして整った美貌の中、少し青みがかった白銀という神秘的な両の瞳が、辟易した様子で鎧を観察していた。
「あんた、ゴーカイシルバーだかなんだか言ってたけど……さっき死んでた伊狩鎧よね?」
そう少しだけ、覗き込むように――浮いている分、本来鎧よりずっと低い場所に位置するにも関わらず高所にある彼女の顔が、前傾姿勢になることで鎧のそれに近づく。
「こんな状況でいきなり大声で叫ぶとか、そんな間抜けだから死んでたわけね。アホ臭」
「――っ、君は……乗っているのか!?」
侮辱の言葉に感じる物がなかったわけではないが、それよりも自身の置かれた状況を作った張本人であることを主眼において、鎧は語気を強めて眼前の不思議な少女を詰問した。
「はああっ!?」
だが少女は――先程の鎧の宣誓ほどではないが、よく通る大きな声で不満を表した。
「何それ。大声出すなんて危険だから止めてあげようとしただけなのに? あんた、わたしが罪もない人の子を傷つけるような、悪霊だって言いたいわけ?」
「悪……霊?」
別に、透けてはいないが……この少女は、仲間達が夏に遭遇したと言う幽霊の類なのだろうか? 浮いてるし。
そんな疑問にぽかんとした鎧にまた怒りを覚えたのか、少女はさらに剣幕を厳しくする。
「何? 疑っておいて謝りもしないの? そんなに私を怒らせて、このくっだんないゲームに乗って欲しいわけ?」
「――っ、それはダメだっ!」
咄嗟のことに、鎧はまた大きな声で叫んでいた。
「いきなりこんなの突き付けられたからって、疑ったのは悪かったけれど……謝るから、冗談でもそんなこと言っちゃダメだよ」
周囲の白刃に視線を滑らせながら、鎧はそう口調自体は穏やかに、しかし強い意志を込めた言葉で伝える。
鎧はここに連れて来られる直前に仲間から聞かされた、地球の人々の様子を思い出していた。
スーパー戦隊は、人々の希望として――勇気と、強さと、正しさを、皆に示して来たのだ。
もしも目の前で道を踏み外す可能性のある者がいるのなら、その系譜を継ぐ者と認められた以上、それを全力で正さなければならないと――鎧はそう決意していた。
そんな想いからの鎧の叫びに、少女はまず呆れたように口を半開きにし、その綺麗な両目を細めていたが……やがて、重い溜息と共に脱力し、宙に浮いたまま腰を折った。
同時、鎧の周囲に存在していた白銀の剣達が、幻のように霧散した。
「あー……もう良いわ、うるさくするなって言っても無駄のようだし。間違っても殺し合いに乗らなさそうないい子ちゃんみたいだからね」
そう、疲れた声色の中に――どこか喜色を混じらせて。少女は腰に届くほど伸ばした長髪を掻き上げながら、伏せていた顔を起こした。
「
エリーゼ・ミスリライトよ。私も殺し合いなんかに乗る気はないから、以後よろしく」
「うん、よろしく。エリーゼちゃん」
「――ちゃん、ですってぇ?」
エリーゼが不機嫌そうに眉を潜めたのを見て、鎧もまた、よく怒る子だなぁと少しだけ辟易し始めていた。
「分を弁えなさいよ人間。精霊の方が人間より偉いんだからね? それにわたしの方があんたよりもずっと年上なんだけど?」
エリーゼは人間離れした美貌とは言え――明らかに西洋人に近い印象ながら、華奢な体躯をフォーマルなブレザーに包んだ格好から、どこか七五三を連想させるような少女の容姿である。そんな相手に年下扱いされたわけだが、そこで相手の年齢を問うような真似をしなかったのはさすがの鎧もそこまでデリカシーがないわけではなかったということと――彼女が口にした言葉に、強く興味を惹かれていたためだった。
「精霊、ってことは! エリーゼちゃ……じゃなくて、エリーゼさんは、パワーアニマルなんですか!?」
「は? パワーアニマル? ナニソレ?」
妙に噛み合わない会話の末に、二人は落ち着いた話し合いのため、場所を移すことにした。
◆
出会った場所から少し北に向かうと、東京都墨田区にあるはずの錦糸町駅があった。
無人のために、まるで映画のセットか何かを連想させるような、作り物と言う印象を覚えるこの街は――やはり地図にある通り、東京その物の一部を丸ごと再現した物であるようだった。
本物を運んで来たわけではないだろう、と思ったのは……ザンギャックの蹂躙を許した東京が、こうも無傷な姿を保っているわけがないと言う、自虐的な思考に因るものだった。
駅の手前の飲食店を見ると、誰もいないというのに――いや、だからかも知れないが――鍵は掛かっていなかった。ちょうど椅子があるということでそこに一旦腰を落ち着けた鎧達は、殺し合いに反対する者同士、互いの知識を共有するために情報交換を始めることにした。
「――で? あんたの言うパワーアニマルって、いったい何なわけ?」
着席早々、エリーゼはやはり腕を組んでふんぞり返ったまま、そう問いを投げて来た。
精霊というキーワードから、真っ先に鎧が連想したのは、かつて百獣戦隊ガオレンジャーと共に地球を護っただけでなく、ゴーカイジャーにも力を貸してくれている、ガオライオンに代表される種族だった。
地球の生命力そのものが、地球上のさまざまな物質や元素を吸収し地上の動物の姿を取って実体化した、大自然の精霊であるパワーアニマル。彼らの中には、その上でさらに人間の子供の姿を取ってガオレンジャーに協力した個体も確認されている。
故に精霊を自称する――事実、ただの人間ではないと一目でわかるこの少女も、その一種ではないかと尋ねてみたわけだが。
「――知らないわね」
鎧の説明が終わると、エリーゼはそれまで比べると幾分真剣な面持ちで、若干の思慮の後にそう答えた。
「“精霊の庭(シークレットガーデン)”でも、そんな精霊の呼び名に聞き覚えなんてないし」
しーくれっとがーでん? とオウム返しに尋ねる鎧を無視し、小さな掌で作った拳の上に顎を置いて思考を重ねようとしている様子だったエリーゼだが、思い出したように顔を上げる。
「そういえば、さっき言ってたガオレンジャーやゴーカイジャーって何?」
「――えっ!? ご存じないんですかっ!?」
思わぬ言葉に音が鳴るほどテーブルを強く叩き、鎧は身を乗り出してエリーゼに問い掛ける。
彼らが活躍したのは十年以上も昔のこととはいえど、オルグの脅威から地球の平和を護ったレジェンド戦隊が一つ、百獣戦隊ガオレンジャーを……ましてや現在進行形で、スーパー戦隊が力を失った地球の最後の希望として、宇宙帝国ザンギャックと熾烈な攻防を繰り広げている海賊戦隊ゴーカイジャーを知らないなどあり得ない――そんな驚愕のまま叫んだ鎧に、またもエリーゼは苛立ちに綺麗な顔を歪めていた。
「だ、か、ら……うるさいって言ってんでしょうが!」
「……ごめんなさい」
落ち着きがない性格だとは自覚しているが、さっきから何度も同じことで彼女を怒らせてばかりだとさすがに悄然とした鎧に、エリーゼは嘆息を一つ挟んだ後に再度説明を要求して来た。
それに対して鎧は、それぞれがスーパー戦隊の勢力であると言うこと、今はレジェンド大戦でガオレンジャーを始めとするレジェンド達が力を失ったこと、彼らの力が変じたレンジャーキーを回収し、それを使用することでゴーカイジャーがザンギャックの第二次地球侵略艦隊を退けていたことを簡単に説明したが……エリーゼの返答は、これまた「知らない」と素っ気のない物であった。
「……本当ですか?」
「本当よ。ガオレンジャーの方はあまり目立ってなかったとか、ゴーカイジャーは最近の私が隔離空間都市に引きこもっていたから外界のことを知らなかったで通るかもしれないけれど、そのレジェンド大戦とやらが数年前に起こったって言うなら、さすがに知らないはずはないんだけれどね」
喜んでそこに飛び込んでいきそうな知り合いもいるし、と付け足したエリーゼの目が、疑いの色を帯びて鎧に注がれ始めた。
「……ひょっとして、あんたの痛い妄想とかいうオチじゃないんでしょうね?」
「なっ……じゃあ、見ていて下さいよ!」
これにはさすがに黙ってはいられないと、鎧は椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がった。
「俺が正真正銘、ゴーカイジャーのゴーカイシルバーだってこと、そしてスーパー戦隊が妄想なんかじゃないってことを、証明してみせます!」
そうしてデバイス内ではなく、いつも通りのポケットにあったゴーカイセルラーと、愛用のレンジャーキーをそれぞれ左右の手に取る。
「行きますよぉ!」
宣言するや否やゴーカイセルラーのハッチを勢いよく跳ね上げると、鎧はそこにゴーカイシルバーのレンジャーキーをセットした。
「――ゴーカイチェンジ!」
ゴーカイセルラーを持ったままの左手を、胸の手前で空いた右手と交差させると同時、いよいよ鎧は動きのキレを意識した。
一度左手を腰の後ろに回し、続いて頭上高くに持ち上げる。最後に頭上に掲げたセルラーを胸の横に構え、一番上の中央にあるボタンを右手で押した後、まるで水戸黄門の劇中で印籠を突き付けるように左手を正面に伸ばした。
一連の無駄の多いはずの動きの、無駄に洗練された所作に呆れ半分ながらも感心したように軽く目を見張っていたエリーゼの顔を、セルラーから放たれた光が照らす。
《ゴォ――カイジャァーッ!!》
電子音のシャウトの後に、XとVと錨の形をした光がセルラーから吐き出される。逆の順で鎧の身体にそれが降って来るたびに、いつの間にか全身を覆っていた黒のタイツスーツの胸にエンブレムが描かれ、続いて銀のジャケットが、最後に金の目を持つ銀のマスクが装着されて行く。ちなみにこの変身プロセスに要する時間は、僅か0.1ミリ秒に過ぎない。
「真っ赤な太陽背に受けて、青き心に正義は宿る! 黄色い歓声浴びまくり、ぷにぷにほっぺをピンクに染める、緑の若葉のニューヒーロー! ギンッギン輝く! その名も! ゴォォォカイッ、シルバァァーッ!!」
単独変身と言うことで、思わず初変身の時と同じ名乗りをしてしまった鎧だったが、むしろ久々にも関わらず完璧に決まったという手応えを感じ、充足感すら覚えていた。
そんな高揚した気分のまま、鎧はふふーんと鼻を鳴らして、どこか呆然としているエリーゼに詰め寄った。
「どーですかエリーゼさん。嘘じゃなかったでしょ」
「えっ……ああ、うん……」
妙に歯切れ悪く、エリーゼが視線を逸らすようにしながら頷いた。
「あれれ? どうしたんですか、エリーゼさん?」
「……何か思った以上にハイテンションなバカを直視したくないだけよ」
手厳しい言葉に、精強なザンギャックの行動隊長達にもそうそう屈しないゴーカイシルバーの膝が、がくりと折れた。
「……っていうか変身できるのはわかったけれど、どの道あんな崩落から逃げ切れないで死ぬような奴じゃ、どうにも頼りにできる気がしないわね」
ゴーカイイエロー、ルカ・ミルフィよりもさらに鋭い舌鋒に傷つけられ、さすがの鎧も憤慨する。
「し、失礼な! 俺だってまだまだ変身できますし!」
そう鎧は15個の追加戦士のレンジャーキーを両掌に抱えて見せ。
「巨大ロボだってちゃんと持ってますし!」
BRデバイスを起動、支給品欄にある豪獣ドリルの説明をスクリーンに映し、エリーゼへと迫る。
「近いのよ!」
エリーゼの一喝でまた縮んだ鎧は、「ごめんなさい……」と口にしながら、誠意を示すために固く冷たい床へと正座する。
「だいたい装備がいくら充実していようが、使い手のあんたが不甲斐ないんじゃ頼りないのは同じでしょうが! またしょぼい事故で不意衝かれて死ぬようじゃ意味ないじゃないの」
エリーゼの青みを帯びた白銀の瞳が、その冷やかさを増して行く。
「凄い凄いっつったって、あんたの道具が凄いだけ。しかもここじゃそれが奪われる可能性もある上に、どうにも危機意識が足りていないんじゃ、正直な話背中を任せるのは不安なのよ。まだ余計なことしないで、大人しく守られていて貰う方が良いぐらいだわ」
「いや、それはその……」
エリーゼの手厳しい、しかし間違いではない指摘に対し、変身してマスクを被ったままの鎧は一度口を噤む。
精霊だと言う彼女の力は、もしかすると同じく精霊のパワーアニマル達に匹敵するほどかもしれない。なら一見非力な少女でも、その実鎧より強く、鎧に保護されるのではなく、むしろ保護する側であるのかもしれない。
だが鎧は、自分より強い誰かに何もかもを任せきりにしたいとは思えなかった。
「あれはその……はい、後先考えずに飛び出しちゃったのは、反省します」
「……飛び出した?」
それまでずっと怒ったような、見下したようなだったエリーゼの表情に、今度は訝しむような色が加えられる。だがそれを注視することなく、言い訳するような居心地の悪さに頭の裏を掻きながら、鎧は続けた。
「俺……ヒーローなのに、最初にルナスって女の人が殺される時、何もできなくて。しかも、わけわかんない間に殺し合いだーとか、首輪に爆弾がーとか言われて……正直、怖かった部分もあるんです。それを考えたらやっぱり、エリーゼさんの言う通り、俺って全然ダメで、頼りにならないって思われても仕方ないかなって思うんですけど……。
だけどその後、天井が落ちて来た時に、男の子が逃げ遅れたのを見たら、後先を考えないで飛び出しちゃって……実は前にも一回、同じような理由で死にかけてるのに、確かにちょっと危機意識足りてないかもしれませんけど……」
鎧はそこで、決意を込めて視線を上げた。
「でも、今度こそもう同じ失敗はしません。ルナスさんや
エルシアさんみたいな犠牲者だって、これ以上一人も出させたりしません――違う、出したくないんです! もしかすると、俺よりもエリーゼさんの方が強くて賢いかもしれませんけど、だからって全部誰かに任せるのは違うと思うんです。俺、誰かを守りたくてヒーローになったんですから!」
エリーゼの主張を認めながら、それでも自分の譲れぬ意志を。伝説の後継者としての、最も新しいヒーローだと認められてきた自分の矜持を、鎧は精霊の少女に訴える。
パワーアニマルに護られるだけでなく、共に戦ったガオレンジャーのようにありたいのだと。
「お荷物にはなりません。俺もエリーゼさんと一緒に、バトルロワイアルを止めたいんです! ……確かに二度も、同じように失敗したかもしれません。そんな俺を信頼するのは難しいかもしれませんけど、この次は三度目の正直にしてみせます。だから俺のこと、信じてください!」
「……二度あることは三度ある、とも言うわよ」
説明中に軽く驚いた様子になっていたが、再度表情を硬くしたエリーゼが、そう釘を刺して来た。
手厳しーっと凹む鎧に、「ま、でも」と、頬杖着いて見下すエリーゼが言葉を繋いだ。
「あのマヒロって奴がどうしてあんな馬鹿な真似したのか、何となく理由もわかったわ」
心なしか、その声音は幾分柔らかくなっているように鎧には感じられた。
「それに」と接続詞を用いて、エリーゼはさらに言葉を続ける。
「これでも私、悪を滅ぼすミスリル銀の精霊だからね。同じバカでも、あんたみたいなバカは本気で嫌いにはなれないのかもね」
思わぬ言葉に、鎧はバッと音を立てながら面を上げる。
「えっ……ほ、本当ですかっ!?」
「別に好きとも言ってないわよ」牽制するかの如く早口で告げたがエリーゼが、しかし心なし表情を和らげ続ける。「でも……その心意気は、どっかの馬鹿みたいな、本物のヒーローだって、この私が認めてあげる。ま、そこまで言っておいて結局役立たずだったら、あんた恥ずかしいなんてもんじゃないけどね」
「あっ……あぁありがとうございますぅーっ!」
「さ、話を再開しましょう」と続けていたエリーゼに気づかず、感極まった鎧は思わず彼女に抱き着こうとし――凄まじい形相の彼女が召喚した大槌に強打され、床に沈むことになった。
◆
槌によるダメージで変身を維持できなくなったのか、いつの間にか元の姿に戻った鎧も痛みで落ち着き、二人の間で情報交換が再開されることとなった。
レジェンド大戦を始めとする、お互いの認識の奇妙なズレは一旦保留とし。それぞれの知る参加者についての知識の共有化を当面の話題とした。
鎧はゴーカイジャーの船長であるキャプテンマーベラスを真っ先に挙げて、彼は必ず、自分よりも頼りになると誇らしげに紹介して来た。
だがそれも、続く漢堂ジャンという人物の紹介に比べれば幾分冷静で、敬愛するレジェンドの一人を語るということでまたもヒートアップし過ぎた彼をまたも窘める必要があったほどだ。
曰く、本来は彼も頼りになる実力者であるが、レジェンド大戦の影響でスーパー戦隊としての力を失っているために油断はできない、とのことだ。
シャーフーという名前は恐らくジャンの収めた獣拳という武術の師であるマスターシャーフーのことだろうという鎧の推察が続き、彼らは合流できれば、同じ目的のために協力が期待できるとのことだ。
一方で、警戒すべき相手の名も挙げられた。
「
ワルズ・ギルとバスコは……どっちも、俺達ゴーカイジャーが倒したはずなんですけど……」
「……別に不思議がることなんてないんじゃないの。あんた自身のことを考えれば」
エリーゼは淡々と、しかし胸の奥で静かに瞋恚の炎を燃やしながら、そう呟いた。
そうですね、と。少し声のトーンを落とした鎧が、彼らの解説を続ける。
ワルズ・ギルは地球侵略を狙う宇宙帝国ザンギャックの元第一皇位継承者であり、当初鎧達が戦っていた地球侵略艦隊の司令官だったという。最終的には決戦兵器を駆ってゴーカイジャーを追い詰めたが、その時鎧達が体得したゴーカイジャーの切り札・カンゼンゴーカイオーの力で葬り去ったのそうだ。
ただそんな肩書に反し、ワルズ・ギル自身は小物であり、バカ王子と揶揄され直接戦闘力にも乏しい存在だと言う。それでも元が明確な悪であるため、警戒しておくに越したことはないという結論になった。
続いてバスコ・タ・ジョロキア。こちらはザンギャック公認の海賊団である私掠船フリー・ジョーカーの船長であり、幾度となく、ザンギャック以上にゴーカイジャーを追い詰めた強敵だという。
しかも、宇宙最大のお宝を独占するという目的のためにかつて所属していた赤き海賊団を裏切り、また恭順していたはずのザンギャックに対しても反旗を翻し、挙句の果ては相棒の宇宙猿を自爆させた筋金入りの危険人物だと言う。最後は赤き海賊団の生き残りであるマーベラスが、ゴーカイジャーの船長として彼を一騎討ちの末に破りはしたものの、再戦すればどうなるかわからないほどの強敵だと言う。
「……ふーん」
ゴーカイジャー自体の強さがどんなものか、今一つ計りかねているエリーゼとしては、その二人をどれほど警戒すれば良いのかわからないが……一先ずは気になる単語を尋ねてみることにした。
「ねぇ、そのバスコやあんた達が狙っていたって言う、宇宙最大のお宝って……何なの?」
「それなんですけど――」
エリーゼの言葉に、鎧も俄然緊張と真剣味を増した表情で顔を寄せて来る。今度は近過ぎる、ということもなく、適切な距離で止まった。
「……バグラモン達の、どんな願いも一つだけ叶えるって言葉……宇宙最大のお宝が関係しているのかもしれません」
それから鎧の語り始めた内容は、余りにも馬鹿馬鹿しく、突拍子もなく、荒唐無稽であった。
宇宙全てを、自由に作り変えることができる力など――
「へえ――本当なら凄い話じゃない。ザンギャックの侵略とかいうのも、それでぱぱっと解決できたんじゃないの」
「はい。俺達も、最初はそのつもりだったんですが……」
当然、そんな途方もない行為に何の代償も伴わないはずはない。
もしもその力を使えば、34のスーパー戦隊が存在した事実が歴史ごと消滅すると言う。地球人は過去のスーパー戦隊に与えられた希望を持っており、スーパー戦隊の存在を消す事で地球人から心の支えを奪いたくないと考えたゴーカイジャーは使用を諦め、他ならぬ鎧自身の手で破壊したと言うことだが……
「主催者がとんでもない存在だから、それを復元してしまっているかもしれないってわけね」
「はい……少なくとも、それを持っている可能性はあるんじゃないかって……」
「まあ、だったらどうして自分達で使わないのって話だけど」
エリーゼは肩を竦めてみせる。
「悪名高いあのマリーチだし、単純に趣味の問題なのかもね」
何気なく吐き出した言葉に、鎧は猛然と喰いついて来た。
「エリーゼさんは、マリーチについて何か知っているんですか!?」
「ええ。第三(私らの)世界じゃ有名よ。“未来視の魔眼”を持つ、神殿協会の預言者……その正体は澱に沈んだ第四世界の住人。億千万の眷属の一人、視姦魔人マリーチ」
視えぬものなしと謳われた堕天使。最強の名を欲しいがままとする魔の最高位、その片割れ。
五年前、聖魔王の円卓と天界の戦争を引き起こした張本人であり……歪んでしまった結果とも言われているが、その性格は自分の考えた芝居を観たいがために誰彼構わず弄び、そうしてできた恨み辛みを利用しては次のシナリオを考え、また新しい悲劇を生み出してを繰り返し嘲笑うと言う、最悪と断じて何ら差し支えないものである。
しかし有名人とはいえ、直接の面識があるわけでもないエリーゼが知っているのはせいぜいその程度だ。
「参加者にいるみーこってのの同類で……まぁ私でも、万全の状態で勝てるかどうかって相手。手強いわよ」
「でも、無茶苦茶悪い奴なんですよね!? そんな奴らのために、スーパー戦隊の人達が消滅してしまうかもしれないなんて、絶対許せませんっ!」
さらなる動機を得て、主催の打倒に一層いきり立つ鎧だったが、そこで何か思い出したかのように名簿の最後の方へとその指を運ぶ。
「実は参加者の中にもう一人、そんな感じの悪い奴がいるかもしれません」
鎧がはっきりしないまま指示したのは、ロンというたった二文字のシンプルな、少し探せばそれなりに同名の者がいてもおかしくない名前であった。
「誰そいつ?」
「もしかしたら人違いの可能性もあるんですけど、レジェンドの方々の中でもジャンさんだけが参加させられているってことで気になっていたんです。ひょっとしたらこのロンというのは、無間龍のことなのかもしれません」
何でもゲキレンジャーの最大の敵であり、自分の退屈を紛らわせるためという身勝手な理由で世界を滅ぼそうとした、スーパー戦隊の敵の中でも最悪の存在の一人だったと言う。また、まさにマリーチのように人間を弄び、無数の悲劇を暇潰しのためだけに作り続けたとも言う。
「厄介なことに、無間龍は不死身だったそうです。だから最終的には獣拳使いの皆さんが総力を結集して慟哭丸という技で封印し、それをジャンさんが管理しているそうなんですが……」
「まんまアウターねそいつ。で、漢堂ジャンが捕まったなら、その時無間龍が復活させられた可能性があるってコト」
「もしそうだとしたら大変です。こいつにも、バスコと同じくらい注意を払わないと」
鎧の知っている、もしくはその可能性のある参加者はそれで終わりと言うことで、続いてはエリーゼの知人を紹介することとなった。
「……結構いるのよね。じゃあまず
長谷部翔希っていう奴は、わたしの聖魔杯でのパートナーなんだけど。まあこいつは放っておいても大丈夫でしょ」
間違いなく人類最強の一人である翔希を心配する必要はない。少なくとも、どうにも調子の優れない今のエリーゼでは、心配するのも烏滸がましいと言えるだろう。
他に、あの憎たらしい伊織魔殺商会の社長、伊織高瀬と、会長の
名護屋河鈴蘭。彼らは全盛期の力を失っているが、どちらも殺しても死ぬような輩ではないため、積極的に保護してやる義理も必要もない。
二人の扱いに対する鎧の抗議は適当にあしらって、さらに知っている参加者の情報を連ねる。同じく魔殺商会所属のヴィゼータは戦力も十分であり、本格的に放置しても問題ないだろう。彼女に比べれば頼りないが、
リュータ・サリンジャーや北大路美奈子もそれなりの戦力を持つため、急いで保護する必要は薄い。鈴蘭と同じ苗字を持つ睡蓮という人物は知らないが、彼女の血縁なら神殺しの人間であるため、これまた心配は無用だろう。
エルシアが知人であるということは……今は特に明かす必要性を感じなかったので、パス。
彼らは合流すればバトルロワイアル打破のために間違いなく協力を望める相手であるため、合流できれば嬉しいが、保護の必要がある者達に比べれば捜索の優先度は低いと言える。
逆に警戒すべき相手は
霧島レナとアーチェス・アルエンテの二人。魔人組織アルハザンの幹部及び首領であり、独自の目的のために犠牲を厭わず、時には悪事にも手を染める彼ら組織の性質上、危険人物となる可能性が極めて高い。
判断に困るのが、先程話題に挙がったみーこだ。恐らくその力は参加者中でもトップクラスだろうが、気まま過ぎて行動が予測し辛い。鈴蘭達のことを考えれば対主催の可能性は高いのだが予断を許さない存在である。
「……それで、保護が必要と思われる参加者なんだけど」
エリーゼは、まずWill.CO.21という特徴的な名前を示す。
「ウィル子って言う電子ウィルスの精霊で……まぁ、私の後輩みたいな奴なんだけど。そんな出自だから高性能なパソコンとかがないと力を発揮し切れないから、屋外戦も多くなるバトルロワイアルだと不利でしょうね。その代わり、首輪を解除できる可能性も高いから、こいつは早めに保護した方が良いと思うわ」
ふむふむと頷く鎧に、エリーゼは最後の一人の名を伝えることとした。
「
川村ヒデオは――殺し屋かって思うぐらい目付きが悪いけれど、ただの人間。ううん、常人未満の、元ヒキコモリよ」
「そんな人まで連れて来られてるんですか!?」
驚きと、憤りの両方を含んだ鎧の声に、エリーゼは答えずに「でも」と続ける。
「ここ一番の閃きやハッタリは凄いのよ。聖魔杯で一時期優勝候補になっていたぐらいだし。それに……根はしっかりしているから、絶対に殺し合いを止めようとしているはずよ」
自分の知る、彼なら――あの日、自分に殺されそうになった時に……道を踏み外そうとした自分を、あるべき道に帰してくれた彼ならば。それを疑う余地など、あるはずがない。
誰より弱かろうと――きっと彼の意志は、誰より諦めない勇者と言われた翔希と同じくらい、強いはずだから。
「で、ヒデオを早く保護しないとっていうのは、戦力的に不安だからってだけじゃなくて……ウィル子とヒデオは霊的に繋がっていて、ヒデオが死んじゃえばウィル子もタダじゃすまないかもしれないからよ」
「なるほど……じゃあ、話も終わりましたし、急いで探しに行かないと!」
勢いよく立ち上がった鎧に対し、エリーゼは先程までより冷めた気持ちで応じる。
「探しに行くって、どこに行くつもり? 東京だけでも馬鹿みたいに広いのに、このゾーンにいるとも限らないのよ?」
「えーっと……豪獣ドリルで空から探す、とか」
「その時建物の中にいたら見つからないと思うんだけど? 集合を呼びかけたって、知り合いなら来てくれるかもしれないけれど、他の協力できそうな参加者から一緒に危険人物が集まるかもって警戒される可能性だってあるわよ」
言われて一瞬考えた後に、鎧がポンと手を打つ。
「それじゃ、スカイツリー行きましょう! スカイツリー!」
「はあ?」
エリーゼの疑問の声に、鎧は丁寧に頷く。
「目立つ建物ですから他の参加者の人と会える可能性も高いですし、ゴーカイチェンジすれば遠くだって見渡せます。豪獣ドリルだと、エリーゼさん言う通り周りを警戒させますし、操縦の手間もあるから、代わりにどうかなーって」
「……なるほどね。良いんじゃないの。それなら私も付き合うわ」
ふわふわと。椅子から腰を浮かせながら、エリーゼは同行の意を伝えた。
「おっ! 良いですねぇ、俺、伊狩鎧ことゴーカイシルバーと、ミスリル銀の精霊のエリーゼさんの、ギンッギンコンビですね!」
「ギンッギンって……」
嬉しそうに伝えて来る鎧のセンスに頭を抱えながらも、エリーゼは始めよりは慣れも含めて、鎧のそんな調子も許容できるようになり始めていた。
「……まぁ、良いわよ。それじゃあ行きましょうか」
エリーゼの言葉に頷いた鎧が、外へ続く扉を開けた。
◆
――ここに来てからというもの、エリーゼの状態は決して万全と言えるものではなかった。
端的に言えば、身体が重たいのだ。血液の代わりに、水銀が全身を満たしているかのような気怠さに、脳髄まで浸されてしまいそうな……そんな感覚。一動作ごとに思考と実動の微かな、しかし確かなラグを覚えてしまう不調。どうにも力が入らない疲労感が、彼女を包んでいた。
突如として身を蝕んで来たこの変調の正体に、しかしエリーゼは薄々勘付いていた。
(信仰が……ないんでしょうね)
恐らくはこのバトルロワイアルの会場、各種のゾーンはエリーゼ達の本来住んでいた世界と隔絶されているのだ。本物の隔離空間都市のようなわずかながら現世と繋がりのある隣接した異界ではなく、恐らく本来は何ら元の世界と関与していない真の隔離空間。
そこに集められたのは僅か60足らずのバトルロワイアル参加者。その中には鎧のような、ミスリル銀その物を知らない者も少なくないのだろう。
精霊とは、人の意思が生み出すモノ――パワーソースも、存在そのものの源も、他者の心に依存している。
ならばミスリル銀に対する信仰が圧倒的に不足したこの空間は、エリーゼにとっては人間が深海――は言い過ぎでも、食べ物も酸素も欠乏した場所にいるに等しい劣悪な環境なのだろう。
だが、それが仮に事実であるならエリーゼにとっては不都合以外の何物でもないはずだが、どこか嬉しい、という感情を抱いている自分がいることにも気づいていた。
この空間内にあっては、いつただの脆弱な自然霊へと堕ちてもおかしくないこの自分が未だに存在し、その力をある程度行使できているのは――きっとこの場に呼ばれた知り合い達が、エリーゼのことを思ってくれているからなのだろうと。
彼ら彼女らが、どれほど自分のことを思ってくれているのか――それを実感できた喜びが、エリーゼにそんな想いを抱かせていたのだろう。
加えてもう一つ、目の前の伊狩鎧に己の正体を明かしてから、ほんの僅かながら気分が快方に向かって来ていたことも、エリーゼを喜ばせた要因の一つだろう。
既にパワーアニマルという例を知っていたためか、エリーゼが精霊だということをあっさり信じてくれたのだろう。彼からも新たに信仰が届けられるようになった分、エリーゼも調子を取り戻すことができたのだ。そんな純真な人間から、さぞ大きな信仰を捧げられているだろうパワーアニマル達には少しばかり嫉妬を覚えてしまいそうになるが、彼らは表舞台で人の子達を守護し続けて来たのだから、それも当然だと認めるしかないだろう。
そしてそれが、エリーゼの不調を解決するためのヒントでもあった。
信仰が足りず困るなら、それだけ多くの人間から思われるように――信じて貰えるように、パワーアニマル達のように、彼らを護り、導いて行けば良いのだ。
翔希や、美奈子や、鎧のような。正義を信じる者達は、自分を慕ってくれているのだから。それを投げ出さない。彼らが信じる正義を成すための、加護を与える精霊に――女神になる。
(……そうよ。別に、あんた達に言われたからじゃなくて……)
エリーゼの脳裏に浮かんだのは、あの雨の中で……自暴自棄に陥り凶行に走ろうとする彼女を、それでも神と呼んでくれた……ヒデオや、親衛隊の面々の顔ぶれだった。
(諦めた古き神々が堕ちて、人の子を護ったパワーアニマルが信仰されているなら……科学のせいでとか言い訳しないで自分を信じた方が、崇め祀られ易いと思っただけなんだからね! た、たまたまあんた達の言うことと同じだっただけで……)
「……エリーゼさん、何か言いました?」
「ふぇっ!?」
不意に鎧が振り返ってそう言って来たものだから、エリーゼも思わず上擦った声を漏らしてしまった。
「な……何も言ってないわよ」
「そうですか。じゃあ急ぎましょう!」
知らぬ間に口に出してしまっていたのだろうかと焦るエリーゼの、動揺を隠し切れていないだろう返答に、しかし鎧は気づく様子もなくそう先を促した。
(単純よねぇこいつ……)
先を行く鎧を見て、一旦宙に浮いたままその場に留まったエリーゼは、思わずそんな感想を抱いた。
心意気は先に認めた通り立派だが、誰かに利用されないとも限らない。そういった人心操作や煽動に長けるような相手が、二人分の知識を合わせただけでも複数いることが既に判明している以上、傾向から他にも似た手合いが居てもおかしくないのだ。それを考えると、エリーゼとしては鎧のあまりの良い子ちゃんぶりを心配せずにはいられないわけだ。
(……ま、その分面倒を見る甲斐があるって思いましょうか)
投げ出さないと、決めたばかりだ。
仲間達の信じる、正義を司る聖銀の精霊に相応しく振る舞おうと――エリーゼは、導きと力を授けるべき銀色の勇者を追い駆け始めた。
全ては一人でも多くの者を救い、導くために。
ヒーローと精霊の戦いは、こうして幕を開けた。
【一日目/朝/東京ゾーンH-2・錦糸町駅南口】
【伊狩鎧@海賊戦隊ゴーカイジャー】
[参戦時期]第五十話『決戦の日』 宇宙最大のお宝破壊後
[状態]頭部に鈍痛
[装備]BRデバイス@オリジナル、ゴーカイセルラー&レンジャーキーセット(ゴーカイシルバー&十五大追加戦士キーセット)&ゴーカイスピア@海賊戦隊ゴーカイジャー
[道具]基本支給品一式、豪獣ドリル@海賊戦隊ゴーカイジャー、不明支給品×1(確認済み)
[思考]基本行動方針:ヒーローとして、殺し合いを止める。
1:エリーゼと共に東京スカイツリーを目指す。
2:マーベラス達(自分の知り合い)やヒデオ達(エリーゼの知り合い)と合流したい。
3:ジョーカー(三元士・名前は知らない)、ワルズ・ギル、バスコ、ロン、レナ、アーチェスを警戒。
[備考]
※
オープニングで死亡中に起こった出来事について記憶を与えられています。
※宇宙最大のお宝が主催の手にあるのではないかと考えています。
※追加戦士キーで発動できる大いなる力は全てレンジャーキーに備わっています。
【エリーゼ・ミスリライト@戦闘城塞マスラヲ】
[参戦時期]原作五巻 「噛み合わさる歯車」終了後
[状態]信仰不足で不調気味
[装備]BRデバイス@オリジナル
[道具]基本支給品一式、不明支給品×3(確認済み)
[思考]基本行動方針:聖銀の精霊として、正しい行いをする人間を導き、殺し合いを止める
1:鎧と共に東京スカイツリーを目指す。
2:ヒデオ達(自分の知り合い)やマーベラス達(鎧の知り合い)と合流したい。
3:ジョーカー(三元士・名前は知らない)、ワルズ・ギル、バスコ、ロン、レナ、アーチェスを警戒。
[備考]
※精霊であるパワーアニマルを自分やウィル子と似たようなものであると考えています。
【全体事項】
※ウィル子は、参加者に渡されている名簿では「Will.CO.21」の名前で記載されています。
【支給品解説】
- ゴーカイセルラー&レンジャーキーセット(ゴーカイシルバー&十五大追加戦士キーセット)&ゴーカイスピア@海賊戦隊ゴーカイジャー
全て伊狩鎧に本人支給。
ゴーカイセルラーはゴーカイシルバー専用の変身アイテム。モバイレーツ同様に携帯電話型だが、こちらはストレート式携帯電話型。ボタン部分にはそれぞれシルバー含む16人の追加戦士の顔が一つずつ描かれている。レンジャーキーをレンジャーモードの状態でセルラーの内部にセットし、セットしたキーと同じ戦士の描かれたボタンを押すことで、スキャンしたキーの戦隊名が電子音声で発されキーに対応した戦士の姿に変身するが、ボタンに描かれている16戦士以外の戦士にも変身は可能である。
カメラ機能も付いており、セルラーのカバーに撮った画像が映し出される。
レンジャーキーの十五大追加戦士セットとは、ドラゴンレンジャー・キバレンジャー・キングレンジャー・メガシルバー・タイムファイヤー・ガオシルバー・シュリケンジャー・アバレキラー・デカブレイク・マジシャイン・ボウケンシルバー・ゴーオンゴールド・ゴーオンシルバー・シンケンゴールド・ゴセイナイトの計十五本のレンジャーキーのことである。
この内ゴーオンゴールド・ゴーオンシルバーを鎧の力で融合させ、ゴーオンウイングスという新たなレンジャーキーを作製したこともある。
また、ゴーオンウイグスの時と同様、鎧の15戦士のレンジャーキーを一つにしたいという願いでゴールドアンカーキーを作製可能。追加戦士15人のマスクが刻まれた錨のような形状をしており、ゴーカイセルラー下部の鍵穴に挿し込むことでキー自体が巨大化・変形してシルバーに合体し、錨マークが描かれたマスクの上部分が下がることで、アンカーモードになったゴーカイスピアで戦う強化形態ゴーカイシルバーゴールドモードに変身する。
ゴーカイスピアはゴーカイシルバーの専用武器で、普段は三叉槍状のスピアモード・銃型のガンモードを使い分け、ゴールドモード時は先端が錨状に変形したアンカーモードを使用する。変身前でも使用可能で、鍵穴にレンジャーキーを差し込むことで「ファイナルウェーブ」の電子音声と共に形態に応じた必殺技を発動する。
伊狩鎧に本人支給。ゴーカイシルバー専用の巨大戦力。劇中では未来戦隊タイムレンジャーの大いなる力で呼び出される豪獣ドリル、恐竜戦隊ジュウレンジャーの大いなる力によって豪獣レックス、さらに爆竜戦隊アバレンジャーの大いなる力によって豪獣神に変形と、三つの形態を有する。
左右に1つずつある操舵輪の中間に鍵穴が設けられており、変形する場合は対応するレンジャーキーを、豪獣神で必殺技を発動する場合には3本のレンジャーキーを順番に鍵穴にセットする。コクピットには熱探知機能も備えている。 以下各形態について解説。
豪獣ドリル:タイムレンジャーの大いなる力により31世紀の未来から召喚される未来戦闘型ドリルタンク。機体各所に備えた計12門のビーム砲・豪獣キャノンによる砲撃と機首部のドリルによる突進攻撃「豪獣ドリルアタック」を主体とする。
豪獣レックス:豪獣ドリルがジュウレンジャーの大いなる力により変形する恐竜戦闘型巨大ロボ。恐竜を模した頭部による噛み付きや尻尾を相手に叩きつける「豪獣レックスドリル」・口からレーザービームを放つ「豪獣レーザー」を用いて戦う。
豪獣神:豪獣レックスがアバレンジャーの大いなる力により変形する爆竜戦闘型巨大ロボ。距離を問わず戦える万能型で、豪獣レックス時の頭部が変形した左腕・右腕に装備したドリルを武器にする。
ドリルは三叉に変形して電撃を放つトライデントモードと大きく展開してバリアを発生させるシールドモードとしても運用可能。 必殺技はアバレキラーキーをセットし、右腕のドリルを高速回転させながら突進して対象を貫く「ゴーカイ電撃ドリルスピン」と、ドラゴンレンジャーキーとタイムファイヤーキーとアバレキラーキーを順にセットし、これまでの三形態に分身してドリル攻撃を同時に叩き込む「豪獣トリプルドリルドリーム」。
またメガシルバーのレンジャーキーで豪獣神の背中にメガウインガーの主翼・メガウイングが合体した電磁戦闘形態であるウイング豪獣神に変形し、上空を高速で飛行することが可能。
ウイング豪獣神の必殺技はドリルに槍状のエネルギーを纏い、超高速で飛行しながら突撃する「ゴーカイスパルタン」。
この他、アバレンジャーの大いなる力でゴーカイオーと合体した豪獣神、ゴーカイジャーの大いなる力でゴーカイオー及びにマッハルコンと合体したカンゼンゴーカイオーなどの形態がある。
最終更新:2013年02月27日 20:18