北林谷栄

北林 谷栄(きたばやし たにえ、1911年5月21日 - 2010年4月27日)は、日本の女優・声優。
本名・安藤 蓮以子(あんどう れいこ)。長男は画家の河原朝生。

東京都銀座に生まれ、1931年に創作座の研究生となる。1936年に新協劇団へ入り、築地小劇場の『どん底』で初舞台を踏む。

1947年、宇野重吉や滝沢修らと民衆芸術劇場を設立。1950年には劇団民藝創立に加わり、以後、第一線で活躍した。1989年、動脈瘤破裂で倒れたが、大手術を受けて見事に復帰した。この際、臨死体験をしたと主張、詳細は『証言・臨死体験』(立花隆著、文藝春秋)に記されている。

舞台のみならず、映画やテレビドラマでも活躍し、紀伊國屋演劇賞、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞など数々の賞を受ける。1978年、紫綬褒章受章。

若い頃から老け役を演じることが多く、日本を代表する「おばあちゃん」役者でもある。同じく生涯老け役を演じた笠智衆と並び称されている。

特に、映画・テレビ共に、田舎の農村・漁村・山村で生活する老婆を演ずることが多い。これに関連して、地方公演の際、農家に案山子の服がほしいと頼んだことがある(「クイズダービー」第789回(1991年6月1日放送分)最終問題より)。 ただし、本人の生まれ同様の口跡爽やかな江戸っ子(『鬼平犯科帳』第1シーズン第13話「笹やのお熊」1989年)・東京っ子(『銀座わが町』1973年) も演じた。

1974年公開の映画『華麗なる一族』では、他作品でのおしゃべりな印象の演技とは異なり、台詞は「あっ、そう」の一言と笑い声だけという佐橋総理夫人を演じている。

1956年と1985年に、市川崑監督で映画化された『ビルマの竪琴』には、両作品ともに同じ役どころで出演した(物売りの老婆役)。

1988年春公開の『となりのトトロ』でも、「サツキのクラスメイト・大垣勘太(カンタ)のおばあちゃん」の役の声優として出演した他、声優としてはベティ・デイヴィスやヘレン・ヘイズの吹き替えもこなしている。

1989年7月19日にドラマ撮影のため滞在していたアメリカ・オレゴン州で動脈瘤破裂で倒れたが再起。1990年公開の『大誘拐/RAINBOW KIDS』で堂々主役(柳川とし子刀自・役)を演じ、元気に復帰した姿を披露。映画もヒットし、日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞した。(本編クレジットのキャスティングは風間トオルらがトップに出て来るが、実質的には北林が主演で、公開後の作品紹介では北林が主役の扱いになっている。)

2002年公開の『阿弥陀堂だより』では、既に脚が悪くなり、歩きも覚束ない状態だったが、主演を務めたのが劇団民芸創設時からの盟友だった故・宇野重吉の息子寺尾聰であることから出演を快諾し、阿弥陀堂を守る老女を好演、日本アカデミー賞・最優秀助演女優賞を受賞した。

2003年4月11日から13日まで世田谷パブリックシアターで催された舞台「北林谷栄の世界『蓮以子 93になった』」が公の場に出た最後となった。以後も出演交渉はあったがすべて断り、静かに余生を楽しんでいた。

2010年4月27日午後8時40分、肺炎のため東京都世田谷区の病院で逝去。98歳没。北林の逝去の報に劇団民藝の後輩である奈良岡朋子、大滝秀治が哀悼のコメントを発表している。

没時、北林は日本の演劇人の中で長岡輝子に次ぐ高齢者だった。
最終更新:2010年08月17日 17:08
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