木更津キャッツアイ

『木更津キャッツアイ』(きさらづキャッツアイ)は、TBS系で2002年1月18日から2002年3月15日、毎週金曜22時から1時間放送していた日本のテレビドラマ(金曜ドラマ枠)。全9回。脚本は宮藤官九郎。

本作は実験的なドラマでもあった。1話を野球のゲームに例え、表と裏に分け本編ストーリーの裏で何があったかを巻き戻して説明したり、「30P」という特殊カメラを利用したこと、哀川翔や氣志團などを実名の役で登場させるなど、さまざまな工夫を凝らした。ドラマ終了後、DVD販売数が50万セットを超える大ヒット。映画化に繋がった。
また、ドラマ撮影を実際に千葉県木更津市で行ったため、ドラマファンがここを訪れるようになり、木更津市は小さな観光地となっている。放送中からカルト人気は高かったものの、視聴率的には芳しくなかった(全放送回の平均視聴率は10.1%。むしろ深夜の再放送の方が視聴率が良かった)。しかし、独創的な世界観や表現が放送終了後に受けており、今も根強いファンが多い。

制作背景

ドラマには、評論家・大塚英志が「木更津現象」とも呼ぶ、大都会周縁部の“田舎”で暮らす、あるいは暮らすしかない若者たちの鬱屈した思い、やるせない気分が込められている。
1997年東京湾アクアラインが開通し、都内まで1時間30分程度を要していた木更津市は、川崎市と数10分で結ばれることになった。しかしながら、普通車で通常3000円(開通時は4000円)という高額通行料が妨げとなり、首都圏のベッドタウンとなる行政の思惑ははずれ、他方、休日の買い物客は京浜地区に流出し、木更津駅前の商店街の衰退を招くという皮肉な結果となった(ストロー効果)。
ドラマの登場人物でいえば、主役・ぶっさんは21歳に至るまで木更津を一歩も出たことがなく、モー子は第4話にして初めて渋谷を訪れている。一方で、アニの弟・純、リトル山田ら素質ある野球部の後輩はプロ野球の門戸をたたくことで“陸の孤島”木更津を抜け出ていく。また、キャッツアイ・メンバーで唯一の大学生・バンビは都内の大学に通っている(後に地元エリートとして木更津市役所に就職する)。
このように、学業やスポーツの才ある者は次々と都内へ流出していく中で、停滞・衰退する木更津に取り残された、時にヤンキーとも呼ばれる凡庸な若者たちの劣等感と地元愛、都会へのひそかなあこがれと反発、数少ない風俗店や周囲の異性は幼なじみや顔見知り、誰かの元恋人ばかりという限定状況ゆえに発散しきれない性欲、義侠心と背徳心がちりばめられた、無意味な方言交じりの会話がドラマの魅力となっている。
登場人物たちの泥臭い人物像、会話、エピソードを、都会の視聴者は未知の“おかしみ”と取り、大都会周縁部および地方の視聴者は既知の親近感あるいは一種自虐的な懐旧感を覚えたのが、ドラマヒットの一因と思われる。この種のヒット図式は、ドラマに先行する氣志團と似ており、“大いなる田舎”宮城出身の脚本家・宮藤官九郎の面目躍如たる秀作となっている。

最終更新:2010年08月18日 22:08
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