概要
戦闘に至るまでの背景
ヴァーグリア国は、過去多くの戦いを経験しているが、局地戦による敗北はあっても、傾国に結びつく大敗というものを経験したことがなく、いわゆる「強国」と呼ぶに相応しい国であった。
そんな彼らの国境をはじめて脅かしたのは、大帝国でもなければ諸国連合でもない、
周辺魔族であった。
これにはいくつかの理由がある。相手が国として形成されていない為、いわゆる「王」的存在が見当たらず、
ヴァーグリア国からは、どこを叩けばいいのかわからない戦いが続いたこと、そして、攻める側の
周辺魔族にしても、そのほとんどが知能をもたない
魔物型であり、彼らにとってこれは戦いではなく、生存の為の狩猟であり、勝利や敗北という概念をもっていなかった為、撃退されても何度でも侵攻を繰り返した。
基本的に、これは
ヴァーグリア国に関わらず、
周辺魔族と戦う全ての国に該当したことだが、この頃、北から流れ着いた
魔物の数は尋常ではなく、「やっていることは他国と同じだが、その規模が尋常ではない」という状況が
ヴァーグリア国を悩ませていた。
だが、相手が国ではなく、明確な目標がないということは、逆に
ヴァーグリア国にとっても、国家存亡の危機ではなく、あくまでも「時折できるかぶれ」のようなものだった。
1734年、
ガイレスという
魔族の男が、この
魔物の大軍勢に目をつけ、自らの軍勢とするべく指揮下としたが、
ロリスザードに討たれた。
その後を継いだ
シーバズルは、
ガイレスをも上回るカリスマ性で、更に広範囲の
周辺魔族を統率。
ヴァーグリア国と正面から戦うこととなる。
これに対して
ヴァーグリア国も、明確な指揮官がいる以上、もはや相手を単なる群れではなく、国として同格とみなし、一大決戦を挑むこととなる。
両軍の戦力
戦闘経緯
戦いは、平地であるクライニース高原で行われた、文献によっては「第三次クライニースの戦い」という記述もあるが、一次、二次にあたる大きな戦いは見当たらず、おそらくは小規模な遭遇戦が二度行われたのだろう。
障害物のない大地に、竜が翼を広げたかの様に配備された
ヴァーグリア国軍、それは彼らが最も得意とした
陣形であった。
総大将として、数十年ぶりに国主
フライヤ自らが本陣に就き、その周囲を屈強なる
ヴァーグリア国の勇将が十重二十重に陣を敷き、それら本陣を取りまとめる将として
マルタナが配備された。
中陣には戦局に応じて臨機応変に攻撃と守備を担当する部隊を配備、柔軟性に優れた将軍がここに多く配備されていたが、
竜技七将軍では
ガイックと
ロリスザードの陣がここに位置し、戦局に応じて攻めと守りの判断を下さねばならなかった。
そして前衛には最初に戦端を開く先陣、第二陣の部隊が集結していた。右に
エリス、それを補佐する形で
ティナ、左には
ザークと、それを補佐する
タミア、他にもこれまでの戦いで数々の勲功を重ね上げてきた歴戦の将が名を連ねていた。
対する
シーバズル軍にも
陣形らしきものはあるが、徹底はされていない。
これは、知能の落差が人間とは違い極端に離れている
魔族、
魔物の混在部隊では普通の光景であったが、そのかわり
魔物は、単純な腕力と突進力においては、
人間をはるかに凌駕することで、戦いのバランスはとられていた。
先陣を勤める
竜技七将軍の
ザーク、
タミア、
エリス、
ティナ、これらの部隊から騎馬部隊が一斉に突撃を仕掛ける。
続いて重装歩兵部隊が進み、弓隊、法術部隊がそれぞれ援護をとる。見通しの効く高原で、
魔族と
人間が正面から激突する。
戦いの火は広がり、第二陣、第三陣も戦場に飲み込まれていく中、左翼戦線で大きな動きが生じようとしていた。
膠着状態が続いていた前衛部隊の一部で敵陣の突破に成功し、そこから一気に流れが変わり
シーバズル軍は大きく後退、それを追撃するべく
ヴァーグリア国軍の部隊が一斉に突撃を仕掛けた。
本来
ザークを支援する位置に配備されていた
タミア部隊であったが、勝利を求めて先走り、
タミアは敵本陣を目指して突撃を開始するが、退路を絶たれ、敵陣に孤立してしまい壊滅、
タミアも戦死する。
本陣に迫る
タミア部隊を撃退した
シーバズルは、反撃に出るべく自ら剣を抜いて前線へと向かった。しかし、それは部下に対しての言い訳であり、彼の本当の目的は過去何度も戦ったライバルである
ロリスザードを探す事であった。
混戦の中、二人は導かれるかのように邂逅し、激しい一騎打ちを繰り広げる。
このとき、まさか敵の総指揮官が最前線に単身で突撃しているとは思わず、周囲の誰もが
ロリスザードが誰と戦っているか気付かなかったという。
しかし、いかに
魔物個々の力が勝っていても、
シーバズルさえ本陣を空席にして、個々の力で真正面から突撃するだけの攻撃に対して、
陣形を駆使して戦う
ヴァーグリア国は、時間の経過と共にこの攻撃を防ぎきり、反撃にうつりやがては圧倒し始める。
こうして戦いの大局は
ヴァーグリア国に傾き、
シーバズルも撤退することとなる。
戦いの結末
周辺魔族である以上、明確な降伏や滅亡はなかったが、それでもこの戦いで多くの
魔物が討たれ、彼らの
ヴァーグリア国への侵攻は大きく鈍ることとなる。
更にこれより数日後、
シーバズル自らが、単身
ロリスザードの元に赴き一騎討ちを繰り広げるが、戦いの後二人はそのまま友情を結び、
ヴァーグリア国に帰属する。
指導者を失った
周辺魔族は、これ以後、どこの国にもある「時折現れる
魔物の群れ」程度の脅威でしかなくなることとなる。
最終更新:2024年08月10日 01:36