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  • 崩落 の ステージ(前編)

崩落 の ステージ(前編)

最終更新:2023年07月24日 14:36

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崩落 の ステージ(前編)


   弐/1――

 舗装された道路、罅割れたコンクリート、倒壊した家屋、血痕。
 文明も生活環境もごちゃ混ぜになった街で、リザ・ホークアイとパズーの二人は争いの痕跡を辿った。

「誰が争っていたかはわからないけれど、どうやらここにはもう誰も残っていないようね」

 と、銃を構えたリザが、短剣片手に周囲を目配りするパズーに。

「家が一軒、丸ごとぺしゃんこになってる。こんなの、大砲でも使わなきゃ無理だよ」

 と、短剣を構えたパズーが、銃片手に周囲を目配りするリザに。
 互いに背中合わせで告げ合い、しばらくして警戒の糸は途切れた。

 Dボゥイと小早川ゆたかの二人組と別れた後、リザたちはそのまま北上し、この現場に行き着いた。
 おそらくは数時間前、この地で戦闘が行われていたのだろう。
 路上には血の跡が溜りを作っており、検察して見るとまだそう時間は経っていなかった。
 近くで崩れ落ちていた家屋の様子を見るに、ただの殴り合いや銃撃戦ではない。
 国家錬金術師クラスの異能者による戦闘か、それに匹敵する兵器を用いた戦闘であったと、軍人であるリザは推測した。
 そして気になったのは、道路上にポツンと放置されていた、赤い車。
 フロントガラスが破壊されており、車体にもところどころ歪みがあったが、エンジンはまだ動いている。
 使えなくなったから乗り捨てられた、というわけではない。
 走行中に襲撃され、応戦するために飛び出し、そのままどこかへ……といった具合だろう。

「すごく派手な車だなぁ~。僕のいた町じゃ、こんなの見たことないよ」
「搭載されている装備から考えて……火災時などにそのまま対応できる、消火用の車みたいね」

 パズーが住んでいたスラッグ渓谷にも、リザが暮らしていたアメストリスにも、消防車なるものは世に出回っていなかった。
 が、その根底は車だ。ハンドルとペダルの配置や刺しっ放しのキーから鑑みるに、運転方法はそう変わらないだろう。
 リザには運転の心得がある。運転席に座りハンドルの感触を確かめるが、やはりいけそうだ。
 そんなリザの様子を見て、パズーはしかめっ面をする。

「おねえさん、その車どうするつもりさ?」
「そうね……警察署に向かうための足にしてもいいし、いざというときは車体全体を盾にすることもできるわ。
 持ち主が戻ってくる気配はないし、このまま拝借して――」
「ちょっと待ってよ! それって泥棒じゃないか!」

 整然とした態度で語ったところを怒鳴られて、リザはやや驚いた後、冷ややかな視線でパズーを見やった。

「パズー、今は非常時なのよ? 確かに窃盗は罪だけれど、生きるか死ぬかというときに、そんな些事には構っていられない」
「それは……そうだけどさ」
「それにあなた……ここに来る前は、仮にとはいえ空賊とやらの手伝いをしていたそうね。そのことについては?」
「うっ」

 リザの現実を見据えた反論にあてられて、パズーは口を噤んだ。
 空賊――山賊が山を根城に強盗を働くのと同様に、空を根城にする盗賊がいるという、嘘みたいな現実をリザは先刻知った。

 『ねぇおねえさん。ちょっと遅いけど、朝ごはんにしない?』
 『は? この一刻も争うときになにを悠長な……』
 『でも、食べるもの食べなきゃいざってとき困るよ? それに実は僕、ずっとおなかぺこぺこだったんだ』

 発端は、Dボゥイたちと別れた直後のこの会話だった。
 人気のない民家にお邪魔し、リザとパズーはそこで一旦、小休止として朝食を取った。
 その際、リザはパズーからシータたちのさらに詳細な情報を聞き、その延長として、彼の世界の『空』についても聞かされたのだ。
 アメストリスでも実用化には至っていない空の航行方法――飛行船。パズーの住まう国では、それが確立されているというのだ。
 しかも話は飛行船だけに留まらず、シータやムスカを交えた争いの発端……ラピュタという『天空に浮かぶ城』まで出てきたから驚きだ。
 いや、これはもはや驚きを超越して、疑ってかかるべき御伽話のようにも思えた。
 城というからには、かなりの質量を持っているはず。それが宙に浮かぶなど、どのような方法を用いればいいのか検討もつかない。
 論理や法則を知らない一般人からは魔法のように捉えられる錬金術でも、それは不可能なことなのだろう。
 でなければ、アメストリスでも飛行船くらいならとっくに実用化している。
 動力はいったいなんなのか? そもそもパズーの住まう国には錬金術が存在しないとか。しかし科学は発展していて……
 と、話に花を咲かせるうちに、ほんの小休止が、予定よりも長い足踏みになってしまった。
 パズーの齎した情報は決して無益なものではなかったが、今はなにより、銃器の調達が先だ。ラピュタの謎など後回しで構わない。
 しかし、シータという少女に興味が湧いたのも事実。パズーが、どれだけシータを気にかけているのかも。

 『約束したんだ。シータを連れて行くって。こんなところで死なせたりなんかしない。するもんか』

 少年らしからぬ使命感に燃えた瞳はどこか――リザが慕うある野心家のものに似ていた。
 だからなのかもしれない。気が付けばパズーに肩入れし、シータを保護しようという考えさえ生まれ、二人とも死なせたくないと願う自分がいた。
 同時に、思う。時期を早くして死亡の報告がなされてしまったエドワード・エルリック、その弟、アルフォンス・エルリック、
 同僚であり故郷に妻子を残してきたマース・ヒューズ、そしてロイ・マスタング。
 彼らもまた、死なせたくはない人間たちだ。
 リザが仲間に対し抱くそれと同じように、パズーもまた、シータやドーラに対する心配を募らせているのだろう。
 ましてや、パズーはまだ子供だ。不安を看破できるほど精神が研磨されているとは思いがたい。
 国家錬金術師に軍人にほぼ不死であると言っても過言ではない鎧。それらと儚い少女を比較しても、安心でいられるはずなどないのだ。

「……まぁ、慣れないものに触るのはよくないわね。これの所有者が取りに戻ってくる可能性もあるし。早々に切り上げましょう」

 屈託なく微笑んで、リザは消防車から身を降ろした。
 その、直後。
 二人の元に、静寂を突き破る爆音が轟いた。

「今の爆発音は……橋の向こう?」
「見て、おねえさん。煙が上がってる。誰かがあそこで戦ってるんだ」

 襲撃者どころか通行人もろくにいない、寂寞とした道路に訪れた、突然の騒音だった。
 見ると、西の方角に煙が濛々と立ち上る光景があった。
 普段なら火災の一言で済ます惨事だったが、現状を考えれば、あれが自然災害や事故であるはずもなく。
 つまりは、何者かによる放火、それもなんらかの爆発物かそれに準じる兵器を用いた可能性が高い。

「行こう、おねえさん。ひょっとしたら、シータが巻き込まれてるかもしれない」
「……いえ。この川沿いに北上し、迂回して警察署に急ぎましょう」

 リザは淡白に、パズーの提案を制した。
 至って冷静な顔つきで焦り顔の少年を宥め、煙の立ち上る方角に背を向ける。

「どうして! あそこで何かが起こってるのは間違いないんだ。誰かが危険な目に遭ってるのも!
 それがもしかしたらシータかもしれないし、おねえさんの知り合いだって可能性もある!」
「私たちの目的は敵の殲滅でも、弱者の救護でもない。そもそも、私たちはそれを可能にするだけの戦力を持ち合わせていない。
 今は自分たちの身の周りを固めることが最優先よ」
「そんなの屁理屈だ! シータが誰かに襲われてからじゃ遅いんだよ!」

 徹底したリアリストを貫くリザに、まだ幼いパズーは反発するしかなかった。
 パズーとシータの繋がりがどれだけ強固なものかは、皮肉にも先ほど、共感を覚えるほどに知ってしまった。
 仲間のために命を懸ける、自ら死地に飛び込む、これらの行動は若さだけで片付けられるものではない。
 単なる命知らずではなく、『死なないという覚悟』があるからこそ、冒険ができる。

「……たしかに、私の言葉は臆病者の戯言かもしれない。でも、子供のあなたをみすみす死にに行かせるわけには」
「どうしてそんなに難しく考えるのさ!? 困っている人がいたら助ける、悪い奴がいたらやっつける、敵わないようなら逃げる!
 そんなの、当たり前のことじゃないか! やりもしないうちから諦めるなんて、そんなの間違ってるよ!」

 理路整然とした論理で武装しても、パズーはことごとくそれを剥がしてしまう。
 正義の代弁者でもなく、職務に準じる執行官というわけでもなく、パズーは人間として、目の前の惨事を見過ごせなかった。
 その若すぎる勇気にリザは感銘を受け、それでもパズーの主張を肯定することができない。
 縁も薄い赤の他人。ただ行き先が同じだっただけ。いずれは別れるつもりだった。なのに、リザはパズーを死なせたくないと思った。
 いつの間にか、こんなにも肩入れしてしまっていた。おばさんなどと、数々の失言を浴びせられたこの少年に。

(どうして、私の周りにいる男性は、こうも無謀な挑戦が好きなのかしら)

 思い、冷笑した。
 その後、パズーとリザの討論は数十分にも及んだ。その末に、

「荷物を」
「え?」
「私の荷物を、あなたのデイパックに移させてもらうわ。穴が空いた荷物を持ち歩いていては、いざというとき対応が遅れるから」
「おば……おねえさん、ッデェ!?」

 リザはパズーの熱意についに折れ、西への進路を検討した。たび重なる失言への制裁は、しっかり忘れずに。
 この、勇ましくも失礼極まりない少年を、慈愛に満ちた彼女は突き放すことができなかったのだ。
 荷物をパズーのデイパックに移す傍ら、リザはなおも騒動の続く西の方角を見やり、息を飲む。
 23本のダーツ、一振りの短剣、残弾3発の銃……これらの心許ない手持ちで、どうにかなればいいのだが。

(待っているのは重火器で武装した凶悪犯か、それとも……いえ、争いは避けるべきよね。まったく)

 これからやろうとしていることは、破壊者の検挙ではない。状況の確認と、襲われている者の救護だ。
 必ずしも戦う必要はない。うまく立ち回ることができれば、誰も傷つけずに場を収拾できるはずだ。
 ――と、そのときのリザはパズーに感化されたのか、軍人に相応しくない希望的観測を胸に抱いていた。
 その背後を、一つの影が追跡していたとも知らずに。


 ◇ ◇ ◇

   壱/1――

 男が三人、街中で小躍りする。
 鋼の装甲を鎧った女が一人、三人の男を躍らせる。
 阿鼻叫喚の宴は、咳き込むほどの粉塵と猛火の熱気に彩られ、さらに加速する。

「おいおいマジやべぇマジやべぇって。なんなのアイツ? なんなんだよオイ!」
「いやぁ~、厄介なのに目を付けられちゃったねぇ。とりあえずどうする? 逃げる? 戦う?」
「ブッ殺す! ツラ拝まないことにゃどんな奴かもわからないが、あいつは今こう思ってるはずだ。こんな強力な兵器を持ってる俺は――」
「僕としては、安全を確保できればそれでいいんだけどなぁ。相手も無差別になってきてるし、このままじゃここら一帯火の海だね」
「聞けよ! で、問題はどうやってあいつをブッ殺すかだ。さすがの俺もあんなのとは戦り合ったことがねぇ!」
「逃げるにしても隠れるにしても、このまま町を無差別に破壊され続けたら、巻き込まれることは必至だ」
「いや、だからあいつをブッ殺せばそれで済むじゃねぇか! こちとらあのジジイのせいで鬱憤が溜まってんだ。揚げ足取るんじゃねぇよ!」
「ひゃあ顔近い! あと首に手かけるのやめて! ボク死んじゃう!」
「ああもう、あんたら少し静かにしてくれ! 声が聞こえない!」

 ブリタニア軍に属する技術者、ロイド・アスプルンド。
 マフィア崩れ、ラッド・ルッソ。
 魔術師の少年、衛宮士郎。
 数分前、ロボットにも似た謎の鎧人間に襲われた彼らは、ろくに自己紹介も終えぬまま、追われる身の上を共通項として一軒の民家に逃げ込んだ。
 家の外では、今でもロボットが三人を探し回っている。圧倒的な火力を用いての、市街破壊という方法で。
 このまま潜んでいても、いずれは家ごと抹消されてしまうだろう。そこで、素性も知らぬ三者は一時的に手を取り合った。
 選択肢は二つ。外敵であるロボットを無力化するか、被害の届かぬ場所まで逃げ切るか。
 ラッドは前者、ロイドは後者の選択肢を推したが、どちらも難しく、マイペースな態度とは裏腹に絶望感すら漂いつつあった。
 そんな中、士郎は一人指もとのリングにぶつぶつとなにかを呟きかけ、ロイドとラッドの論争を邪魔とさえ言い出した。

「おいおい兄ちゃん、早くも現実逃避か? 死ぬ覚悟を決めたっつっても、男の子ならせめて派手に散ろうぜ!?」
「そんなつもりは毛頭ない。それと、一応俺はあんたに賛成だ。あんな危険な奴、野放しにしておくわけにはいかないからな」
「士郎くんって言ったね? ずいぶんと勇ましいことを言うけど、なにか策でもあるのかい?」
「……ない。けど、俺たち三人と『こいつ』で協力すれば、どうにかできるかもしれない。だから二人とも、俺に力を貸してほしい」

 そう言って、士郎は指に嵌めたリングを翳した。

「こいつ? その指輪が勝利の鍵だとでも言うのかい? 魔術礼装とか、興味深いことを言っていたけど……」
『Ja』
「のぅわぁ!?」

 ロイドが士郎の嵌めた指輪を小突くと、そこから機械的な音声が聞こえてきた。
 大袈裟に驚き仰け反るロイドを尻目に、士郎は先刻知った指輪の正体を説明する。

「こいつの名前はクラールヴィント。シャマルって人の相棒で、厳密に言うと魔術礼装じゃなくてアームドデバイスってものらしい」
「なんなのよ、その魔術とかアームドなんとかってのは。ロボットが出てくるSF展開かと思えば、今度はオカルトか?」
「むむむむむ! いやぁ、ますます興味深い! ぜひ分解……じゃなくて、お話を聞きたいなぁ。自立思考システムでも搭載されているのかい?」

 指輪が喋るという、時代的にも技術的にも不可思議な現象を目の当たりにして、しかし二人の反応は楽観的だった。
 もっとも、人型の機動兵器に追われている現状を鑑みれば、今さら喋る指輪ごとき驚くほどのものでもないが。
 技術者としての欲望全開で士郎に縋るロイドだったが、本人はそれを振り払い、真面目な顔で話を続ける。

「今はお互い、暢気に身の上話をしていられる状況じゃない。あのロボットをなんとかするほうが先決だ」
「それはそうだけど、その指輪が役に立つっていうのかい?」
「ああ。こいつは俺の力になってくれるって言ってる。でも俺たちの力だけじゃ、あいつは止められない。だから――」
「俺たちに手を貸せって? 殺し合いの会場で出会ったばかりの俺たちに、背中を預けろって?
 おまえ、ちょっと平和ボケしすぎなんじゃねぇの? 頭イカれてる? それとも、俺は死ぬはずないとでも思ってんのか?」
「んなわけあるか! これは、生き残るための提案だ! 俺は玖我を助けに戻らなきゃいけない……だけど、ここで逃げることもできない!
 無理強いはしないさ……俺だって、あんなのを止められる自信はないんだ。でもな、ここで退くわけにはいかないんだよ!」

 士郎の言葉は勇敢を越えて、もはや無謀とも言える域だった。
 勝算はない。だが逃げない。少しでも勝算を上げるため、赤の他人に協力を求める。まるで馬鹿な思考だ。
 が、ロイドは気付いていた。彼をそうまでして無謀に近づけさせるものの正体……それが、衛宮士郎という人間が持つ強い正義感だということを。
 彼とは違う。だが根底に鎮座する抗いようのない意志は、死んでしまった彼、枢木スザクのものとまったく同じだ。
 あるいは、その意志に共感と懐かしさを覚えたのかもしれない。
 そしてラッドも、士郎の発言を無碍に扱ったりはしなかった。言葉よりもまず、その確固たる意志の灯った目に感嘆した。
 緩みきった目ではない。この地で最初に出会った高嶺清麿のものよりも、遥かに崇高な眼差し――死ぬ覚悟を決めた目。
 自分がいつ死ぬともわからない、安心などありはしない、それを自覚してなお、困難に牙をむく。
 ラッドが忌み嫌うタイプとは、明らかに正反対な人間。だからかもしれない。

「ククク……ヒャーハッハァ! こいつぁおもしれぇ。とんだ馬鹿野郎がいたもんだ」
「笑いたきゃ笑えよ。俺は一人でもあいつを止めるから」
「待てよ。誰も協力しないとは言ってねぇ。俺もああいう輩は虫が好かなくてね。ブッ殺すってんなら協力するぜ?」
「まぁ、殺すかどうかはともかくとして、止められるなら確かに止めたいね。このままじゃ被害が増すばかりだ」

 士郎の正義馬鹿ぶりに爆笑するラッドと、含み笑いを浮かべながら携帯電話を弄るロイド。
 おちょくられている気分でもあったが、二人の言動には、士郎に対する一応の同調が見られた。
 と、そんなときだ。ロイドの操作する携帯電話から、突如『ラセーン』という珍妙な機械音が響き、他二名の視線が集まる。

「……ああ、なるほど。タイミングからしてもしやと思ったけど……あの機動兵器の操縦者がわかったよ」
「な、なんだって!?」

 思わぬ発言に瞠目する士郎と、「すげぇなオイ。で、どんな奴なんだ?」と血走った目を輝かせるラッド。
 二者を前にして、ロイドはやや冷淡な口調でこう告げた。

「……彼女の名前は鴇羽舞衣。なんてことはない、ちょっと顔が怖いだけの女の子だよ」


 ◇ ◇ ◇

   参/1――

 カチリ……カチリ……カチリ……と、等しく時間を刻み続ける時計の針の音。
 それがまるで時限爆弾のカウントダウンのよう。
 まるでそんな風に、身体を振るわせるゆたかの耳にそれは届いていた――

 その微音の波を、轟然とした爆発音が突き破る。

「っ!? な、なに?」

 Dボゥイとともに訪れた、人気のない静謐な病院。その産婦人科病室内で、小早川ゆたかは轟音を耳にした。
 壁際を見やると、外の風景を映し出す小窓が僅かに開いている。おそるおそる覗いてみると、外はもう完全に明るかった。
 が、その視線の最奥で――コンクリート色に広がる淡白な市街が、濛々とした煙に包まれているのが見えた。

「誰かが……してる、の?」

 殺し合い、とは口に出せなかった。
 街を焼き、数十メートルは離れているであろうこの病院に届くほどの音を掻き鳴らして、誰かと誰かが争っている。
 本能的に導き出した答えと向き合い、しかしすぐに顔を背ける。目をギュッと瞑り、残酷な現実から逃避した。
 怖い。ただ恐れの感情だけを胸に抱きしめて、ゆたかはその場に蹲った。

「――ゆたか!」

 そのときだった。ゆたかと同じく異変を聞きつけ舞い戻ってきたDボゥイが、脇目も振らず421号室の門を掻い潜る。
 仲間の帰還に安堵したゆたかは、目尻に涙を溜めながら、助けを請うようにその身に縋った。

「Dボゥイさん、あの、すぐ近くで爆発が……」
「ああ、俺も聞いた」

 ゆたかとDボゥイの二人は、改めて窓の外を注視する。立ち上る煙の量は、初見のそれより遥かに拡大していた。
 そしてまた、爆音が一回、鳴り響く。ゆたかは反射的にDボゥイの身にしがみ付くが、今は気恥ずかしさを感じる余裕もない。

「どんな兵器を支給されたかはしらないが、あの破壊は異常だ。少し探ってくる。君はここで待っていてくれ」
「えっ!?」

 Dボゥイの発言を聞き、ゆたかは明らかに狼狽する。

「あ、あの! わたしも……わたしも行きます!」

 そして気付くと、無謀極まりない言葉を口走っていた。
 当然、Dボゥイは顔を顰め、これに反論する。

「今度ばかりは、君を守れるという保障がない。いや、素直に自信と言ってもいい。
 あの破壊は、恐らくは人の手によるものではないだろう。それこそラダムのような、人智外の輩が暴れ回っているかもしれない」
「な、なら、Dボゥイさんも一緒にここで大人しくしてれば……」
「いや、駄目だ。あの規模の戦闘が続けば、いずれはこの病院にも被害が及ぶかもしれない。
 万が一の場合すぐに逃げ出せるよう、状況は把握しておくべきだ」

 そう断言すると、Dボゥイは踵を返し病室の出入り口へと向かう。
 遠ざかっていく大きな背中を見て、ゆたかはたまらずそれを抱き止めた。

「ゆたか?」
「……」

 少女に無言のまましがみ付かれ、Dボゥイはやむをえず足を止める。
 背中越しに伝わる少女の体温は仄かに暖かく、そして震えていた。
 脆弱な小動物のように微動し続けるゆたかを見て、Dボゥイは考えを改める。

「……すまなかった」
「ふぇ?」

 唐突に謝られて、ゆたかは情けない声を漏らして返す。

「一緒に行こう。ただし、君はどんなことがあっても俺から離れるな。絶対にだ」
「は、はい!」

 市街での戦闘に、ラダムと同等の外道が、あるいは宿敵である愚弟が関与している予感に駆られ、失念していた。
 すぐ傍で震えている、守るべき存在。アキやミリィとは生まれも境遇も違う、弱すぎる少女のことを。
 ブレードの力を失った今、爆心地に少女を連れて潜入するのは危険かもしれない。
 もし敵がラダム獣やテッカマンと同等の力を保持していたとして、現状のDボゥイではゆたかを守りきれはしないだろう。
 だが、少女にとっては危険よりもまず、Dボゥイとの別離がなによりの恐怖と成り得た。
 それを知り、Dボゥイは少女とともに行く。そこに、なにが待っているかも知らず。
 騒動により放置された病室には、口の付けられていないお茶が二組だけ残された。


 ◇ ◇ ◇

   弐/2――

 猛火に包まれた被災地を、鋼鉄の少女が練り歩く。
 ポイントにして、C-6地区。あの飄々としたアホ面を闇雲に追撃しているうちに、こんなところまでやって来てしまった。
 後方、まだ戦火の残る街々を眺め、少女は陶酔する。素晴らしき炎、輝かしき燃焼、破壊。
 カグツチもエレメントもなしに、これらをやってのけた力……落手した力の壮大さに、鴇羽舞衣は歓喜した。

「すごい……すごいよコレ! これならもうなにも心配いらない……やれる、やれるやれる!」

 自身を覆う鋼をマジマジと眺め、歴戦の愚かな兵士たちと同じように、舞衣は兵器の齎す力に酔い、溺れた。
 鉄砲から始まり、核兵器に至るまで。人間という生き物は、己が欲望のままに兵器を生み出し、破滅の道を歩んできた。
 どんな世も変わらない。絶対的な力が持つ魅力は、人の心を狂わせる。舞衣のような力を求める者にとっては、なおさらのことだった。

「それにしても、あいつらどこに行ったのよ? まさか逃げられた? それとも、街ごと壊しちゃったかしら?」

 これより北の街々は、無造作に乱発したフェルミオン砲によってほぼ廃墟と化している。
 規模が規模だ。追っていた男たちが戦火に巻き込まれ、とっくに死んでいる可能性は十分に考えられた。

「そうだとしたら、おかしいったらないわね。でも、そんなんで死なれたら困るのよ……」

 表情を窺わせぬ鉄仮面の裏で、舞衣は妖艶に微笑んだ。
 激しい憎悪と、奪うことに対する快楽を求めて、進路を再び北に取る。

「そうよ……私は奪う側に回った……力も手に入れた……味わわせてやるのよ……あいつらに……奪われる苦しみを」

 スーツ越しから、抑えきれないほどの殺意が滲み出る。
 これまでの波乱万丈にして幸薄い半生を恨みながら、北へ、北へ、不気味にローラーを滑らせる。
 焦る衝動を抑え、まだ戦火の広がっていない地区を中心に、獲物を捜す。
 そして、とある十字路に差し掛かったとき、

「!」

 標的は、曲がり角の向こうから姿を現した。
 舞衣は熱源を察知したことにより走行をやめ、次にその全姿を確認して、動きを止めた。
 曲がり角の奥から現れた人物は、白衣に身を包んだロイド・アスプルンドでも、彼と一緒にいた二人の男でもなく。
 薄汚れた帽子を被り、作業着のようなズボンを穿いた――巧海やシモンと同年代くらいの――少年だったのだ。

「なぁアンタ、シータって女の子を知らないか!?」

 舞衣の異様な姿に若干驚きつつも、その少年――パズーは、常の元気さを装い声をかけてきた。
 対して舞衣は、返事を返すことができない。脳内で巧海の消滅、シモンの失血死、自分が殺した少年の残滓が蘇り、困惑する。

(また――弟と同じくらいの男の子が死ぬ。違う。殺す)

 似ている箇所など一点もない。なのになぜか、巧海やシモンの面影が、目の前のパズーに合致していく。
 カメラ越しの映像が、潤んだ瞳のせいか歪んで見えた。

「パズーくん! そいつから離れなさい!」
「――ッ!」

 数秒、動きを止めていると、パズーに続いて青い軍服を着た女性が飛び出してきた。
 その手には銃を持ち、ソルテッカマンの装甲に纏われた舞衣を見て、明らかな敵意を飛ばしている。
 反射的に、動いた。右腕のライフルを展開し、銃口を目の前の二人に向ける。
 ターゲットは二つ。僅かに揺れるレーザーライフルの照準は、パズーのほうに向けられ、
 光の一閃が、放射された。

「え――」

 それは少年の脇腹辺りに命中し、貫通する。
 本来ならばラダム獣をも粉砕する光線の一撃は、此度の実験仕様に改造されていたため、肉体を完璧に破壊するほどではなかった。
 だが、傍から見ればあまりにも鮮烈で、十分すぎるほどの殺傷でもあった。
 光線に射抜かれたパズーの体は、ゆっくりと仰向けに倒れていく。

「パズゥゥゥゥゥ!!」

 リザは絶叫とともにその身を抱え、反撃としてM500ハンターの弾丸を三発、惜しむことなく放つ。
 対象はもちろん、パズーを攻撃したソルテッカマンである。
 三発の銃弾はソルテッカマンの右足へと命中。操縦者である舞衣はバランスを崩し、その場に転倒した。
 その間、リザは追撃をかけることはせず、負傷したパズーの身を抱え退却する。
 ただのきぐるみとは勝手が違うこともあってか、舞衣はなかなか起き上がれず、リザとパズーの二人は無事にその場を逃げ果せた。

 しばらくして、舞衣はソルテッカマンの重量維持の難しさを噛み締めながらも、どうにか立ち上がった。
 軍服の女と少年の姿は、もうどこにもない。追撃するにしても、どの方角を目指せばいいのかわからなかった。
 いや、それよりもまず。立ち上がった舞衣の胸中にはなぜか、あの二人を追おうという気持ちが湧いてこなかった。

「……これで、四人目。私が殺したのは、二人目」

 か細い声で言い漏らし、しばしの間立ち尽くす。
 前方の路上、灰色のコンクリートの上には、微かに黒ずんだ血痕が残されていた。
 量からしてかなりものである。シモンの流したそれよりは少ないが、十分な致死量に思えた。

「どうしてかな……どうして私、落ち込んでるんだろう」

 あの二人の関係がどういったものかはわからない。
 だが確かな結果として、舞衣はあの金髪の女性から、少年という大切な存在を奪った。
 求め、願い、掴み取った結果であるはずなのに……どういうわけか、達成感は欠片もなかった。
 それどころか、虚しげな寂寥感すら覚える。認めたくはないが、少し、悲しくなった。
 あれが少年ではなかったら、巧海やシモンに重ねようがない、老人や女性だったら違ったのだろうか。
 自問しても、答えは見えてこない。

「…………」

 空に問いかけることも虚しくなって、またしばらく、舞衣は無言で佇んだ。
 誰かから、大切ななにかを奪う――自分がこれまでに受けてきた不幸に対する仕返しとして選んだ道が、霞む。
 殺意が霧散し、どうでもよくなってきた。
 やっぱり、自分はあそこで死んでおくべきだったのではないだろうか。
 そんなことさえ、考え出し――

「――よぉ子猫ちゃん。空なんか眺めてどうした? 休憩だってんなら付き合うぜ。いっちょ踊ってくれや」

 銃を構えた白スーツの男の来訪により、また殺意は蘇った。


 ◇ ◇ ◇

   壱/2――

『……彼女の名前は鴇羽舞衣。なんてことはない、ちょっと顔が怖いだけの女の子だよ』

 なんでさ。
 誰に語りかけるでもなく、士郎はロイドの宣告に対し、心中でそう呟いた。

(鴇羽舞衣……それが、あのロボットみたいなのを動かして、街を破壊していた奴の名前。なんで)

 士郎が指に嵌めているリング、クラールヴィントは、元はロイドが学校で舞衣から没収した支給品だ。
 ロイドは、『支給品の正式名称を入力することで、支給主の現在地を特定する携帯電話』を用いることにより、
 クラールヴィントの本来の支給主――鴇羽舞衣がどこにいるのかを割り出した。
 その結果、戦場となっているC-6地区付近を高速で周旋している彼女こそ、彼らを襲ったロボットの正体であると判明した。
 敵は優勝に目が眩んだ快楽殺人者でも、支給品の威力に溺れ暴れまわる大馬鹿者でもなく――

(なんでそれが……よりもよって、玖我の知り合いの鴇羽なんだよ!)

 ――ただの、女子高生だったのだ。
 情報によれば、彼女も玖我なつきと同じくHiMEと呼ばれる異能者であるらしかった。
 だが、それだけだ。殺戮や市街破壊に及ぶ危険性など、微塵も持ち合わせていない。
 実際に会ったことはなくとも、士郎はなつきからの情報によって、勝手にそう判断していた。
 HiMEの事情は知らない。だけど、魔術師でもない同世代の女の子が、ロボットを駆り街を破壊するなどありえない、と。

(悪い玖我、少し遅れる。お願いだから、俺が助けに行くまでもってくれ。その代わり、おまえの友達は)

 まだ破壊の及んでいない、比較的平和な街路のど真ん中。士郎は武器となる剣を投影し、来るべきときに備える。
 曰く、中国古代の呉の刀工によって作られた夫婦剣、かつての赤い弓兵が用いた双剣を、少女を止めるための得物として選択した。
 そして、

「クラールヴィント、頼む」
『Ja』

 士郎が声を発し、クラールヴィントがそれを返して、全身は光に包まれた。
 清風を思わせる緑色の輝き。その奥に形成されていくのは、赤い外套。
 士郎が得意とする投影魔術ではなく、クラールヴィントの機能を用いての、変身。
 鴇羽舞衣を止めるための戦い。そのための武装が今、完了した。


 ◇ ◇ ◇

   弐/3――

 それは、天空に浮かぶ城を廻る御伽話。
 竜の巣と呼ばれる嵐雲の中で、今は亡き少年の父は、天空の城を見た。
 周囲からすれば、信じがたい話だった。城が空に浮かぶなど、妄言としか思えない。
 そんな世間の評価を受け、嘘つき呼ばわりされた少年の父は、やはり間違ってなどいなかったのだ。

 パズーは見た。竜の巣を抜けた先、広大な天空に浮かぶ、ラピュタという名の巨城を。

 あの瞬間、少年の夢であった天空の城――ラピュタの発見は果たされた。
 だがその頃にはもう、少年は新たな目的を胸に抱いていた。
 あの日スラッグ渓谷の銀鉱で働いていた少年の元に降って来た、シータの助けになるという目的が。
 ムスカの野望はまだ終わっていない。シータは狙われている。飛行石やラピュタも。
 力にならなければ、いや力になりたい。少年は願い、殺し合いという窮地に立たされても、その指針を忘れなかった。
 こんなことは早く終わらせよう。そしてシータを連れて帰るんだ。
 ラピュタへ、もう一度――

「……ズー! パズー!……」
(……誰だい? シータ……じゃない……おかみさん……でもない……ああ、なんだ)

 深い闇の中で、パズーはラピュタの光景を思い出していた。
 シータと一緒にタイガーモス号に乗り込み、竜の巣を越えて、やっと見つけたラピュタ。
 降り立とうとして、しかしその寸前で、二人は螺旋王の元に連れて来られた。
 まだ、なにも終わっちゃいない。シータを連れて、もう一度ラピュタへ――

「パズー! しっかりしなさい、パズー! くっ……駄目だわっ、血が、止まらない!」

 目を開いたパズーの視界に飛び込んできたのは、青い、どこまでも青く続く、快晴の空だった。
 こんな青空は、久しく見ていなかった気がする。見つめれば、シータが降って来た日を思い出す。
 こんなに空が綺麗な日は、きっといいことが起こる。そんな予感がした。

「止血が……追いつかない! パズー、私の声が聞こえる? いい、気をしっかり持つのよ!」

 親方、おかみさん、マッジ、ポムじいさん……鉱山町のみんなは元気にしているだろうか。
 それに、ドーラ一家のみんなも。急に大黒柱が消えて、戸惑ったりはしていないだろうか。
 ドーラおばさんは……なぜだろう、こんな状況下でも、たくましくやっていそうな気がする。
 ムスカは……どうなっただろうか。ここでも、シータや飛行石を求め歩いているのだろうか。
 シータは……シータは、どこにいるのだろうか。

「! パズー……喋れるの? 意識があるなら、私の手を強く握って! 生きて! あなたには、やり残したことがあるのでしょう!」

 そうだ……ぼくには……まだ……やり残したことが……ある……
 ようやく……見つけたんだ……シータと……一緒に……ラピュタを……

「……おばさん……」

 あ……間違えた……おねえさんだった……ごめん……でも……

「……ラピュタはあった。父さんの言っていたことは、嘘じゃなかったんだ」

 それが、少年の最後の言葉だった。


 ◇ ◇ ◇

  壱/3――

 白いスーツが、笑う。鋼の乙女が、猛る。
 それぞれ異なる銃器を持ち合い、奇声を上げながら盛大なパーティーを繰り広げる。
 片方は楽しげに、片方は怒りながら、相手の命を奪うべく、殺し合う。

「ヒャッハァ! やべぇって、破壊力だけでなく推進力もハンパねぇって! どこで売ってんのそれ? ねぇどこで売ってんのよそれ!」

 入り組んだ市街地を舞台に、超伝導ライフルで地球連合軍の最新鋭兵器・ソルテッカマンに対抗する男――ラッド・ルッソ。
 マフィアの肩書きを背負い、ある特定の人間に対して熱烈な殺意を抱く狂人ではあったが、彼は一応はただの人間である。
 テッカマンのような超人でも、ラダム獣のような化け物でも、HiMEのような異能者でも、ましてや不死者などでもない。
 なのに彼は、ライフル一丁でソルテッカマンを装備した舞衣と渡り合っている。それも、心底楽しそうに。

「まったくスゲーもんを作るとこがあったもんだ! 作ったのは米軍か!? 
 今年死んだっていうトーマス・エジソンの遺作かなんかか!? 無理矢理作らせたのか!?
 しかし、いったいどこと戦争するつもりだったんだろうなぁ! 全世界を相手に喧嘩でも売る気だったのかね!」

 舞衣が纏うソルテッカマンは、言ってみれば鉄の鎧だ。ならば、ナイフも拳も意味を成さない。接近戦は不利と考えた。
 都合のいいことに、向こうも接近戦を良しとはしていない。
 ラッドと舞衣は互いが視認できる距離を保ちつつ、隠れ、狙い、撃ち、避け、移動してを繰り返していた。
 決定的なのは、防御力の差。舞衣は全身が一つの兵器であるため、多少の被弾はものともしないが、対するラッドは生身。
 フェルミオン砲の直撃を受ければ悪くて蒸発、良くて丸焦げ。レーザーライフルでも、致命傷は避けられない。
 つまり、いずれかの攻撃に一発でも当たればゲームオーバーは必至。
 それを自覚してなお、ラッドはスリルを満喫するかのように、狂気的な笑顔で舞衣に挑みかかった。

「だんだんパターンが掴めてきたぜ! テメェが主力にしてんのは、右腕のちいせぇヤツと、背中のでけぇヤツ、計二つ!
 ちいせぇほうはスピードもあって射程もそこそこだが、距離がありゃまぁ避けられる! だがでけぇほうはやべぇ!
 当たりゃ一撃で死ぬ! 避けるしかねぇ! けどよ、そのでけぇほうにも欠点はあるみてぇだなッ!」

 民家の庭先に逃げ込んだラッドが、自らの居場所を知らしめるかのように大声を発する。
 当然、舞衣はそれを聞き逃さない。足を止め、背部のフェルミオン砲を展開。照準を前方の民家に定める。
 フェルミオン砲発射。レーザーライフルのそれよりも数段は大きい破壊の閃光が、家を燃やす。
 爆砕音が鳴り響くも、耳障りな挑発は、それでやみはしなかった。

「威力はスゲェ! 認めるよ! だけどな、そのでけぇのを撃つには、溜めがいる!
 ちいせぇほうみたいに走りながら撃つことはできねぇ! 必ず一旦止まる! そこが丸分かりなんだよぉ!」

 ラッドの声は舞衣の前方から轟き、声量の変化に合わせて左方に傾くと、その姿はいつの間にか、横合いの路地先にあった。
 すぐさま超伝導ライフルが発射され、装甲に命中するが、僅かな反動だけでダメージはない。
 舞衣は欠点を指摘されながらも、展開したままのフェルミオン砲をラッドに向ける。
 たしかに、フェルミオン砲には背部パッチを展開し、射撃体勢に入るまでの僅かなタイムロスがあった。
 だが、それも一時のものだ。一度このように展開してしまえば、連射は容易。
 螺旋王の改造によってその速度は低下していたが、生身の人間を相手にするのに支障はない。

「あーヤダヤダ! スゲェ武器を手に入れた奴ってのは、どうしてこう馬鹿になるのかね、っとぉ!」

 フェルミオン砲の銃口を向けられ、それでもラッドは怯まず、舞衣の脚部目掛けて超電導ライフルを撃つ。撃つ。撃つ。
 立て続けに命中した弾丸は舞衣の右脚部へと命中し、体勢を崩させた。
 舞衣の右肩が下がり、フェルミオン砲の銃口が明後日の方向に向く。
 放たれた衝撃がラッドの数十メートル横を通り過ぎ、爆風が金髪を靡かせた。
 避けるのではなく、相手の体勢を崩すことによって照準を外させる。
 少しでも手元が狂ったり、目測が外れれば、直撃コース必至の狂った戦法。
 それを平然とやってのけて、ラッドは狂気的な笑顔のままだった。

 膝を折り、残りカートリッジの少ないフェルミオン砲を一発無駄にしてしまった。
 舞衣はソルテッカマンの火力に酔い、だというのに翻弄されている現状を嘆き、内部で舌打ちした。
 巧海やシモンのときに感じた悲しみをパズーに重ね、彼を射抜いたことに対して覚えた後悔など、とうに忘れていた。
 皮肉なことに、ラッドの挑戦が舞衣を鬼に戻したのだ。一時的な迷いを吹き飛ばすほど、彼の行いは舞衣の怒髪天を突いた。

「しかしやべぇな、弾の残り数が心許なくなってきやがった! このままじゃジリ貧だ!
 そういうあんたはどうなのよ? さっきからバンバン撃ってんのにも、残数とかあんの? ええ、マイちゃんよぉ!?」
「――ッ!?」

 ふと、面識のないはずの男に本名を呼びかけられ、舞衣は驚きのあまり静止した。
 ソルテッカマンを装備してからは、誰にも素顔を晒していない。操縦者が舞衣である事実など、これを齎した老人しか知り得ないはずだった。

「そこでだ! 名残惜しいが、俺は一時退却させてもらうぜ! なぁに心配すんな!
 いざというときテメェを殺すのは俺の仕事だ! そんときにまた会おうぜ! じゃ、後は頼むわ!」

 舞衣が疑問で動けなくなっている間、ラッドは調子のいいことを言って背中を向けた。
 まさか、本当に逃げようと言うのか。舞衣は残り少ないレーザーライフルをその背に向けて放とうとするが、

 間を、赤い外套を着込んだ男が遮った。


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