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  • アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki
  • 峰不二子の暴走Ⅰ

アニメキャラ・バトルロワイアル @ Wiki

峰不二子の暴走Ⅰ

最終更新:2021年12月11日 17:40

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峰不二子の暴走Ⅰ ◆LXe12sNRSs


 時刻は午後11時を回り、バトルロワイアル第二日目の開始まであと数十分となった。
 今日が昨日に変わり、明日が今日になる瞬間がもう間もなく……一般人ならとっくに就寝していてもおかしくないこの時刻、寝息を立てている者は逆に希少と言えた。

(機会を逃しちゃったわね……)

 今、峰不二子の眼前の部屋が消灯した。
 騒がしかった声は深い沈黙へと変わり、人の気配すら薄くさせる。
 この中には、序幕の際に主催者に食って掛かった少年と青ダヌキ、青ダヌキに同行していたゴーグルの少年、そして劉鳳が話していた『カズマ』に酷似した外見的特徴を持つ男がいた。
 合計四人。数はぶりぶりざえもんから聞いた話とも一致している。
 ただ一つ、不二子自身が橋で目撃した赤い髪の少女が見当たらないのが気がかりではあったが、それについてはすぐに答えが出た。
 彼等とは別行動を取っている――これは希望的観測。
 現実はもっと非情。ここにいないということはつまり、『死んでしまった』のだろう。

 病室と廊下、たった一枚の扉を隔てて、峰不二子とドラえもんたち四人組は超接近を果たしていた。
 ぶりぶりざえもんから病院にいる弱者たちの話を聞いたのが、まだ6時過ぎ頃のこと。
 本当ならもう少し早く到着する予定であったが、『人形』と『魔法少女』という二人のイレギュラーに遭遇してしまったがために、少々慎重になりすぎてしまったようだ。
 不二子が病院に辿り着いてまず目撃したのは、三つの盛り土に黙祷を捧げる眼鏡の少年。
 とても声をかけられるようなムードではなく、その時は傍観に徹してしまったのが手痛いミスその一。
 直前に人形に正体を見破られたという苦い経験も重なり、不二子は信頼を得るに最高な出会いのタイミングを見計らっていた。
 その後、死者への鎮魂を終えた少年は青ダヌキ他三名と共に夕食を取り、そしてすぐにギガゾンビに関する情報交換と作戦会議に移行した。
 日頃の諜報活動のクセが出てしまったせいか、その会議の際、不二子は四人組の前に姿を見せず、室外から聞き耳を立てていた――これが手痛いミスその二。
 多少強引な出会いだとしても、あの時に姿を見せ、こちらが無害であるということを主張するのが正解だったかもしれない。
 チャンスを窺い、絶好の機会を模索する内に――四人組は不二子の存在すら知らず寝入ってしまった。
 これではもう彼等との接触は不可能だ。まさか寝静まっているところを起こすわけにもいくまいし、ここは大人しく明日の朝を待った方が懸命だろう。
 情報や駒を入手するなら早い内が望ましいが、焦りは禁物だ。
 不二子自身も精神的疲労に侵され始めている現状、安息の時は喉から手が出るほどに欲しい。
 信頼を得る機会は遠のいたが、状況が悪くなったわけではない。
 今の内に自分も睡眠を……と、不二子が四人組の眠る病室から離れようとしたその時だった。

「――だ、誰! そこにいるのは!?」

 薄暗い廊下の先から、甲高い女性の声が木霊した。
 不意の一声が院内を反響して響き渡り、不二子は反射的に警戒心を強める。
 声の主は不二子よりも身長が低く、学生服を着た少女。暗がりであったため顔を確認するまでには至らなかったが、顔見知りでないことは明白だった。
 数秒前まで明かりが点いていた部屋の中を、コソコソと嗅ぎ回る不審な女――廊下先の彼女に見つかったことにより、立派な犯罪者が誕生してしまう。
 ここで顔を見られ怪しい人間というレッテルを貼られてしまっては、後の計画に支障が生じる。
 早々に退散するべきだ――本能的に足を動かそうとしたが、脳が逃走に成功した場合の一パターン映像を浮かび上がらせ、思いとどまらせた。
 あの少女の一声により、もしかしたら室内の四人組が目を覚ましたかもしれない。
 その場合、当然外の様子を窺いに顔を出し、目先の少女と対面する。
 そして彼女からこう伝えられるわけだ。「あなたたちを覗き見していた不審な女がいる」と。
 四人の警戒心は自然に強くなり、不二子の利用しやすい、『駒』としての資質は低くなる。
 そうなっては今までの尾行及び計画が全てパー。それを回避するためにはどうすればいいか。

 ――目の前の少女を、殺す。

 簡単なことだった。
 四人組に不審人物の情報が伝わるのがマズいというのであれば、それを伝える情報源の命を絶てばいい。
 銃を抜き、照準を定めて、引き金を引く。
 別に初めての経験ではない。慣れたことだ――不二子はすぐさま行動に移ろうとしたが、また寸前で思いとどまる。
 射殺したとして、事後の死体処理はどうする。
 いつ四人組が部屋を出てきてもおかしくない現状、銃声など鳴らせば火に油を注ぐようなものだ。

 命を奪うのは後の処理が面倒と判断し、ならば速やかに、そして静かに鎮圧を、と不二子は駆け出した。
 同タイミングで、少女がスカートのポケットに入れておいた小瓶を取り出す。
 蓋を開け、中の液体を頭に振り掛ける。その一連の動作を行わなければ小瓶の効果は発揮されなかったのだが、駆ける不二子を対処するには動きに無駄が多すぎた。
 足音を気にさせない静かなダッシュで少女の胸元まで詰め寄り、長い美脚を振り上げる。
 不二子の右足は放物線上を描いて高く舞い上がり、少女が手に握っていた小瓶を跳ね上げた。
 少女は不二子の無駄のない動きに目を見開いたが、その後の動作に支障を来たすような間違いは起こさなかった。
 第二の対抗手段として、肩に下げていたデイパックから一台のカメラを取り出す。
 シャッターに指を置きファインダーを覗く頃には、不二子の姿はもう眼前まで迫っていた。
 攻撃の第二派が来ると少女は直感したが、怯まずシャッターを切る。
 するとどうだろう。カメラが正面に捉えていた不二子の着衣――その全てが突然消え失せ、輝かしい裸身が晒されたではないか。
 身に付けている衣服が唐突になくなるという摩訶不思議な現象。そこから生まれる隙を突くのが、少女の作戦だった。
 だが身体を剥き出しにされた当の不二子は、動きに一寸の躊躇も隙も見せず、逆に軽やかな動作で少女の背後に回りこんだ。
 そのまま少女の首を腕で絞め、身体を羽交い絞めにして拘束する。
 着せ替えカメラの裏効果で裸になったというのに、一瞬の戸惑いも見せぬその根性……決して不二子に羞恥心がないわけではない。
 ただ、仕事をコンプリートするためには自らの美貌さえも武器にする女は、こういった視聴者が喜びそうなハプニングに対しても動じない。ただそれだけだった。

「いやぁ~ん。随分とハレンチなお嬢さんね……男性のカラダより女性のカラダの方が気になるお年頃かしら?」
「ちょ、なによアンタ! 痛っ、離しなさいよ!」

 初撃で『クローンリキッドごくう』を蹴り飛ばされ、そして『着せ替えカメラ』すら無力となってしまい、さらには身体の自由まで奪われてしまった少女――涼宮ハルヒに、残された打開策はなかった。
 さっきまで明かりの灯っていた部屋、その外でコソコソしていた謎の女……まず間違いなく危険人物。
 身体を拘束されてなお抵抗を続けようとするハルヒだったが、不二子の腕は完璧に首にかかっており、不審な動きを見せればすぐ絞殺されてもおかしくない体勢だった。
 危機を感じてもがくハルヒ。しかしそれは不二子も同様で、早くこの場を立ち去らないともれなくドラえもんたちに危険人物として認識されてしまう。

 不二子の最重要目的は、主催者ギガゾンビと密接な関係を持ったドラえもん、のび太らの信頼を得ること。
 こんなつまらない不幸で計画を台無しするわけにはいかない。
 とにかくこの場は、彼等に気づかれないようハルヒごと早期退散を――と、玄関方面へ移動しようとした時だった。

 ガチャリ、と病室の扉が開けられ、中から眼鏡をかけた少年が一人、廊下の様子を窺いに出てきた。
 少年は眠たそうな目を擦りつつ不二子とハルヒの方を見やり、表情を変えることなく一度眼鏡を外した。
 服の裾で眼鏡をゴシゴシと擦り、またかけ直す。
 どうやら眼鏡が曇っていないか確認したかったらしい。
 そうさせるほどに、目の前の状況はマズイものだったのだろう。
 結果として、眼鏡は曇っていなかった。
 現実を捉えた少年はゆっくりと口を開け、目玉を眼鏡ごと飛び上がらせ、舌をウネウネと長く伸ばし、顔面を真っ赤に染め上げ、果てには自分自身も飛び、仰天しながらこう叫んだ。

「――ど、ドラえもぉぉぉぉぉん!!!」


 ◇ ◇ ◇


「ここか、人質を取った凶悪犯が立て篭もってる部屋ってのは!?」
「そうだよ! 未来のネコ型ロボットであるぼくの精巧な視覚センサーが捉えたんだ、間違いないよ!」
「で、犯人はどんなヤローだったんだのび太!?」
「く、暗がりだったからよく見えなかったんだよ~! たぶん捕まってた子は高校生くらいの人で、犯人は身長からして大人だったと思う」

 選ばれし子供、二十二世紀のネコ型ロボット、ネイティブアルター、何をやってもダメな小学五年生。
 就寝するはずだった男四人組に包囲された部屋の内部で、素っ裸のままの不二子は溜息を吐いていた。
 不二子に降りかかった不幸は、あの人形と魔法少女との遭遇から始まる。
 銭形の変装を見破られた上に、そのせいで病院への到着も遅れ、最終的には彼等との接触機会も逃してしまった。
 さらに謎の少女との邂逅、不思議な道具で身ぐるみを剥がされたこと、少女の声が原因でのび太が外に出てきてしまったこと、
 放送が近かったという理由もあり、万が一に備えてのび太とドラえもんがまだ眠っていなかったこと、二人に叩き起こされカズマと太一の二人も騒動に参加してきたこと。
 挙げればそれこそキリがない。遊園地での一件や駅での一件、橋の一件や劉鳳に誤解されそうになったのもその一端だ。
 峰不二子という女性は、ここまで不運な女だったろうか? 幸運の女神に見放されるような女だったろうか? ……思わず問いたくなる。
 この時ばかりは不二子もガックリと肩を落とし、最近の境遇と周囲の環境を恨んだ。
 今の気分を一言で言い表すなら、憂鬱。退屈な日常に魅力を感じなくなっていた、SOS団結成前の涼宮ハルヒと同レベル欝っぷりだった。
 あぁ、なんでこうなってしまったんだろう……視線をそのSOS団団長様にして不二子の身を剥いたハレンチ娘に向け、「どうしてくれんのよ」と言わんばかりの嫌悪感を込める。

「何よ、何か文句があるなら言ってみなさいよ」

 ハルヒもまたムスッとした表情で返し、不二子はさらに溜息をついた。

「……あなたのおかげで私の計画がメチャクチャだわ。いったいどうしてくれるの?」
「それはご愁傷さま。でもね、いつだってこの世に悪の栄えた試しはないのよ。あたしに言いがかりつける前に、まず自分自身の計画とやらに落ち度がなかったかどうかもう一度よく見つめ直したら?」

 美女と美少女の二人しかいない静かな病室、ハルヒはその中に置かれた椅子に座り、峰不二子と正面から対話をしていた……身体を破かれたシーツでグルグル巻きにされているという、オプション付きで。
 今のハルヒの扱いは、外の四人が捉えている内容どおり人質。それを利用している不二子は、いわば凶悪犯罪者となる。
 泥棒や詐欺などの悪事は散々働いてきたが、さすがにこんな下劣な真似はしたことがない。
 しかしそれもしょうがないことだった。度重なる不運で不二子の計画は完全におじゃんとなり、四人組とは信頼関係どころが敵対関係が生まれてしまった。
 唯一幸いなのは、第一目撃者ののび太が不二子の容姿を的確に捉えられなかったこと。
 正体がバレていないならまだ挽回は可能かとも思われたが、それ以上に現状が厳しすぎる。
 憂鬱を訴える脳をこき使い、色々策を廻らす不二子だったが、それもハルヒの毒舌のせいで集中できない。

「大体よくそんな格好のままでいられるわね。恥ずかしくないの?」
「……こんな格好にした張本人が言ってくれるじゃない」
「羞恥心をなくしちゃ女性としてはお終いね。いい? 恥じらいっていうのも重要な萌え要素の一つなのよ。
 普段は気丈な態度を取っていたとしても、ここぞというところでは女の子らしい純情で可愛らしい仕草を見せる。
 メイドとか巨乳とかロリとか、そういう記号で売っていくのは確かに手堅いけど、最近はそういった安易なものよりも、より複雑な思考ルーチンの生み出す萌えが必要とされているのよ」
「あなたみたいな子供に言われなくたって、男のハートを掴む術なら心得てるわよ……」
「ハッ、あまいわね! ただ美人ってだけじゃ、今のご時勢権力持ちのエロオヤジぐらいしか引っ掛けられないわよ!
 今の時代は男性だけでなく、女性も萌えを求める時代だわ! その点アルちゃんは優秀よ!
 犬耳尻尾にメイドにロリ! そして何よりその仕草! 男性はもちろん女性だってイチコロの究極萌え生物よ!
 世界中のテーマーパークがマスコットとして欲しがること受けあい! 我がSOS団の秘密兵器に抜かりはないわ!」
「誰よアルちゃんって……」

 何度目か分からない溜息を吐きつつ、不二子は鬱々として感情がだんだんイライラしてきたことに気づき始めた。
 どうやら、ハルヒの言葉攻めにペースを乱されつつあるらしい。
 この危機的状況でこれだけの無駄口が叩けるのだから、彼女の神経も相当図太い、いや立派なものだ、と敬服する。
 いつだってクールに。逆境を乗り越えるには他者を利用して。自分の手は出来る限り汚さず。
 不二子は溜息ばかりの呼吸を一旦整え、真剣な眼差しでハルヒに向き直った。

「……怖くはないのかしら? これから殺されるかもしれない、死ぬよりもっと酷い目に遭わされるかもしれない、そういった恐れはない?」
「お生憎様。あたしはこれまで相当な数の修羅場を経験してきたの。ピンク色の髪の騎士とか金髪の髪の騎士とかに襲われたり色々とね。
 あの時のピンチに比べれば、あんたなんて全然怖くない。やれるものならやってみなさいよ。すぐに化けて出てやるから」

 ――強い。そしてそれ以上に、舌戦の才能がピカイチだ。不二子は贔屓目なしでそう思った。
 ハルヒがどんな生活を、どんな心境でこの一日を過ごしてきたかは知らない。
 もちろんハルヒの一日にルパンや次元の姿があったことも、知るよしはない。

 彼女なら、あるいは生き残れるかもね。
 根拠もなしに、突然そんな予感を感じた。
 強い瞳、強い意志、強い心。生きるために必要な要素というのは、力や頭よりもまず、気持ちが最重要であると言えた。
 不二子のように狡猾な手を使うでもなく、他者を利用するでもなく、ただ生き延びてやる、という強い信念の下に行動している。
 健気で美しく、そして思わず応援したくなるような『弱者』だった。

 不二子は真っ直ぐに見つめてくるハルヒから視線を逸らし、デイパックに仕舞い込んでいた銃を取り出す。
 向ければそれは即刻殺害対象として定められる銃口――矛先は気高い誇りを掲げたハルヒを刺し貫き、動揺を誘った。
 だが、屈しない。多少ビクついたりはしたものの、人の命を奪う道具から視線を背けるような真似はしなかった。
 やれるものならやってみなさいよ――宣言どおり、ハルヒはこれしきの脅しに負けるつもりなどないようだ。
 この少女を気持ちで打ち負かすには、どうやら正攻法以外の手段を使う必要があるらしい。
 室外で騒いでいる四人、自分の素顔を裸身含めて記憶してしまったハルヒ、その双方をいかにうまく利用し、この場を切り抜けるか。
 考えに考え、やがて不二子は決断した。

「今度はいったい何をするつもり?」
「直に分かるわ」

 銃を収めた不二子は依然としてハルヒを拘束したまま、病室に置かれていたコップに支給物の水を注ぐ。

 ――『他者を利用し、生き延びる』

 不二子の目的は、最初から今に至るまで一貫してこの通りのはずだった。
 利用する。それが彼女が得意とするスタンスであり、その実力は天下の大怪盗を手駒にするほどの魔性の威力。
 洗脳やらマインドコントロールやら、そんな大層なものが扱えるわけでもない。
 必要な工程はたったの三つ。相手を理解し、自己を理解し、決断する。
 不二子は今、その第三工程を踏んだ。あとは決行するのみ。
 結果として現れてくるのは、不二子の望んだ世界か、それとも。

「ちょっと、なによその怪しげなクスリ」
「気にしないで。単なる睡眠薬よ」

 不二子は水で満ち足りたコップに粉末状の薬品を加え、掻き混ぜながら不気味に笑った。
 裸の女性が、暗がりの病室で薬を作っている。恐ろしくシュールな光景にも関わらず、舞台は奇妙な緊迫感によって彩られていた。
 銃を向けられた瞬間よりも、セイバーやシグナムに襲われた時よりも、嫌な予感がする。
 錯覚だと思い込みたかったが、ハルヒは目の前の不二子に怯えを感じずにはいられなかった。
 暗闇の中、一滴の汗がハルヒの頬を伝う。別に暑いわけでもないのに。
 その間、不二子はコップの中の水を全て口に含み、すかさずハルヒの下に駆け寄った。
 そして、峰不二子と涼宮ハルヒ、二人の唇と唇が接触を交わす。

「……んん!?」

 唐突で衝撃的、センセーショナルでインパクト抜群。突然すぎて、思考回路が麻痺してしまう。
 ハルヒは不二子からの魅惑的な接吻を受け、一瞬の内に顔面中を上気させた。

「ん……ん、ん、んー!? んん…………ぁん……っ……!」

 唇を離そうとしない、それどころか執拗に口内へと魔手を伸ばしてくる不二子に対し、ハルヒは力の限り抗った。
 だが突然のキスで混乱しているのか、妖艶な魅惑に身体を縛られてしまったのか、思うように力が入らない。
 虚脱感は拭えない涙へと変わり、抵抗の意を示す喘ぎ声も小さなものへと変わっていく。
 唇を通して、全身の生気という生気が奪われてしまったような感覚。
 舌と舌が絡み合う艶かしい感触も初めて体験するものだったし、他人の唾液が口に流れ込んでくるという珍事もまた同様に。
 頭がぽぅっとして、もう何もかも考えられなくなってきた。

「んっ……ふゅぅ……っく……ん」

 ハルヒの知らない未知の世界――その片鱗を味わったというのに、なんだかやけに気持ち悪い。
 好奇心やワクワクとは無縁な、大人への階段。
 まだ昇りたくない。まだここにいたい。
 ハルヒがイヤイヤと身を捩ったところで、ようやくルージュの儀式が終わりを迎えた。

「はぁ、はぁ、は、ぁ――」

 解放された口で荒い呼吸を繰り返し、ハルヒは鋭い視線で不二子を睨もうとして――瞼をガクンと落とした。
 何するのよこのヘンタイ! 痴女! 強姦魔! と罵倒を浴びせたかったのに、それが困難な状況に陥っている。
 身体が鉛のように重い。特に、瞼からは鉄塊かと疑ってしまうほどの重みを感じる。
 いったいなにがどうなってしまったんだろう……考える能力も低下し、ハルヒの生体機能は闇の世界へと誘われていった。

 つまり、急に眠くなったのだ。
 度重なる事件で疲れきった身体は安息を求め、襲ってきた眠気の前にあえなく陥落した。
 にしても唐突すぎる。何か原因があるはずだ――とハルヒは閉鎖寸前の視界で、不二子が飲んだ水の容器を捉えた。
 不二子がコップの水に混ぜた、正体不明の怪しい薬。本人はあれを、睡眠薬と言っていた。
 薬の正体は不二子の言うとおり睡眠薬で、しかも医療用に使う強力なものである。
 強引に飲ませようとしたところで、相手が飲み込まなければ効果は薄い。だから、口移しという手段を用いたまでのこと。
 先ほどのキスは、あの睡眠薬をハルヒに無理矢理飲ませるためのものだったのだ。

「……」

 その結論に到達したのかどうかは定かではないが、今、ハルヒは完全に沈黙した。

「相当な数の修羅場を経験してきた、ね……なら、溜まった疲労も相当なものでしょ。
 今は何もかも忘れ、安心してゆっくり眠るといいわ。今は、ね」 

 眠ってしまったハルヒを気遣っているのか、不二子はやや小さくした声で囁きかけ、そして微笑んだ。

「ふふふ……おやすみなさい、リトルレディ」

 その笑みがどこか妖艶に見えてしまうのは、峰不二子という女の特性みたいなものだろうか。


 ◇ ◇ ◇


「がぁー、もう待てねぇ! のび太、ドラえもん、太一! 俺はもう突っ込むぜ!」

 病室の外で機会を窺うこと数十分。
 いつまで経っても姿を現さない、それどころか要求の一つも言わない犯人に、カズマはついに痺れを切らした。
 アルターを形成しようとしたところをのび太、ドラえもん、太一の三名が必死に宥め、そのやり取りを繰り返すこと計三回。

「止めんなお前ら! ようは、人質をどうこうされる前に犯人ヤローをボコにすれば問題ねぇんだろ!? 簡単じゃねぇか!」

 何がどう簡単なんだ。三人は思いつつも、カズマと口論するような余裕はなく。
 やっと休めると思った時に起こった、想定外のアクシデント。この四人組も肉体の疲れからか、やたらと動きがチグハグしていた。
 カズマが暴走して、他三人が止めようとした、そんな時である。
 不意に、不審者の立て篭もっていた部屋のドアが開いた。
 この時ばかりは四人一斉にピタリと動きを止め、一方向に視線を注ぐ。
 中から出てきたのは、茶色のトレンチコートに鍔付きのソフト帽を被った、年配の男性。
 男性はセーラー服の女性を抱え、真摯な態度で喋り出した。

「突然驚かせてしまってすまない。わしは、国際刑事警察機構総務局国際協力部第1課の銭形という者だ。
 偶然にも、外から不審な男がこの少女を捕らえている姿を目撃したのもんでな。
 黙っているわけにもいかず、隙を見て救助させてもらった。少女は眠っているだけだから安心してくれ。
 惜しくも犯人には逃げられてしまったが、手傷を負わせておいたからこれ以上の犯行に及ぶことはないだろう」

 その男、銭形の自己紹介に対して四人組の返答は、沈黙。
 全員が全員、彫刻のように動かなくなり、疑念に満ちた目で銭形を見つめていた。

(さて、伸るか反るか……)

 この銭形、もちろん本物の銭形幸一ではない。
 病室に立て篭もっていた不二子が、自身の支給品である変装セットを利用した姿だった。
 作戦はただ一つ。
 銭形の姿を借り、この場をやり過ごす。
 素顔を見られていないとはいえ、彼女の背格好はのび太とドラえもんが目撃している。
 犯人と思われる可能性が高い以上、素顔のままで姿を晒すわけにはいかなかった。
 その点、銭形の変装セットを使えば容姿がまるごと逆転することに加え、警察官という肩書きで相手の信憑性を高める効果も狙える。
 しかも、今の不二子は着せ替えカメラの効果によって着るものを剥ぎ取られている状態だ。裸身のまま降伏するよりは、よっぽど健全な選択と言える。
 作戦がうまくいったとして、融通が利くのは不二子の正体を知っているハルヒが目覚める間まで。
 その間にどうにか作戦を立て直し、峰不二子としてドラえもんの仲間に加わる。それこそが不二子の決断した、時間稼ぎの策だった。

 が、この作戦には一つだけ、あってはならない、だが十分に有り得る、『最悪ケース』への懸念があった。

 思い出されるのは、不二子の変装を一発で見破った水銀燈の存在。
 もしこの四人の内の誰かが、銭形本人、もしくは銭形の死体と面識を持っていたとしたら。
 嘘も弁解も通用しない、最悪の展開が待っている。

(分の悪い賭けじゃないわ。むしろ、ここでの賭けには勝って当たり前なのよ)

 今までの不幸続きを考えれば、そろそろ不二子の思惑通りに進んでもいい頃だと思えた。
 数々の窮地を回避し生き延びてきた実績は、全てとは言わないが幸運の成果によるものが多い。
 そうそう不幸が継続するはずがない。そう信じきっていた。
 自信に満ちた演技で四人組の対応を待つ不二子。四人の中で真っ先に口を開いたのは、眼鏡をかけた少年だった。

「に、に……偽者だぁー!」

 ――前言撤回。どうやら今日はとことんまで厄日らしい。うっそぉ~ん。

「銭形のおじさんは僕とスネ夫を庇って死んだんだ! 死体もさっき埋めた! ここにおじさんがいるはずないよ!」
「のび太くんの言うとおりだ! やい、お前はいったい何者なんだ!」

 どうやら、こののび太という眼鏡の少年は、銭形と直接的な面識を持っていたらしい。
 しかも死体を埋葬したという証言から、病院の表の墓に誰が眠っているのかも想像できた。
 最悪だ。賭けには惨敗し、最悪の結果が訪れてしまった。
 そして、最悪はさらに加速する。

「つまり、このヤローは変装をして俺たちを騙そうとしたってわけか。ハッ、気にいらねぇな。
 その腐った性根も気にいらねぇが、死人を利用しようとしたことがますます気にいらねぇ!」

 正体が露見した銭形もとい不二子は、次に移るべき行動を模索しようとするが、すぐには動けなかった――自分の不幸に動揺していたのだ。
 あり得ないことではなかったが、最悪のケースであるという観点から、そうそう起こりえないだろうという甘い認識で臨んでしまったのが最大の敗因。
 故に、思考回路に狂いが生じた。その隙を狙い、カズマが右拳を構える。
 暗い廊下に虹色の奔流が落ち、壁の一部分を抉り取って消える。
 この力は、この現象には見覚えがある。
 これは、あの劉鳳が行使していた下僕、絶影と同じアルター能力――!

「か、カズマさん!? そりゃマズイって、相手は女の子を人質に――」
「人質に当たんねぇように野郎だけをぶっ飛ばす!
 衝撃の……ファーストブリットォォォォォ!!!」

 太一の制止も聞かず、カズマは顕現させたアルターを用いて不二子に突っ込んでいった。
 言葉通りの肉弾砲に普通はたじろぐはずであったが、不二子はこれを持ち前の運動神経と直感で回避。
 カズマの右拳は病室のコンクリート壁を叩き割り、白い粉塵が巻き上がる。
 事前に劉鳳と接触し、アルター使いという存在を知っていたことはせめてもの幸運と言えた。
 もちろん、あんな非現実的な輩とやり合う気は毛頭ない。不二子は粉塵に紛れ、そのまま逃げ出した。
 深い眠りに落ちたハルヒを背負ったまま、普段は追う立場にあるはずの銭形が追われる。
 逃げ足には自身があったが、相手がアルターなどという訳の分からない能力者なら、絶対とも言えない。

(マズイわよねこれ! 何か、何かこのピンチから脱する方法を探さないと――)

『――もう諦めちまったらどうだ、不二子? ここらが正念場なのさ。五ェ門やとっつぁんも手招きしながら待ってるぜ』

(る、ルパン!? 本格的にヤバイわ……とうとう幻聴まで聞こえるようになっちゃったみたい。でも、私はまだ死ぬ気はないわ!)

『おいおい、つれないこと言うなよふ~じこちゃ~ん。さっさと諦めて、あの世で俺と楽しくやろうぜ?』

(お断りよ!)

 顔面全体を覆った銭形マスクに汗が滲み、不二子はさらに足を加速させた。
 まだ死ぬつもりはない。『命』というのは、どんな金銀財宝にも代えがたい唯一無二のお宝であり、物欲の対象だ。
 ここで逆上したカズマに殴り殺されることはもちろん、ドラえもんたちに敵として認識されることも避けねばならない。
 馬鹿な幻聴を聞いている暇はないのだ。ベストはこのままハルヒを連れての逃走――そこから、峰不二子として改めてドラえもんに接触する。
 問題は不二子の正体を知るハルヒだが、最悪口封じのために殺害することも厭わない。今の不二子には、それだけのことをする覚悟があった。
 生き延びるために、理想的な行動をする。全ての歯車がうまく噛み合えば、あとはもう不二子の思い通りだ。

 月明かりの広がる入り口、正面玄関一歩手前まで迫って、不二子はスピードを減速せざるを得なくなった。
 それというのも、病院の外から中へ、新たに二人の参加者が訪れたためである。

「ハルヒおねーちゃん!」

 一人は、やたらフリフリなメイド服に袖を通した、獣耳と尻尾を併せ持つ異界の少女。
 もう片方は、まだ見た目に幼さの残る金髪の少年。
 予期せぬ部外者に眉を顰めた不二子は、一瞬だけ後ろを振り返り、カズマを先頭とした四人組集団も追ってきていることを確認する。
 後ろにも敵、前にも敵。後ろの敵から逃れても前にも敵がおり、前の敵から逃げても後ろの敵がいるという悪循環……虎口を逃れて竜穴に入る、とはまさにこういった状況を指し示すのだろう。
 ついてない時はとことんまでついていない。不二子は「あーもう!」とヒステリックな声を漏らし、正面玄関口へ突進していった。
 来訪者――アルルゥと石田ヤマトの二人を意に関さず、力ずくで突っ切ろうという魂胆である。
 だが、そんな不二子に対してアルルゥは、

「おねーちゃん、かえす!」

 猛進する不二子目掛け、勢いよく飛びかかってきた。
 極度の人見知り気質であるアルルゥだったが、この時ばかりはハルヒを助けたいという一念が初対面への恐怖を凌駕した。
 予想外の飛びかかり攻撃に不意を喰らった不二子は、そのままバランスを崩してハルヒごと転倒。
 すぐに立ち上がって正面玄関を出ようとしたが、寸前でもう一人の来訪者、石田ヤマトが立ち塞がる。
 バスケットのディフェンスのようなポーズで行く手を阻むヤマトと、それを強引に打ち破ろうとする不二子。
 不二子の狙いは、病院からの逃走。既にハルヒはアルルゥの体当たりによって落としていたため、無理に止める必要もなかった。
 だが、この男はハルヒを攫おうとした極悪人――SOS団の、仲間の絆を断ち切ろうとした輩を、見逃すわけにはいかない。
 ヤマトは正義感を奮い立たせ、脇を通り抜けようとした不二子のコートの裾を掴んだ。
 瞬間、出口方面へと身体が引っ張られるが、犯人を掴んだ手だけは意地でも離さない。
 最後にはヤマトの意地が打ち勝ち、掛かっていた引力が消失した。
 犯人が諦めた――そう判断したヤマトは、不二子を捕らえるために身を寄せ、

「観念しろ――!?」

 逆に、全身を拘束された。
 不二子は別に、観念して逃走を諦めたわけではない。
 人質を失った以上、一番の要注意人物であるカズマは、これまでよりも容赦なく不二子を攻め立てるだろう。
 あんな馬鹿げた能力を持つ相手から逃げるのは骨が折れる。
 ならば、さっき以上にカズマが攻撃しにくい状況を作り出せばよい。
 新たな人質を取り、その人質のこめかみに銃を突きつけるという形で。

「――全員動くな! 少しでも動けば、このガキの頭を撃ち抜くぞ!!」

 しゃがれた大声を絞り上げ、不二子はその場にいる全員に向けてそう告げた。
 飛び込んできた警告、本能的に危機を感じざるを得ない光景が重なり、ドラえもんとのび太と太一とカズマ、そしてアルルゥの五人が、ピタリと制止する。

 ――そう。この場は不二子以外に誰も動けない。

 この場にいる面々は年齢や種族、生まれや性格などの差異はあったが、一つ、ある共通点が存在していた。
 それは、決して仲間を見捨てないという正義感。強い仲間意識。友情。
 ヤマトと直接的な面識がないのび太やカズマでさえ、銃を突きつけられた様を見れば想像してしまう。
 もしあれが、しずかちゃんやスネ夫やジャイアン、かなみや君島、ハクオロやエルルゥだったら……。

「――太一!? お前、なんでこんなところに!?」
「それはこっちのセリフだ! ヤマト、なんでお前が――」

 身動きを封じられた環境の中で、二人の『選ばれし子供』が最悪の再会を果たす。
 顔見知りと合流できたことは嬉しいが、シチュエーションが酷すぎる。
 なにせ再会して早々、片方の命は半分奪われているようなものなのだから。

「チッ、また人質かよ! 姑息な手ェ使ってねぇで俺と勝負しやがれッ!」
「ど、どどどどうしようドラえも~ん!」
「お、落ち着くんだのび太くんっ。え~とこういう時はあれでもないこれでもないえーとああ! そうかひみつ道具は取り上げられてたんだった!」
「ヤマト、離すっ!」

 イライラを募らせるカズマと、動揺して慌てまくるのび太と、それ以上に大慌てなドラえもんと、今にも飛びかかっていきそうなアルルゥ。
 誰もが皆、この状況に憤りを感じ、それでいて何もすることができない。

 ――陥った状況は酷く悪趣味で、人質というのは典型的な小悪党の用いる非道手段である。

 咄嗟に思いついたこととはいえ、不二子も「下劣な行動ね」と自身に悪態を吐いていた。
 生きるために、逃げ延びるために取った行動とはいえ、子供を人質に取るなど彼女のプライドが許せるはずもない。
 だがそんな彼女のプライドを打ち崩したのは、あのルパン三世が死んだという現実。
 殺しても死なないような男が、易々と死んでしまう世界……そんな場所でプライドに媚売って、果たして生き残れるだろうか。
 大事な人を守るためなら修羅になる――そう考える人間がいるように、大事な命を守るためなら下衆にでもなってやる。そう考える人間もいる。
 そして作戦の効果は気持ちに反比例し、大成功を収めたと言って過言ではない。
 事実、ヤマトを人質に取ったことで短気なカズマすらも落ち着きを見せ、不二子の前に服従している。
 銃を突きつける、相手の命にリーチをかけるだけで、こうも反応は変わるのだ。

「よーしよしよし。全員聞き分けが良くて助かるぞ。いいか、少しでも妙な動きを見せればこいつはオダブツだからな」
「くっ! アルルゥ、俺のことはいいからハルヒさんを連れて逃げろ! 太一たちも、こいつの言うことなんて聞いちゃいけない!」

 若干ヤケクソになっているのか、不二子の演技はますます堂に入っていた。
 暴れようとするヤマトを押さえつけつつ、銭形の口調を真似てみせる余裕ぶり。
 実際、小学生のヤマトと、実戦に長けたエキスパートである不二子とでは、力の差だけでもかなりのものがある。
 ヤマトが自力で逃げ出すことはほぼ不可能。他の面子も手出し不能な状態。
 助け出す方法がないというわけではなかった。
 のび太が銃を抜けば不二子よりも早く引き金を引けただろうし――もっとも、勇気が足りないのだが。
 アルルゥがタヌ機を使えば不二子に幻覚を見せて隙を作れただろうが――銃を突きつけられた今、おかしな真似をするわけにはいかない。
 カズマが本気で突っ込めば、あるいは不二子だけを狙ってぶっ飛ばせたかもしれない――さすがにそこまで軽率ではない。

 ――人間、物事がうまくいけば、さらに欲が出てくるものである。

 例えばギャンブルで大勝していたとして、さらにどんどんチップをつぎ込んでみたり。
 例えば何気なく買った宝くじで運よく四等が当たったとして、次は本気で一等を狙ってみたり。
 例えば一回悪事が成功したとして、次はもっと大きな悪事が狙えるんじゃないか……? と野望を燃やしてみたり。
 この、『誰も不二子に逆らえない状況』は、彼女の欲を引き出す最高の空間であると言えた。
 それ故に、不二子が持つ欲求の中で特に秀でて強い、『物欲』が疼き始める。

「……お前ら、このガキを助けて欲しかったら、素直にわしの言うことを聞くんだ。
 まず、お前らの持っている荷物を全部こちらに渡してもらおう。携帯している武器から食料まで全部だ。
 断ればこいつがどうなるか……もちろん分かるな?」

 本来は善良な銭形の表装が、悪人の面に変わる。
 子供を人質にした挙句、力のない弱者たちからさらに金品を要求するその所業、正に悪党。
 堂に入っては堂に従え、不二子は完璧な極悪卑劣な小悪党へと成り下がり、自身の目的を定めようとしていた。
 事態は、不二子自身からしても予想外な展開を迎えようとしている。
 場合によっては、これからの指針を変える余地もあるほどに。

「まずはそこのアルター使いの男。そのアルターを解いて、お前の荷物をこっちに放れ」
「ふざけんな! この俺が、このカズマ様がなんでテメェなんかの言いなりに――」
「ちょっと待った! 君はなんで、カズマくんのアルターのことを知っているんだ!?」

 反論しようとしたカズマの前に立ち、被さるようにドラえもんが反論する。

「ふふふ……わしに知らんことなどありはせんのさ。そんなことより、さっさと命令を聞いた方がこいつの身のためだぞ?
 そうだな、一言反論するごとにこいつの指を折っていくってのはどうだ? そういったルールがあった方が従いやすいか?」
「ぐっ……!?」

 爆発しそうになった拳を必死に抑え、カズマは言われるがままにアルターを解除した。
 横からは、太一の心配に満ちた視線が突き刺さる。
 カズマとて、思いやりの精神はある。仲間の目の前で仲間の仲間を見捨てるなど、できるはずがなかった。

「わぁったよ。渡しゃいいんだろ渡しゃ。ほらよッ!」

 乱暴にデイパックを放り投げ、カズマは力いっぱい舌打ちをした。
 カズマに次いで、太一、アルルゥ、ハルヒ、のび太のデイパックと携帯武器、諸々が不二子の懐へとなだれ込んでいく。
 詳細な中身はすぐに確認できないが、アルルゥからはクロスボウ、のび太からは銃が没収できた。これだけでも十分すぎるほどの儲けものだ。

「さぁ、最後はそこの青ダヌキ、お前だ」
「タ……!」

 最後に要求したのは、ドラえもんの持つデイパック。
 ただし、この際に不二子は一つ重大なミスを犯してしまった。
 それはほんの些細な一言。常日頃から考察等で使っていた、見たままのドラえもんの代名詞を、そのまま言い放ってしまったこと。

「ほらどうした青ダヌキ。もたもたしてないでさっさと荷物をよこせ」
「また……ぼくを、このぼくを二度も青ダヌキと……」

 わなわなと震えるドラえもんの姿を怪訝には思ったが、過ちを犯してしまったとは夢にも思わず。
 絶対言ってはいけないタブーを言ってしまい、それがドラえもんの逆鱗に触れるきっかけとなろうことなど、誰が推測できるだろうか。
 いるとすればただ一人――それは、ドラえもんの性格をよく知っているのび太のみである。

「ぼくは……ぼくは、タヌキじゃな~い!!!」

 刹那、ドラえもんの顔が沸騰したかのように真っ赤に染め上がり、身体は大きくをジャンプする。
 そのまま怒りに任せて不二子へダイブ。予想外、予想できるはずもないドラえもんの逆上に面食らい、不二子は唖然としてしまった。
 少しばかりの混乱の中、反射的に発砲。銃弾はドラえもんの頭上、天井に付けられていた蛍光灯を撃ち落とし、破片諸共下に落下する。

「ふぎゃっ!」

 蛍光灯の直撃を受けたドラえもんは、そのまま昏倒。
 不二子は隙を突いて逃走を図ろうとするが、ドラえもんが作ってくれた隙を狙う者は他にもう一人いて――

「シェルブリット――」

 振り返る間際の視界。そこには、再構築させたシェルブリットを構えるカズマの姿が。
 脳が、本能が、逃げろと伝えてくる。その伝達速度は、風よりも光よりも速く。
 ここが引き際だと、不二子の生体本能が悟った。

「――バーストォォォォォ!!!」

 力が圧縮、放出、迸り、病院の正面玄関口を吹き飛ばした。


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