大人になる方法 [ロゼ ソウマ]

ロゼさんが入室しました
ロゼ : (――某日、某夜。 フォーデン某所の宿泊施設。
ロゼ : (宿泊施設というには語弊がある。 そう、一級のラグジュアリーホテルである。
ロゼ : (貴族や富裕層がそういう”血腥いこと”を観に来る際に利用するホテルだ。
ロゼ : (今や彼女はそのどちらでも無いが――
ロゼ : (生唾を飲む。 あきらかに緊張している。
ロゼ : (頬が火照ってるのは、風呂上がりの所為でもないし
ロゼ : (久々に着たワンピースの所為でもない。
ロゼ : ――(息を呑んで、ノックをすること二回。
ロゼ : (少しの間。 ロックが解除される音まで数秒か、数十秒か。
ロゼ : …………(深呼吸。 まとめようとしても、思考がおぼつかない。
ロゼ : (ただ、言えるとしたら、それは……
ロゼ : ……。
ロゼ : (私は、彼が好きだ。
ロゼ : (彼のことを愛している。
ロゼ : (そう、自覚したのは……いつのことだったか――――
ロゼ : ―――――――
ロゼ : ―――――――
ロゼ : 『八首』――キアシス最強とも云われる魔術師の称号。
ロゼ : 私ではまるで歯が立たない襲撃者もその極光で一蹴してみせ、
ロゼ : ムリを押し付けた特訓では傷はおろか埃一つ付けられず、
ロゼ : 避難に遅れる人々が居れば風のように飛んでいき、癒し、護り。
ロゼ : いつしかそんな”彼女”を神格化していたのかもしれない。
ロゼ : ――悔しかったが、同時に諦めもあった。
ロゼ : どうすれば 追いつけるだろうか。
ロゼ : 炉心無し<出来損ない〉と云われる私が、どうすれば胸を張ってキアシスの民だと言えるだろうか。
ロゼ : 私はただ、守られるだけの民では居たくなかった。
ロゼ : 守られる事への感謝を、平和を支える者へ労りを伝えたかった。
ロゼ : 「私も立ち上がれる」と。
ロゼ : そう思うのは貴族としての責務ではなく、人としての尊厳だ。
ロゼ : ――そこからは藁にもすがる思いで鍛錬を積んだ。
ロゼ : 苦手だった座学にも向き直り、夜な夜な庭で剣を奮い、噂の喫茶では何度も試合を繰り返し。
ロゼ : 特訓のたびに”彼女”に迷惑は掛けたかも知れないけれど、それ以上に必死だった。
ロゼ : ”彼女”はいつでも応えてくれた。
ロゼ : 笑顔で、とは云わないが……それが公務だと、自らの使命だと。
ロゼ : 自分だったら何て答えるだろう。 そう思うとますます追いつけないなと歯噛みした。
ロゼ : ――あの光を見た帰りのこと。
ロゼ : 「貴女が男だったら惚れてるわ」――背負ってもらいながら言った言葉に嘘は無い。
ロゼ : けど、本当に男だったなんて。
ロゼ : 天の神様は本当に何を考えてるの。
ロゼ : ――でも、それでも。 実際「そんなこと」だと言えるぐらいの事だったと思う。
ロゼ : ココロを抜かれたのが人為的で、それが家族に寄るモノで。
ロゼ : 蔑まされる反骨から牙を剥いて、殆ど友人や兄弟といえる人なんか居ないのに、ましてや家族にまで裏切られて。
ロゼ : 私は独りだと、いっそ嗤ってしまうぐらいだった。
ロゼ : そんな中、あの光は鮮烈だった。
ロゼ : 縋っていたのかも知れない。事実、捨て犬のように見られていたのかも知れない。
ロゼ : それでも良かった。 それで一緒に居られるなら、何だって都合が良かった。
ロゼ : 雨上がりに見るような幻だったとしても、あの光と、あの横顔を忘れられない。
ロゼ : だから、性別なんて些末……と言いたいけれど、半分嘘だ。
ロゼ : 異性だと知ると、どうしても必要以上に意識してしまう。
ロゼ : こうなると手がつけられないし、止められないし、止める気もなかった。
ロゼ : ――けれど。 悲しきかな。彼から見た私はどうしても、私、なわけで。
ロゼ : それならと思って、半分ヤケになって、半分は冷静に判断して。
ロゼ : 彼につりあう人になろうと。 いっそ見返すぐらい強くなって、美人になって、頼れるようになって
ロゼ : ええっと、それから……
ロゼ : ――だなんて思ってる間に、それはもうヒドいタイミングに出くわしてしまった。
ロゼ : 「誰よその子」――だなんて言葉も出なかった。
ロゼ : 親しく回された腕を見れば誰だって判る。 見知らぬ女性の、幸せに頬を染める表情を見れば何だって判る。
ロゼ : そこから先の記憶は、曖昧だ。 彼の施設預かりの子と一緒に列車に乗ったのは、本当に運と勢いだ。
ロゼ : ――どこかで楽観していたのかも知れない。 いつか隣に居られると。
ロゼ : 私は、努力をするフリをして、逃げたんだ。
ロゼ : 本当に彼と一緒に居たいなら、離れるべきじゃなかったのに
ロゼ : 見てもらえない辛さと向き合えなくて、都合のいい理由を抱えて都を飛び出して。
ロゼ : 時間は有限だし、命も期限付きだし、チャンスは何度も扉を叩かないって。
ロゼ : そんな”ありきたり”をようやく噛み締めて、夜は一人で泣いた。
ロゼ : ――だから
ロゼ : ――私。
ロゼ : ――もう、逃げない。
ロゼ : ―――――――
ロゼ : ―――――――
ロゼ : (数秒か、数十秒か。 短い電子音と共にロックが解除される。
ソウマさんが入室しました
ソウマ : ――― (解除の後、ほんの少し躊躇うような間の後、ドアが開く
ロゼ : ――― (ふとして見上げる。黒と赤のワンピースの女性。
ソウマ : …(対していつもの…否、外行きな分ちゃんとした格好だが。何にせよこの豪奢に過ぎるロイヤルスイートには見合わぬ雰囲気。
ロゼ : ぁ……、、ぇ、、へぇ っと(目をグルグルさせながらしどろもどろ…! 逃げないとは何だったのか
ロゼ : ご、ごきげんよう……?  こ、こんばんは、かしら
ソウマ : ……うん。 こんばんは。(その様子に、逆にこちらは幾らか緩んだようで
ソウマ : …まぁ、入りなよ。(扉を開き、横に避けてロゼを迎える
ロゼ : ……、、(ゴクリと
ロゼ : お、お邪魔する、わね……(何となく縮こまりながら部屋に
ソウマ : (広がるスイートの内装 流石に拾い。ベッドなんか天蓋付きだし。何かバーカウンターとかあるし。
ソウマ : (暖色の間接照明に大型のソファ、人工大理石のテーブル……ワインセラー……
ロゼ : ……、(元貴族でまあまあ裕福だったが圧倒される。 個室とか何部屋あるんだろうってレベルだ
ソウマ : まぁ…… 座って。(とりあえずふっかふかのソファを示して
ソウマ : 何か、飲み物準備するから。…希望はある?(言ってバーカウンターの冷蔵庫の方に
ロゼ : …、任せるわ(ソファまで歩き…ぼふっと座り込む
ソウマ : オッケー。(ティーセット出して準備して
ソウマ : (流石にティーバッグだが、見た事無いような立派そうなやつ…でスタンダードな銘柄の紅茶を淹れて
ソウマ : (2人分のお茶とティーポットをトレイに乗せて、ロゼの方へと
ロゼ : ……スゴいところ拠点にしてるのね。出世したお陰もあるのかしら?(向かってくるソウマに
ソウマ : …ある人のご厚意でね。 有り難く使わせて貰ってるけど…、(周囲を仰ぎ見るようにした後、テーブルにトレイを置き、ロゼの前に紅茶を
ソウマ : まー、流石に使いきれないね。 …どうぞ。
ロゼ : そう……ありがと。(深く細やかな茶葉の香りに、少し緊張が和らぐ
ソウマ : (自分の方にも紅茶置いて、対席のソファに腰掛ける。
ロゼ : 悪い…わね、その、こんな夜更けに。
ロゼ : グリ……シエルに教えてもらって。うん……
ソウマ : …んーん。
ソウマ : …元々、連絡しようとは思ってたしね。大会が終わるか、チームの試合が落ち着いた頃にでも…って。
ロゼ : ……。(うつむき加減だが少し目が見開く。
ロゼ : ……そう、そうなの(誤魔化すようにカップに手をかけながら
ソウマ : …大会お疲れ様。
ソウマ : 観てたよ、試合も。…まぁ、片方はTV中継でだけど。
ロゼ : …………、、、
ロゼ : グリスは、!
ソウマ : 、?
ロゼ : グリスは、よくやってくれてるわ。 試合中も助言くれるし、分析もしてくれる。
ロゼ : それに日頃の特訓の……剣聖育成パック??何だったかしらね正式名称……
ロゼ : 凄く役立ってるわ。 剣術って突き詰めると合理性の塊だし、
ロゼ : アプローチは、”シエルらしい”けれど、私もそれが判りやすくて……
ソウマ : …そっか。良かった。(安堵したように
ロゼ : ええ。 私も、応えたかったのだけど……、、
ソウマ : 
ロゼ : まだまだ、ね。 で、でも私も、例の炉心剣もようやく慣れてきたところで、
ロゼ : まだ伸びしろはあると思う、っていうか……うん……(何だかチグハグな取り繕いだ
ソウマ : …うん。それに、あれだけのポテンシャルを秘めてるとはね。考証段階の予想を超えてるよ。
ソウマ : …勝敗だけ見るなら、力及ばなかった、と感じるかもしれないけど…
ロゼ : ……、
ソウマ : 気落ちするような事じゃない。 ロゼサンは、十分応えてる……と思うよ。ボクは。
ロゼ : …、、 そ、そう?
ソウマ : うん。(素朴に
ロゼ : そう……そっか…… うん、、、……良かった。
ソウマ : グリスも炉心剣<ソル>も、君の旅路に役立ってるなら僥倖(なにより)だ。
ロゼ : ……(嬉しさを噛み締めてるのか、思わずだらしない表情になりそうな自分を押さえつつ
ロゼ : ソウ、、マは どうなの? その、調子、とか。(浮ついたまま言葉を滑らせる
ソウマ : …… ……どう、かな。(やや逸らしがちに
ソウマ : ……何ともだね。
ロゼ : ……、そう……
ロゼ : 変わらず大変そう……よね。 例の新しい研究もそうだけど……
ロゼ : よく暇作れたわね。 向こうじゃ相変わらず引っ張りだこなんでしょ?
ソウマ : …まぁ、やる事は相変わらず多いけど、仕事は充実してるよ。
ロゼ : ……嬉しい悲鳴ね(ふ、と微笑んでカップを煽る
ソウマ : …… そうだね、暇は……作れたというか、作ったというか…。
ロゼ : ……メノウのことで?
ロゼ : 確かに、初戦は少し心配になったけど……(あれは……と続けて
ソウマ : …… うん。(どこか歯切れ悪く
ロゼ : 調整したのよね? なら、大丈夫よ、きっと。
ソウマ : …そうだね、外付けで突貫だけど。もうああいった暴走状態には陥らない筈。
ロゼ : なら安心ね。(ふぅ、と
ソウマ : うん。それに船側でも定期的に検査して報告してくれるってさ。
ロゼ : そう…尚の事ね。
ロゼ : 道中もチームも一緒で色々話したけど、明るい子じゃない。
ソウマ : うん。天真爛漫って言うのかな…
ロゼ : ええ、色んな気付きと、元気を分けてもらったわ。
ロゼ : 危うい部分もあるかも知れないけど…… いい船旅になるといいわね。
ソウマ : …ホントにね。心配はまあ、尽きないけどさ。
ソウマ : ……
ロゼ : ……
ソウマ : ……。 うん。……
ソウマ : (……後に言葉が続かない。どう切り出したものか。
ロゼ : ……ソウマは、いつまでこっちに居られるの?
ソウマ : …この大会が終わるまでは居られるようにしてるよ。だから…
ロゼ : ……明日、明後日には、ってコト。
ソウマ : …うん。そうなるね。
ロゼ : ……、
ソウマ : ………
ロゼ : ………(空になったカップを置いて
ロゼ : ……(あと一歩、のところで引っ込んでしまう。
ロゼ : (せめて場を持たせたい。 そうでないとお開きになってしまうし。それは、淋しくてイヤだ。
ロゼ : (……花を咲かせる貴族トークなんて真反対の生き方だったのが悔やまれる
ソウマ : ……、そういえば。
ロゼ : 、(何?と傾げて
ソウマ : ……あの「グリス」、随分旧いバージョンみたいだけど…(……間を持たす話だ。必要な話ではあるが。
ソウマ : コッチで手を入れても良いかな。…オンラインに繋げば、かなり機能がアップデートできると思うけど。
ロゼ : 、ぁー……(ふと思い出したかのように
ソウマ : ……(本題に、そうそう触れられる筈も無い。何の為にココに来たの、なんて訊ける筈も。
ロゼ : 、そうね。 確かに繋げてなかった……かしらね。
ロゼ : そういうの疎くて、グリス任せだったから……任せても良いかしら?
ロゼ : (嘘。 本当は、繋がりが余計に強かっただけ。
ソウマ : ん。モチロン。(小さく笑み
ロゼ : …、助かるわ(合わせて微笑んで
ロゼ : 意を決して外に出てみたものの……ソウマには助けられてばかりね。
ロゼ : 自分の足で立つって、難しいわ。 今更実感してる。
ソウマ : …遠慮無く頼っていいんだよ。本当に一人で立つなんてそうそうできるコトじゃないしね。
ロゼ : ……、そうも言ってられないわよ、だって――……
ロゼ : ――――、、、…………、
ソウマ : ――、……ロゼさん?
ロゼ : ……、(誤魔化すように自分の頭をひと撫ですると、そのまま前髪をくしゃり、と
ロゼ : ……、ソウマ。
ソウマ : ……、
ロゼ : …………、話が………ある……んだけど……
ロゼ : その……聞いてくれる?(目線は泳ぎっぱなしで
ソウマ : …… ……いいよ。
ソウマ : ……その為に来たんでしょ。今日は。
ロゼ : ――――。
ロゼ : ……(人知れず…といってもバレバレだが、深く深く深呼吸して
ロゼ : (そう。だいたい、お見通しなのかもしれない。 ソウマは、賢いし。敏いし。
ロゼ : (一方で私はお世辞でも駆け引き上手じゃない。
ロゼ : (押して押して押すぐらいだ。ホント、いっそ泣けてくるほど下手で。
ロゼ : (……でも、、
ロゼ : ……。
ロゼ : (わたしの恋は あの日あの時に消えてしまったのかも知れないけれど
ソウマ : ………
ロゼ : ……(すっと立ち上がると、対席に来て
ロゼ : (ソウマの隣にぽすん、と座って
ソウマ : ……(ロゼの方を向かず、前を見たまま
ロゼ : ……
ロゼ : ………
ロゼ : …………
ロゼ : ――――
ロゼ : ソウマ。
ソウマ : … うん。
ロゼ : ……………………すき。
ロゼ : …………、っ(言った途端、顔から火が出るんじゃないかと思って、俯いて、
ソウマ : ――― ……・・・
ロゼ : (やり場のない手を太ももに挟み込んで、すこしだけ、もじもじとして
ロゼ : そー……そう、、まが……すき。
ソウマ : ……… (知ってるよ、なんて、 言えたもんか。
ソウマ : (彼女の口から、直に言葉にされると、こんな、こんなにも――……
ソウマ : ・・・………(片手で顔を押さえ、俯き
ロゼ : そ、の……(言葉が、続かない あんなにも練習したのに
ソウマ : ………うん。
ロゼ : (歯の浮く言葉なんていくらでも浮かんだのに。 子供みたいな二文字だけでこの有様だ。
ソウマ : ………
ロゼ : (愛してる、なんて言った日には死んじゃうんじゃないか、だなんて思う。
ロゼ : わか、、ってる。 うん。
ロゼ : 私、こんな、だし ソウマから見て、まだまだ未熟なのも、判ってる
ロゼ : 相手が、居ることも、判ってる、よ?  わかって、る……
ソウマ : …… …… …
ロゼ : でも、試合見た、とか 誰かのためでも、来てくれたのが…
ロゼ : その、私……どうしても、、嬉しくって
ロゼ : ごめん、なさい、一人で舞い上がってるのも、わかってるん、だけど
ロゼ : ……………
ロゼ : …………好きなの………
ソウマ : ……………
ソウマ : ……うん。 …………うん。
ソウマ : …… そっ、か………
ロゼ : あ、はは……ズルい、よね、こんな。(隣に座って、――石鹸と、ほのかに香るのは薔薇、だろうか。
ソウマ : ……全然。
ロゼ : (どんな汚い手でも、振り向いてほしくって。 ちょっとでいいから、触れたくて。
ソウマ : ……それならボクの方が、ずっとズルいよ。(両手で自分の目元を覆って
ロゼ : ……(僅かに視線を横顔に向けて
ソウマ : ……いつかは、さ、ちゃんと向き合わなきゃいけないコトだったのにね。
ロゼ : わから、ないわ。 私は、ソウマの全てを知らない、から。
ロゼ : ……でも、理由があったからよ、きっと、それは。
ソウマ : ……
ソウマ : ………、(理由。 ……――そんな大層なモノだろうか。
ロゼ : ……
ソウマ : (彼女の目に見える自分ほど、自分はちゃんとしちゃいないだろう。
ソウマ : (ちゃんとして見えるように、振る舞っていたのはあるけれど。――いいや、
ソウマ : (ボクは、
ソウマ : (それ以外のやり方がわからないんだ。
ソウマ : (―――何人もから、ああまで言われて、流石に堪えたし、考えた。
ソウマ : (どうしてボクは、ココまで答えが出せないんだろう、と。
ロゼ : ……(そんな様子を伺って、はたまた違う理由でか、少し表情を落とすが
ソウマ : (「こうあるべき」が解っているのに、何故ソレを選べないんだろう、と。
ロゼ : (最初思い起こした言葉を反芻して、口を開く
ロゼ : ……ソウマ。
ソウマ : …、
ロゼ : ……今晩、一緒に居ていーい…?
ソウマ : ……、……ソレは、
ソウマ : ……
ロゼ : ……、判ってるわ。 良い、なんて言えないこと。
ロゼ : 人として当然、とか、 立場、とか。 倫理、とか
ソウマ : ……
ソウマ : (――物心付いた時から孤児だった。キアシスに拾われ、キアシスの為の施設で育った。
ロゼ : ……ソウマは、ね 背伸び、し過ぎてる気がして
ソウマ : (キアシスの為に魔術を学び、都市職員になり。八首となり。――生まれた時から今までずっと。
ソウマ : (都市の為に。魔術の為に。人の為に。市政に関わる者としてふさわしい、正しい行いをする事。
ロゼ : ……ううん、違う、わね……(これは建前だな、と置いて
ソウマ : (半ば強迫観念のように、自身の為人に絡みついたソレが、今この局面になって。
ロゼ : ソウマ、私が好きになったのは……街を護る、正しき人、八首の虹咲シエルじゃ――ないの。
ロゼ : 理想に叶わず思い悩んで、
ロゼ : それでも足掻いて、一歩ずつで良いからって進めて、
ロゼ : 間違っては踏み直して、人の幸せを願って、
ロゼ : そんな、案外泥臭いけど、理想通りであろうと足掻く不器用な人。 でも、優しい。
ロゼ : ……そんな、霖蒼真が好きになったの。
ソウマ : ―――、
ロゼ : ……あんまり、しつこいのも、何だから、これで最後にするけど。
ロゼ : 私、貴女が正しいのも、正しくあろうとしてるのも、わかるわ。
ロゼ : でも……今は、、正しさに、傷ついちゃうから。
ロゼ : (指先でとんとん、とソウマの膝をノックして、 愛しい人を見上げる。
ソウマ : ……、(ようやっとロゼの方を向く 迷いに揺らいだ、どこか切羽詰まったような表情
ロゼ : …(ようやく見てくれたその瞳。感情に揺れているのが判ると、いっそう嬉しくて、愛おしくて。
ロゼ : (傾げて見上げる表情は、誘惑というよりは、ご褒美をねだる子のようで。
ロゼ : ねぇ、ソウマ。
ソウマ : ――…
ロゼ : 今は……貴方〈ソウマ〉の誤ちの方が……いい。
ソウマ : ――――
ソウマ : ………
ソウマ : ……    、(は  ぁ、と大きく息を吐いて
ロゼ : ……
ソウマ : …… 4年待って。
ソウマ : … 長いって言うなら、2年。
ロゼ : …………
ソウマ : …………ボクもあれから考えたよ。  でも、やっぱり、さ、
ソウマ : ……ココで情動に流されてしまう自分は、自分で愛せないし、君に愛される資格も無い、と思う。
ソウマ : ……君が間違い<ソレ>こそを望んでると解ってるし、この判断が、君を傷付けるのも知ってる。
ロゼ : ………
ソウマ : それでも、これしか選べない。 ……そういう、どうしようもない男だけど、
ソウマ : …………それでもいいなら、4年待って。
ロゼ : ……、(微かに息が震えているが、なんとか、目は逸らさない。
ロゼ : ……訊いても、いいかしら。
ソウマ : ……どうぞ。
ロゼ : …どうして……4年?
ソウマ : …君が大人になるまで、だよ。社会通念上のね。
ソウマ : …君が自立したらとか、強くなったら、とか、…そういうモノじゃなくて。
ソウマ : ……ボクが守りたい、ルール。…言ってしまえば我儘の話だ。
ロゼ : ……
ソウマ : ……他に、訊きたい事はある?
ロゼ : 悪い、ヒトね。 ……4年経っても、2年経っても、何なら数ヶ月経っても
ロゼ : いつまでも経っても貴方はその何年も先にいるのに。
ロゼ : 1年経っても1年後の背中が見えるだけで……どうやって追いつけって言うのよ、、って。
ロゼ : そう言いたいぐらいだけど……(ふぅ、と息を吐く。 自らの問題だと云われると、何も言えない。
ソウマ : ……… 
ロゼ : でも……そう、ね。  その間、ソウマはどうやって貞操を守るの?(不意にとんでもな問い掛けを
ソウマ : ……ボク? ……まぁ、そう言いたくもなるか。
ソウマ : …あったもんね、お見合いの件…。 ……断ったけどね、あれなら。
ロゼ : ――――、  ……、そう…(少し驚くが、予見していたのか、知っていたのか。
ソウマ : ……何かね、断っちゃったよ。(はぁ、と さっきから真面目過ぎる話してる人とは思えない発言
ロゼ : …………
ロゼ : 街を救った裏の英雄で、魔術の発展を何歩も進めた率役者よ?
ロゼ : 貴方がそうでも放っておかないわよ。 …今後もね。
ソウマ : ……… そういうモノかな。 ……(まあ、実際一度あったので否定はできないのだ
ロゼ : …多分、ね。
ロゼ : まぁ、でも…… それでも、って話、かしらね。
ロゼ : 4年、経って それで……  誤ち〈ソレ〉を、くれるって、コトでいいのかしら。
ソウマ : …うん。
ソウマ : ……ちゃんと、付き合って欲しい。 …恋人として。
ロゼ : ――――、っ
ソウマ : ………、(言って、遅れて片手で口元覆う 今更気恥ずかしいのか
ロゼ : なんっ……、、(それは、予想外だったのか、言葉が続かなくて
ソウマ : ……… 結婚を前提に、だよ?(その反応こそ予想外なのか
ロゼ : 、っ――――!(目を見開いて、真っ赤になって
ロゼ : 何、よ ソレ……ズルい……(表情隠すように俯いて
ソウマ : ………、、、 だから、ずっと考えてたんだよ……、(髪をぐしゃっとしながらぽつぽつと
ソウマ : …… 我欲を、通したいと、思ってしまって……、
ソウマ : ……でも、「正しくありたい」のも、虹咲シエルじゃない、間違いなくボクの意思だったから。
ロゼ : ……
ソウマ : どちらかを捨てる事は、できないみたい。 ……だから、
ソウマ : 君には我儘を沢山押し付ける、そんな提案しか、出来ないけど……
ロゼ : ズルい、話ね……
ロゼ : ……私ね、ソウマと家族になれたら、って思ってた。
ソウマ : ………、
ロゼ : 皮肉よね。自分から家族を捨てたくせに、家族が欲しい、だなんて。
ロゼ : でも、難しい、だろうなって。
ロゼ : だってそうよ。 私がソウマを好きになる理由はあっても、逆は無いじゃない。
ソウマ : ……。
ロゼ : お見合い絡みで勝手に調べたけど…… まぁ、最近モテるみたいだし?(視線は下のままだが、口先尖らせて
ソウマ : ……(え、何それ。と思いつつ) そうだっけね…
ロゼ : だから……嬉しいのか、喜んで良いのか、戸惑って良いのか、わかんないわ。
ロゼ : あるいは、全部なのかも。
ロゼ : ……責任感でそうしてる……、ぁー……んー……ごめん、流して
ロゼ : 私は、そんな、ソウマのそういうところに付け込んで、既成事実欲しかっただけだから
ロゼ : 何だか…… 何も、言えなくなっちゃったわ(観念気味に長い息を吐く
ソウマ : …… 捨て鉢じゃん、それ。(珍しく呆れ気味に
ソウマ : ……同情に流されるようなボクがいいの? ……まぁ、うーん、そうだね…(どう説明したものか、という風に
ロゼ : ……じゃあ、同情に流そうとした、私のこと、嫌い…?
ソウマ : ううん。(首振って
ロゼ : やけにも、なるわよ。 だって……(言って、押し黙る。
ロゼ : (だって、あんなの。 あんな仲睦まじい光景は懲り懲りだ。 一度とだって見たくない。
ソウマ : そうさせたのは、ボクの方みたいなものだしね。……まあ、聞いて。
ロゼ : ……。
ソウマ : …確かに、さ。困惑するのも仕方無いと思う。あんまりそういう風に見えなかっただろうし。
ソウマ : …そういう風に見えないようにしてた、っていうのもあるんだけどね。
ロゼ : ……何なら、体でせまったりするの、嫌いだと思ってる。 ……やっちゃったけど。
ロゼ : ……そうなの?(そんな彼を意外そうに
ソウマ : ……。… そりゃあ、ボクだって普通に男……というか、人間だし……(観念したように
ソウマ : …、思われて悪い気は、……少なくとも、ボクに嫌われてると思った事は無いでしょ。(途中で言い方変えたように
ロゼ : 何よ、その……ま、まぁ……そう、だけど……
ロゼ : ……「世話の掛かる貧弱なキアシス民1号」、って意味合いが大きいかな、って
ソウマ : …言い方。 ……まあ、最初は守るべき市民の一人、として出会ったワケだし、
ソウマ : …もしかしたら今も、君が望むような情熱的な温度ではないのかもしれないけど。
ロゼ : ……
ソウマ : …ずっと、大切な存在には違いないし、 …それに…
ロゼ : ――、
ソウマ : ……君の期待には及ばなくても、君の予想よりは、多分、
ソウマ : ………、
ソウマ : ……… 、 女の子だと思ってるよ。
ロゼ : ……今凄い言い方に悩んだわね?
ソウマ : 、 、、(言って頭を抱える 何せこれが、この一言すら、ずっと認めきれなかったハードルなのだから
ソウマ : ……、何、変な言い方した?……じゃあ言い換えると、…
ソウマ : ……異性として、 意識して、、る?
ロゼ : ――、……言い、方。(赤面隠しながら 止めてよ、とでも言う風に
ソウマ : ……、、ゴメン。(何か謝る こちらも赤面して
ロゼ : …………、、
ロゼ : ………、(ふと
ロゼ : ねぇ。 野暮なこと訊くんだけど。
ソウマ : ……何?
ロゼ : 責任感とか、私に言い寄られて仕方なく、とか。 そういうのに縛られて4年後付き合おうって言ってるんじゃなくて
ロゼ : ……ソウマ、私のこと好きなの?(素朴。こんな時だけ真顔に素朴に彼を見る
ソウマ : 、――
ソウマ : ………―― 
ロゼ : でも、さっき言ってた通りで、今はムリだから、4年後って、言ってるのかな、って……
ソウマ : ………「自分に取っての正しい在り方」を選ぶなら、さ
ソウマ : 君が街を出る日に、もっときっぱり断ち切れば良かったんだ。
ソウマ : 装備の提供とか、グリスの貸出とか、繋がりを持ち続ける必要も無かった。
ロゼ : ……
ソウマ : …例の見合いだって、別に断る理由、無かったしね。
ソウマ : ……でも、そうしなかったし。そうできなかったし。 そうしたく、なかった。
ロゼ : …………
ソウマ : ……だから好き、って言うには、曖昧だと思うかもね。
ソウマ : ……誠実ではない、とも思う。
ソウマ : ……だから、納得が行かないなら、こんな提案蹴っていいよ。
ロゼ : ……(膝を抱え、体育座りになって、しなだれかかって
ソウマ : 、。
ロゼ : ……やっぱ今日帰りたくない。(ぽそりと、隠れてワガママを言うように
ソウマ : ………ロゼさん。
ロゼ : 嫌うようなことは、したくないわ。 でも
ロゼ : ソウマにだって、ドキドキ、して欲しいし。
ロゼ : もっと見て欲しいし、
ロゼ : もっと意識……して欲しいし……
ロゼ : ……曖昧なまま、悠長に4年間待ってるわけにはいかないわよ。
ソウマ : ………
ロゼ : 私は……その、付き合いたい、って……思ってるけど
ロゼ : ソウマにも、ちゃんと……そう思って欲しいし………
ソウマ : ……、そう思う為に、ボクには年月が必要なんじゃないかと思ってるんだ。
ロゼ : ……アピール禁止ってこと?
ソウマ : ……今の君と、…そういう関係になったとして、きっと、罪悪感の方が勝ってしまうから。
ソウマ : …… 健全な範囲で……。
ロゼ : オーケー。それで手打ちね。(あっさりと。 …この手の交渉術は貴族文化の為せる技なのか、元からか。
ソウマ : 、… いいんだ?(窺うように 拍子抜けというよりは、傷付けていやしないかと
ロゼ : ……わかってるつもりよ? 罪悪感と付き合ってほしいわけじゃないし。
ロゼ : いいのよ。 本質的には変わってないワケだし。
ソウマ : ……。
ロゼ : いっそ脈が希薄なら責任感の強いソウマ相手に既成事実でもぎ取るか、って話が
ロゼ : 脈がないわけじゃない、って言うなら、その、4年間はチャンスずっとあるみたいなモノだし?(何か政略婚論言い出した
ソウマ : …… まー、平たく言うとそうなるか。(なんかもう苦笑して
ソウマ : (まあ、本人的にはチャンスも何も…なのだが。
ロゼ : そうよ。 だから、今日は、帰らない。 手も出さない。(OK?と無茶な合意を求めて
ソウマ : …飲み物、お代わり入れようか。(ん、と頷く どうやらこちらもそういう心算だったようで
ロゼ : ん……  でも、もう少し後で(ぐりぐりと頭を寄せて
ソウマ : 、、 ……
ソウマ : 健全な範囲で……ね。(寄せられた頭に反対側の手をそっと遣って、ぎこちなく撫でる
ロゼ : ……ん……(くすぐったそうに、嬉しそうに
ロゼ : ……少し、安心したわ。
ロゼ : …身を委ねるつもりだったけど……緊張は、してたし(安全圏を確保できたからか、リラックスしているのが判る
ソウマ : ………全くもう。(やれやれと
ソウマ : やっぱり危なっかしいんだから…。
ロゼ : ……ホンキよ?(む、として
ソウマ : …解ってるよ。だから余計に、だよ。
ロゼ : ソウマだから、よ。(仕方ないでしょ、と
ソウマ : 、……
ソウマ : ………そっか。
ロゼ : ……ええ。
ロゼ : だから、仕事で疲れたり、辛いことがあったりしたら…… いいわよ、ソウマなら。
ソウマ : ………。。
ロゼ : いやそれは……って? じゃあ、添い寝とかで。それなら良いでしょ。(限りなくボーダーが曖昧なようで
ロゼ : (自分の体すら手札の一枚なのは貴族の所以か。 それとも向こう見ずの恋する乙女が故なのか。
ソウマ : ……本当に解ってるのかな……。(先が思いやられるな……と
ロゼ : (彼の受難は、始まったばかり――
ロゼ : ……ねぇ、ソウマ。(何かもう彼の胸板を枕か背もたれにしたままで
ロゼ : (やり過ぎてる自覚はある。けど、今日ぐらいは、許して欲しい。きっと判ってくれる。
ロゼ : (そんな日が、今後ままありそうな気もするけれど――だって――
ロゼ : ……ね。   好き。
ロゼ : (――僕らと私達と恋は はじまったばかりだから。
ロゼさんが退室しました
ソウマさんが退室しました