マリアさんが入室しました
紫水さんが入室しました
マリア : (―――聖都グランシス、東。
マリア : (海沿いの切り立った崖の上、開けた丘地。靄がかった水平線を一望できるその場所に、
マリア : (聖護守家の墓地がある。
マリア : (抜けるような青天の空に、海からの少し肌寒い風が吹き抜け、短い草地を揺らす。
マリア : (―――真新しい白の墓標の前に屈み込む女性。 平板状の石の上には、花束が置かれている。
マリア : … (瞑目し、祈りを捧げるように俯いて。
紫水 : … (同じように瞑目し。
紫水 : (祈りを捧げるように俯く。
マリア : …… (やがて、ゆっくりと立ち上がり、顔を上げて
マリア : … おまえには、随分と世話になりましたね。(空の墓標を見下ろしながら、傍の男に声を掛ける
マリア : こんな、最後の後始末まで手伝って頂いて。
紫水 : …。いえ。
紫水 : …………。(風で凪いでいる海を見つめて。
紫水 : 綺麗な、場所ですね。
マリア : …(海の方に視線を遣って
マリア : 墓地とはそういうものでしょう。 …成るべく、静かに安らげる、美しい土地に、と。
マリア : …まあ、それは弔う側の気持ちに他なりませんが。(ふ、と自嘲気味に笑んで
紫水 : ————。(歩いて万里愛の横へ
紫水 : …………………
マリア : …………(隣を視線だけで一瞥するが、すぐに海に戻して
マリア : ……グランシスへの警護任務は、これにて終了です。
紫水 : ……
紫水 : ………、ありがとうございました。
マリア : 結局着いた後も、色々と手伝って頂きましたが。 …これで本当に、お前は自由よ。
マリア : 何処に行き何をするも、お前の心のまま。
紫水 : 自由。
紫水 : 「守るべきものの為、己の全てを投げ出すべし」。
マリア : … 蒼菖蒲家の家訓ですか。(隣を見遣って
紫水 : ……ええ。
紫水 : そういう家に生まれついたので、憧れたこともありました。
紫水 : ですが、いざそうなると。
紫水 : とても困りますね。(爽やかな笑みを浮かべて
マリア : 生まれついての従者らしい言葉ですね。 まあ、気持ちは解らなくもありません。
マリア : 私も今聖護守家の当主でなくなったら、何をしていいものか些か迷うでしょうからね。
紫水 : …いえ。
紫水 : …本当は何をしたいのかもう決まっているのです。
マリア : …。
マリア : …では、何が困ると言うの?
紫水 : …。
紫水 : (考え込む
紫水 : 自由であるからこそ、
紫水 : …考えなければならないことも増えるのかもしれません。
紫水 : ————
紫水 : …。貴方を一人にはできません。
紫水 : それが私の今の気持ちです。
マリア : …、(ピク、と
マリア : ……それは、
マリア : この戦いを終えて、私が天涯孤独の身だと判ったから、かしら。
紫水 : ……………。いえ。
マリア : (先の戦いで、妹を手ずから葬った。 …そして、公表していないだけで、両親はとうの昔に亡くなっている。
マリア : (■■■■によって、命を奪われた)――…では?
マリア : 雨月藍玉那菜葉の言葉を借りる訳ではありませんが。…私は、一人でやって行けぬほど弱くはありません。
紫水 : ……、
紫水 : フム。
紫水 : (考え込んでいる。
紫水 : …成程。これは恐ろしい。(何やら一人で納得した。
マリア : ………如何しました?
紫水 : …………、
紫水 : そうですね。万里愛様といる時が、このクルーズで一番楽しかったからです。
紫水 : 那菜葉様には申し訳ありませんが…。
マリア : ……、。
マリア : ……(……決戦前の彼のあの言葉を、覚えていない訳がない。
マリア : (それが迂遠に巡って、どういう意味合いになるか、解らない筈も―……)…もう少し、
マリア : 明瞭に述べなさい。 …私の心に響かすには、
マリア : …生半可な言葉では、足りなくてよ。
紫水 : …………………
紫水 : ………………………………
紫水 : …成程。
紫水 : …………………………………………
マリア : ………何故、
紫水 : ……………………………………………………………
マリア : 私と過ごすのが楽しかったの?
マリア : 私を一人にするまいと思うの?
紫水 : …ご期待にそえる言葉ではないかもしれませんが、
紫水 : …「恋とは恐ろしいものだ」という言葉の意味が、あなたと会ってはじめてわかりました。
マリア : …………、
紫水 : …。あなたを愛しています、聖護守万里愛。
マリア : ――――……
マリア : …………(彼らしい、不器用でまっすぐな言葉。 まっすぐに、堂々と受け止める心算だったのに
マリア : ………………えぇ、(伏し目がちに逸らし気味に、片手で頬を押さえて
紫水 : …、これから先、あなたと色々な未来を見ていきたいです。
紫水 : (照れ隠しに穏やかに微笑んで
マリア : ……知っています。 ………知っていました、よ。(白い頬を染めて、
紫水 : —————————…
マリア : ………言っておきますが、私は、 …聖護守の当主ですよ。(ぽつりぽつりと
紫水 : (…表情を見たのち一瞬、紫水の意識がくらっと遠のく。
紫水 : (不穏、不穏と心の中で呟いて冷静を保つ。
マリア : 私にこのような言葉を告げるのです、…その重みは、解っていますね?(自分で促しといて じ、と見上げて
紫水 : …、ええ。そのつもりです。
紫水 : …一緒にいることを許してくださるならば、
紫水 : …横にいる人間としてふさわしくなれるよう、どのような努力も惜しまないつもりです。
マリア : ………
マリア : ……ならば、私も。 お前に本気で応えます。
紫水 : …。
マリア : ……あの時私は、「本気」でお前の呪いを解きました。
マリア : …お前を必要としていました。力も、心も。 私にとって、お前の存在は、それだけの…(何か言葉を選ぶように、慣れてない風に
紫水 : …………………
紫水 : ———————————
紫水 : ……、
マリア : ……、、。。(すぅ、と息吸って)……ああ、いけませんね。(頭抱え気味に
マリア : 適切な言葉が構築できません。……余り得意では無いかもしれないわ、この分野は。(片手で目元覆って
紫水 : …フム。
紫水 : …私も得意ではありませんので、問題ありません。
紫水 : (と言いつつ、「お前の存在は、それだけの」が脳内でエコーしている。
紫水 : ………………、(考え込んでいる。
マリア : …それでは私が納得行きません。(プライド!完璧主義!
マリア : ………、(同じく考え込んで
マリア : ………、とにかく。
マリア : ……、当主としての私は、この先成すべき事が山とあります。決して平坦な道を歩む事は無いでしょう。
紫水 : ……、、
マリア : …それでも。 お前は、…私と共に生きてくれると言うのね?
紫水 : …!
紫水 : …、勿論です。
マリア : …、(口元緩めて微笑み
紫水 : ……。貴方がいなければ。
紫水 : 生きた心地がしません
紫水 : (ふふ、っと笑う。
マリア : …まあ。随分と言いますね? …そうね、では、
マリア : (紫水に向き直って、その片手に手を伸ばし、引き寄せて
紫水 : ……!
マリア : お前のいのち、私が貰い受けます。 (手の甲に口付ける
紫水 : ————————
紫水 : ………
紫水 : 不穏也
紫水 : (聞こえないほどの声で。
紫水 : …。
マリア : ――……(唇を離し、顔を上げて
紫水 : …、
紫水 : …貰い受け、られました、
紫水 : ———————(顔を上げた万里愛と目が合う
マリア : …(目を細めて微笑んで
紫水 : ——————、
紫水 : (何だかくらくらしてきた。
紫水 : (…。まさか、幻術。
マリア : …………では、戻りましょうか。(風の吹き抜ける中、踵を返して
マリア : 早速、お前の部屋を設えなければなりませんからね。
紫水 : (…。幻術ではなかったか。
紫水 : 平穏也。
紫水 : ………。では。(万里愛の後をついていく。
マリア : ……何を呆けているのですか?(半目気味に振り返って
紫水 : いえ、あまりにも威力が高かったので。
マリア : …?(威力…?
マリア : …全く、しゃんとなさいな?(腰に手を当てて、再び進路を向いて
マリア : 何れ私の家族になるのですから。
紫水 : (一瞬振り向き、旅の仲間を思う。
紫水 : (さらば、クルーズ。覇海進轟天号。みんな。
紫水 : (また会おう。
紫水 : ………
紫水 : (前に向き直り
紫水 : ……家族。
紫水 : (自分が家族を持つことがあるなど、想像したこともなかった。
紫水 : …、ふふ。
紫水 : 生きるというのも、悪くないですね。
紫水 : (そして歩き出す。
紫水さんが退室しました
マリアさんが退室しました
最終更新:2021年03月06日 00:02