テーゼ : (夜は更に更け行き
テーゼ : (深夜。
テーゼ : (ポウフェナの一等地
テーゼ : (その中でも一際広い敷地を誇る屋敷
テーゼ : (ヴェルデュール家。
テーゼ : (……の、
テーゼ : (ここは、息女の一人の私室。
ヴィヴィ : ………
テーゼ : ――……はは、
テーゼ : 流石に、随分遅くなっちゃったな。
ヴィヴィ : それは、そうだけど。
ヴィヴィ : 置いてきて良かったの?
ヴィヴィ : (あんな危険人物を置いたまま、運否天賦に任せて、帰ってしまっても、良かったの?
ヴィヴィ : (という眼差し
ヴィヴィ : (疑問…というより、苦言に近い
テーゼ : うん……(ヴィヴィの言いたい事が、分からない訳では無い。
ヴィヴィ : ………
ヴィヴィ : 別に。
テーゼ : …そうだね。ヴィヴィが心配に思うのも解るよ。
ヴィヴィ : あなたの家の事だから、とやかくは言わない。けど。
テーゼ : ソフィアさんは、俺の目から見てもなかなか…激しい人だしね。
テーゼ : …でも…なんだろうな。あの人は……
テーゼ : ……フレデ兄さんの事が、きっとものすごく好きだから。
ヴィヴィ : ・・・はぁ。(あまりにあんまりな理由に思わずため息
テーゼ : 「俺達の家」の都合で、遮ったりしたくないな…って思っちゃったんだ。
ヴィヴィ : ………。
ヴィヴィ : 相手を選んでも良いとは思うけど。
ヴィヴィ : (テーゼの理由を聞いても反応は冷ややか
テーゼ : 今までずっと、家ぐるみで…兄さんに関わる相手を選んできたようなもんだよ。
テーゼ : だから…って言うのは極端かもしれないけどさ。
ヴィヴィ : 極端ね。
テーゼ : …うん。でもさ。
テーゼ : 会って、関わって、上手く行くか行かないかを決めるのは、…少なくとも俺やユフィーア姉さんじゃないと思わない?
ヴィヴィ : 止めないし、“御者”としてなら協力だってしたけど。
ヴィヴィ : ………賛同は出来ないわね。
テーゼ : …俺はフレデ兄さんの事を、昔からそんなに……
テーゼ : 手取り足取り、守ってあげないといけないような人だとは……思ってないんだよね。
テーゼ : 兄さんの「弟」は世界で俺一人だから……俺以外の誰も、もしかしたらそう思ってないかもしれないけど。
ヴィヴィ : ………まるで
ヴィヴィ : 他の兄弟はそう思ってる。
ヴィヴィ : いや、なんでもない。
テーゼ : ………
ヴィヴィ : (後ろをむいて部屋を歩いて
ヴィヴィ : 嫌な言い方だった。反省するわ。
ヴィヴィ : (ウォークインクローゼットの中に入っていって
テーゼ : …ううん。大丈夫だよ。
ヴィヴィ : (扉を閉める
ヴィヴィ : 守ってあげないといけないと思ってないからって、
ヴィヴィ : 病み上がりの兄さんに狂人をぶつけるなんてスパルタね。
ヴィヴィ : (扉越しにズケズケと言いながら
テーゼ : ……流石に荒療治だって自覚はあるよ?…
テーゼ : …そこまで賛成できないのに、手伝ってくれたんだよね。ヴィヴィは。
ヴィヴィ : “御者”としてね。
ヴィヴィ : (言いながら御者のブーツを脱いで床に転がす音が扉越しに聞こえる
テーゼ : うん。…それでも嬉しかったよ。
ヴィヴィ : それに。嫌いな事ほど叶えちゃう性分だから私。(結構嫌味ったらしく自虐風に
テーゼ : ……。もしかして結構怒ってる? …(ぁ、と色々思い返し
ヴィヴィ : うん。
テーゼ : …うん。
ヴィヴィ : (アッサリと。良い淀みもせずに認める。
テーゼ : 結構……怒ってるよね?(苦笑して
ヴィヴィ : うん。
ヴィヴィ : そうよ。
ヴィヴィ : (ウォークインクローゼットの中でカラカラと僅かに聞こえるハンガーなどの音
テーゼ : …。
テーゼ : ……あの娘は兄さんの事しか考えてないと思うよ?(触れるのも憚られる事だが、突っ込んでいくスタイル
ヴィヴィ : …何?
ヴィヴィ : 別に貴方が全裸の誘惑に負けて、言う事を聞いたんだとは思ってないけど、
テーゼ : …あぁ、いや。そこはわかってるんだけど…
ヴィヴィ : (衣擦れ音。
ヴィヴィ : じゃあ。何?
ヴィヴィ : (冷ややかな口調で質問する
テーゼ : …。
テーゼ : 距離近かったかな?って…。
ヴィヴィ : テーゼ。
ヴィヴィ : ・・・怒るよ?
ヴィヴィ : あんな奴に私が嫉妬してるって言いたいの?
テーゼ : …(いやさっき怒ってるって……
テーゼ : …怒ってる理由がそれだけじゃないのは解ってるよ。
ヴィヴィ : ………
テーゼ : でも……(立ち上がって、ウォークインクローゼットの方まで歩いて
テーゼ : …「それだけじゃない」「だけ」…でも無いんじゃない?(入口の前に立って
ヴィヴィ : …はぁ。(扉越しに聞こえるぐらいのため息をついて
ヴィヴィ : ………
ヴィヴィ : 結局もう結果次第よ。
ヴィヴィ : アレを降ろしてきちゃったんだから。なるようになるしかない。
テーゼ : …
ヴィヴィ : ………私やお姉さんの言う事をまるで聞かずに、あんな狂人の”望み“が通ったのは癪に障るけど。(明らかに納得いってない声で。
ヴィヴィ : 貴方はずっと、お兄さんを打破できる機会を探してたんでしょう?
テーゼ : ………うん。そうだよ。
テーゼ : あんな事件があって、こんな事になる前から、ずっと。
テーゼ : 俺はこうしたいって思ってたから……
ヴィヴィ : ………
ヴィヴィ : 身勝手な話。
ヴィヴィ : でも。
ヴィヴィ : そんな身勝手な話に勝手に割り込んでイライラしている私の方がよっぽどね。
テーゼ : ……ああだこうだ言ったけど、結局、俺は俺の”望み“を通しただけなんだ。
テーゼ : ……ううん。ごめんね。
ヴィヴィ : 彼女の“望み”じゃなくって、
ヴィヴィ : 貴方の“望み”を通す為に
ヴィヴィ : あの場を利用した。って
ヴィヴィ : …言いたいのね?
テーゼ : …………
テーゼ : ……なんだか、そう言うと、俺って最低な奴だなって気がするな。(はは、と
ヴィヴィ : さあね。
ヴィヴィ : (いじわるな言い方といじわるな返答をしながら
ヴィヴィ : (ウォークインクローゼットを開けて出てくる
ヴィヴィ : (緑色のシースルー
ヴィヴィ : (ドレスのような淡い上品さを残したネグリジェ
ヴィヴィ : 私はむしろ少しだけ安心したけど。(半仮面を押さえて位置を戻しながら
テーゼ : 、うわ――
テーゼ : ……… えっ。 そんな事ある?
ヴィヴィ : いくらなんでも…あんな奴の“望み”に、私と姉の説得が負けたとは思いたく無かったから。
ヴィヴィ : 貴方自身の“望み”なら仕方ないわ。
テーゼ : …………、
テーゼ : …極端で、正気じゃ無くて、絆狂いの、最低かもしれない望み…………でも?
ヴィヴィ : ………
ヴィヴィ : 仕方ない。わね。
テーゼ : ………そっか。
ヴィヴィ : うん。仕方ないわ。
ヴィヴィ : それが貴方自身の“望み”だったなら。
テーゼ : ……
ヴィヴィ : (狂人全裸女に説得力合戦で負けたとあっては、仮にも彼女と姉の立場が無い
ヴィヴィ : あ。
ヴィヴィ : でも。勘違いはしなくていいわ。
テーゼ : …??
ヴィヴィ : …あの場所は普段と違う世界だったから。
ヴィヴィ : (『それが私のお願い』は『望まない世界』を打ち消していたからーーー
ヴィヴィ : 貴方の事が嫌いになったワケでは無いわ。
テーゼ : 。 …。あぁ、… そっか。 うん…(遅れて、色々逆算して、納得して。
テーゼ : ……ちゃんと伝えてくれるんだね。ヴィヴィ。(ふふ、と、嬉しそうに困り笑みで微笑んで
ヴィヴィ : ………仕方なく、ね。
ヴィヴィ : (微笑みからちょっと視線を布団に逸らして、またテーゼに戻して、見つめ返す
テーゼ : …うん。でも嬉しい。(…もしかして、結構凹んでるのバレてるのかな。なんだか恥ずかしいけど…
ヴィヴィ : ”あんなの“にいつまでも私たちが乱されるのも癪に障るし。
テーゼ : …また君の事怒らせてるし、呆れさせちゃってるけど……(ヴィヴィの視線を受けて、見つめ返して
テーゼ : ……まだまだ俺と、仲良くしてくれる?
ヴィヴィ : ………何その言い方。
ヴィヴィ : 怒るよ?
ヴィヴィ : 手を繋がなきゃわかんない?(片手開いて差し出して
ヴィヴィ : (逆の手でネグリジェの裾を引っ張って見せて
テーゼ : …。。。(分かんない事も、無い、と思う…けど…
テーゼ : ………
ヴィヴィ : ………
ヴィヴィ : …私はわかってるよ。
ヴィヴィ : (あの。
ヴィヴィ : (ウォークインクローゼットを開けた時に
ヴィヴィ : …貴方が私に見惚れてたのとか。
ヴィヴィ : (言った後。ちょっと恥ずかしくなって。テーゼを通り過ぎてベッドの方へ歩いてく
テーゼ : ……、、、それは結構恥ずかしいな…(頬に手当てて
ヴィヴィ : 私だって…自分で言うのは恥ずかしい。
テーゼ : ……ちょっと。 ……今は俺、あんまりわかんなくなってるかもしれなくて…
ヴィヴィ : ふぅん。
ヴィヴィ : (ベッドサイドに立って、テーゼの方を振り向いて
テーゼ : …………(言わなくても伝わるものに頼るのはズルいかな。…でも…
ヴィヴィ : …(両手を前に翳して
ヴィヴィ : 触って。
ヴィヴィ : (短くそう言って、手を出したまま。ぽすんっとベッドに座る。
テーゼ : 、 。
テーゼ : ………うん。(そっとベッドの傍に歩み寄って
テーゼ : ……ごめんね。…ありがとう。(両手に両手を伸ばして
テーゼ : (繋ぐ。
テーゼ : (―――『リンクルリンク』。
最終更新:2023年11月26日 19:35