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世界中の誰よりも [クチナシ ラフト メルク]

港 : (―――サンガル地方
港 : (都市サンガル最寄りの川港。
港 : (乾いた土地に流れる大きな川の傍にあるその港は、かつてはかのクルーズツアーも寄港した場所だ。
クチナシ : ………。
クチナシ : (港の桟橋の傍に立ち、緊張した面持ちで川面を見つめている、女性。
クチナシ : ……(小さな船影は遠くから、川の流れに沿い、徐々に港に近付いてきている
クチナシ : (あの船に、乗ってきてるのね。
クチナシ : (連絡の通り、なら……
クチナシ : (そして、小型の船が川面を下ってきて、
クチナシ : (桟橋の所で停船する
クチナシ : …、!
クチナシ : (船の入口に通路用の簡易な橋が渡され、
クチナシ : (一列に並んだ中の乗客がぞろぞろと下船し始める
クチナシ : …。(降りて来る乗客の様子をじっと見ながら、待っている
ラフト : (きょろきょろと当たりを見回しながら、男が降りてくる。
ラフト : (同行している赤髪の女性がラフトの肩を叩き、梔の方を指差す。
クチナシ : …ぁ。(見覚えのあるニット帽姿が目に入り
クチナシ : ラ、 …。 …、
クチナシ : …、、、(声を上げて呼ぼうとして、躊躇う
ラフト : (足取りを早めて、クチナシの方に一気に歩み寄る。ウキウキしているのがバレないように。
クチナシ : …!、(こちらに近付いてくるラフトをどぎまぎした様子で見て
クチナシ : …、お、 お久しぶりです…!
ラフト : く、クチナシさん……っ!!!
ラフト : (やや息を切らしながら
ラフト : ほんとにクチナシさんだ…。ははっ…。
ラフト : うれしいなぁ…。
クチナシ : …ら、ラフトさん…
クチナシ : は、はい。。お久しぶりです…(同じ事を繰り返す
ラフト : ………っ!!!(一気に顔が赤くなる。そして、それを隠そうとする。
クチナシ : …!…(こちらも色々テンパってて落ちつかない様子だ
クチナシ : …え、えっと。…会えましたね…
クチナシ : なかなか、旅のルートが重なる事も無いだろうなと思ってたので…、…その、
クチナシ : ……良かったです…。
ラフト : ……うん。それに、
ラフト : 前の場所と同じだね…。
クチナシ : …そう、ですね…。 凄い偶然…
メルク : ……。ごほん。
メルク : (後ろで立っている赤髪のエルフ
メルク : ……なるほど、こういう人なのね。梔あずみさん。
クチナシ : …、ぁ。。(さっきすごく気になってた筈なのに一瞬で意識から外れてしまった方…!(メルクの方を見て
クチナシ : …す、すみません。ご挨拶が遅れて。(ペコリとメルクに頭を下げて
クチナシ : 私、梔あずみと申します。あなたは、ラフトさんの……?
メルク : はじめまして。ラフト=ネプトゥムの執筆担当、メルク=リヴィウスです。
メルク : 仕事のパートナーよ。もちろん、恋愛感情とかはないわ。ちょっとからかってやろうかなって思ったけど……
メルク : ……。(ちょっとからかってやろうかなはまずかったかなと少し思案する。
クチナシ : ぁっ。あなたが…(ラフトとの過去の会話を思い起こし
クチナシ : ラフトさんの冒険記を執筆されている方…
メルク : そう。職業:亜人幻獣研究家見習兼古生物研究者見習クチナシさん。
クチナシ : 、、…(なんだろう、詳しいのね。ラフトさんにもそこまで話したかしら…(内心困惑しつつも
メルク : それでだけど。私もそろそろいかなきゃなのよね。
クチナシ : あの、冒険記、拝読しています。とても…面白く読ませていただいてます。
クチナシ : 、あ、そうなんですね。すみません。
メルク : ………(顔を赤くする。読者のダイレクトな反応を見ることはほとんどない。
メルク : ……う、うん。おもしろいん、だ。ふぅーん……。
メルク : ……おほん。この旅の目的は二つあるの。一つはあなたがどんなやつか一目見ること。
メルク : ……もう一つは弟に会うこと。
クチナシ : …、そ、そうだったんですね? …弟さん?
メルク : ……ええ。死に別れたと思ってた弟。なんと盗人崩れになってたのよね…。
メルク : それでラフトにはここまで案内してもらって。
クチナシ : …そ。それは。……大変ですね……(しみじみ
メルク : あとは別にボディーガードを雇ってあるの。
メルク : ……たいへん。たいへんなのかなぁ。あんまり実感はないケド。
メルク : そういうわけで親愛の証に。(グランシス土産の聖樹クッキーを梔に渡す。
クチナシ : 、。(両手で受け取り
メルク : ……ラフトをよろしくね。
クチナシ : ぇ。ぁ。ありがとうございます。(良いんですか?という感じで
メルク : うん、置いていくから。
メルク : ……じゃあね。
メルク : (有無を言わさず、すたすたと去っていく。
クチナシ : …、お、お気を付けて…!(去っていく背に
クチナシ : …。 行っちゃった。
ラフト : ……………。
ラフト : …いつもああなんだ。あまり気にしないでね。
クチナシ : ……。は、はい。
クチナシ : でも……良い方ですね。こんなお土産までいただいてしまって。
ラフト : …そうだね。悪意のあるタイプじゃないよ。
ラフト : ……。
ラフト : (メルクが去り、二人になったことに動揺する。)
ラフト : えっと。……。うん…。
ラフト : (会話を一生懸命に考える。
クチナシ : ……、。はい…。(同じく急に話題に困って
ラフト : あれからいっぱい手紙のやりとりをしたね。
ラフト : ……。あっ、いっぱいではないかな。
クチナシ : …ふふ。どちらも旅をしていると、なかなか手紙も届きませんからね。(笑って
ラフト : うん。わりとのんびりしてたね。
クチナシ : でも…その分、一通一通届くのが楽しみでした。
ラフト : ……。あぁ、座る?(運河がよく見渡せるベンチを手でしながら。
ラフト : (……。マズいな。
クチナシ : …、そうですね。ラフトさんも荷物がありますしね。
クチナシ : 座りましょう。。(横長のベンチに近付いて、腰掛ける
ラフト : (冷静になれそうにないぞ。
ラフト : ……あ、あぁ。(遅れて同じく腰掛ける。
ラフト : ……。うん。
クチナシ : ……。(こちらもどことなく様子がおかしい 落ち着けないようだ
ラフト : なかなか、会う機会もないから。
ラフト : ……、その。言っておきたいことがあるんだ。
クチナシ : …そうですね。あれから半年…いや、もう9ヶ月くらいでしょうか。
ラフト : ……まだ9ヶ月な気もするし、もう9ヶ月な気もする。
クチナシ : 、ぁ、はい。(顔上げて、ラフトの方を向き直して
クチナシ : …言っておきたい事、…ですか?
ラフト : (クチナシと目があう。
ラフト : う……。
ラフト : ……うん。
クチナシ : ……、……。
クチナシ : な、 何………でしょう…?
ラフト : ……いろんなところを旅して、いろんな人を見てきたんだ。(そっと目線を外しつつ
クチナシ : ……、…そうなんですね。
ラフト : いろんな人がいた。きっとクチナシさんもそうだと思うけどね。
ラフト : ……。
クチナシ : ……そう、ですね。……(わたしも、旅の中で色々な人に出会った。人間を目的にした旅ではないとはいえ。
クチナシ : ……(でも……
ラフト : ……。でも、僕にとって。
ラフト : (マズいぞ!とても恥ずかしいことを言っている気がする!
ラフト : (ええい、ままだ!
ラフト : ……クチナシさんみたいな人はいなかった、かな。どこにも。
クチナシ : ……、ぇ。
クチナシ : ……。……
ラフト : ……。う。(赤面しながら見ないようにしていたクチナシの顔をうっかりと見てしまう。
ラフト : ……そ、その。
クチナシ : ………(何、だろう。はっきり意味が掴めてる訳じゃない、けど……
ラフト : クチナシさんといる時が、一番自分らしくいられると言うか…。落ち着くというか…。
クチナシ : (すごく照れくさい…………!(俯き気味の横顔 頬がじわじわ赤く染まっていく
クチナシ : …、!…、ぇ、ぁ、………(ますます赤くなって
ラフト : (かわいいな。(赤くなるクチナシをぼんやりと見て。
ラフト : ……(この人を自分だけのものにしたいという、感じたことのない占有欲。
ラフト : (……マズイな。
クチナシ : ………、、、ら、ラフトさん… その…(耳まで真っ赤になってぎゅっと目を瞑る
クチナシ : 急に黙ってしまうと、 その、逆に………、、
ラフト : ……。
ラフト : …。ごめんね。(何やら懐から取り出すと。
クチナシ : …え?
ラフト : (クチナシの中指に何かが嵌め込まれる気配が。
ラフト : ……。結婚を前提に付き合ってほしいな。
ラフト : ……。
ラフト : あ、いや。
ラフト : 前提じゃなくてもいいんだけど……。
クチナシ :    。(目をまんまるに開くと
ラフト : 。。。
クチナシ : (己の手―中指が視界に入る
クチナシ : えっ   あっ     えっ?
ラフト : あっ、えっと……。(浮かれて奇矯なことをしてしまった自分にげんなりしている。
クチナシ : い、いえっ  その、   驚きすぎて   えっ、、、(己の中指を見つめて
クチナシ : い、
ラフト : ……旅人同士だし…。お互い生活をそこまで変えなくていいかなって。ハハ。
ラフト : いや、違うな…。
クチナシ : ・・・
ラフト : どうしようもなく好きになってしまったんだ…。クチナシさんのことが…。
クチナシ : ……… 
クチナシ : …ぃ、
クチナシ : いいんですか、わたしで………?
ラフト : (いや、だよね…。
ラフト : えっ。
ラフト : ……も、もちろんだよ。
クチナシ : ………っ
ラフト : ……僕にはクチナシさん以外にいない。
クチナシ : ………う、嘘。(指輪の嵌っていない手を頬に当てて
クチナシ : どうしよう、……夢みたいです……
ラフト : ……。あれ?
ラフト : (ひょっとして。なんだかうまくいった気がするぞ?
クチナシ : ………そ、そのっ わ、わたしもっ、
クチナシ : ……手紙が届く度に、とても嬉しくて、すごく胸が躍って、……何度も読み返して、
クチナシ : 久しぶりに会えると分かって、もう何日も前から、ずっと………
ラフト : ……っ!
クチナシ : ………ラフトさんに会えるのを、心待ちにしていたんです。(恥ずかしそうに俯いたまま
クチナシ : ……だ、だから、 その、、えっと。先に言われてしまったけど、、
クチナシ : ラフトさんが言ってくれなければ、まだ全然、言えなかったかもしれないですけど、……
クチナシ : ………、わたしも、
ラフト : ………(クチナシを見ながら、ぼーっとしている。
クチナシ : ……… わたしも………、、、
クチナシ : っ、(意を決したように、ばっとラフトの方を向いて
クチナシ : ラフトさんの事が好きですっっ
クチナシ : あちこち旅をして、、、色んな人に出会っても、、、
クチナシ : 誰よりも……あなたに会いたかったですっ!
ラフト : ゎ(声にならない小さな驚きの声を上げる。
クチナシ : 、、、(耳まで真っ赤になって、泣きそうになりながら言い切る
ラフト : …………。ボクも。
ラフト : ……誰よりも好きだよ。うん。
クチナシ : ………、、、は、はい、、(結局恥ずかしくなって俯いて
クチナシ : ……そ、の。
クチナシ : ……ですから、ぜひ。 ……よろしく、お願いします。(小さな声でぽつぽつと
クチナシ : ………わたしと、
クチナシ : お付き合い、 ………して、ください…
ラフト : ………。わぁ。
ラフト : ………うん。えっと。
ラフト : よろ、しく?なのかな……。
ラフト : ……うん。よろしくね。
クチナシ : ……は、はい。…よろしくお願いします。(繰り返し
ラフト : ふーーー。
ラフト : ……。ちょっとかわいすぎるな。クチナシさんは。(ボソっと。
クチナシ : ……… えっ  へっ??
ラフト : ……。へっ??(しまった。うっかり口に出していた。
クチナシ : ちょ、ちょっと、、お付き合い…だからって、いきなりすぎます…!(真っ赤な顔で慌てて
クチナシ : ぁ。 い、いえ、、、決して嫌な訳では無いんですけど…!
ラフト : ……ご、ごめんね。
ラフト : ……。えっと、その。
クチナシ : い、いえっ 嫌なわけではなくて……!
クチナシ : その…… まだ、耐性が………
ラフト : ……。耐性。
ラフト : じゃ、じゃあ、お互いがんばろう?
クチナシ : 、 …は、はい。 すみません…
ラフト : (あぁ、よくわからない会話だけど。
ラフト : (こういうところがいいんだろうなぁ。
クチナシ : ふ、ふつつかものですが……?
ラフト : ……。大好きだよ。(目を見て
クチナシ : ふぇっっ
クチナシ : あ、あれ??(頑張るって…??
クチナシ : わ……ゎ、、(そういう方向…??
ラフト : ……。と、とりあえず。
ラフト : ご飯でも食べようか。
クチナシ : …っ、 は、はい。
クチナシ : …でも、…その前に…、、
ラフト : ……?
クチナシ : わ、
ラフト : わ、
クチナシ : わたしも大好きです…!(必死な様子で涙目でラフトを見つめて
ラフト : ……うう!!
ラフト : はーーー……。(立ち上がったが、またベンチにへたり込むように座る。
クチナシ : ………、、、(こちらもなかなか動き出せず
ラフト : (この後もご飯に行かず、しばらく同じような言葉を二人は交わしていたという。
ラフト : (ラフトの仕事仲間のメルクは二人の行く末を気にしていたが、
ラフト : (途中で飽きて帰ったという。
最終更新:2024年06月11日 07:51