BC_Log
BC_1
Verce_Central_1
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空は青かった。 そんなこと、誰かが言っていたな。 忘れてしまった。 本で読んだんだっけ。
そら。そら。空。 青い空。
私は浮遊して、登っていく。 どんどん。どんどん。
青い空。くも。 たくさん、たくさん浮かんでいるはずなのに、最上階のみえない高い高い建物。 このビルのことも、本で読んだこと、あったかな。 それも忘れてしまった。 「そうして登っていくと…。」 宇宙、別の星、 ……別の次元? そんなことを考えていると、
「あれ?」 時間がとまったみたいな感覚。 青かった空は薄紫。その奥に、暗い暗い、あれは宇宙かな。 本で読んだこと___。
「わ、わぁぁ!」
体が落ちていく。 突然、重力が元に戻ったみたいに。 「ひゅー」 と、言えるほどの余裕なんてないはずなのに、なぜか変な余裕が出てきて、それでも重力は反比例するようにどんどん強まっていくみたいだ。
「すとーん」 ぶつかっちゃう! と、思ったけれど、重力がだんだんやさしくなって、落下の衝撃はなさそうだ。 私は無事、ゆっくりと降り立つことができる。すとーん。と、もう一回呟いてみる。 緑色。たくさん。生きている、植物たちが広がっている地面。 青い空。風が少し吹いている。
ここは。 公園ね。 知っているわ。 降り立ってわずかに足跡をつけた地面から、土の香りがする。 ここは…。そう、
ヴァースの中心都市 「セントラル」 中心の都市の、中心にある公園。 さらにその真ん中には…、すごくすごく大きなビル。 たくさんのお店、たくさんの人。 たくさんのものがあって…。 どうして知っているのかは、忘れてしまったけれど。 どうして忘れているのかも、忘れてしまったけれど。 そんなこと、今はどうでもいいわ。
だって、私が探しているものは…。
風が吹いて、
「あ」
私は、その風の示すほうを見た。 「endless battle」
聞いたことのある、名前。 読んだことのある、文字。 きっと来たこともある…。 看板。
『---喫茶EB---』
世界中の強い人、変な人。あと別の世界の変な人と強い人。 そういう人が来る所。 知ってる。
ここなら、きっと。 私のこと、見つけられるかな。
ううん。 見つけられるに違いない。 不思議とそう思った。
そうして、また風が吹く。 青い空から。 緑の地面から。 「ようこそ」と聞こえたのは、きっと気のせいなんかじゃなくて。 私のことを、ここなら___。
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2024/11/11
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BC_2
Verce_Central_2
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ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!
ぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
「やや」
切り裂くような奇声を確かに聞いたにも関わらず、男の反応は淡白なものだ。人の驚きの前には衝撃があるものだが、男の神経回路はその衝撃をかなり軽減する性質をしているらしい。
「…びっくり」
一応、驚く。これが、男が生きる上で身につけた、世界への最低限の礼儀と尊敬であった。食物には感謝を。衝撃には驚きを。それだけのマナーである。
『あああああああああああ』 『あああああああああああ』
なおのこと、奇声は鳴り続けている。
これ以上、驚く礼儀もないが…。 それに、一応、食後のランニングコースはあと僅か、残っている。さして拘りこそないが、毎度のゴールは視界に入っている。そちらに向かうべきだろう。
『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』 『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
少し、悲鳴が静かになった。気がする、程度のものだが。 そうして男は、いつものコースに戻ろうと背を向ける。
『お腹すいたお腹すいたお腹すいた』 『お腹すいたお腹すいたお腹すいた』 『お腹すいたお腹すいたお腹すいた』 『お腹すいたお腹すいたお腹すいた』
背後から、呪詛が聞こえた。
『この噴水の水って栄養あるのかないやでもこんな人の多いところで飲んだらおかしい人だと思われるとは思うけどもう私にはこの噴水しかはははぶぶぶぶぶぶおみずおいしい』
呪詛だ。
呪詛は、男の得意分野に少し差し掛かっている。
『ははは 我空腹無料攻略したり』
そうしてその呪詛の語り手は、確実に何かに取り憑かれている。 男は、基本的に、頼まれでもしない限りは他人を助けることはしない。この呪詛が取り憑いているのは……、振り向いた視界の先で奇妙に踊る紅白の色彩を纏った女だけで、この土地ではそれくらいのことは単なる背景に過ぎない。 だから、男はしばし傍観し、それから戻ろうと考えた。彼もまた、あの女のように、少し奇妙で、かつ暇だったのだ。
暇人は他にもいた。人か、それ以外か。男にも少し判別に時間がかかるような、けれど一応、人間と呼んで差し支えのないような女性がひとり、公園に設立された喫茶店から出てくる。客に見えるが…。 そうして二人の女性は何やら話している。彼の耳には、具体的な単語は入らない。
「__ 」 「___ 」 「_ 」
『ァ…お腹すいたぁぁぁぁあああああああああああああ』 「_ 」 「___ 」
『口より食料を出しなァ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!』
暫くすると、男にも判別可能な音が聞こえてくる。もう少し近づこうか。それとも、傍観を続けようか。
「んん。なんか揉めてるね」
そう言って男は歩き出す。何か行動を起こす前に、独り言を言う癖は昔からだ。「口より食料を」と言うあの女性とは気が合わなそうだ。なぜなら。
「ねえ!ねえ!あなた!お腹すいているの??」 「それなら一緒にご飯にしましょう!ねえ!ね?」 『奢り?』 「私が出してあげる。」
男はやや早足になり、二人の中間、背後にそっと立って機会を伺う。 「ありがとう。じゃあ一緒に食べようね。」
タダ飯チャンスは見逃さない。
それが、ランニングよりも何よりも男が守り通している信条であった。
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2024/11/11
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BC_3
Verce_Central_3
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外が騒がしい。 まあ、それでも昔よりはずっとマシな待遇で働けているんだから、文句はない。服装はやや丈の短いエプロン。サイズがちょうどなかったらしい。それでも、文句はない。
「うれしいわ! うれしいわ! うれしいわ!」
嬉しいなら何よりだ。文句はない。この店_異次元喫茶EB(エンドレスバトル)には、喜んでくれる客ばかりがくるわけでもない。しかし、エンドレスバトルだなんて、今日が初日だから身構えていたが、一応、普通の喫茶店のようだ。メニューには定食やらファストフードまで多岐に渡るし、今のところは、だが。
「ETTIな売買場…」
ああ、何かとんでもない勘違いをしている奴がいる。しかし、文句はない。買う奴がいなければ、売る奴もいない。逆も然りだ。ちなみにここは、エンドレスバトルですよー、と、こっそり呟いてみる。
「いやでもそういうところは食料くらいは恵んでくれるだろうか?」
恵むというか、販売なのだが。いや、恵む事もあるのだろうか?とにかく勝手はわからない。なにせ、今日が出勤初日だからだ。
「___」 「_」 「みんなでご飯にしましょう!」
勘違いしている奴の周りに、さっきまで店内にいた奴と知らない奴が合わさって三人組を成している。さっきから汚れてもいない床のモップがけと拭かれるためにあるような誰も座らないテーブルをひたすら拭く作業だけしていて、正直飽き飽きしていた。
「さあて、初接客と行きますかな」
エプロンをつけたまま外に出る。店にいる時はなんとも思わないのに、この格好のまま外に出るとなぜだか気恥ずかしい気がするのは、もう暫く勤めていれば消えていく気分だろうか。
「おーおー。話は付きましたかお三方?」
できるだけ丁寧な態度でお客様に話しかける。 「喫茶EBは健全健康なファミレス風メシ屋となっております~。」
ほら、勘違い女。と言ってやりたいところだが、こちらにもできるだけ丁寧な態度で話しかける。 一人メシが食えるのか怪しい奴はいるが、店としてはできるだけ暴れずに過ごして、お金を払って、さっさと帰ってくれるのがいい。
「相席で3名様ご案内な?」
「うん。お願いねっ!店員さん!」
うん。これでいいはずだ。 言葉遣いはともかく、昔色々やったので体の使い方は上手くできるはずだ。少し自慢げに、大股で歩く。最初の客だからな。仰々しく迎えてやろうじゃねえの。
規定の靴の少し高い踵。くるっと踵を返して…。 そのままドアを開けて、反対の手を指先まで綺麗に伸ばす。
「はいはいー。いらっしゃいませ。お席にご案内致します~。」
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2024/11/11
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BC_4
Verce_Central_4
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リンチされる。 女は身構える。いや、ずっと身構えていた。栄養失調で気が狂った頭で、発狂する口で何か喚きながらも、最後の理性は確かに残っていた。 「ぅへ、しめんそか 三面楚歌か」 とかいう変な言葉が出てくる。自分の口ながら制御はできていない。
うれしいわ!うれしいわ!うれしいわ! うれしいわ!うれしいわ!うれしいわ! うれしいわ!うれしいわ!うれしいわ!
反響する若い女の子の声。 今日は朝からこの声がずっと聞こえている。お腹が空いたお腹が空いた。お腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いたお腹が空いた。
「ママがご飯をくれなくなって死にそうなんです」だって。大変だなあこの人も。私と同じじゃないか。と思ったら、話しているのは自分だった。駄目だ。これ以上正気でいられそうにない。
そうして発狂モードになった自分に自分自身の操縦を委ねていたら、気がつくと目の前にはハンバーガーとコーラがあった。名前を聞かれた気がしたが、適当にハンバーガーと答えて目の前の食事を口に詰める。美味しい。 横には男と、女の子。この人たちは何をしているのだろうか。ああ、一緒にご飯を食べているのか。一対どうして?お腹が空きすぎて、さっきまでの記憶がない。
と、いうか。どうして食事がこんなにたくさんあるのだろう。 「ていうか、こんなに注文して誰がこれ食べるんですか?」 恐る恐る聞いてみる。いや、お前が頼んだんだろ、と言うような顔を二人と、そして近くで見ていた全体的に灰色の男が見てくる。服装を見るに店員か。そして私は空腹でまたやらかしたらしいと気が付く。 「もう私いらないです お腹いっぱい」 しーん。 まずい。この感じは、本格的に何かやらかしている。 しかしお腹が空いている時の自分は、本当に別人のようで、もはや制御できないんだよ…と、心の中だけで呟く。 そうして、相席客のうち、若い女の子の方が変な動きをしていることに気がつく。あまりにも軽やかすぎる。年齢とかそう言うのではなく、まるで重力のないような。あれは…。 「ヒ」 声が漏れる。いけない。そして、この状況はもっといけない。 「ご飯ありがとうございました 帰ります」 まずは落ち着くこと。お礼を言うこと。 要件は簡潔に。_帰ります。
_どこへ? 帰る場所なんて、もうない。でも、ここは、二度とどこにも帰れなくなる場所に違いない。と、判断する。
「せっかくだし、みんなでおしゃべりしていかない?ね?していこ?」 反響する声の主は、恐ろしいスピードで目の前に立ちはだかる。まずい。さすがに、まだ生きていたいんですが…。と、交渉、懇願、本心が漏れる。
……
…………。
「幽霊ちゃんとおしゃべりするまで出られない喫茶店か~?」
男の声がする。よくわからないが、そう言うことなのか、なるほど。 極限状態の判断力は尖っていてシンプルだ。従う。一択。
「なるほど。こんにちは。幽霊さん。」
話した。これでおしゃべりは完了した。
「もうみんなして幽霊ちゃんって…変なの。」
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2024/11/12
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BC_5
Verce_Central_5
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そうして、幽霊は言う。
「もうみんなして幽霊ちゃんって…変なの。」
彼女には、彼女の名前があった。 白いシャツに青いチェックスカート。同じ布地で作られたリボンタイ。本を読むのが好きで、私の名前は__。
_あああああああ _あああああああ _あああああああ
_あああああああ _あああああああ _あああああああ _あれ?名前…思い出せない…あれ? _あれ?
一瞬の混乱。でも。 なんだかそれでも大丈夫な気がした。 それに、 「俺も自分の名前分からんかったから自分で付けたし。」 「自分でつけたらいいんじゃね??ならさ。」 そんな素敵な提案もあって! 今からみんなで自己紹介をして、それで、
「店員さん。貴方の名前も教えて。」 「そして、名前がフワフワなみんなで、私に名前をつけてくださらない?」
そうして。 「俺?七篠(ななしの)アンラってゆーの。ナナシノ?アンラ? まーどっちでも好きな方で。」 灰色の店員さん。
「
ゾンフィ」 不思議な青いお兄さん。ゾンフィさん。
「___」 「ぶつぶつ」 「いや、私は
プラグマって名前が、」 お腹が空いていたハンバーガーちゃん、ことプラグマさん。
そうして、ゾンフィさんが言う。 「こ、コーラ姫。」 まあ素敵!それに、深い意味まであるんですって。 どんな意味、か、しら、? お、れいを、い、わな、く、しゃ
「ありがと、私、」
「コーラ姫として、コーラを飲むわね。」 軽く咳払いをする。 「それではみなさん。お飲み物をお持ちくださいませ。」 みんなは楽しく、渋々、グラスを持って……。
「プラグマさん、ゾンフィさん、ナナシノさん…私、コーラ姫…えへへ。」
みんなと出会えて…私、とってもとってもうれしいわ! だから……
……
これからもみんな永遠に仲良くいられるように……
「かんぱーーーーい!!!」
…………ジジッ。 ……?
……
あ、あ。
ひ。 と、目の前のプラグマさんが声を上げる。
あ。あれ。おかおかおかしいな。 あ、あ、あ、あれあれあれあれ。 あれ。
ええええっと。 ま、まって、怖がらららないで……。
体にノイズが走る。 私の表示じがき消ええて、て、て。
「……お会、計とお喋りは。ま、た今度ね。」
ごめんなさい、今日、は、もう活動限界みたい。 今日は……?
あぁ。 限界みたい。
ごめんなさい。 ご、めんなさい、ごごめんなさい。
_ごめんなさい。
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2024/11/12
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Verce_Central_6
_素敵な名前をつけてくれて、_ありがとう。
生命を持たない少女は消える。少女は消えて、静寂は残る。生命はなくとも、確実に"在った"彼女の余韻が消える。
また会えたのなら、また会えたのなら。いや_、これ以上は何も。と、灰色の男は思う。
眼前では、愚かしくも支払いの押し付け合いが行われている。赤い女と青い男。どちらも複雑な名を持っていて、複雑な名を持つということはその存在への因果も相応に複雑だということを指すのだ。
全員が正常でないこの空間で、灰色の男は遠くから世界を眺め、真逆の色相環を持つ男女は争い続ける。_世界の観測者がいなくなり、彼らは争いに飽き、夜は訪れ、各々は次の演目を待つ。
_作られた世界の上で。
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街は目覚める。観測者たちよ。ご機嫌よう。
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舞台装置は動き出す。ドアは開き、青い男。仮眠室のドアは開かれ、次は部屋が眠る番だろう。
等間隔に並ぶ扉。彼には、端も真ん中も選ばないという無意識の癖がある。彼の眠った部屋は端でもなく、真ん中でもなく、その中間のどれかである。しかし同じ様相を示す扉は、彼以外にその住所を知らせない。
進む。一応。此処は店内である。店名に反して静かな室内を見渡し、見知った店員の顔を見つける。そこから一番近くもなく、遠くもない。そんな席に座る。
店員は立ち上がって男に近づく。灰色の髪は昨日と変わらない。全ては移ろいゆくのだから、きっといつか変わってゆく。そんなことを思う。
よく眠れたかどうかを問われ、そんなことを考えて眠ることのない男は少し惑う。
_赤い女。
昨日もこの店内にいた女は、同じように騒がしい。騒がしくとも、騒がしくなくとも。青い男には、さして興味のないことだ。
彼には彼なりのスタンスがある。全てにおいて中間を。差し出されるものは基本的に受け取る。_無料の食事なんかが、そうだ。
そうして、差し出されるものが、救いを求める声であったとしても。受け取る。
赤い女は飢えていて、灰色の髪を持つ男は此処の店員である。悲痛な叫びを、青い男は救いを求める声だと判断する。
丁度、少しばかり大きい仕事をこなした後だ。だから、彼は受け取る。
2024/11/18
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BC_7
Verce_Central_7
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人には通常、理性と遠慮があるものだ。赤い髪を持つ女は、それが欠落していた。
自らを奢られの身だと宣い、青い男にはどうやっても理解し難い注文をする。
_ここで一番高いものを。
男には、生きる上ではコツのようなものがある考えている。差し出されるものは、受け取る。しかし、選択肢があるのなら。今回のように、食事であるのなら、他のものでもだが、やはり一番高級でなく、かといってもっとも安いものでもなく、その中間を選ぶ。それが最も良い方向へ向かう選択だと、男は信じている。_ここで一番高いものを。
灰色の店員が愛想ではなく、本心から笑いながら近づいてきて、青い男にそれでいいかを問う。それでいい、と言う。女は助けを求める声を、確かに差し出したのである。だから。
間も無くして、店員の男の叫び声が聞こえる。厨房が騒がしくなる。赤い髪の女は、さらに果物と飲み物を注文する。こういう遠慮のない人間でも、うまく生きられているのが不思議である。
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聳え立つものは、ビルではない。それに限りなく近しい何か。食物だ。
_ここで一番高いものを。
女の言った通りになった。
青い男は通常のメニューを注文する。赤い女はまるで、一緒に食べてくれると思ったのに、と言うような目を向ける。きっと後で一緒に食べることになるだろうが。それでも男は、救いの声が差し出されるまでは、それを受け取らない。これはまだ、ただの目線。
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ノイズが走って、
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彼女は姿を現す。少女。青くて、薄い。その存在の脆さと儚さは言葉にするだけで空気に溶けてしまいそうだ。
ノイズは、灰色の男の隣に集約して。少女。まるで生きていない少女は、生命の象徴のように聳える食物に目を輝かせて、赤い女はすかさず、その浮遊する少女に上部の消費を担当させようと試みる。
青い男は、一応、これは自分の奢りであると、主張する。少女からの感謝。彼はまた、自分の食事に戻る。
_お兄さん。_これからもよろしくね。
声。赤い女の声だ。どうやら、これから先も青い男に諸々の支払いをさせようとしているらしい。
何も持たないようにしている男は、何も持っていない女を見て、浮遊する少女を見て、少し考える。
2024/11/18
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BC_8
Verce_Central_8
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家があることと、毎日雨風を凌いで眠れることには、どれほどの違いがあるのだろう。男には家というものへの執着がなかった。同時に、定住や家庭にも興味がなかった。しかし、
「 君も仮眠室を根城に出没すれば、三人で共同生活さ 」
と言ったのもまた、その男なのだった。執着も興味もない。また、此処は家ではない。仮眠室である。なら、男は定住に興味があったのだろうか?と自問自答する。いや、此処でなくても、構わない。即答したのは男の精神だ。なら、キャンプ用品に飽きて、本物の天井や壁が恋しくなったのか?いや、それもない。またもや即答。なら、
男の所持品は皆きちんと手入れされていて、古いが質がいい。より良いものがあれば新調する場合もあるが、それでも男は、可能な限り同じものを使ってきた。宿を取ることもあったし、依頼人のもとに泊まることもあった。毎日、これらを必ず使うことへの執着もまた、ない。なら、
いや。男は少し思案して、考えを止める。答えを出すことへの執着もない。
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永遠の所在と、浮遊少女。赤い女と飢餓。灰色の目は静かに俯き、男は「日常」を演じることに徹する。
_観測者たちよ。ごきげんよう。
少女はノイズへ飢餓はいっときの休息を迎え灰色の目は棲み家へと。男もまた、合図を聞いたかのように部屋へと戻っていく。
2024/11/18
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thank you
shalu da ashlica.
最終更新:2024年12月23日 07:16