ーーー : (リーズベルト大学。
ーーー : (校舎内。
ーーー : (部室棟、廊下。
ハルマ : ・・・・・・
ハルマ : (空は曇り淀み、雷鳴が鳴り止まない
ハルマ : (静まり返った棟内に、遠くの喧騒が薄らと聞こえてくる。…どうやら学校の外は、かなりの騒ぎになっているようだ。
ハルマ : なんだ……一体。……何が起こってる……
ハルマ : (片手で頭を抱えて、苦悶の表情を浮かべて
ハルマ : なんで、何も思い出せない………?
ハルマ : (―――時は少し前に遡る。
ハルマ : (保健室で目覚め、保健の先生に見送られて出て行ったオレは、その足で意気揚々と部室に向かい――…
ハルマ : (中に居た部員全員から、無言の視線全集中を浴びた。
ハルマ : (まあオレの存在が部員達にとってどれほど輝かしく鮮烈なモノであるかという証左――…あぁ、うん。言わせてくれ。頭の中でくらい。
ハルマ : (こんな形でも見られるのは悪い気がしなかったんだ。
ハルマ : (まあ、あんまりに異様な空気だったからな。流石にたじろいでいたら…
ハルマ : (演劇部の部長。友人でもある。彼がコチラに近付いてきて、こう言ったんだ。
ハルマ : (「おまえ、自分が何やったか覚えてないのか?」と。
ハルマ : (「覚えてない。 どうやらオレは、記憶を失っているらしいんだ。」
ハルマ : (――あんまりにもお誂え向きな言葉を掛けられて、思わず即座に切り返してしまった。まるで演劇だな。
ハルマ : ――――………
ハルマ : (オレが学内で騒ぎを起こしたという事。それから部活にも講義にも顔を出さず、学内でも姿を見なかったという事。
ハルマ : (追い返しもせず教えてくれた部員達は、随分と気のいいやつらだと思う。
ハルマ : (「学内では他にも同じような騒ぎが起きている。お前も事件に巻き込まれたんじゃないか?」
ハルマ : (そんな話になった所で――……この空の異変が起き始めた。
ハルマ : (部活動は中断。 学内の避難場所に向かう者、自宅に帰るもの、家族や友人と連絡を取ろうとする者、それぞれに慌ただしく動き始めた。
ハルマ : (そして、オレは――・・・
ハルマ : ……(気になる事があると誤魔化して、嫌いな筈の一人になって。何処に向かえばいいかも分からずにいる。
ハルマ : …(ぼうっと片手のスマホを眺めて
ハルマ : 『避難はできていますか? 落ち着いた時で良いので、一言連絡をくれると嬉しいです。』
ハルマ : (…「家族への連絡」。
ハルマ : (メッセージウィンドウに記入したきり、送信をタップできないまま。
ハルマ : (…返事が来ないのが怖い? …それはどういう意味で?
ハルマ : …っ(ブンブンと頭を振って
ハルマ : (…考えはまとまらない。まとまらないが、ただ言える事は。
ハルマ : (部員達と共に避難する事も、家族と合流する事も、…「事件に巻き込まれた一般人」として動く事を、どうやらオレは選べない。
ハルマ : ……っ(頭を押さえて
ハルマ : …(…思い出せない。何も、思い出せないけど……
ハルマ : …(オレは、このキアシスの異変に、関わっていた、んだろう…?
ハルマ : 「記憶障害」の魔法、か……
ハルマ : …(ポケットゴソゴソして、
ハルマ : (ピンク色の小さなクシを取り出し、見つめる
ハルマ : ……エリス先生は、何かを知ってるのかな…… ―――
ハルマ : ッッッ!(ズキィッ
ハルマ : ――。っくそ、何だ……!?
ハルマ : …、はぁ、……(息整えて
ハルマ : ……とにかく。此処に居ても埒が明かんな。
ハルマ : …本校舎の方に行ってみるか…。(再びふらふらと歩き出す
ハルマ : ――――――
ハルマ : (リーズベルト魔法学院 本校舎
ハルマ : (いつになく静かだ。既に放課を過ぎているからか?…いや、そういう問題じゃないか。
ハルマ : (いつもの校舎が、まるで映画の舞台のようだな……なんて。
ハルマ : (…まだ夢心地だっていうのか?幾ら記憶を失っているとはいえ、何を呑気な…
ハルマ : (ふらふらと廊下を彷徨い歩いていると
アリセ : (部屋から出てきたところで。
アリセ : うわ。(ばったり
ハルマ : うおっ??
ハルマ : ぉ、驚いた。まだ人が居たんだな!?
ハルマ : しかも織琴じゃないか。
アリセ : ですけどぉ…(普通に気まずそうというか嫌そうに
ハルマ : オレが言うのも何だが…避難したほうがいいんじゃないか?
アリセ : ゃー…。そうも行かないですって。
アリセ : アリセも一応…『大学祭実行委員会』なので。…ちょっとはお手伝いしないと。
ハルマ : 『大学祭実行委員会』???
ハルマ : いや、今は学祭の準備とか言ってる場合じゃないだろ??
アリセ : はい……?(すごく怪訝そうにハルマを見て
アリセ : …え?どうしたんです?国木田先輩。
アリセ : 例の「救出作戦」で負傷した……って話は聞きましたけどぉ。まさか頭でも打っちゃったんですか?
ハルマ : え。…
ハルマ : … あぁ。どうやらそうらしい。
アリセ : は?マジなんですか?
ハルマ : オレは今日、大学傍の公園で、「記憶障害」の魔法を受けて倒れていた…みたいなんだ。(素直に伝えて
アリセ : えぇ…??(困惑を隠せず
ハルマ : 正直ヶここ数ヶ月の記憶が曖昧だ。何処で何をしていたかもふわふわして思い出せん。
ハルマ : いや、聞くところによればロクでもない事をしでかしていたらしいんだが。。。
アリセ : えぇー…………・・・
アリセ : え。なんですか。 もしかしてこの一連の事件全般忘れちゃってるとか言うんですか?
アリセ : 学内で変なアンプル打たれた生徒が暴れる騒ぎが多発した事とか…、
アリセ : その騒ぎを解決して無事大学祭を開くために「大学祭実行委員会」が発足された事とか…
アリセ : 国木田先輩がエリス先生と一生イチャイチャしてめちゃくちゃ見せつけてた事とか
アリセ : 全部忘れちゃったっていうんですかぁ???
ハルマ : はっ!?????????
ハルマ : な、ななななんだ最後のは!?途中までは普通に聞いてたんだが!?(なんか赤面して
ハルマ : 言っていい冗談といけない冗談が……あるんじゃないか!???
アリセ : うわ。(うわぁ・・・
アリセ : ホントに全部忘れてるんですね。
ハルマ : な、、? え…な?? なんだその反応は? 本当に冗談じゃないのか?
アリセ : はぁ……言うならもっと趣味の良い冗談にしますよぉ。(本当か?
ハルマ : だ、大体!オレはさっき当のエリス先生にも会ってるんだが!?
ハルマ : 別にその…なんだ?全然そんな感じじゃなかったぞ!?
アリセ : …へぇ?
ハルマ : …もしオレと先生が…そういう関係で、それを忘れてるとなれば… 流石に何か言うんじゃない…か?
アリセ : ……。
アリセ : …どーかなぁ。だって先生って、「センセイ」じゃないですか?
ハルマ : え。
――― : (と、アリセの近くの床に水色の魔法陣が浮かび、
イオン : (転移魔法で姿を現す
イオン : …織琴さん?戻るの遅いから何かあったかと思いましたけど…
アリセ : ですよね教授。先生って生徒に手を出したらダメですもんね?
イオン : 何を言ってるんですか藪から棒に。普通に懲戒免職ものですね。
ハルマ : うお!? な、なんだ急に何、―…
イオン : …ぁぁ。(ハルマを見て、何か色々納得して
アリセ : ねえイオン教授。教授もエリス先生と国木田先輩が人目も憚らずいちゃついてるの見てましたよね?
イオン : あーー当方としては認識しておりませんね面倒事に関わりたくn個人の問題ですので…
ハルマ : や、ま、待て待て待て!…イオン教授まで認めるってことは本当に…その…
ハルマ : そういう…感じの仲… だったのか?オレとエリス先生…
イオン : …。(ん、とハルマを見て
アリセ : だからさっきからそう言ってるじゃないですかぁ。…ねー、聞いてくださいよ教授。
アリセ : 国木田先輩ってばここ数ヶ月の記憶を失くして、事件の事も先生との蜜月?の事も綺麗さっぱり忘れちゃったそうなんです。
アリセ : しかも当のエリス先生はそれを先輩に黙ってたみたいですよ?どう思います?
イオン : …。待ってください。ルウィア教授の魔法が本当にそのまま作動したんですか?
ハルマ : ん。な、ま、何だ??何でルウィア教授が出てくるんだ!?
イオン : そこも伝えられてないんですねぇ…(はぁぁ、と
アリセ : 前提の説明がめんど・・・大変ですね。
イオン : …君は今日の夕刻、大学内での一連の事件の黒幕と疑われたルウィア教授と対峙し、
イオン : 彼が自分に掛けた記憶消去の術式を肩代わりしたんです。
ハルマ : ・・・。待ってくれ。 流石に頭が追い付かない。
ハルマ : ルウィア教授が学内で事件を起こした黒幕?
イオン : …実際には黒幕そのものでは無かったようですが。関与していたのは間違いありません。
ハルマ : そ、そんな…? あのルウィア教授だぞ?
イオン : ひとまずその事は置いておいてください。…彼は捕らえられました。
ハルマ : …、、 …。そうか。…
イオン : …『記憶消去』は非常に強力な魔術です。ルウィア教授が用意していたそれも、自身にのみ的確に作用するように編まれた術式だったのは間違いありません。
イオン : ですから…ルウィア教授の術式を「そのまま肩代わり」して、君の記憶が消去されるのは不自然なんです。
ハルマ : …そうは言っても、オレは現に… …何も思い出せない。
イオン : そうなんですよねぇ…実際に術式は作用してしまっているわけですから。
イオン : …、ただ、そうですね。きちんと調べてみない事には断言はできませんが…
イオン : 君の記憶は「消去された」のではなく、一時的に「封印された」状態である可能性が高いでしょう。
ハルマ : …封印。…、じゃあ、完全に失くしてしまったわけじゃないんだな?
ハルマ : 思い出す事も…できるかもしれないんだな!?
アリセ : ……。(ハルマを見て
アリセ : …あのぉ。
アリセ : …エリス先生が何かした、って可能性もあるんじゃないですか?
ハルマ : …は??
アリセ : だって…。先輩、魔法を肩代わりして倒れた後、ずっとエリス先生の治療を受けてたんですよね?
アリセ : 他に誰もいない所で、2人だけで。
ハルマ : それは…… 恐らく、そう、だが……
イオン : …確かに血相変えて運んで行きましたけど?
アリセ : なら…ルウィア教授の魔法以外で何かあるとすれば、そこしかないじゃないですか?
ハルマ : 、そんな事…、 そんな訳……
ハルマ : (無い、って、言いたいのに…… オレはあの人の事を、
ハルマ : (何にも、、、覚えてない………
アリセ : …教授来る前の話に戻りますけどぉ。…国木田先輩、
アリセ : もしかして飽きて捨てられちゃったんじゃないですかっ?
ハルマ : …………
アリセ : ぁーぁ。かーわいそ。ちょっと火遊びして、都合が悪くなったらすぐさよなら。
アリセ : …アリセ、そーゆー逃げ虫、だいっきらい。
ハルマ : …か、
ハルマ : 勝手にそんな風に言うなよ…、 まだ何も分かってないだろ…!?
イオン : ぁーぁーぁー…もうこんな時にいらん喧嘩しないでくださいよ…!
イオン : ぁぁもういいですか?整理しますよ??
イオン : …仮にですよ。ペルスネージュ保険医が、国木田君の記憶に干渉していたとしましょう。
イオン : それはもう…痴情の縺れで済まされる事ではなくなります。
イオン : …国木田君はアンプルを受けて暴走した、元「裏生徒会」側の生徒なのですから。
イオン : …その推測を通すなら、彼女の事は一連の事件の容疑者として扱わざるを得なくなりますよ。
ハルマ : ――…! ま、待ってくれ!
ハルマ : 何か話がおかしな方向に行ってないか!?エリス先生は…オレをちゃんと治療してくれてたぞ!?
ハルマ : っ、治療の道具だってこうやって――(ポケット漁って、
ハルマ : (ピンク色の小さなクシを取り出し、2人に見えるように
アリセ : ―― あ。
イオン : ……。
ハルマ : …、
ハルマ : ……どうしたんだよ、2人して…
アリセ : …。これ。 変、ですよね?
ハルマ : ・・・変、?
アリセ : …上手く言えないですけど。…教授も分かりますよね?
アリセ : (織琴アリセは、【装飾支援魔術】の使い手。学内では魔術媒体を用いた「支援型魔術」の学業を修めている。
アリセ : (魔術が込められた小物(アイテム)は…言うなれば専門に近い分野。それ故の直感的な違和感。
イオン : …。一目で断言はできませんね。 失礼。(ハルマの手からクシを取って
ハルマ : ぁっ
イオン : …できませんから、魔術の組成を遡ります。
イオン : ――【遡行<アンドゥ>】。(クシを持った掌から水色の魔法光が発生
ハルマ : ―――……、、、
イオン : ―――………これは。……(光の…文字?のようなものが浮かび上がり、
イオン : (術者がクシに術式を掛ける瞬間まで巻き戻り、再生される。
アリセ : …コレって…『術式補繕』…ですよね?
イオン : …そうですね。
イオン : ………そうですねぇーーー…………(深々と溜息吐いて
ハルマ : …………・・・・・・
イオン : …術式補繕。術式を補強する為の付与魔術。
イオン : 不完全な『記憶消去』術式の一部分が補完され、記憶喪失に至っている…ってとこですか。
アリセ : ぅーゎー。完全に黒の証拠出ちゃった。
アリセ : ゃ。あやしーんじゃない?とは言いましたけど…ホントにこんな事ある…?
ハルマ : ・・・・・・
イオン : いや…もー…待ってくださいよ。ペルスネージュ保険医が黒幕側の内通者?だとすれば辻褄の合わない事が多すぎるんですが?
イオン : 重傷者の治療に…そこで得た情報提供までしてますよね? ええーどうなって……(頭抱えて
ハルマ : ――――
ハルマ : っっ(だばぁっと両目から涙が溢れ出す
イオン : ―ぅゎっ、
イオン : ちょっと今それどころじゃないんでメンブレするのは止めていただきた…いやしますか…
ハルマ : ―――……ち、違っ、…… オレは……っ(何も思い出せない。ただ胸騒ぎがしていた。嫌な予感だけがあった。
ハルマ : オレは……っっ、、、
ハルマ : こうなる前に、、、なんとかしたかったんだ―――……
ハルマ : (ただ、その強烈な感情だけを覚えている。
イオン : ぁ、ぁぁもうどうしたらいいんですか…どうしたんです?何か思い出したんですか…?
ハルマ : ――思い出せない! 何も思い出せないよ…!!(頭掻き毟って
ハルマ : 忘れちゃいけなかったって、それだけは分かるのに… 何も…
ハルマ : 何もかも忘れて、、結局、自分で………
アリセ : …先生の正体、知ってて庇ってたんですか?
ハルマ : …それすら覚えてない。 …何にも思い出せない。 けど、………
ハルマ : ………、、、 (勝手に流れ続ける涙をぐい、と拭って
ハルマ : ・・・今の、話、
ハルマ : この3人の中で留めておく事は、 できないか……?
アリセ : 何甘っちょろい事言ってんですか。現実見てください。
ハルマ : 無茶なのはわかった上で言ってる!!
アリセ : なんでも通ると思わないでくださぁい。…ていうか記憶取り戻してもいないんですよね?
アリセ : 自分で理由もわからないのに庇いたいって事ですか?流石に都合良すぎません?
ハルマ : そんなのは百も承知だ! でも、、オレは、先生を……
イオン : ……正直言って無理な相談ですよ。ペルスネージュ保険医の「分裂魔術」の性質上、早急の情報周知が望まれます。
ハルマ : …!(ぐ、と
イオン : ……情報が広まる前に彼女を説得したいのでしたら、
イオン : 今すぐ。この瞬間から。止める為の行動を起こすしかありませんでしょうね。
ハルマ : ―――……
ハルマ : …解った。 やってやる。
アリセ : …は?できるんですか?何処に居るかもわかんないのに?
ハルマ : …あぁ。オレには出来る。
ハルマ : この街で一番、高らかに響く放送設備を――……オレは知っているからな!(言うなり2人に背を向けて
ハルマ : (廊下を猛ダッシュで去っていく
アリセ : ぁ。 ぁー…
アリセ : ……
アリセ : (見送り
アリセ : …ちょっと甘すぎません?イオン教授。
イオン : いやも~~~これ以上学内(みうち)から容疑者出るの勘弁してほしいんですよぉ……
イオン : …いやまあ、正直甘いですよ。…でも、…なんでしょう…
イオン : あんまそーゆーのアレですし時代的にうるさいんですけど… …あの二人って割とマジで出来てましたよね。
アリセ : ……だと思います。正直絶対遊びかハニトラだと思ってたけど…
アリセ : なんかマジみたいです。
イオン : ならもう情報を得た我々がちくちく囲うより、彼に任せた方がなんとかなるんじゃないかと…
アリセ : えぇ~~……大丈夫かなぁ……
アリセ : っていうかこれ黙ってろって…上手くいったら無罪放免ですか?それは流石に無いんじゃないですかぁ?
イオン : …討伐と逮捕と自首では大きく結果が異なる。というだけの話だと思いますよ。
アリセ : ふぅん…
イオン : ともあれ………思わぬ長居をしました。
イオン : 戻りますか。わくわく捕虜ランドに。
アリセ : ぁ、先輩ほんとに一人で行かせるんですね?
イオン : 織琴さんは気になるなら向かっても構いませんけど…とりあえず我々…
イオン : やらなきゃいけない事が多いです。非常に。
アリセ : いやー… ぇー。うーん。
アリセ : ……正直、あのセンセーに言ってやりたい事はたくさんありますけどぉ…
アリセ : …私が混ざっても状況悪くするだけだと思うので。後の楽しみにする事にします。
イオン : 冷静でよろしい事です。…さ、福さんも待ちくたびれて暴れてる事でしょう。
アリセ : はいはーい。 …なんか2人いつの間にか仲良いですよね?
イオン : 気を遣って喋ってないだけだと思いますけど…。じゃ、行きますよ。(転移陣足元に拵えて
イオン : (転移で姿が消えていく
アリセ : (同じく。
最終更新:2024年12月02日 10:42