ピチカさんが入室しました
ピチカ->(――Ev本部内 安静室
ピチカ->(あの大きな戦いから数日が経過した。隊員達が慌ただしく駆けずり回っているはずの本部内だが、
ピチカ->(この場所は逆に、不気味なほどの静けさを保っている
ピチカ->………。(患者用の簡素な衣服でベッドに腰掛けている
ピチカ->(―――結局。あの後直ぐに気を失ってしまった。
ピチカ->(最悪の形での家族との再会。戦闘。そして敗北。肉体も精神もほとんど限界だった。
ピチカ->(もうあれから数日。重症だった傷も治療を施され、彼女は意識を取り戻した。
ピチカ->(そろそろ面会謝絶も解除される頃だろう。――だが、
ピチカ->(いろいろな事が、まだ整理できていない。頭も、気持ちも。
ピチカ->……。(今まで考える事を避けていたあらゆる類の事項が、一気に降り注いできてしまったような。
ピチカ->……。ダメね。しゃんとしないと。(一人呟く。
ピチカ->何時までも休んでられないわ。皆、それぞれ戦ってるんだから……
ピチカ->(―――その時。入口の端末から音がする。
ピチカ->(インターホン代わりの電子音。来訪を知らせるだけでなく、入室希望者の情報も告げられる。
ピチカ->(―――№「XII」。
ピチカ->―――………
ピチカ->『入室を許可しますか?』(事務的な音声が告げる
ピチカ->………
ピチカ->(帰ってもらう事も、できる。未だ自分は安静を命じられているのだし、疲れているという言い訳も嘘にはならない。
ピチカ->(―――けれど。
ピチカ->(……あたし、また逃げるの?
ピチカ->(……あたしは、これ以上シーちゃんに……
ピチカ->……
ピチカ->……いいわよ。通して。(玄関の端末に告げる。
ピチカ->『了解しました。ロックを解除します。』
ピチカ->――……(息を吐き、大きく深呼吸する
ピチカ->(――解除音に、少し遅れて扉が開く。 彼も躊躇ったのだろうか。
シーフォさんが入室しました
シーフォ->(中に入ってくる ナンバー「XII」。
シーフォ->……(静かな駆動音と共に、扉が閉じる
シーフォ->……ピチカ。
シーフォ->…もう怪我は、大丈夫なんだよね。(確認のように訊ねる Evの技術力は知っているから、いつもはこんな事は言わないのだが
ピチカ->ええ。もう平気よ。そろそろ出なきゃって思ってたとこ。
ピチカ->…あの後あんたが運んでくれたのよね?ありがとね。(ベッドに座ったままシーフォを見上げて
シーフォ->…うん。(言葉少なに
ピチカ->…あれから三日よね。状況、どうなってるか解る?
シーフォ->んー、……各部門、復興とか検証とか、やる事山積みみたい。
シーフォ->だからナンバーズは静養期間。…だけど、実際はほっとかれてるっぽいね。
ピチカ->……そう。
シーフォ->永久の方とか特にバタバタしてるしね。(さして興味無さ気に
シーフォ->んー、と、つまり、やる事決まるまでは暇、…って感じかな。
ピチカ->じゃ、やる事見つけないとね。(ベッドから立ち上がり
シーフォ->…、待ってよピチカ。
ピチカ->…、どしたの?シーちゃん。
シーフォ->…此処に来たのは、忙しくなる前に聞いておきたい事があったから。あと、言いたい事も。
ピチカ->―――…
ピチカ->(来ると思っていた。否、解っていた。
シーフォ->…… あれは、誰、なの?
ピチカ->………
ピチカ->…「ハイネ」に洗脳された一般市民よ。だから危険に晒す事は避けたかったの。
シーフォ->……最近ピチカ、すぐ嘘吐くよね。
ピチカ->、
ピチカ->…嘘じゃあ、ないわよ。
シーフォ->でも何かを隠してる。そうだろ?
シーフォ->…ピチカがあんな止め方するの、初めてだったし。
シーフォ->あの男――…只の一般市民じゃないんだろ、ピチカにとっては。
ピチカ->………
シーフォ->…… ピチカに止められなかったら、殺してたよ。
ピチカ->、
シーフォ->…もっと言うとね、止めたのがピチカじゃなかったら殺してた。
シーフォ->…割り切れないなら、はっきり言った方がいいよ。手遅れになる前に。
シーフォ->…リタの前例もあるんだしさ。配慮くらい、してくれると思うよ。
ピチカ->……………
シーフォ->……もう一回訊くよ。 あれは――
ピチカ->――ソレイユ=エリエッタ。
ピチカ->(ポツリと、呟くように答える
シーフォ->……、……エリエッタ?
ピチカ->……<ソレイユ>は【太陽】の別称よ。
ピチカ->……ソレイユ=エリエッタは、あたしの弟。そして、二十二憐星燈の【太陽】。
ピチカ->「ハイネ」の洗脳を受け、彼女の操る手先になっているわ。
シーフォ->……。弟、だったんだ。
ピチカ->ライト君の事例と同様、「ハイネ」を倒すのが最も合理的だと考えてるわ。
シーフォ->……でもそうする為には、【太陽】を退けなきゃならない。
ピチカ->……ええ。そうなるわね。
ピチカ->…だからね、「私の弟だから攻撃しないで」なんて言えないの。
ピチカ->…【審判】の件でもそうよ。彼等は救われるべきだけど、最優先じゃない。
シーフォ->……
シーフォ->…なんか、おかしいよね。
ピチカ->……え?
シーフォ->…いつもならピチカ、そういう事言わないのに。
ピチカ->……
シーフォ->むしろ、普段と逆だ。 …自分のことだから?
ピチカ->…………
ピチカ->……言えないわよ。私の弟だから攻撃しないで、なんて。(繰り返す。先ほどと同じ言葉
シーフォ->………
シーフォ->……言ってよ。
ピチカ->、え
シーフォ->…そしたらおれ、ちゃんと守れるからさ。
ピチカ->………
シーフォ->…ピチカが頼んでくれたら、ピチカの言う事なら、聞けるよ。
ピチカ->……シーちゃん。
ピチカ->………。
ピチカ->……っ、(ふっと顔をシーフォから背ける
ピチカ->……あたし、これ以上、
ピチカ->…あんたを利用したくない………
シーフォ->………、
シーフォ->……おれはそれで構わないのに。 それでも駄目なの?
ピチカ->……… だからよ。
シーフォ->…… え?
ピチカ->…あんたは、なんでもそうやって、良いよって受け入れちゃうの。
ピチカ->……あたしがどんなに酷くても。
シーフォ->……、何、言ってるの?
ピチカ->………。
ピチカ->(―――自分は彼にあんな真似をしたのに。
ピチカ->(許されたのではない。彼は気付いていないのだ。彼女の与えた取り返しのつかない影響に。
ピチカ->(それなのに、怖いくらいに無邪気な純粋さで、いくら尽くされても、想われても、想われれば想われるほど―――
シーフォ->………、
ピチカ->……あんたの事、
ピチカ->もっと、どうでもよかったら良かった……
シーフォ->―――、
ピチカ->―――(口に、出してしまって気付く。 最低な事を言ったと
ピチカ->――、ごめん、なさい。
シーフォ->――………
ピチカ->…何か、今、ちょっと、おかしいみたいなの。色んな事が一気に起こって、混乱、してる
ピチカ->…だから、妙な事口走って…(言い訳でしかないと解っていても、口にせずにはいられない
シーフォ->――…… いいよ。
シーフォ->…咄嗟に口から出たってことは、 それが本当だってこと、だろ。
ピチカ->――、シーちゃ、(思わず顔を上げる
ピチカ->―――……(一体自分は、何度彼にこんな顔をさせてきたのだろうか
ピチカ->(ひとの傷付く瞬間を、彼女はなるべくつくらないように、努めているのに
シーフォ->っ、、……(ピチカから顔を逸らし、後ろを向く
ピチカ->………(その背を見つめて
ピチカ->………「攻撃しないで」
ピチカ->なんて、言わないわ。 ……言えない。
ピチカ->……あんたが一方的に傷付くだけなんて、現実的じゃない。
ピチカ->……何も頼まないわ。頼む資格なんて、無いもの。
シーフォ->………
シーフォ->…何だよ、それ…
シーフォ->利用とか、資格とか、ピチカが勝手に線引いて、……なんでだよ…!
シーフォ->…わかんないよ、そんなの………
ピチカ->………
ピチカ->……… ごめんね。
シーフォ->………だからっ、(バッと振り向き
シーフォ->……なんで謝るんだよ。…わからせるつもりもないくせに
ピチカ->………あたしの所為だからよ。
シーフォ->……何が。
ピチカ->………(首を振る
シーフォ->……… もう、いいよ。(再び背を向け、扉へ歩き出す
ピチカ->………(ごめんね、を何とか飲み込む
シーフォ->……(ふと立ち止まり
シーフォ->……
シーフォ->――ごめんね、怖がらせて。 ひどかった。
ピチカ->――― ぇ 、
ピチカ->(唐突な言葉。今までの会話からは突拍子すぎるそれは
シーフォ->……… 三日前の話。
シーフォ->(それだけ言い残し、自動扉の向こうへ姿が消える
シーフォさんが退室しました
ピチカ->――― シー、ちゃん……
ピチカ->(……そうか、彼が始めに言った、言いたい事、とは
ピチカ->……………
ピチカ->――――ごめんね。
ピチカ->ごめんね――――…っ(両手で顔を覆う
ピチカ->(いくら謝っても。謝っても。決して許されない。――否、
ピチカ->(――――許されたくない。
ピチカさんが退室しました
最終更新:2012年04月03日 20:09